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山さんの刑事部屋
雲の城市の蒼き神体
澪(八→一三)女性。雲の城市の巫女。
源太(一〇→一五)男性。雲の城市の少年。
燐(八→一三)女性。雲の城市の巫女。
静(一九→二四)女性。雲の城市の女官。
橘(四二)男性。侍医。源太の父親。
桂香(?)男性。雲の城市の神官。
●雲の城市・全景・早朝
雲海に軍艦のごとく浮かぶ山塊。
空から接近するカメラ。
古代の山城の城址が見えてくる。
遺跡を居抜きしたような街並み。
朝早く、人々の活動はまだ見えず。
カメラは城市外郭の石垣へ。
石垣の上に危なっかしく座る影。
巫女姿の八歳くらいの少女・澪。
雲海の上に足をぶらぶら泳がせて。
端正な顔が大あくびに塗り潰される。
源太「いいもの見えるか」
背後からの声に視線を向ける澪。
石垣の麓から見上げる少年・源太。
同じ年の頃、質素な小袖姿。
澪「何だお前は」
源太「源太だ」
澪「名前など聞いておらぬ」
源太「お前、巫女様なんだって?」
ムッとする澪。
澪「分かっておるなら口を噤め」
源太「偉そうに。喋るのは自由だろ」
澪「自由だと。貴様、巫女に直接口がきける
身分ではなかろうが」
無視して石垣を登ろうとする源太。
澪「ま、待て。何をする気だ」
焦って立ち上がろうとする澪。
源太「座ってろ。落っこっちまうぞ」
澪、素直に腰を下ろす。
足下の雲海に急に足がすくんで。
澪の隣に座る源太。
源太「来たばっかでさ。色々珍しいんだ」
雲海を見下ろしてご満悦。
源太「やあ、絶景かな絶景かな」
澪「・・・奇態なことを抜かしおって」
源太「知らないのか。有名な大悪党のセリフ
だぜ」
澪「知ったことか。聖典に書かれた教え以外
知る必要はない」
源太「ああ、そうだったな・・・」
暫く無言で隣り合う二人。
源太「・・・いいのか」
澪「何がだ」
源太「雲の下に足を向けても。下には神様が
いるんだろ」
慌てて膝を抱える澪。
澪「・・・神様も今はお休みになっておる」
源太「だといいけど。巫女様ともあろうお方
がこんな所で朝っぱらから大あくび」
澪「き、貴様、見ておったのか」
源太「見てはいないが聞こえた。あんな声を
聞かされたら神様だって起きちまわあ」
澪「なんと不敬な・・・」
顔を真っ赤にして憤る澪。
源太「怒るな怒るな。巫女様も案外普通の子
なんだな。もっとツンと澄ましてるのかと
思ってた」
澪「・・・・・・」
源太「割と自由そうだし」
澪「・・・自由なものか」
源太「?」
澪「今も女官の目を盗んで抜け出しておる。
もしバレたらどれだけ叱られるか」
澪の顔が曇る。
澪「いや、小言で済めばまだマシかもな」
源太「お前、何て名前だ」
澪「は」
源太「いつまでも巫女様呼びなんて、お互い
窮屈だろ」
澪「・・・みお」
源太「みおか。なかなかいい名前だな、澪」
澪「気軽に呼ぶな」
源太「また今度会いに行くよ。ノスリの声で
合図するから、その時はよろしく」
澪「よろしくって、お前なあ・・・」
源太「顔に退屈って書いてある」
澪が顔を撫で回しているうちに。
源太、軽やかに石垣の麓に着地。
澪「待て源太、我は・・・」
その頃には源太の背中は遥か遠く。
澪「・・・ノスリって何だよ」
●同・巫女の寝殿・午前
庭を臨む広間で髪を梳かされる澪。
艶やかな黒髪に櫛を入れる女官・静。
静「今朝は一段とおぐしの通りが滑らかで。
何か良いことでもございました?」
澪「・・・別に」
静「不思議。かんばせのお色だって心なしか
鮮やかですよ、ほら」
頬に触れようとする静から逃れる澪。
澪「いい加減にしろ。馴れ馴れしいぞ」
静「ご無礼を・・・」
