履歴と感想 : き

 読書履歴 と 読後感想 ( ※ 作品の記載順と出版順は必ずしも一致していません )

【 き 】

菊地秀行
・ 殺人遁走曲

貴志裕介
・ 十三番目のペルソナ
・ 黒い家 ・・・・・ ★★★★★
黒い家
人はここまで悪になりきれるのか?人間存在の深部を襲う戦慄の恐怖。
若槻慎二は、生命保険会社の京都支社で保険金の支払い査定に忙殺されていた。
ある日、顧客の家に呼び出され、期せずして・・・。
ほどなく死亡保険金が請求されるが、顧客の不審な態度から他殺を確信していた若槻は、独自調査に乗り出す。
信じられない悪夢が待ち受けていることも知らずに…。
第4回日本ホラー小説大賞受賞作。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

保険金殺人なのか、そうでないのか・・・というところから物語は動き始めます。
あることをきっかけに、主人公がとんでもない目にあいます。
怖い ・・・ とよく言われている作品ですが、恐怖というよりも、嫌悪という感じでしょうか・・・。
舞台設定が、変にリアルで、風景が目に浮かぶ様です。
作者が、元保険会社社員だった為、生命保険の仕組みについてはさすがであります。
・ 天使の囀り ・・・・・ ★★★★☆
・ 青の炎 ・・・・・ ★★★★★
青の炎
─ こんなにもせつない殺人者が かつていただろうか ─

櫛森秀一は、湘南の高校に通う十七歳。
母と妹との三人暮らしに、平和な家庭を踏みにじる闖入者が現れる。
母が十年前、再婚しすぐに別れた男、曾根。
曾根は居座って傍若無人に振る舞い、母の体のみならず・・・。
警察も法律も家族の幸せを取り返してはくれないことを知った秀一は決意する。
光と風を浴びて、17歳の少年は、海沿いの道を駆け抜ける。
愛する妹と母のために … 氷のように冷たい殺意を抱いて … 。
人間の尊厳とは何か … 愛とは … 正義とは … 家族の絆とは … 。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

家庭が崩壊していくさなか、切羽詰まり、やむにやまれず、殺人へとむかう少年の心の葛藤が、あまりにもつらいです。
そして、少年はとうとう決意し、冷静に完全犯罪となる方法を模索し、実行します。
同級生の女の子の心情にも、胸打たれます。
ラストは、あまりにも切なくて、悲しくて・・・。
・ 硝子のハンマー ・・・・・ ★★★★☆
硝子のハンマー
密室を舞台にした、本格ミステリー小説。
エレベータに暗証番号、廊下に監視カメラ、隣室に役員、厳戒なセキュリティ網を破り、社長は撲殺された。
凶器は? 殺害方法は? 弁護士純子は、逮捕された専務の無実を信じ、防犯コンサルタント榎本の元を訪れるが・・・
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

本書は、弁護士と防犯コンサルタントとの二人が真相の究明に挑む前半と、犯行の前後を犯人の視点から書かれた後半との構成になっています。
容疑者である専務が犯人でないとすると、難攻不落と言って過言ではない厳重なセキュリティーに阻まれ、侵入さえ難しいビルの一室での犯行は可能なのか?
解決の糸口を見つけては仮説を立て検証していく様子は、丁寧に書かれているのでわかりやすく、面白く読むことができました。
本職が泥棒である 防犯コンサルタントのキャラクターが なんとも味があって、そういった部分も面白かった様に思います。
いよいよ 犯行の手口が判明するところで、犯人の視点による次章に変わってしまい、読者は まるでお預けをくらった様な感じになるのですが、それまでが どちらかというと、明るい印象なのに比べて、ある意味、作者の貴志祐介さんらしく、重く・暗く展開していきます。
犯人が犯行に至るまでの経緯か書かれ、説得力を持たせているのではありますが 『 人を殺す 』 という 一線をこえてしまうには、動機の部分が やや 弱い印象がありました。
お預けになっていた トリックの解明については、読者は犯行の様子でもってあきらかにされるのですが、この肝心なトリックについては、実はそう難しい内容でもなく、一般的に言うところの 本格作品を読みなれている方だと、かなり早い段階でわかってしまいます。
なんといっても、表紙のイラストが あまりにも ヒントになりすぎですから ・・・ 。 ( ※ ハードカバー版 )
ですが、たとえ トリックが解りながら読む事になっても、それはそれで 面白く読めるかとも思います。

