『頭ぐしゃぐしゃ』の彼方に・・・

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第4章・汚名返上、チラベルト&カビラ


突然司会席後ろのオーロラヴィジョンが割れてスモークと共にジョン・カビラが帰ってきた!!
「みなさーーーん!帰ってきました~~~~~~!!!」
相変わらずの大声を張り上げてスタジオに登場。
シニア&Jr.ウルトラスは大歓声で彼を迎え入れる。
川平弟もスタンディングオべーションで兄の帰りを迎え入れた。その目にはうっすらと涙が浮かんでいた・・・。
「さて!みなさんこれから21世紀最初で最大の戦いが始まろうとしています!!最初のキッカーはあの当時と同じ中村俊輔!!」
パッとスポットライトが俊輔を照らした。
スポットライトの中には蒼いユニホームを纏ったあの当時と変わらない俊輔が立っていた。
とたんに起こる《ナカムラ》コール。ウルトラスシニアの興奮は絶頂に達した。
「そしてそれを迎え撃つのはパラグアイの守護神チラベルト!!」
今度はスポットライトがチラベルトを照らす。
チラベルトの顔は鬼というにふさわしい顔をしていた。
「さぁ、中村!あの時のように蹴りこんで来い!必ず止めてやる!!」
チラベルトは俊輔を指さして叫んだ。
対する俊輔は顔色一つ変えずにボールを前にして考え込んでいた。
『本気で蹴りこんだら年齢的ハンデを考えても入るだろうし下手に外したらそれこそ相手の怒りを買うことになるし・・・どうしようか?』(俊輔心の声)
俊輔が考え込んでいると審判のコッリーナがホイッスルを吹いた。
ピッ
乾いた音がスタジオに鳴り響いた。
すっと後ろに下がり助走を取る俊輔。
軽く走りスピードをつけた彼の黄金の左足がボールを蹴った!
回転のかからない速いスピードのボールがゴールマウスを狙っていく!
どうなるんだ!!どうなるんだ~~~~~!!


【12】PK3本勝負(序章)
会場内はシ~ンと静まり返っている。
その沈黙を破るかのごとく、張り切って2人を紹介する川平慈英。
『いえ~~~ぇい。さぁ,みなさ~~~ん。元気ですか~~~っ???
いよいよきましたよ~~~~~っん。イエイ!
当時を思い出すともう涙が・・・。 ん~~~~堪らんぜっ!!』
とうそ泣きまでする慈英。
会場は完全に自分に酔っている。
もうこうなった以上,会場はいよいよシ~ンと静まり返り,眠くなってきてしまう。もう,マラドーナ会長もぐっすり。誰も聞いていない。
しかし,そこから10分以上しゃべりつづける慈英。
スタッフの巻きのサインも完全無視。いよいよ自分に酔っている。
『さぁ,いよいよ運命のPK戦。泣いても笑っても3本勝負!!
この3本しかありませ~~~んっ。これで2人の運命が決まるのですっ!
イエイ!!』
横からカンペが出てくる。(サドンデスになるかもしれないよ?変なこというなっ!)
焦る慈英。今更撤回できないと思ったのか,
『んっ,サドンデス???突然死????
おう,3本勝負で決着がつかない場合。
2人とも死刑にします。いいですか?『か~み~さ~まっ』マラドーナ??』
突然話をふられて,寝ぼけていたマラドーナ。
『神様』だけは聞こえていたらしく上機嫌を装う。
『よっしゃ。よかよか。全責任はおいが持つとさ。』と,流暢な長崎弁で答えてしまった。
頭に血が上ったチラベルトはもうどうでもいいらしい。
『OK!何でもいい。どうせ勝つんだから!!いいな能活?』
焦る能活。ちょっとさすがにそれはという表情だ。そこへ
『日本男児は逃げ~~ん。』
横から勝手に返事が!
そう,ラモス爺だ。なんと何処から持ってきたのか日本刀を持ち,
何処で着替えてきたのかすっかり侍姿。
白装束で介錯する気満々のいでたち。
『能活。介錯は任せろっ』と,もうすでに刀も抜いて身構えている。
『負ける気かいっ!その辺がドーハでも悲劇になる原因なんだよ。』
とぶつぶつ言う能活。しかし,もうやるしかない。
さぁ,そんなこんなでいろいろ間に挟みつつ、いよいよ運命のPK戦へ。


【13】PK戦・開始
「俊輔!」「俊輔!」沸き返る場内。
「絶対決めろよ~~!!!」

「バシッ!」弾丸のようなスピード、しかも球は構えるキーパー、チラベルトの目の前で大きくカーブを描いた。チラベルト、慌ててこれを追うがすでに遅し、日本、先制か!? 
…と思いきや、ボールはあまりに曲がりすぎてゴールポスト横のバーに命中して、大きく跳ね返った! あまりにも痛いミス!!

「すんません…、狙い過ぎました」とウルトラスに向かって深々と頭を下げる俊輔。
「いいよ、よくやった!」「ドンマイドンマイ!」サポーターたちも、そんな俊輔にねぎらいの声をかけた。

さあ、今度はチラベルトの番だ。
川口、顔面を蒼白にして、ゴールポストに立ちはだかる。
「いいか、ここがお前の墓場だ!」とチラベルト。
叫ぶや、渾身のシュートがポストの左隅へ。
だが、川口、得意の横っ飛びでこれを捉え、右手一本ではじき返した。

再び場内は大変なボルテージ。「能活」コールとスタンディングオベーションの大嵐だ。
川平慈英の懸命のナレーションももはや視聴者には聞き取れないに違いない。

川口、ここであることに気づいて、チラベルトのもとへ歩み寄った。
「チラさん(注:かつて、ドラマ「ちゅらさん」~覚えとるかぁ?~が放映された年にチラベルトが来日したことがきっかけで、日本イレブンの間では彼を「チラさん」の愛称で呼ぶようになった)、あれマジで蹴ったんですか?」

チラベルト、ガックリと肩を落とす。そのまま床にしゃがみこんだ。
「…この勝負、俺の負けだ」
えっ? もう敗北宣言? これどういうこと?


