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山さんの刑事部屋
はかなきひとぞ
祐(二〇)男性。お助け人。
美紀(六九)女性。墓守り人。
祐の同級生・未来
中華料理〈好好〉の大将
菩提寺の住職
映画スタア・志摩武彦
●墓地・早朝
青々と蔓延った雑草の茎。
のんびりと這い上がるてんとう虫。
突然の激震、飛び上がるてんとう虫。
早くも湧き始めた入道雲へ向かって。
何事もなかったかのように蝉時雨。
タイトル『はかなきひとぞ』。
●同・承前
引っこ抜かれる雑草の根。
降り注ぐ土に慌てふためく蟻。
黙々と雑草を抜き続ける祐(たすく)。
帽子もかぶらず額に汗を滲ませて。
手箕に積み上がる草の山。
それでも墓所の鬱蒼感は薄れない。
腰を入れて引くも抵抗する手強い草。
美紀「使って」
背後からミニ熊手。
受け取った祐、周囲の土を掘り返す。
美紀「もういけるんじゃない?」
再び草を引く祐。
ゴボウのような根がズルズルと。
祐「何コイツ、えぐいんだけど」
美紀「ヤブガラシじゃないかしら。この子は
一筋縄じゃ行かないわよ」
後ろから覗き込む美紀。
シックな装いの老婦人。
ラウンドサングラスがよく似合う。
突然抜ける根、勢い余って尻餅の祐。
上手く避けた美紀、祐を見下ろす。
美紀「大丈夫?」
気まずそうに目を逸らす祐。
祐「どうってことないから」
再び作業に戻る祐。
美紀、祐の上に日傘を差し掛ける。
*****
見違えるように綺麗になった墓所。
清々しい表情で辺りを見回す祐。
墓石に柄杓で水をかける美紀。
『俱會一處』の文字から土が流れる。
祐「ぐ・・・かい・・・?」
美紀「ぐえいっしょ」
祐「どういう意味?」
美紀「浄土でまた会いましょうってこと」
祐「戒名とは違うの?」
美紀「これはね、亡くなった人との約束」
墓石をスポンジで磨く美紀。
どこか遠くを見つめるような眼差し。
祐、傍らの霊標に視線。
ただ一人刻まれた『嶋竹彦』の名。
美紀、線香を立てて手を合わせる。
取って付けたように真似する祐。
二人並んで暫しの黙祷。
背後の山で鶯が鳴く。
美紀「・・・ご苦労さま。これでお終い」
祐「話し方、戻していい?」
美紀「もちろん」
長い吐息を吐く祐。
祐「・・・草抜きより疲れました」
美紀「付き合わせて悪かったわね」
バッグからスマホを取り出す。
美紀「孫だもの、あまり他人行儀なのもね」
慣れた手つきでスマホを操作。
美紀「振り込んだわ。確認しておいて」
代行アプリの決済完了画面。
ペットボトルの水を差し出す美紀。
遠慮がちに受け取る祐。
祐「ありがとうございます」
ぎらつく太陽を眇める美紀。
美紀「朝早くてももう駄目。一時間が限界。
昼間に掃除してた頃が嘘みたい」
祐「ずっと一人でされてたんですか」
喉を鳴らし三分の一ほど飲んでから。
美紀「そうよ」
美紀、心なしか誇らしげな表情。
美紀「そうそう、塩分も摂らないと」
塩タブレットを祐の手に握らせる。
祐「あの、俺そろそろ・・・」
美紀「車呼んでるの。乗っていきなさい」
坂道を上ってくるタクシーが見える。
●中華料理〈好好〉・午前
油じみた庶民的な町中華。
壁に映画ポスター、棚には漫画本。
黒電話に扇風機とレトロな雰囲気。