静、反省して黙々とくしけずる。
澪「・・・なあ、静」
静「はい、澪様」
澪「近ごろ、天より下った者の中に我ほどの
齢の小僧はおらんかったか」
静「男の子、ですか」
考え込む静。
澪「確か、源太とか言ったな」
静「ああ、その子。新しくお勤めになる侍医
のご息男ですよ。ほら、亡くなった籬先生
の後任で」
澪「爺ちゃん先生、死んだのか」
静「ご存知なかったのですか」
澪「前の検査の時はピンピンしておったぞ。
なぜ誰も教えてくれんのだ・・・」
苛々と指先をこねくり回す澪。
静「皆、澪様に余計なご心配をおかけしたく
ないのですよ。澪様には健やかに穏やかに
お過ごしいただきたいと」
静、最後の一櫛を入れる。
静「さ、綺麗に整いましたよ」
澪「・・・その父子はどこに?」
静「お住まい?」
澪「そうだ」
静「確か、籬先生のお邸にそのまま入られた
とか。西門を出てすぐの所・・・」
静の表情、やにわに硬く。
静「なぜそのようなことをお聞きに。もしや
その子と会って話されたのですか」
澪「ち、違う。ちょっと見かけただけだ」
顔を伏せる澪、窺う静。
静「澪様、ご承知でしょうが巫女様たる身、
神殿外の者と気安く口をおききになること
は厳に戒められて・・・」
澪「分かっておる、口などきかぬ」
やや荒らげた早口で遮る澪。
静、我儘な妹を見る姉のような表情。
静「・・・でしたら良いのですが」
櫛や化粧道具を片づけ始める静。
澪「・・・静」
静「まだ何か」
澪「ノスリ、とは何だ」
静、怪訝な顔で振り返る。
静「さあ・・・存じませんけれど・・・」
澪「どうやら鳴くものらしいのだが」
静「鳴く・・・虫、いえ、鳥でしょうか」
澪「あれか」
庭を指す澪、その方向から鳴き声。
静「いいえ。鳥は鳥でもあれはホトトギス。
ノスリなるものがどのような声で鳴くかは
私にも・・・燐様にお伺いしましょうか。
あの方は博識でいらっしゃいますから」
露骨に顔を顰める澪。
澪「いや、いい。奴には話すな」
●同・神殿の回廊・午前
巫女の正装で静々と歩む澪。
その後から付き従う静。
廊下の反対側から近づくもう一組。
同じく巫女姿の少女・燐とその官女。
すれ違う二組、燐の視線が澪に。
何か言おうと動きかける燐の唇。
視線を合わせずに行き過ぎる澪。
官女同士、素知らぬ顔で会釈。
燐たちの後ろ姿が回廊の角に消える。
静「せめてご挨拶くらい」
澪「そんな義理なぞない」
静「またそのようなこと。澪様と燐様は同じ
巫女様のお立場でいらっしゃるのですよ。
少しくらい睦まじくなさっても・・・」
澪「違う」
静「え」
澪「違うのだ、我と奴とは・・・」
俯いてよく見えない澪の表情。
●同・巫女の寝殿・夜
澪の前にささやかな夕食の膳。
味などないかのように黙々と進む箸。
甲斐甲斐しく給仕する静。
まだ残った器の傍らに箸を置く澪。
静「もっとお召し上がりにならないと」
澪「もうよい、食が進まん」
静「お口に合いませんか」
澪「味はいつも同じだ。あまりに同じすぎて
おくびが出る」
うんざり顔で膳を見渡す澪。
ペースト状の主食や無色透明の汁。
静「贅沢おっしゃってはいけません。上々の
者はもっと味気ない夕餉を・・・」
澪「分かった分かった。ガミガミ言うな」
再び箸を取る澪、静は母の顔。
静「澪様、あと一月で例大祭ですよ。今年は
初めて聖餐を頂ける年なのですから、少し
くらいはご辛抱なさいませ」
●同・深夜
寝所の中央に天蓋つきの寝台。
帳の蔭であどけなく眠る澪。
広縁に面した庭を巡回する衛士の影。
夜も更け、いつしか人の気配はなく。
庭のどこかで甲高い鳴き声。
震える澪の瞼、再び鳴き声。
跳ね起きて帳から顔を出す澪。
今しも広縁から忍び込む小さな影。
