『ブラザーブラッド』



登場人物表

柿原 衛(二六)男性。銀行員。
沢城 武(二八)男性。衛の兄。
能登 奏(二〇)男性。フリーター。

中村 慎吾(三〇)男性。衛の同僚。
中村 麗華(二八)女性。慎吾の妻。

稲田・・・男性。衛の上司。
阪口・・・男性。衛の同僚。

野島・・・男性。奏のお目付け役。
洪/成/元・・・すべて男性。野島の友人。

ミヤビ・・・女性。ガールズバー店員。
ロクさん・・・男性。監視員。

福山・・・男性。外交官。

エルンスト・・・剣士。ゲームキャラ。
メロディ・・・聖女。ゲームキャラ。





●文化住宅・外階段・夕(回想)
   二階の手前の階段に座り込んだ少年。
   小学四年生の柿原衛(マモル)。
   膝にトレカアルバムを置いて。
   肩を震わせ声を殺して泣いている。
   衛に落ちる影。
武「ウンコでも踏んだか?」
   上段から見下ろす年長の少年。
   小学六年生の沢城武(タケシ)。
   衛、のけぞって武を見る。
衛「お、落としたカード拾いに行ってる間に、
 ひ、ヒロ君のお兄ちゃんたちが・・・」
   アルバムを開いて見せる衛。
   ポケットが所どころ歯抜け状態。
武「待っとけ」
   手すりを乗り越えて飛び降りる武。

●公園・夕(回想)
   馬型ジャングルジムの上。
   学ランを着崩した三人の男子中学生。
   堂々と煙草を吸っている奴。
   離れて遊ぶ小学生に小石を投げる奴。
   スマホとトレカを見比べている奴。
小石「帰れ帰れ、帰ってママのケツでもナメ
 てろやチンカス!」
煙草「もうやめたれ。学校にチクられんぞ」
小石「コラァ、チクったらぶっ殺すかんな」
スマホ「おい見ろよ、これとか十万だって。
 マジでチョロすぎ」
煙草「ソッコーで売りだろ。最近パイセンの
 取り立てハードだしさ、ちょっとくらいは
 足しになるじゃん?」
小石「半分はオレんだぞ」
スマホ「ハァ? 山分けだろフツー」
小石「あのガキ騙くらかしたのオレだべ」
スマホ「オレが同級生の兄貴だから信じたん
 だろが」
武「おーい、そこの三猿」
   一斉に下を見る中学生トリオ。
   ジャングルジムの麓に武。
   小馬鹿にしたようにニヤニヤ。
武「高い所にいたら雷が落ちるよ」
   思わず空を見上げる煙草。
煙草「何だてめえ、フカシてんじゃねーぞ」
小石「ナメたガキだな。どこ小だ?」
武「悲しいことにアンタらの後輩」
小石「アァン?」
   煽られて飛び降りようとする三人。
   ジムの金属部分に手をかけた刹那。
   硬直したようになって落下。
武「だから言ったのに」
   ジムの支柱にスタンガンの電極。

●文化住宅・外階段・夕(回想)
   階段に座り込んだ衛。
   目前に差し出されるレアカードの束。
   武、夕陽に目を細めて。
衛「・・・おにいちゃん?」
武「また何かやられたら俺に言え。ひとりで
 泣いてんじゃねーぞ」
   カードを握らせた手を上から包んで。
武「どこにいたって助けに行くからな」
   黄昏に鳴るラジオノイズ。