壁際の席で居心地悪そうな祐。
祐の前に並べられた料理の皿。
唐揚げ、海老天、木穉肉、酢豚。
美紀「どうぞご遠慮なく」
対面で満足げに微笑む美紀。
美紀「若い人をこき使っておいて、そのまま
帰らせるわけにいかないからね」
祐「お腹そんなに・・・」
美紀「早かったから朝もまともにとってない
んでしょ」
祐「ゼリー飲んできました」
美紀「それじゃ持たないわよ」
店内を一瞥する美紀。
大将、カウンターでスポーツ新聞。
美紀「こんな古臭い店、嫌だった?」
頑固そうな大将の視線がチラッ。
慌てて首を横に振る祐。
美紀「仕方ないのよ。このあたりで今の時間
開いてる店、ここくらいなの」
大将、わざとらしく咳払い。
祐「でも、一人で頂くのは何か気が引けると
いうか・・・」
美紀「だったら私も頂くわ」
手書きのメニューを繰る美紀。
美紀「スタミナラーメンを追加で。そうだ、
あなたお酒は飲める?」
祐「飲めなくはないですけど・・・あ、別に
今飲みたいとかじゃ・・・」
美紀「瓶ビールもお願い。グラスは二つね」
聞く耳持たずに注文する美紀。
運ばれてくるビールとグラス。
*****
美紀のグラスに注がれるビール。
祐の熟練した手つき。
美紀「流石は大学生、慣れてるわね」
祐「練習したんです。新歓とかゼミのコンパ
とかで役に立つと思って。けど・・・」
美紀「けど?」
祐「無駄な努力でした。そもそもそういう場
に縁が無くて」
黄金比に盛り上がった泡。
美紀「注いであげたいけど手酌でお願いね。
恥ずかしながらこの有様」
右手首の包帯をさりげなく示す。
祐「あ、全然大丈夫です」
自分のグラスを雑に満たす祐。
美紀「朝起きる時、変なつき方しちゃって。
それが昨日でしょ。お寺さんに言われてた
墓薙ぎの期限が今日までだったから」
左手でグラスを持つ美紀。
祐も乾杯の態勢に。
美紀「藁にも縋る思いで初めて利用したの。
来てくれたのがあなたで本当に良かった」
祐「どうしてですか」
美紀「あの人に手を合わせてくれた」
祐「あれはその、流れで・・・」
美紀「ついでと思って、あの人のために乾杯
してくれる?」
空中で触れ合う二つのグラス。
*****
空いた瓶、料理もほぼ片づいて。
残り少ない麺を上品に啜る美紀。
皿に残った木耳を箸で弄ぶ祐。
祐「・・・俺も初めてだったんです」
美紀「・・・・・・」
祐「大学デビュー、狙ってたんですけど爆死
しちゃって。授業もサークルもなんとなく
フェードアウト。バイトは長く続かないし
他にやりたいこともないし。いつのまにか
外に出て人と話すのも苦痛になって」
美紀「・・・・・・」
祐「このまま孤独死ルートかもって考えたら
怖くなってきて。現状を変えたかったから
あのアプリに登録したんです。どうせなら
誰かの役に立ちたかったし」
美紀「・・・・・・」
祐「初めてマッチングしたのが美紀さんで。
内容は正直ピンとこなかったけど、これも
縁だから受けてみようって。でも、受けて
正解でした」
美紀「どうして?」
祐「汗ダラダラかきながら延々と草抜いてる
うちに気づいたんです。俺、自分で自分の
世界を息苦しくしてただけじゃん、って」
蓮華を鉢に戻す美紀。
美紀「祐くん、だったわね」
祐「はい」
美紀「来年もどう?」
祐「え」
