『そうそう。鮎を初めて釣った時はどうだったの』
少しの沈黙の後に話を戻すように、僕は言った。
『そうだね。釣ったと言ったら怒られるかな? 友釣りででしょ?
あれは親父に竿を持っていろと言われた時だったね。』
『良くは覚えていないんだけど、オトリを移していたのか、何か後ろでゴソゴソやっていたよ。でも、随分と長いと感じたんだ。それは覚えている。』
オトリとは鮎釣りに使う大事なモノ。いや、モノでは無いか。
鮎釣りとは大きく分けて4種類の方法があると思う。
渓太が話していた、えさで釣る方法。他にも渓流で使うような
4~5メートル位の竿で釣る方法もある。
えさ釣りはやって良い川と時期があるので注意が必要だ。
もしかしたら、渓太がやっていたのも、鮎を釣るのには、
禁止された川や時期だったのかも知れない。
しかし、子供だから許されたのか、やって良かったのかは今では調べる事も出来ない。
他には、えさの替わりに毛ばりで釣るドブ釣りもある。
友釣りしかやらない僕は、小田原の早川という川で、すぐ近くでドブ釣りをやっているお爺さんを見たときに、あまりにも釣れるのでびっくりした経験がある。
おそらく、100~200匹が釣っていたであろう。
あとは、コロガシという、簡単に言えばハリを沢山つけて、
川の中をひっぱり廻し、引っ掛けてしまうという荒っぽい釣りだ。
僕は最初に、お客さんに誘われてこの釣り方から鮎を始めた。
しかし、彼に言わせるとこれは釣りでは無いと言う。
いつもコロガシの話題になると嫌な顔をするので、きっと何か訳が
あるんだろうと思う。
僕も今に思えば、ふとした事から友釣りを始めてからは、もうコロガシを
したいとは思わない。それだけ友釣りというのは、奥が深く楽しいのだ。
そう、この友釣りの友というのが、オトリなのだ。
では、オトリとはつまり鮎そのものなのです。
鮎で鮎を釣る。すなわち友釣り。
なんだかおかしな話ですが、鮎の習性を利用した、唯一の釣りなのだ。
だからこそ難しく、沢山の人が嵌るのであろうと思っている。