●タクシー・車内・夜
   車窓を打つ雨の音。
   座席で眠りこける現在の衛。
奏「マモっち、マモっち」
   隣から能登奏(カナデ)の声。
衛「にいちゃん・・・」
奏「起きて。もう着くから」
   太腿を揺すられて目を開ける衛。
   奏の肩に頭をもたせかけた姿勢。
衛「・・・着いた?」
奏「もうすぐ。次の角じゃない?」
   姿勢を直して窓の外を見る衛。
衛「あ、そこの交差点を右へ」
   無言でハンドルを切る運転手。
奏「いい夢だった?」
衛「なんで」
奏「見たことない顔してたから。まるで子供
 みたいな」
運転手「めんどくせえ・・・」
   運転手の呟きに前を向く二人。
   ヘッドライトの照らす先。
   雨のヴェールの向こう側。
   路上で蠢く複数の人影。
奏「どうしたんですか」
運転手「ケンカだよ。治安悪いなあ」
   派手なクラクション。
   向かってくる車を見て逃げ散る人影。
   路上にへたり込んだ一人を残して。
   運転手、ブレーキ。
   ヘッドライトに浮かぶ男の顔。
衛「兄ちゃん!?」
   慌ててタクシーから降りようとする。
   手動では開かないドア。
運転手「ちょっ、降りるならお金!」
奏「これで。僕も降ります」
   トレイに五千円札。
   ドアが開くと同時に飛び出す衛。
運転手「待って、釣り!」
奏「いいです!」
   傘を開きながら後を追う奏。
運転手「通報しようか?」
奏「それもいいです!」
   衛、既に路上の男の傍らに。
   今にも倒れ込みそうな男を支えて。
   二人に傘を差しかける奏。
   バックして遠ざかるタクシー。
奏「その人・・・」
衛「僕の・・・兄貴」
   血と雨に濡れた顔で微笑む武。
武「十年ぶりだな」

●タイトル『ブラザーブラッド』

●衛の部屋・夜
   独身向けアパートの一室。
   整頓まで手が回らない模様の室内。
   タオルで髪を拭く奏。
   棚のプラモデルに興味津々。
   積みプラに混じって作りかけの戦車。
   *****
   上半身裸でソファに倒れ込んだ武。
   鍛えられた体に無数の青痣。
   その上から湿布を貼りつける衛。
武「冷たっ。もっと優しく」
衛「文句言うなら自分で」
武「わかったよ。お願いします」
   衛、わざと強めにペタッ。
武「っ・・・」
衛「これはお袋の分。もう叱ってもらえない
 んだからその代わりだと思って」
武「・・・どうも」
   手当ての様子を見ていた奏。
奏「お兄さんって」
武「タケシでいいよ」
奏「タケシさんって強いんですか」
衛「どこが? ボコボコだよ?」
   奏、武の体を舐めるように見て。
奏「だって四人も相手に」
武「五人だよ五人」
奏「ぜんぶ急所外してる」
武「見る目あるね。お名前は?」
奏「カナデです。能登カナデ」
武「弟が世話になって。沢城です」
   武と奏、固い握手。
奏「苗字違うのって、もしかして父方の?」
武「ああ知ってるのか。そうだよ、親のアレ。
 よくあるやつ」
奏「すみません、不躾でした」
武「いやいや」
   奏に顔を寄せる武。
武「こっちも不躾承知で聞くけどさ、弟とは
 どういった関係?」
衛「何だっていいだろ。友達だよ友達」
   二人の間に割り込む衛。
武「よくないって。兄として弟の交遊関係を
 把握しとくのは当然でしょ」
衛「十年も雲隠れしといてそれ言う?」
奏「友達ですよ。弟さんが言う通り」
   奏、屈託なく微笑んで。
奏「マモっち、そろそろ帰るね」
衛「タク呼ぼうか?」
奏「いいよ、雨上がったっぽいし。その辺で
 捕まえる」
衛「でもさっきの連中がまだその辺に」
武「あ、その心配はないから」
   お気楽な顔を不審そうに見る衛。
衛「どういう事?」
武「大丈夫だって」