美紀「七月の第二土曜日。次からは私が直接
依頼するわ。祖母と孫ごっこも抜きでね。
他に予定が入ったら、遠慮なくキャンセル
して構わないから。どうかしら」
美紀の真剣な眼差し。
●祐の部屋・午後
熱気と湿気が籠もったワンルーム。
玄関から入ってくる祐。
部屋の陰気さと乱雑さにうんざり。
窓を開け放って光と風を招き入れる。
●同・夜(一年後)
一年前よりスッキリした部屋。
布団に寝転んでスマホを見る祐。
翌日のリマインダー通知。
●墓地・早朝
隆盛を誇る雑草を前に立ち尽くす祐。
傍らの美紀、妙に楽しそう。
前回よりスポーティーな装い。
祐「一年でここまでになるんだ・・・」
美紀「今年は私も戦力よ。腕が鳴るわ」
両手に除草鍬とニッパーを構えて。
*****
各々雑草に立ち向かう二人。
這う雑草を鍬で根こそぎにする祐。
頑固な茎をニッパーで引き抜く美紀。
美紀「私ね、この子たち嫌いになれないの」
祐「物好きですね。憎たらしいって感情しか
ないですけど俺」
美紀「どれだけ抜いても何日かしたら平然と
復活してくるし、こんな狭い隙間でも元気
いっぱい、何だったら石くらい割っちゃう
勢い」
割れた縁石を指さす美紀。
祐「これは草のせいじゃないと思うけど」
美紀「とにかく、相手にとって不足なしって
感覚。分からないかなあ」
祐「まあまあ分かりませんけど。『強敵』と
書いて『とも』と読む、の類ですか」
美紀「え、何言ってるか分からない」
祐「・・・・・・」
気まずい間を埋めるように鳴く鴬。
祐「・・・まだ鳴いてる」
美紀「鴬が鳴くのは春だけじゃないわ」
祐「そうなんだ」
美紀「繁殖期が続いてるのね。うまくつがえ
なかったか、逆にうまく行きすぎて子沢山
なのか。鳴きながら巣を守ってるのよ」
祐「声だけ聞くとのどかなのに」
美紀「繫殖期のオスは体格もマッチョに変化
するんだって」
祐「頼れる父親ですね」
美紀「まあ、一夫多妻なんだけど」
美紀、ひときわ大物を引き抜く。
*****
霊標を古タオルで磨く祐。
刻まれた名をそっと指でなぞって。
花立てに白い枝垂れ花を挿す美紀。
祐「キレイだなあ。何の花ですか」
美紀「馬酔木。私もあの人も好きなの。毒が
あるから仏花には不向きらしいけど、まあ
いいわ」
墓に手を合わせる美紀。
祐、今度は心をこめて。
黙祷ののち、伸びをする美紀。
美紀「うーん、また来年」
祐「次もまたジャングルの覚悟しとかなきゃ
ですね」
美紀「ふふふ、それはどうでしょう」
祐「えっ」
美紀「実はね、秋までに玉石を敷いてもらう
予定なの。来年はきっと楽チンよ」
●中華料理〈好好〉・午前
昨年と同じ席に陣取った二人。
餃子をつまみながらビール。
鳴る黒電話、億劫そうに取る大将。
大将「出前? ダメダメ。客いるから店空け
らんないの。そう、ミッコまた休みでさ。
あいつそろそろクビにしてやろうかな」
美紀「大将、私たちで留守番してますから。
安心して行ってらっしゃい」
美紀の声に顔をしかめる大将。
大将「いや、いい。行くわ。注文は?」
カウンター内で鍋を振り始める大将。
祐「信用されてるんですね」
美紀「悪縁契り深しってやつ」
澄まし顔でグラスを傾ける美紀。
美紀「で、どうなの、学校は」
祐「やめました」
美紀「あら」
