「光る森」
昔話であり、ただの思い出話なので
なんということもないが。
私がようやく「サンタクロースなんていないんだぜ、
ちくしょ~騙されたぜっ」
などと友人と談笑できるようになった
小学4年生のまだ涼しい初夏の夜。
仕事から帰ってきた父が、
「いいとこに連れて行ってあげよう」
などと言い始め、
たらふく焼肉を食べご満悦でテレビを見ていた私は
めんどくさいな~などと思いながら
当時の飼い犬のベル
(プードルなのに庭で放し飼いにされて毛が灰色
・・・)
を連れて、
散歩がてら父の後をポクポクついて行った。
実家から約1キロ歩けば、
当時、大きな温泉プールがあった。
そのプールの巨大な建物の裏には
山の上にある動物園と遊園地が合体した
メルヘンランドのようなものがあり、
そこへ登るためのケーブルカーがあるのです。
そのケーブルカー乗り場の前から
山に沿って右手へズンズン進むと、
とても小さな川があるのです。
たしか夜中の21時を過ぎていて、あたりは真っ暗、
しかし父は山の奥から流れてきているその小さな川の
さらに奥を目指すべく、
暗い森の中へ進んでいきます。
犬のベルは普段放し飼いでも
ペタペタついて来るんだが、
暗い森でも臆することなく私や父よりも先に
その獣道じみた細い道を
どんどん進んでいくのです。
犬には恐怖心とかないんだな
・・・。
森といっても山のふもとなので、
段々と傾斜も厳しくなり、
夏なので汗も滲んでくるのですが、
父とベルはまだまだ元気に上っていきます。
ま~だ~か~っ!
内心、帰りたい気分80%ぐらいで、
「こんなことなら家でスイカ食べて
寝たフリをしておけばよかった
・・・」
と思っていた。
もはや山の中腹とも言える傾斜を
30分ほど進んだところで、
ようやく父が足を止めます。
「見てみぃ
・・・・」
と父は言い、真っ暗な森の先を指差しました。
私が森の先を見つめると
水の流れる音と、
なにやら不気味に動き回るかすかな黄色い光の渦。
それは大量のホタル。
生ホタル・ライブはこの時生まれて初めてみた。
ポツポツいるって感じじゃなく、
表現できないほど、ブワ~~っと
。。。
それが暗い森を飛び回ってて、
ホタルだけを見ていると、
なにやら自分の方が立っている位置が
くるくる移動しているような錯覚を
覚えるほどの数なのです。
さっきの小さな川の上流には温泉が沸いてて、
それが川に流れ込み、水温が上がるので、
この川は普通よりも早くホタルが見れるらしい。
「俺も子供の頃に、今日みたいに
親父(私のじぃちゃん)に連れてきてもらった。」
と父はボソッと言って、
喜ぶ私を満足そうに眺め、
持ってきた缶ビールを飲んでいました。
そうなんだ
・・・。
なぁ、パパ、さっきからあんたの額にホタル停まってて、
チャクラのごとく光ってるから
なにかの仏陀みたいに見えるぜ
・・・。
「何匹か持って帰ってお母さんにも見せよう」
と私が言うと、
父は首を振り「それはダメだ」と言う。
ホタルは短命だし、うまく飼育はできないだろうし、
持って帰っても死なせるだけで
かわいそうなのだそうだ。
私はそこで30分ほどホタルを手の中に捕まえてみたり、
父と一緒に岩に座って
ホタルが飛び交うのを眺めていた。
その光景ってのは今でも鮮明に覚えていて、
春の終わり頃に暖かくなると思い出すのです。
結局、家から近いにもかかわらず、
小学生以来そこには行く事はなかったんだが、
まだ今でも大量のホタルが
光る森を作り出しているのだろうか
・・・。
私にも綺麗な思い出ってのがあるよってお話でした。
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