●アーケード・夜
   無人の商店街を軽やかに歩む奏。
   畳んだ傘で功夫ごっこ。
   李連杰が演じる黄飛鴻のごとく。

●路地裏・夜
   座り込んだ五人の与太者。
   足掻きながらも立ち上がれない。
   路地の入口から照らすマグライト。
   眩しそうに手で遮る金髪の若者。
   光の後ろに定かならぬ男の影。
金髪「そこの人、救急車呼んでくれ」
マグライト「どうしたんですか」
金髪「急に足が動かなくなって・・・」
   見た目に似合わぬ弱々しい懇願。
金髪「頼むよ・・・」
マグライト「分かりました。少し待っていて
 下さい」
   路地から離れるマグライトの男。
金髪「助かりましたね、アニキ」
   呻く兄貴分に声をかける。
   路地に近づくエンジン音。
金髪「早っ。もう来ましたよ」
   入口に姿を現した車両。
   後部を向けたゴミ収集車。
   一拍置いて全速バックで突入。
   圧縮板に飲み込まれる金髪の悲鳴。

●衛の部屋・朝
   寝苦しそうにベッドで眠る衛。
   意識に忍び込む匂いと音。
   うっすらと目を開けて源を探る。
   キッチンに立つ武の後ろ姿。
武「お、起きたか。早く顔洗って来な」
衛「何やってんの」
武「一宿の義理に一飯でもと思ってさ」
   *****
   テーブルを見て啞然とする衛。
   これでもかと並べられた皿。
   玉子焼きからポーチドエッグまで。
   和洋卵料理のオンパレード。
   新たに運ばれてくるオムレツの皿。
武「三つ星ホテルの厨房で修行してきた成果
 を味わってくれ。半年で辞めたから卵料理
 しか作れないけど」
衛「特売のパック全部使ったでしょ。貴重な
 蛋白源が・・・」
   *****
   半分ほど空いた皿。
   それでも衰えない衛の食欲。
   夢中でオムレツにスプーンを運ぶ。
衛「これも美味いよ。絶妙にフワトロ。何か
 特別なモノ入れた?」
武「それはトップシークレット。さあさあ、
 スクランブルエッグも召し上がれ」
衛「うわ、懐かしい味・・・」
武「良かった。俺もお袋の味忘れてなかった
 みたいだな」
   黙々とスクランブルエッグを食す衛。
衛「・・・どうやって寝たか覚えてない」
武「二人で飲み直したのも?」
衛「・・・それは何となく」
武「まさか、あそこまで弱いとはな。一緒に
 飲むの初めてだったから知らなかったよ」
衛「飲める年になる前に出て行ったもんね」
武「苦労したぞ、ベッドまで運ぶの」
衛「兄ちゃんはどこで寝たの」
   雑然とした部屋を見回して。
武「まあそこは適当に。いざとなりゃ立った
 ままで眠る訓練積んでるから」
衛「どこの軍隊だよ。・・・今晩の宿は?」
武「んー未定」
衛「どうするつもり」
武「どうにかする。あんまり迷惑かけるわけ
 にもいかないしな」
   視線を逸らす武に恐る恐る聞く衛。
衛「・・・もしかして誰かから逃げてる?」
武「無い無い。近くまで寄ったから顔見たく
 なっただけ」
衛「昨夜の奴らは」
武「そこらの輩。すれ違った時ガン飛ばした
 とか何とか因縁つけられて。俺、そんなに
 目つき悪いかな」
   衛、まだ疑いの眼差し。
武「そんな目で見るなよ。昔の悪行は認める。
 でも俺だっていつまでもガキじゃないさ。
 十年もすればそれなりに分別も付くって」
   武、話題を変えようと振り返る。
   すぐ背後で稼働している空気清浄機。
武「部屋の広さに比べてデカすぎないか」
衛「気になる?」
武「背中がスース―する」
衛「ビンゴの景品」
武「ビンゴ?」
衛「結婚式の二次会」
武「誰の?」
衛「聞いてどうすんの。仕事場の先輩」
武「気前のいい先輩だな」
衛「ジャンケンでSwitchも当てた」
武「おいおい豪運すぎだろ。スクラッチとか
 試しに買ってみようぜ」
衛「もう一生分使い果たしたって。披露宴の
 司会まで務め上げたんだから、神様からの
 ご褒美だったんだよきっと」
武「司会? 誰が?」
衛「僕に決まってるでしょ」
武「・・・ウソだろ」
衛「兄ちゃんに見栄張る必要ある?」
武「あのシャイボーイがなぁ・・・」
   武、遠い目。
衛「まあ、気取らない家庭的な式ではあった
 けどさ」