祐「一年お金貯めて専門行こうと思います」
美紀「見つけたの、やりたいこと」
祐「子供の頃まで遡って、今まで一番時間を
費やしたのってゲームだったんですよね。
親に制限かけられても何とか目を盗んでは
見つかって怒られて、でもやめられなくて
の繰り返し」
祐、新しい小皿に酢胡椒投入。
祐「大学進学を機に卒業したつもりだったん
ですけど、久しぶりにプレイしたらまた熱
がぶり返して。もういっそこれを生きる道
にしちゃえばいいのかなって」
美紀「作り手側ってこと?」
祐「はい。クリエイター系だとどこの学校が
いいか調べてるところです」
美紀「素敵じゃない。実の孫だと思って応援
させて頂戴」
延々と酢胡椒を混ぜ続ける祐。
祐「あの・・・こんなこと聞くの失礼だとは
思うんですけど・・・」
美紀「年齢かしら。それとも服のサイズ?」
祐「あのお墓って、美紀さんのご主人のお墓
なんですか」
きょとんとした美紀、笑い出す。
美紀「イヤね。急に何よ?」
祐「だって・・・美紀さん以外に誰も手入れ
してる様子がないし。普通は子どもとか、
それこそ孫だって・・・」
美紀の笑顔に憂いの影。
美紀「祐くん、探偵の方が向いてるかもね」
祐「・・・・・・」
美紀「私の夫は別の所で眠ってるわ。それも
随分前から。あの墓の主が逝くずっと前」
祐「・・・・・・」
美紀「早く逝ったから子供も授かれなくて。
お墓は遠い所にあるの。夫の実家の方」
祐「・・・・・・」
美紀「私が参っても嫌な顔されるだけ。反対
されてたのよ、結婚」
祐「じゃあ、あのお墓は?」
祐を指さす美紀、困惑する祐。
美紀「違う違う、後ろ」
振り返った背後の壁に映画ポスター。
B級ギャング映画、主演・志摩武彦。
祐「しまたけひこ・・・あ・・・」
美紀「お墓に彫ってあるのが本名。あまりに
華がないからって字を変えたのよ」
祐「じゃあ美紀さんは・・・」
まだ困惑が消えない祐。
美紀「私を悪質なファンか何かだと思ってる
わね。それこそ失礼よ。私はね、あの人の
元マネージャー」
美紀、胸を張るように。
岡持を持った大将がその後ろを通る。
大将「・・・すぐ戻っから」
●祐の部屋・夜
胡坐をかいた膝の上にノートPC。
検索エンジンを開く祐。
●中華料理〈好好〉・午前(回想)
夢見るように語り続ける美紀。
美紀「元々は大部屋女優だった。でも会社に
黙ってした結婚を誰かにバラされてクビ。
まあ、なかなか芽が出なかったし、家庭に
入るのも悪くないかなと思い直した矢先、
今度は夫がポックリでしょ。呪われてるん
じゃないかって思ったわよ」
スタミナラーメンを運んでくる大将。
すぐ横に置くが気づかない美紀。
美紀「そんな時、志摩さんが救いの手を差し
伸べてくれた。手伝ってくれないかって。
ああ、白馬の騎士は実在するんだ・・・」
大将「伸びるぞ」
*****
お冷やを飲んで再び口を開く美紀。
美紀「あのお墓はね、分骨したお骨が入って
るの。メインのお墓は、もっと立派なのが
よそにあるわ。ご遺族は反対したんだけど
遺言に書いてくれてたから。デビュー作を
撮った場所で眠りたいって。で、それ以来
私がずーっとお墓を守ってる・・・」
●祐の部屋・夜
検索ワードを打ち込む祐。
美紀の声が心に谺する。
美紀(声)「私が女優だったの疑ってる?