北方謙三
・ 檻
・ 鎖
・ 渇きの街
・ 棒の悲しみ
・ 擬態

北村薫
・ 空飛ぶ馬
・ 夜の蝉 ・・・・・ ★★★★☆
夜の蝉
呼吸するように本を読む主人公の 『 私 』 を取り巻く女性たち―ふたりの友人、姉―を核に、ふと顔を覗かせた不可思議な事どもの内面にたゆたう論理性をすくいとって見せてくれる錦繍の三編。
色あざやかに紡ぎ出された人間模様に綾なす巧妙な伏線が読後の爽快感を誘う。
第四十四回日本推理作家協会賞を受賞作。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

『 空飛ぶ馬 』 から続く 『 円紫師匠と私シリーズ 』 の2作目で、前作同様、日常的な謎を推理するタイプの作品です。
今となっては、他の作家さんも書いておられたりしますが、
謎解き部分は短編らしく、無駄が無く、シャープな感じです。
三編収録されていますが、表題作である 『 夜の蝉 』 が一番良かったです。
北村薫さん特有のさわやかな読後感があります。
・ 秋の花 ・・・・・ ★★★★★
秋の花
幼なじみの真理子と利恵を待ち受けていた苛酷な運命――それは文化祭準備中の事故と処理された一女子高生の墜落死だった。
真理子は召され、心友を喪った利恵は抜け殻と化したように憔悴していく。
ふたりの先輩である〈私〉は、事件の核心に迫ろうとするが…。
生と死を見つめ、春桜亭円紫師匠の誘掖を得て、〈私〉はまた一歩成長する。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

北村薫さんの作品で、初めて 『 死 』 が扱われた作品です。
新本格の作品等では、ともすれば軽々しく人が死んでいき、記号的に扱われる事があります。
作者が考えたトリックの一部分として、殺される為だけに登場する人物が、安易に殺されてしまう事もあります。
その 『 死 』 の扱いは丁寧で重々しく、
本書では、人が死ぬという事は どういう事なのか・・・が、重々しく、かつ丁寧に書かれております。
最終的には、少女が亡くなった真相について語られる事になるのですが、読者もその結末の意味を考えさせられます。
その悲しさのあまり、私は涙がでました。
・ 六の宮の姫君 ・・・・・ 評価できず
六の宮の姫君
最終学年を迎えた〈私〉は、卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げていくかたわら、出版社で初めてのアルバイトを経験する。
その縁あって、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。
王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、円紫師匠の教えを乞いつつ、浩瀚な書物を旅する〈私〉なりの探偵行が始まった。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

『 円紫さんと私 』 シリーズ第4弾で、芥川龍之介の短編 『 六の宮の姫君 』 にまつわるミステリーとなっております。
難解だとか、そういう次元を超えており、芥川作品に対する予備知識なしでは、楽しむ事が難しいのではないでしょうか。
芥川作品は 『 羅生門 』 しか読んだ事がない私は、序盤、登場人物達について行くのに必死で、中盤からは ついて行けず、後半は すっかり道に迷った様な状態になってしまいました。
評価も高く、いい作品なんでしょうけど、お恥ずかしながら 私的評価さえできません。
・ 朝霧
・ 覆面作家は二人いる ・・・・・ ★★★★★
覆面作家は二人いる
姓は『覆面』、名は『作家』で、ペンネーム覆面作家。
弱冠19歳、天国的美貌の新人推理作家・新妻千明は大富豪令嬢…ところが千秋さんには誰もが驚く、もう一つの顔があったのだ。
若手編集者・岡部を混乱させながら鮮やかに解き明かされる日常世界の謎。
クリスマス間近の冬、春、そして麦藁帽子の夏。
それぞれの季節の中で起きた三つの事件。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

本作は、3編の短編からなる、連作で、以降、『 覆面作家の愛の歌 』 『 覆面作家の夢の家 』 と続くシリーズものでもあります。
このシリーズは、北村薫さんらしく、登場人物の造形がとてもいいです。
特に主役の二人がよくて、シリーズが進むにつれ、ほんの少しづつ近づいていく、二人の距離もなんとも言えず・・・。
覆面作家こと、新妻千明さんのキャラは、かなり特異で、一言で言うとマンガみたいです。
ですけど、この作品全体の設定からすれば、なんとか収まってる感じがしますし、この辺のヤリ過ぎないギリギリのラインというのは、北村薫さんは上手いです。
とにかく、キャラの良さに後押しされている作品ではありますが、謎解きの部分でも、しっかりミステリーしてまして、読み応えあります。
・ 覆面作家の愛の歌
・ 覆面作家の夢の家
・ 冬のオペラ
・ スキップ ・・・・・ ★★★★★
スキップ
昭和40年代の初め、私、一ノ瀬真理子は17歳、高校二年生。
大雨で運動会の後半が中止になった夕方、私は家で一人、レコードをかけ目を閉じた。
目覚めた時には、夫と17歳の娘がいる高校の国語教師、桜木真理子 42歳。
『 時と人の三部作 』 の 1作目。 ( 他に2作品とは、登場人物・設定等、繋がってはおりません )
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

