キプロス統合の夢
２００４年４月後半
キプロス統合へ向けた国民投票が
ニュースとなって世界を駆け巡った。
国連のアナン事務総長はキプロス再統一を最大の念願とまで語っている。
いったいこれはどういうことなのか？
今日はちょっぴり解説を、、、
南と北に分断された国、キプロス。
リゾートに賑わい、ヨーロッパ的な南側と質素な北側。。。
＜北側の雰囲気はキプロス１４～１７をどうぞ！＞
地中海のギリシア、エジプト、イスラエル、そしてトルコにほど近く、
紀元前の昔から支配者が次々と入れ替わった島。
故に様々な文化が行き交い、ぶつかり合った島。
1960年に英国よりキプロス共和国として独立。
しかし、1974年にはギリシャ系将校がクーデターを企てたことを機に
トルコ軍がトルコ系住民の保護を名目に侵攻し、
キプロス島の北部約37％を占領する。
それ以来今日に至るまで、南のギリシア側とは分断状態にある。
首都ニコシアを真っ二つにしながら国連が管理する緩衝地帯が
国を南と北に分断している。
1983年には、北部占領地域が「北キプロス・トルコ共和国」として
一方的に独立を宣言した。
国家として承認しているのはトルコのみ。
私が訪れた2002年初以降、国連の仲介の下、両系間直接交渉が行われていたが、
2003年3月に交渉が決裂して以来、和平交渉は中断していた。
ところが、ＥＵ加盟が話題に上るようになり、
これを機に再統一しようという動きが始まった。
世界各国も統一へ向けた資金援助を惜しまないという
態度が表明されており、今度こそ統合かという期待があった。
度重なる交渉にもかかわらず、国連が作成した統合案に対し、
南側であるギリシア側の主導部が反対を表明。
トルコ側優遇だと言うのがその理由だ。
国民投票の行方も悲観視されていた。
結局南側は統合案へ投じられた反対票は７５％を占めた。
これに対し、北側のトルコ側は６５％が統合案に賛成票を投じたが、
結局南側の否決により、統合への試みは失敗に終わった。
そして、南側だけがＥＵ統合するという方向になった。。。
独自の道を歩き出してしまったふたつの地域。
多くの宗教・民族構成の違いができてしまったことは、
統合への道を閉ざしてしまうのだろうか。。。
＜＜後半に続く＞＞
■■ＮＨＫの番組と私の経験を交えて■■
キプロスには非武装緩衝地帯がある。
今日現在、日帰りならばキプロス南側からそこを抜けて北側にいける。
私もそれを体験した。
場所によっては壁一枚を隔てて南北両者が暮らしているところもあるそうだ。
しかし、、、それなのに、、、２日以上南側の住民が北側に行こうとすると、
地中海の端から中立国のスイスを経由し、トルコに戻って、
キプロスの北側にいく。
１２時間もかかるのだ。。。北からも同様だ。
キプロスなのに、南側はギリシアの旗。北側はトルコの旗をかかげ、
キプロスの旗は掲げられていないという。
私が訪れたKrynia Castleには、トルコの旗と北キプロス・トルコ共和国の旗が
掲げられていた。常にトルコを意識していることは明らかだった。。。
マスコミは対立を煽ろうとしてきた。
北側ではギリシア人はよそ者だと。しかし、北側のマスコミを動かしている
トルコからの移民も、トルコから移住してきたよそ者なのだ。
南側でも似たようなものだ。。。
マスコミは権力者の道具として利用されてしまっている。
北側では、現政権があやうくなると、トルコから人を動員して
選挙を都合よい結果にしてきた。。。
順調な経済成長を遂げる南側に対し、
北側は成長に行き詰まってしまった。
トルコから出稼ぎ労働者がやってきて、
安い賃金で働くようになると、もともとの住民の職は奪われてしまった。
北側では２００３年になり、住民運動が激しさを増してきた。
北側での再統合を望む市民の動きが増してきたのだ。
しかし、意外にも南側の静寂。。。
南側は統一を望んでいないのか？？
順調に経済成長し、このままならＥＵ加盟も確実だ。
安全で快適になってしまった暮らしが失われるかもしれない、
そんな変化を覚悟してまで統合しようと
望まなくなってしまったのか？？
確かに自分も肌で感じた。南側はとても安全なのだ。
人々はとても親切だった。従業員のいない時間帯のガソリンスタンドで、
初めて給油しようとしていたとき、まごまごしていたのを地元らしい方が
親切で声を掛けてくださった。思わずヨーロッパでの暮らしで
警戒感をもつことになれていたし、
素直に操作をまかせなかったのだが、しばらくすると
そんな心配は全く無用だった事がわかった。
怪しむなら旅行者だと言うくらいだった。。。
そして、４月２４日の国民投票の結果は北側は統合賛成。
しかし南側は統合反対。。。南側の悲願と思われてきた統合は
南側の否決という結果を見た。
果たして、キプロスはこれからどうなっていくのであろうか。。。
（ＥＵは統合に賛成した北側に対して経済支援をすることを表明したそうだ。）
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