おすすめ! 河合隼雄先生の本 

おすすめ! 河合隼雄先生の本






「河合隼雄 その多様な世界」岩波書店


これは、柳田邦男氏や中村桂子さん他の方々が、河合先生について思うことを述べた本です。講演形式になっていて、本人を目の前にして先生への印象などを話すので、「話しずらいなあ」と言っている場面もあるのがまた面白いです。河合先生の本を何冊か読んだフリークな人におすすめです。

その中のひとつをご紹介しますと、こんなのがあります。
児童文学の今江氏の発言の部分です。

今江氏が、河合先生がある講演で質問に答えていた場面を見て感心しています。
それは、小学校の女性教師が、難病で死ぬしかない受け持ちの子どもを見ているとつらくて仕方ない、その子にどう言ってあげたらよいかという質問でした。
すると、河合先生は「あの世には地獄と極楽があるんやと教えなはれ」、「あんたはこの世ではとてもきつい目におうてるから、あの世に行ったらきっと極楽に行けまっせといいはなれ」と答えたました。
すると、その先生は「はい、よくわかりました」とおっしゃった、という話です。

人間はやっぱり科学の世界だけでは生きていけないのだと、考えさせられます。かといって、現代の日本で「あの世があるんだよ」と話しても、
笑い話にしかなりません。けれども、自分の命がおびやかされる状況になると、やっぱりそういう話はストンと腑に落ちるものなのですね。

この他にも、逸話はたくさん出てきます。
やっぱりすごい先生だったんだなあと思わせられます。

2007.11.1





「心理療法第4巻 心理療法と身体」岩波書店


この本は、河合先生と、心理臨床の現場にあたる先生方の報告論文になっています。
河合先生は、総論と、多田富雄氏との対談されたものが載っています。

総論の一部をご紹介。
「4 たましいについて」では、こんな風に述べられています。

「心理療法家は、自我とたましいの折り合いのうまくいかない状況にどう対処していくか、という仕事をしていることになる。

そこで、人間はたましいそのものに直接はたらきかけることができないのだから、まずは自我のコントロールをできるだけ弱め、たましいのはたらきを尊重し、それがこころや体の現象としてどう認められるかを見るということになるだろう。

そして、治療者は操作的な行為はできるだけ避けることになるだろう。
そして、できる限りたましいのはたらきにまかせることになる。」

河合先生は科学的なことから外れる話については、とても慎重に表現されます。先生が慎重になればなるほど、「ああ、本当にたましいってあるんだろうな」と理解が深まっていきます。それでも、河合先生の本を読み始めた頃は、わからない部分が多くて、エッセイばかりを選んでいました。無意識についての著書をじっくり読めるようになったのも、最近のことです。


この本の中で、ほかにもっとも興味を引いたのは、岸本寛史氏の論文、がん患者の「意識」と「異界」です。
これは身近な人を癌で亡くした経験のある人には、読めばわかるところが
たくさんあると思います。
そうだったのか、と。

2007.11.2





出版社: 大和書房
サイズ: 単行本
ページ数: 205p
発行年月: 2008年06月

この本で一番おもしろいと思ったのは、「第4章 人間だけが「自分病」を持つ―森村泰昌さんと」。

森村さんは、モナリザやゴッホなどに変装して、そのまま額縁に収まる・・・というアートをやっている方です。

そのアートの方法が独特なことと、森村さん自身、深い思索をする方なので、感じたことや考えていることを河合先生に投げて、それを受け止めた河合先生がまた「う~ん、なるほど!」とうならされるような返事をなさる、というのが、この章の醍醐味です。

人間って、悩み、苦しみ、喜び・・・・ほんとうに愛しい存在だなあと感じさせてくれます。

2008.8.24




*以下、ほかの本は、ちょっとずつご紹介していきます。
気長に待っててください~


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