GMPY-net'裏'版

国民・美久子



今日はねむかった。
今日は女の子に会いに行った。
その名も、国民・美久子。
名前の前に「国民」をつけないといけないらしい。
つけずに呼ぶと無視されるのだ。
しかし、彼女は頭に国民とつけるほど立派な国民だった。
美久子は絶対に日本から出なかった。
美久子は絶対に外人と話さなかった。
美久子は絶対に外人の半径10メートル以内に近寄らなかった。
美久子は絶対に日本語以外を話さなかった。
美久子は絶対にMade in Japan と書いているもの以外の商品には触れもしなかった。
この国民・美久子5か条を美久子に破らせることが出来たら、1億の賞金を出すという国の条例もできた。
すごい。
美久子のために国が動いた。
俺もやるぞ。
とりあえず美久子と話した。
「こんにちは」ととりあえず御挨拶。
「こんにちは」と向こうも愛想良く返す。
「いい天気ですね」とベタなことを口走ってみる。
「そうですね」と普通に返す。
「え?So deathね?」と罠にかけてみる。
「いいえ。そうですね」と動揺もせずに訂正する。
「Yeah!So deathね?」としつこく言う。
「だからそうですね!」とさすがに不機嫌そうに訂正する。
さすがに引っかからないか。
「あぁ、そうですね?」と諦めた。
「That’s right」と答えた。
あれ?
「今That’s rightって言っただろ?」と俺は興奮気味に訊ねた。
「えっ、いや…脱来吐って言ったのよ」と美久子は誤魔化した。
「脱来吐ってなんだよ?吐き気がよく来る体質を脱するという決意の言葉か?ん?」と俺は余裕を持って言った。
「その通りよ」と何故か美久子も余裕を持って答えた。
すると、国民認定委員会の人がどこからかやって来て、「そういう言葉はあります。明日新しく国語辞典が出来るから、調べてみなさい」と言った。
次の日出版された国語辞典には、確かに脱来吐が載っていた。
しかし、昨日出版された国語辞典には載っていなかった。
国民・美久子は国によって守られた。
国は美久子の気転によって守られた。
国と美久子は俺の自信のなさによって守られた。




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