調べてごらんなさい、いくらでも出てくる
から」
祐、検索結果を一覧して微笑む。
祐「・・・ま、夢見るのは自由だし」
●専門学校・教室・午後(一年後)
PCの前で頭を掻きむしる祐。
画面にはプログラミング言語の洪水。
背後を通りかかった同級生・未来。
祐の肩越しに画面を覗き込む。
祐「うぉっ」
動揺する祐をよそに言語を読む未来。
とある箇所を指さして。
未来「こことここ、入れ替わってる」
●祐の部屋・夜
スマホ画面、メッセージアプリ。
祐と未来のやり取り。
祐(メッセ)「内見の日程・・・」
祐(メッセ)「返事マダー?」
祐(メッセ)「〆切ギリなんですが」
祐(メッセ)「生きてる?」
返信は来ず、イラつく祐の指。
次弾を放とうとした瞬間。
未来(メッセ)「ごめん猫のひげ数えてた」
未来(メッセ)「言ってた日でおk」
祐、溜息。
割り込むように翌日のリマインダー。
●墓地・早朝
玉石の隙間から伸びた背の高い雑草。
まるで河原の枯れすすき。
祐「これはさすがに想定外でした・・・」
がっくり肩を落とす祐。
美紀「ちっぽけな人類の浅知恵だったわね」
悟ったような表情の美紀。
祐「そうだ、ホームセンター開いたら除草剤
買いに行きましょうか」
美紀、首を横に振る。
祐「でも、抜いた後に撒けば来年は・・・」
美紀「いいの。毎年ちゃんと向き合いなさい
って仏様がおっしゃってるのよ、きっと。
それにね・・・」
雑草の根元に屈み込む美紀。
せっせと動き回る蟻やダンゴムシ。
美紀「この子たちまで殺しちゃう」
●同・午前
荷物をまとめる祐、手を洗う美紀。
美紀「さ、〈好好〉行きましょうか」
参道を通りかかる菩提寺の住職。
住職「暑い中お疲れ様です。日頃のご供養、
仏様も喜ばれていると思いますよ」
会釈する祐。
美紀「祐くん、ちょっと待っててくれる?」
住職に歩み寄る美紀。
話しながらその場から離れる二人。
●中華料理〈好好〉・午前
いつもの席に落ち着いた二人。
年季の入ったメニューを繰る美紀。
美紀「・・・一品料理は以上で。あと私には
野菜ラーメン。それと瓶ビール、グラスは
一つでいいわ」
面倒くさそうに手を振る大将。
祐「美紀さんの分は?」
美紀「休肝日。この間医者に叱られたのよ。
いいかげん自分の年を考えて下さいって。
半分くらいの年の医者によ。どう思う?」
祐「お医者さんの年は関係ないでしょ」
美紀「ないけどあるの」
祐「スタミナラーメンも控えろって?」
美紀「それは私の意思。誰かさんがケチって
豚肉を安いハムに替えたから味が落ちた」
卓に置かれる瓶ビールとグラス。
美紀と大将、視線を合わせない。
*****
ほろ酔い気分の祐。
窓の外をぼんやり眺める美紀。
野菜ラーメンはあまり減っていない。
祐「美紀さん」
ハッと顔を向ける美紀。
美紀「ごめん、聞いてなかった。ほら、あの
自転車のお爺さん。あまりに危なっかしい
から気になって」
祐「彼女できたんです、俺」
美紀の表情、晴れ間のように輝く。
美紀「まあまあまあ! ホント?」
祐「わざわざ嘘なんかつきませんよ」
美紀「それはめでたいわ。え、どんな子?
どこで出逢ったの?」
祐「いま通ってる学校の同級生。ちょっと、
いやだいぶ変ですけど、まあいい子です」
美紀「誰似? どういう所を好きになった?