●披露宴会場・午後(回想)
   ガーデンパーティー形式の会場。
   司会席でガチガチの衛。
   袖に隠したカンペを盗み見ながら進行。
   満開の桜の下に新郎新婦席。
   微笑ましく見守る中村慎吾と麗華。

●衛の部屋・朝
   スーツに着替えた衛。
   玄関で革靴と悪戦苦闘。
   背後で親のように見守る武。
武「靴べら買えば?」
衛「分かってるけど買い忘れるの」
武「忙しいんだな」
衛「それなりに」
   やっと両足の踵が綺麗に入る。
衛「たぶん遅くなると思う。鍵、郵便受けに
 放り込んどいて」
武「マモル」
衛「何? もう行くけど」
武「あの子、ホントにただの友達か?」
衛「しつこいな。奏もそう言ってたでしょ。
 友達、それか弟みたいなもん」
   ドアノブに手を掛ける衛。
武「じゃあ、俺にとっても弟だ」
   穏やかな声に振り返る衛。
   穏やかな微笑を浮かべた武。

●駅・プラットホーム・朝
   自販機の蔭でスマホ通話する衛。
奏(声)「もしもし。どうしたの」
   奏、眠そうな声。
衛「無事帰れたかなって」
奏(声)「子供じゃないんだから」
衛「昨夜はバタバタしてたし」
奏(声)「お兄さん、大丈夫だった?」
衛「何が?」
奏(声)「殴られた後遺症とか」
衛「全然。けろっとしてた。僕より元気」
奏(声)「マモっちは元気じゃない?」
衛「軽い二日酔い・・・あと兄貴酔いも」
奏(声)「面白い人だね、お兄さん」
衛「他人事だと思って。振り回される身にも
 なれよ」
奏(声)「フフッ、無理。他人だもん」
   電話から無邪気な笑い声。
衛「今度、ガチで笑えない破天荒エピソード
 の数々を聞かせてやるからな」
奏(声)「そんな色々あるの?」
衛「あるある。例えば・・・」
   列車の到着を告げるアナウンス。
衛「来た。また連絡するわ」
奏(声)「りょーかい。仕事がんばって」
   通話を終えると同時に。
   線路の方から急停車音と悲鳴。
   動揺した人の流れに巻き込まれる衛。

●八島銀行・九泉支店・午前
   カウンター奥の融資課長席。
   課長の稲田に頭を下げる衛。
衛「遅くなって申し訳ありません」
稲田「もうすぐ昼だぞ」
   決裁書類から目を離しもせず。
衛「人身事故で・・・」
   遅延証明書を差し出す衛。
稲田「並んでてさらに遅れたのか。そんなの
 ウェブのでいいんだよ」
衛「アプリ入れてなくて並んだ方が早いかな
 って・・・」
稲田「とことん要領が悪いんだな。中村とは
 大違いだ」
衛「はあ・・・」
稲田「ボヤボヤしてないで遅れを取り戻せ。
 引継ぎもまだ終わってないんだろ」
   衛、もう一度頭を下げて自席へ。
   稲田、わざとらしく溜息。
   *****
   衛、PC操作しながら視線は他所へ。
   応接ブースから出てくる中村。
   町工場の社長と連れ立って。
   社長、両手で握りしめるように握手。
   折れんばかりの腰の低さで。
   社長と別れてデスクに戻る中村。
   衛、向いのモニターの蔭から会釈。
衛「お疲れ様です」
中村「お疲れ。大丈夫だった?」
衛「すみません、ご迷惑かけて」
中村「気にすんなって。お互いさま」
   稲田を一瞥して声のトーンを落とす。
中村「課長も二時間遅れだし」
   悪ガキのような中村の笑み。
社長「ええ、月末までには必ず!」
   カウンター内にまで届く弾んだ声。
   ロビーの隅で電話する社長の後ろ姿。
衛「速水精機さん、通ったんですか」
中村「何とかね。新設備導入の利益率、低く
 見積り過ぎじゃないかと思って事業計画書
 ブラッシュアップしてもらったら案の定。
 一から洗い直した甲斐があったわ」
衛「先輩も大変だったんじゃ」
中村「あそこの加工技術は世界トップレベル
 だから。みすみす見殺しにして他国にでも
 持って行かれたら目も当てられないだろ」
   衛の憧れの眼差しが不安に曇る。
衛「・・・本当に僕で大丈夫なんでしょうか、
 先輩の後任」
中村「ハイここにも発見、低すぎる自己評価。
 君の仕事の丁寧さには俺も一目置いてるん
 だけどなあ」
衛「丁寧、ですかね。非効率的なだけかも」
中村「また何か言われた? 聞き流しときゃ
 いいよそんなの」
衛「でも先輩に比べてその、人間力みたいな
 部分が僕には全然・・・」
中村「またまた。自分の事どう捉えてるかは
 知らないけどさ、カッキーは誰から見ても
 最強の愛され人間だぞ」
衛「・・・からかわないで下さいよ」
   顔を隠すようにPCに没頭。
中村「だから司会も頼んだんだし」
   見え隠れする衛の耳たぶが紅い。