澪「・・・ノスリか」
影「源太だ」
差し出した燈明に浮かぶ源太の笑顔。
●同・街路・深夜
静まり返った街はずれ。
泥棒のように忍び歩く二つの影。
源太と澪。
澪、寝巻のまま源太に手を引かれて。
澪「どこまで行く。見つかってしまうぞ」
源太「平気だ。ここの奴らは夜を恐れてる。
聖典に書いてあるんだろ。天は穢れ、天を
見上げるは罪、それが夜なら尚更って」
澪「知っておるならどうして・・・」
源太「試してみたいのさ。本当に目が潰れる
のかどうか。だって窮屈な話じゃないか。
畏れ多いから見下ろすな、穢らわしいから
見上げるなってさ。じゃあ何のために目は
あるんだよ」
二人の行く手に小高い丘。
澪「待て、あそこは本当にまずい」
源太の手に抗う澪。
源太「何がまずい?」
澪「まずいったらまずいのだ。丘の中腹には
蒼神様の祠がある。この城市で最も神聖な
場所だぞ。我でさえ近寄ることが許される
のは例大祭の時期だけ・・・」
源太「心配すんなって」
強引に澪の手を引く源太。
源太「連れて行きたいのは丘の向こうだ」
●同・草原・深夜
トンネルのような木立を進む二人。
澪、俯きながら覚束ない足取り。
源太「着いたぞ」
源太の声に顔を上げる澪。
木立を抜けた先に広大な草原。
周囲を森に囲まれて。
暗い夜空がドームのよう。
澪「・・・ここは何だ。初めて見るぞ」
源太「船着き場だよ。俺もここに着いた」
澪を草原の中心に誘う源太。
倒れた草の上に腰を下ろす二人。
膝を抱えて周囲を見回す澪。
澪「どこに船が」
源太「今はない。余程の急用がない限り船は
出ないんだ。医者が死んだとか、食い物が
底をついたとか」
澪「・・・天はどんな所だ」
源太「ここよりよほど素敵さ。ここの奴ら、
特に神官様は忌み嫌ってるみたいだけど」
源太の言葉にこわばる澪の顔。
澪「あの御方は決して過たぬ。天を悪と仰せ
なら、それが我にとっても真実だ」
源太「じゃあ、俺も悪の使いか」
寂しそうに微笑む源太。
源太「勝手な話だ。困った時だけ頼ってくる
くせに、普段は掃き溜め扱いなんて」
澪、黙って紙包みを押しつける。
紙包みを開く源太、顔を背ける澪。
源太「くれるのか」
澪「食い残しだ。捨てては罰が当たる」
紙包みの中身、ペースト状の飯。
嬉しそうにがっつく源太。
横目で様子を見る澪。
澪「まるで獣だな。上人は碌なものを食って
おらんと聞いたが本当だったか」
源太「味は薄いし歯応えもないけど腹持ちは
しそうだ。さすが巫女様のオマンマ」
澪「あっ、文句を抜かすなら返せ」
澪の手を悪戯っぽくかわす源太。
残りをぺろりと平らげてしまう。
源太「腹に入っちまったものは返せないよ。
代わりにこれやる」
源太、澪の掌に何かを握らせる。
掌を開いた澪、驚いて落としかける。
澪「わっ、何だこれ!」
辛うじて掌に留まる銀色の甲虫。
源太「コガネムシ。ノスリを知らないんじゃ
こいつも見たことないだろ」
澪「・・・生きておるのか」
掌上の虫に恐る恐る顔を寄せる澪。
源太「とっくに死んでる」
澪「最初から生きておったようには見えん。
銀細工のようだ」
源太「キレイだったから腐らないようにして
やった。可哀想だけど」
澪「可哀想?」
源太「だって・・・」
何か言いかける源太。
その時、二人の顔に蒼い光が差す。
思わず天を仰ぐ二人。
懐かしむように目を細める源太。
魂が抜けたように口を開けた澪。
●同・街路・午前
青空に吸い込まれるような神楽。
粛然と街路を進む白装束の行列。
その中程、小輿に乗せられた澪と燐。
家々の前で跪いて見送る住人たち。
口々に「巫女様」と呟いて。
その呟きは、やがて「神官様」に。
列の後方から一際荘厳な四方輿。