何て呼び合ってる?」
祐「ちょ、質問がガトリングすぎ。一個ずつ
お願いしますよ。てか、俺だって答えたく
ないこともありますからね」
美紀「あら、やらしい」
祐「やらしくないから」
美紀「まさか一緒に住んでたりする?」
祐「それはまだ・・・」
美紀「まだってことは?」
祐「近々・・・」
テーブル越しに祐の肩を叩く美紀。
祐「痛っ」
美紀「初めて会った時は太宰みたいな顔して
人間に興味ありません的な空気振りまいて
面倒な子だなあって思ったけど、ここまで
立派な男に・・・嬉しいわ。ほんとよ」
祐「大げさ。別に結婚するわけじゃ。今の所
ただの同棲です。まだどうなるかは」
美紀「いいえ、必ず辿り着きなさい。祐くん
が選んだ子だもの、きっと大丈夫。人生の
相棒、ううん、共犯者になってくれるわ」
祐「共犯者、ですか」
美紀「そう。私とあの人みたいにね・・・」
美紀の視線は背後のポスターに。
●駅・改札・午後
自動改札を通って振り返る祐。
改札の外で見送る美紀。
祐「じゃあ、また来年・・・」
美紀「祐くん」
祐「はい」
美紀「来年は彼女との予定、優先なさい」
戸惑う祐。
祐「別に一日くらいは・・・」
美紀「ダメ、捨てられちゃうわよ」
乙女のように微笑む美紀。
日傘が開く。
●病院・ロビー・午後(一年後)
待合のベンチで貧乏ゆすりの祐。
その前で立ち止まる足。
未来「よっ」
右腕を三角巾で吊った未来。
祐「よっ、じゃないよ。のんきな顔して」
未来「ごめんごめん、心配した?」
祐「そりゃするわ。バイト先から連絡来て、
靴下履く余裕もなく飛んできたんだぞ」
祐、素足に革靴。
未来「ホントだ。いつもよりくさそう」
祐「お前・・・」
溜息つく祐の隣に座る未来。
祐「バーガー屋で腕折るとか何事だよ」
未来「捻挫、骨は大丈夫だって。階段で落ち
そうな子供の襟掴んだらね、グキッて」
祐「襟って、猫じゃないんだから・・・」
未来「タスくん」
未来、真剣な眼差し。
未来「明日お墓の日だよね。予定通りでいい
からね」
祐「変な気を回すな。そんな腕でほっとける
わけないだろ」
未来「半日くらい平気だよ。お箸なら左でも
使えるし」
黙って立ち上がる祐。
●同・電話コーナー・午後
スマホで電話をかける祐。
遠くのベンチに未来の姿。
祐「もしもし、美紀さん?」
美紀(声)「珍しいわね。変わりない?」
祐「ぼちぼちです。あの、明日の墓掃除なん
ですけど、申し訳ないんですが・・・」
美紀(声)「前に言ったわよね、彼女優先で
いいからって。なんで謝るの」
祐「あの、そうじゃないんです。デートとか
そういうのじゃなくて・・・」
●スマホで話す美紀の口のアップ
回線の向こうから祐の声。
祐(声)「だから傍にいてやりたくて」
美紀「じゃあなおさら謝る必要なんてない。
覚えてる? 私が手首を傷めた時のこと。
あの時みたいに、今度は彼女さんの支えに
なってあげるのよ」
祐(声)「ありがとうございます。お墓の方
は日を改めて・・・」
美紀「なめるんじゃないの。あの程度の草、
私一人で十分よ。医者に勧められて筋トレ
始めたから、祐くんより使えるかもね」
祐(声)「無理しないでくださいね」
美紀「ご心配どうも。会えないのは寂しい。
でも声を聞けて良かったわ。じゃあね」
通話を終える美紀。
少し荒い息。
●祐と未来の部屋・夜(半年後)
炬燵で資格勉強する未来。
キッチンでシチューの番をする祐。
未来「タスくん、電話鳴ってる」
祐「ちょっと鍋見てて」
未来と入れ違う祐。
炬燵の上で震えるスマホ。
登録されていない番号。
未来「詐欺電っぽい?」
祐「うーん、出なくていいかなあ」
言葉と裏腹に応答アイコンに指。
シチューを不器用に掻き回す未来。
沈黙に気づいて振り返る。