この作品は、一般的にいうところの、『 ミステリー 』 ではありません。
25年の歳月を、ある日突然、飛び越えてしまうわけですから、SF ( タイムスリップ物?) なのかもしれませんが、そうなった原因、元に戻る方法とかは、この物語にとって、さして重要ではありませんし、どうでもいいとさえ言えます。
主人公が、自分の置かれている状況に対してどうするか ・・・ について書かれている物語です。
現実に立ち向かう主人公に、『 がんばれ!』 って、声をかけたくなりました。
また、主人公を支えてくれる、旦那さんと娘の美也子さんのキャラクターが、とてもいいんです。
切ない部分もあるのですが、優しさにあふれた、とてもよい作品だと思います。
読後、これほど、爽やかな感じがするのは、この後も続いていくであろう、真理子さんの前向きな姿勢を想像するからでしょうか・・・。
・ ターン ・・・・・ ★★★☆☆
・ リセット
・ 盤上の敵

京極夏彦
・ 姑獲鳥の夏 ・・・・・ ★★★★☆
姑獲鳥の夏
東京・雑司ケ谷の医院に奇怪な噂が流れる。
娘は二十箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという。
文士・関口や探偵・榎木津らの推理を超え噂は意外な結末へ。
古本屋にして陰陽師が憑物を落とし事件を解きほぐす・・・。
様々な古典文献を引用しつつ、日本的な家系の悲劇を浮かびあがらせるミステリ。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

このシリーズは、トリックの解明とかそういったものはさして重要ではなく、個性豊かな登場人物達のキャラクター的な面白さがキモです。
特に4人の主要キャラクターが秀逸です。

・ うつ病(気味)の作家、関口巽。
・ 豪快な警視庁の刑事、木場修太郎。
・ 人の過去が見える超能力を持ちながら、事件を混乱させる事の多い探偵であり、奇人、榎木津礼二郎。
・ 理屈とうんちくの塊で気難しく、古本屋と神主そして陰陽師を生業とする、京極堂こと、中禅寺秋彦。

私は、このシリーズがとても好きなのですが、若干、読みにくさを感じる部分もあります。
本作の前半、京極堂が関口に、長々と持論を展開する場面があるのですが、このシリーズにはまるか、受け付けないかはこの部分を読んでどう思うかにかかっています。

─ この世には不思議なことなど何もないのだよ ─

シリーズ共通の大事な部分です。
この京極堂の持論で挫折しなければ、このシリーズきっと楽しめるかと思います。
シリーズ第1作となる本書は、密室が出てくるのですが、本格や新本格ファンには到底納得できないカラクリかとも思うのですが、京極堂の持論を読んだ後となっては、あれもありかと思えるところがすごいです。

今ではお気に入りのこのシリーズも本書を読むまでは、見向きもしませんでした。
『 陰陽師 』 『 憑物 』 『 妖怪 』 等と聞くと、あまりにも 『 安倍晴明 』 のイメージが強すぎて、妖しげな術を駆使する妖怪退治かと思っていましたが、読んでみるとそうではありませんでした。
空高く飛びあがったり、指から光や炎がでたりすることも、紙片が蝶々になったすることもありません。
逆に、そういったものが好きな方には、面白くない本ではないかと思います。
以後、数冊シリーズ物として発刊されていますが、過去の作品と関連した場面、人物がでてきますので、どうせなら本作から読まれることをオススメいたします。
・ 魍魎の匣 ・・・・・ ★★★★★
魍魎の匣
匣の中には綺麗な娘がぴったり入ってゐた。
箱を祀る奇妙な霊能者。
箱詰めにされた少女達の四肢。
そして巨大な箱型の建物――箱を巡る虚妄が美少女転落事件とバラバラ殺人を結ぶ。
探偵・榎木津、文士・関口、刑事・木場らがみな事件に関わり京極堂の元へ。
果たして憑物(つきもの)は落とせるのか!?
日本推理作家協会賞に輝いた超絶ミステリ、妖怪シリーズ第2弾。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

