二代目笠やんについて



日本の古都である京都市と奈良市の中間に笠置山という山がある。山内に寺院や神社が多い。そこに90年秋、紅葉の時期、不思議なオス猫が現れた。
推定2歳。茶と白のシマ模様に穏やかな丸顔。史跡巡りの人々や登山客の先に立ち、山から谷へ歩く。山頂の真言宗・笠置寺に修行場がある。仏像を刻んだ巨岩や山道を小1時間ほど歩く。猫はそのポイントを一つずつ回り、一周して消える。いつしか 笠やん と呼ばれ、東京や北海道など全国からプレゼントの届く人気者になった。新聞やテレビにも登場した。人と歩けば食べ物にありつけるからだ、という味気無い解説もあったが、霊魂をもつ猫だと大切に思う人も多かった。笠置山一帯は「太平記」の舞台だからである。
「太平記」は日本史の南北朝時代を描いた軍記。その人気の高さと波瀾万丈の面白さを西洋史に求めれば、「アーサー王と円卓騎士物語」だろうか。14世紀、朝廷と幕府が争い、朝廷は北朝と南朝に分かれ、南朝は笠置山にこもった。笠置山は古戦場であり聖地であり霊魂の宿る地である。猫も霊的な存在かもしれない。
その笠やんは94年2月2日、山内の崖下で息を引き取っているのが発見された。人々は慰霊碑を立て、写真集を出版した。
4年後の昨年、また人を案内しては姿を消すオス猫が現れ、2代目笠やん、と新聞に報道された。「今年はどうか」と笠置町(京都府相楽郡)には問合せが多い。2代目は栗色の一色だが、動きは初代に似ていたという。(田中 準造 氏)

~朝生リポート「大人気!?ガイド猫」日本TVより~


ガイド猫


紅葉の古戦場を案内する 2代目笠やん


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