【14】勝負は最後まで捨てるな!
チラベルトのパワーは、明らかに衰えていた。
大統領就任後も、彼自身はサッカー界と関わり、サッカーを続けたかったのであるが、国内政治の安定化、治安の向上、経済対策など、国内の政治問題は山積し、満足に練習はおろか、トレーニングすることすらままならなかったのだ。
キーパーとしてのセーブ力だけは、なんとか生まれついての資質で保たれていたが。

ではなぜ、さっきジョン・カビラをあれほど強烈に蹴飛ばすことができたのか?
ここまでのストーリーをご覧のみなさんには、もうおわかりであろう。

川口は云った
「チラさん、あのキックじゃ、俺には通用しないよ。ときどきこの局でやってる『チャレンジ・ザ・J』で俺に挑戦してきた中学生並みのスピードだったぜ」

そんなこととは露知らず、再び声が通ることを確認した慈英、興奮してまくし立てる。
「な、な、なーーーーーんと、なんという、ビューーーティフルセーーブでしょう!! まだまだ若い奴らには守護神の座は渡さないぜ、そんな気迫が、スピリットが生んだ、ファインセーブ(わざとらしい美しい発音)。さあーーー、これで勝負はいよいよわからなくなったあ、死んではいけない、死んで花見が咲くのでしょーーーーか? 咲かないんです!!!」

「ちょっと待ってくれ」と慈英のトークを止めるチラベルト。
「みんな聞いてくれ。俺のシュートは、昔ほどのパワーも、スピードもない。ジャパンのみんな、許してくれ、ヘイ、ジョン!」
そう云ってジョン・カビラのもとへ歩み寄るチラベルト。
場内はシーンと静まり返った。

「さっきはすまなかった。俺の短気を許してくれ、さっきのキックだって、ユーがわざと大げさに宙を待って盛り上げてくれたんだろ? 俺にはわかっていた…」
「何を云うんですか大統領!」目に涙を浮かべて叫ぶジョン・カビラ。
「これを見てください」そういいつつ、カビラは自分の「腹部ガード用サッカーマガジン」を取り出して、上に掲げ、ウルトラスの方を向いた。

「さっき、大統領にシュートされた私は、ズルをして腹部をこの雑誌でガードしていました。でも見てください」その「サッカーマガジン」は、真ん中が無残にも蹴りつらぬかれ、穴が開いていた。ちょうど、高原の笑顔の写真の部分だ。

「ああっ、俺の顔が…」と騒ごうとする高原。横で柳沢が高原の頭を引っぱたいた。
「大統領、これだけのキック力があるのに、勝負を捨てないで下さい!まだまだいけますよ!!」もはや涙で顔がぐしゃぐしゃのカビラ。会場からもすすり泣きの声が漏れるのが聞こえる。

「そうだ!! 男だったら最後まで勝負を捨てるな!!」と白衣のラモス爺。
「チラさん、やめるな」「チラさん!! チラさん!!」
会場は突如、「チラさんコール」につつまれるのであった。


【15】日本先行
気を取り直したチラベルト。やる気満々でゴールマウスの前に立ちはだかる。
さて,日本二人目のキッカーは・・・。
出ました。正真正銘『ノリダー』こと,
そう,あの有名な伝説的バンド『とんねるず』(なぜか最後はバンドになっている)
木梨則武・安田成美の長男 木梨のりお(マジで名前は知らん)の登場だ~。
ウルトラス代表世代に盛り上がるスタンド。
さぁ,PKスタート。
アウトサイドにかけてのキック。
見事ゴー~~~~ル!!チラベルト一歩も動けず!
『ゴ~~ル。ゴ~~ル。ゴ~~ル。ゴ~~ル。ゴ~~ル。ゴ~~ル。ゴ~~ル。ゴ~~ル。ゴ~~ル。ゴ~~ル。ゴ~~ル。・・・・』
実況の日テレアナウンサー山下も,いまや伝説の27回『ゴ~~ル』をもう一度こんなところで繰り返そうとしたが,おしい26回で,入れ歯が宙に浮いてしまった。
世界新記録ならず!
とそこへ,意気込んで慈英が復活!!なぜかクロコを引っさげている。
『ファインゴ~~~~ル。さぁ,みなさん。一緒に行きますか??
行っときましょう。レンボ~~~~~~~ゥ。』
クロコ,水道からフォースで水をスタジオ内に。
きれいな虹が浮かび上がった。見とれるスタジオ。
きれいな虹が盛り上がるスタジオ内で美しく広がる。それはまさに森に広がる清涼剤のように選手やウルトラスの胸を打つ。ジ~~ン。と感動する場内。
そこへまたあの声が。
『おう!レインボ~~~~~ッ。天も祝福しているぞ!
どんどん行っときますか??はい,行きましょう!!!』
またもや自分に酔いしれる慈英。目もうつろで,完全にトランスしている。
もはや壊れた玩具のようになってしまった。
『レインボ~~~!!そりゃっ!!!』その声に併せてクロコがスタジオ内で虹を作る。徐々に増す水かさ。ところどころでは,ウルトラス達が溺れている。
『さぁ,皆さんご一緒に。レインボ~~~ッゴ~~~~ル。イエス!!』
充実した笑顔に誰も止められない。さぁ,日本1本先行!!
どうなる運命のPK戦。どうなるスタジオ。

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