本作は、シリーズ2作目で、京極さんの人気を決定的にした作品となりました。
沢山の謎が最後、ひとつのところに集約されます。
それは、匣(箱)です。
この物語は全てがハコに行き着きます。
作中に出てくる 『 匣の中の娘 』 という話が、初めはそうでもなかったのが、だんだん妖しくなり、最後には、『妖しい』どころでは済まなくなります。
衝撃的な事の顛末のおかげで、読後しばらく、とあるシーンが、頭から離れませんでした。
京極夏彦さんの作品では、一番面白いように思います。
作品全体に漂う、妖しい雰囲気・・・どうぞ、御堪能下さい。
・ 狂骨の夢
・ 鉄鼠の檻
・ 絡新婦の理 ・・・・・ ★★★★☆
絡新婦の理
長かったです。
でも面白かったです。
( このシリーズはかなりクセがありますので、誰が読んでも面白いとは言いかねます )
今回も、いつもの様に登場人物が多いです。
いつもの面子だけでも結構人数いるんですが、今回は事件の関係者がより多いいです。
おまけに、事件自体が複雑(っぽく)、舞台も1箇所じゃないので、ボーっと読んでると、???ってなります。
事件には 『 トリック 』 の類はほとんどありませんが、登場人物の京極堂 ( 作者 ) の言葉をかりるならば 『 仕掛け 』 は、たくさんあります。
京極堂シリーズがお好きな方にはかなり楽しめるかと・・・。

霧舎巧
・ ドッペルゲンガー宮 ・・・・・ ★★★☆☆
ドッペルゲンガー宮
ゴシック様式の尖塔が天空を貫き屹立する、流氷館。
いわくつきのこの館を学生サークル 『 あかずの扉 研究会 』 のメンバー6人が訪れたとき、満天驚異の現象と共に悲劇は発動した!
第12回 メフィスト賞 受賞
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

怪しげな洋館と、怪しげな登場人物と、ミステリー研究会的な学生サークル・・・。
双子と、首無し死体と、閉鎖状況での連続殺人…。
ミステリの大道具、小道具を駆使した、新本格好きの人のための本と言う感じでしょうか。
私は、あかずの扉研究会のメンバ-が面白い様に思いましたし、カケルとユイの付かず離れずのところも、ある意味、漫画的なのですが、そういった部分が鼻に付かない人にはいいのではないでしょうか。
一般的に こういった閉鎖状況下というのは、外部と連絡が取れない事が大前提になるはずなのが、あえて携帯電話のみが使えるというのも、面白い試みかと思います。
トリックや、犯人の動機、事件の背景、気になる事もないではないのですし、現実味が無い、緊迫感が無い等、一部では酷評も受けている作品でが、私は面白く読むことができました。
・ カレイドスコープ島 ・・・・・ ★★☆☆☆
カレイドスコープ島
八丈島沖に密やかに寄り添い浮かぶ月島と竹取島。
古くからの因習に呪縛され、月島の一族に支配され続けているこの島を 《 あかずの扉 》 研究会メンバーが訪れた時、五月の日差しのなかで惨劇の万華鏡はきらめき始めた。
あの島田荘司の推挙を得てデビューした新本格ルネッサンスの旗手が放つ、これぞ霧舎巧版 『 獄門島 』!
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

私は、横溝正史作品にかなり傾倒していた時期がありますので、『 霧舎版 獄門島 』 等という 作品説明を目にしますと、どうしても厳しい評価になるのですが、本家とは雰囲気やトリック等、かなりの部分で違いますから、本家と比べて 『 似ているか、似ていないか 』 という事ではなく、全くの別物と捉えた方がいいです。
なんせ、作品の根底にある、古くからの因習は、暗く重いというのに、やけに明るい雰囲気漂っていて、前作より、カケルとユイの関係もそうですが、あかずの扉研究会のメンバーも相変わらずで、より青春路線になったような印象があります。
前作も、携帯電話が重要な小道具として用いられていましたが、近作も 『 PHSのトランシーバーモード 』 が小道具のひとつとして出てくるのですが、なかなかうまい使われ方かと思いました。
謎解きに関しては、インパクト弱く、犯人を推定するだけだと容易ですので、キャラクター物として読むのがいいかもしれません。
・ ラグナロク洞 ・・・・・ ★☆☆☆☆
ラグナロク洞
中央アルプスの隠れ里を襲った嵐の一夜。
土砂崩れで奇怪な洞窟に閉じ込められた 《 あかずの扉 》 研究会のメンバーを直撃する連続殺人と、乱れ飛ぶ不可解なダイング・メッセージ!
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