スマホを耳に当てて固まっている祐。
●墓地・午前
冬枯れした雑草を取り除く手。
土は固く、虫の姿もない。
時折駆け抜ける冷たい山颪。
赤い頬で黙々と作業する祐。
住職「こんにちは。この度は厳しい気候の折
わざわざ足をお運びくださいまして」
歩み寄る住職に頭を下げる祐。
祐「ご連絡ありがとうございました」
住職「本当は連絡を差し上げぬよう頼まれて
おったのですが、どうしても居た堪れず」
祐「あの人は、ここに?」
『俱會一處』の墓石を見つめる祐。
住職「いえ、ご案内いたしましょう」
●同・参道・午前
住職の後について参道を登る祐。
通り過ぎる寒々しい光景。
斜面に林立する無数の墓石。
薄氷が張った手水鉢。
顔がすり減ったお地蔵さん。
やがて辿り着いた参道の果て。
静かに佇む合葬墓の碑。
放心した祐の隣で手を合わせる住職。
祐「・・・なんで」
住職「あの方は麓の墓所に入ることを臨んで
おられました。ですが、本山から待ったが
かかりまして。詳しいことは存じませんが
どうやら志摩様のご遺族から激しい抗議が
あったらしく・・・」
遠のく住職の声。
代わりに割れんばかりの蝉時雨。
フラッシュバック。
丁寧に霊標を磨く美紀の姿。
『嶋竹彦』の隣に空いたスペース。
魂をこめるように掌を当てる美紀。
祐「何でそこにあなたの名前がないんだ」
突然、追憶を断ち切る鴬の声。
住職「何かおっしゃいましたかな?」
祐「あ・・・いえ、鴬が鳴いた気がして」
住職「春告鳥と云うくらいだから、さすがに
気のせいでしょう。まだあとひと月は」
灰色の空を見上げる祐。
心の声を乾いた風に乗せて。
祐(声)「俱會一處・・・」
●中華料理〈好好〉・午後
閉じられたシャッターの前に祐。
剝がれかけた閉店のお知らせ。
●街・夕(五年後)
駅前の雑踏を歩くスーツ姿の祐。
ワイヤレスイヤホンで電話中。
祐「撤収、だいぶ前倒しで終わってさ。バス
の時間までどうしようか考え中。そっちは
どう? 無理してない? 絶対認めないと
思うけど、お前かなりドンクサイからな。
段差注意しろよ。いま守れるのはお前しか
いないんだから。うん、気をつけて」
気がつくと少し寂れた小路にいる。
前方に何か毒々しい色彩。
祐「じゃあね、好きだよ」
電話を切って色彩に近づく祐。
名画座の任侠映画のポスター。
主演・志摩武彦の名に惹かれる視線。
●名画座・客席・夜
スピーカーから怒号と乱闘音。
ぼんやりとスクリーンを見つめる祐。
客席は人影まばら、どこからか鼾も。
物語は終盤、悲愴な劇伴が流れる。
ヒロイン(声)「アホ! アンタはほんまに
アホ丸出しや!」
志摩(声)「なんぼでも抜かせ。これがワシ
の筋の通し方じゃ。天皇はんにかてケチは
つけさせへんど!」
酔客「ほんまにアホなやっちゃなあ」
客席から間の抜けた半畳。
シーン変わって街のざわめき。
主人公の下駄の音が響き渡る。
花売り娘(声)「おにいさん、おにいさん、
花買うて。買うてくれなウチ帰られへん」
朗らかな少女の声に見開く祐の目。
志摩(声)「花なんぞいるかい。このカッコ
見たら分かるやろ。花持って喧嘩しに行く
アホがどこにおんねん」
花売り娘(声)「ウチかて花持って帰ったら
お父ちゃんと喧嘩や。どつかれてまうわ」
志摩(声)「知るか! どつかれたらどつき
返せ! 邪魔や!」
花売り娘(声)「これ、おにいさんのために
選んだ花やで」
志摩(声)「誰にでも言うとんのやろ!」
祐、スクリーンに乗り出すように。
自然と笑顔が溢れ出す。
祐「・・・疑ってごめんなさい」
瞳に光るは銀幕の反射か、それとも。
了
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