●衛の部屋・夜
   鍵を開ける音、開くドア。
   暗い玄関に廊下の灯が差し込む。
   郵便受けの下に落ちた鍵を拾う衛。
   *****
   電灯のスイッチを押す指。
衛「うぉっ」
   衛、明るい室内を見て愕然。
   同じ部屋と思えぬ程に整然。
   広くなった空間に再配置された家具。
   空気清浄機も余裕をもって鎮座。
   夢遊病者のように逍遥する衛。
   棚の前で足を止めて。
   完成したポルシェティ―ガーの威容。
   突然鳴り響くスマホの呼出音。
衛「もしもし」
武(声)「仕事お疲れ。今ウチか?」
   妙に籠もった電話口の声。
衛「ちょうど帰ったとこ。兄ちゃんは?」
武(声)「飯食える店探してる。何も無いな
 この辺」
衛「この辺ってどこだよ。て言うか部屋!」
武(声)「見違えただろ。気に入った?」
衛「片づけてくれるのは有り難いんだけどさ、
 勝手に・・・」
武(声)「某大使館のハウスキーパーとして
 磨いた腕が無駄にならずに済んだぜ」
衛「プラモも」
武(声)「なかなかの出来映えだろ。ウェザ
 リング若干入れたんだけど気づいた?」
衛「そういう話じゃなくて」
武(声)「マモル、頼みがある」
   一転して真剣な声色。
   堂々巡りしていた衛の足も止まる。
武(声)「空気清浄機の裏を見てくれ」
   言われるがままに覗き込む衛。
   そこには大型のキャリーケース。
   清浄機と同じくらいのサイズ。
衛「何これ、忘れ物?」
武(声)「しばらく預かってほしい」
衛「は?」
武(声)「大したモノじゃないんだ」
衛「イヤイヤイヤ、ちょっと待って」
武(声)「触らずにそっと置いておくだけで
 いいから。常温で大丈夫、水もやらなくて
 いい」
衛「いや中身は・・・」
武(声)「持ってて捕まるような物じゃない。
 誰かが欲しがるような物でも」
衛「その言い方だと逆に・・・」
武(声)「お前を信じてる」
衛「・・・・・・」
武(声)「また電話する。頼んだぞ」
   一方的に切られる電話。
   衛、しばらく茫然とした後。
   恐々ケースに近づく。
衛「これ、めっちゃ高いヤツ・・・」
   見るからに耐衝撃性を備えた厳つさ。
   上部の数字錠に手を伸ばそうと。
   再び鳴り出すスマホ。
   衛、慌ててお手玉。
衛「・・・今度は何?」
武(声)「言い忘れとった。中を絶対見るで
 ねえぞ」
   常田富士男っぽい声真似。
   一言だけ言い捨てて切れる。
   ポツンと取り残された衛。
衛「・・・日本昔ばなしかよ」

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