このシリーズも3作目、今作は、かなり強引な部分が目立ち、トリック等の部分にも説得力に欠ける様に思います。
自称名探偵、鳴海雄一郎の 『 ダイイング・メッセージ講義 』 には、私も、ほぼ同じ意見ですから納得できるのですが、あまりにもページを割きすぎている気がしました。
そういうものが長々とあった事と、ある登場人物のおかげで、かなり悠長な感じがします。
洞窟の中に閉じ込められ、いつ救助が来るかもわからない閉鎖空間で殺人事件まで起きているというのに、緊迫した空気が全く感じられず、どこか 他人事の如く振る舞いで、犯人を特定するとか、推理するとか言ってる前に、もう少し、切羽詰った感じがあってもいいのではないでしょうか。
本格ミステリーとして読むには、かなりツライです。
・ マリオネット園 ・・・・・ ★★☆☆☆
マリオネット園
閉鎖されたテーマパーク 『 マリオネットランド 』 に妖しくそびえる斜塔 ― 『 首吊塔 』 。
その塔内を回転木馬のごとく首吊り死体が乱舞するとき、《 あかずの扉 》 研究会 に未曾有の危機が迫る!
はたして『誰』が『誰』に操られているのか――!?
新本格ルネッサンスの旗手、霧舎巧がミステリの王道、Whodunit ( フーダニット ) に挑む!
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

今作は 『 Whodunit 』 をメインに据えていまして、要するに犯人当てなのですが 『 操りのフーダニット 』 という事で、陰で操っている真犯人は誰か? という事になるのですが、その点を踏まえると、容疑者となりえる人物が少ない事もあって、序盤から犯人を推定でき、中盤に至っては、被害者等を消去法で消していくと、おのずと犯人を断定できてしまいます。
ラストで、大どんでんがえしがあることを期待したのですが、そういった事もなく、クライマックスで、探偵が犯人を名指しする際の、読者の読み手としての盛り上がり等は皆無です。
物語自体、『 操り 』 にこだわる事による弊害が多々あって、無理があります。
このシリーズ全てにおいてそうなのですが、トリックがまずあって、そのトリックを生かす為に組み立てた様なストーリーになってます。
犯人と主人公達の知恵比べの様な感じで物語が進むのですが、殺人を犯す人物がどうしてこんな回りくどい計画を立てなければならなかったのか・・・という事と、主人公達を事件に巻き込まければならなかったワケに説得力がありません。
また、相変わらず登場人物達は、殺人事件に遭遇しているのに緊張感なんて感じられず、淡々としています。
場面の描写が弱い為、風景が頭に浮かびにくい このシリーズは、どうにも読みにくい。
挿絵などなくても、読むだけでその場面が頭に浮かぶのが普通ですが、この作者の作品は挿絵に頼らないと、頭の中でうまくシーンがつながりません。
頭に描いた風景を何度修正しながら読んだことか ・・・。
・ 四月は霧の00(ラブラブ)密室 ・・・・・ ★☆☆☆☆
四月は霧の00(ラブラブ)密室
4月、入学式、私立霧舎学園への美少女転校生、羽月琴葉(17)が立ち込める霧の校庭で遭遇した「霧密室」殺人事件。
学園にまつわる謎めいた伝説が2人の名探偵候補(?)を琴葉のもとへとひきよせるとき、秘密(ミステリー)は満天下に明かされる!
学園ラブコメディーと本格ミステリーの二重奏、「霧舎が書かずに誰が書く!」、『霧舎学園シリーズ』堂々の開幕。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

もう、おナカいっぱいになりました。
『 学園ラブコメと本格ミステリの二重奏 』 となってますが、『 学園ラブコメに新本格の風味付け 』 という感じですね。
相変わらずの 『 霧舎作品 』 で、軽いのですが 『 あかずの扉研究会 』 シリーズよりも、割り切り方が潔く、ここまでやるのならこれもありかと思いますが、それにしても やり過ぎです。
転校初日の始業式に遅刻、出会い頭にぶつかりキスされおまけに胸触られ ・・・ 御約束過ぎます。
一学期初日、人工発生させた霧がたちこめる学校、所轄署の署長で、学園卒業生で、主人公の母親、その母親が署長なのに現場捜査に入り浸り、その上、捜査情報の漏洩 ・・・ その他にもとんでもない設定がありすぎて、御都合主義過ぎます。
『 あかずの扉研究会 』 シリーズ同様、犯人の特定が早い時期に出来てしまいますし、ストーリー展開も平坦で、起伏があまりないので、クライマックスもいまいち盛り上がりに欠けます。
『 ドッペルゲンガー宮 』 と思いもしない形でリンクしてるのは面白いと思いましたけど ・・・。

桐野夏生
・ 顔に降りかかる雨
・ 天使に見捨てられた夜
・ 水の眠り灰の夢
・ OUT

桐生祐狩
・ 夏の滴




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