簾の蔭から垣間見える鮮やかな衣。
神官・桂香。
●同・蒼神ノ祠・午前
丘の中腹に口を開けた洞窟。
張り巡らされた注連縄を潜って。
鍾乳石の林を抜けた先。
天然の礼拝堂のごとき空間。
祭壇に向かって拝する神職たち。
その先頭に桂香、両脇に澪と燐。
まるで童子を従えた不動明王。
桂香の口から祝詞が朗々と流れる。
篝火、薫香、共鳴する祈り。
神妙に首を垂れる二人の巫女。
周囲の目を盗み、澪の視線が祭壇に。
祭壇に鎮座する蒼き神体。
ゆったりした空色の衣に金の礼冠。
穏やかに瞑目した蒼白い顔。
夢の中でまどろむ十代の少女のよう。
祝詞が一際高まり目を伏せる澪。
ふと横に向けた視線が燐とぶつかる。
無言で見つめ合う二人。
●同・神殿の広間・夜
膳を前にした桂香と二人の巫女。
桂香は一段高い上段に。
澪と燐は桂香と向き合う下段に。
それぞれの膳には蓋つきの碗。
桂香「どうしました、そんなに固くなって。
大祭も明朝の神饌の儀を残すのみ。今宵は
心置きなく聖餐にあずかりましょう」
威容に似合わぬ穏やかな声。
顔を見合わせる二人の巫女。
澪、先に碗の蓋を取る。
汁に浮かんだ蒼い羊羹状の薄片。
箸の先に絡め、思いきって口に。
その様子を見て燐も続く。
薄く笑いながら見守る桂香。
●同・神殿の回廊・朝
回廊から城市に突き出した長い橋。
まるで天空の花道のごとく。
その突端は雲海の手前で途切れて。
橋の袂に姿を現す桂香と巫女たち。
下方から沸き起こるどよめき。
桂香「卑しき天より我らを引き下ろし賜うた
蒼き神々に感謝を籠め、御神米と御神酒を
巫女の手より地へと献下奉る」
橋の先へ足を踏み出す澪と燐。
澪は枡、燐は銚子を捧げ持って。
歩を合わせる努力をしながら進む。
祭礼衣裳の裾に足元が覚束ない澪。
気を遣うように歩幅を調整する燐。
裾に落ちた澪の視線がさらに下へ。
橋脚の麓、平伏する無数の住民たち。
皆が頭を地に着ける中、仰ぎ見る者。
澪を見つめる源太の顔。
視線に気づいて前を向く澪。
化粧の上からでも分かる紅潮。
二人の足が突端でぴたりと止まる。
眠気を誘うような神楽笛の音色。
それぞれが持つ器を傾ける巫女たち。
枡からは銀紙の紙吹雪が。
銚子からは白く濁った液体が。
ゆっくりと雲海へ落ちてゆく。
陽光に煌めく銀紙と水飛沫。
●同・朝(五年後)
陽光に煌めく銀紙と水飛沫。
橋の上へと上昇するカメラ。
枡と銚子を傾ける二人の巫女。
澪と燐、共に十三、美しく成長して。
燐に視線を向ける澪。
その視線を受けて柔らかく微笑む燐。
澪も不器用に微笑がえし。
燐の唇から鈴のような歌声。
澪も続いて唱和する。
ややぎこちなくも溶け合う調べ。
●同・神殿の学舎・午前
文机に向かう澪と燐。
白い巻紙に筆を走らせる。
二人の前には二十代半ばの女性教師。
緋を刺し色にした巫女装束。
試験監督のように少女たちを監視。
教師「時間です。筆を置きなさい」
素直に筆を置く燐、粘る澪。
教師「澪」
澪、諦めて筆を置く。
教師「ご苦労様でした。下がって結構です」
玲瓏とした声、座礼する少女たち。
巻紙を文机に残して席を立つ。
澪の懐から転がり落ちる銀色の物体。
教師が気づく前に拾い上げる燐。
燐「澪様」
囁きと共に差し出された物体。
源太から貰ったコガネムシ。
慌てて燐の掌から奪い取る澪。
燐「それは・・・」
澪「何でもない」
先に退出する澪の背中を見送る燐。
やがて心を決めたように後を追う。
●同・神殿の回廊・午前
早足で歩む澪に慌てて寄り添う静。
静「試験はいかがでしたか」
澪「・・・まあまあだ」
静「では、全て?」
澪「あと一息だった。緋巫女様が大目に見て
下されば満点だったのに」
静「あら」
呆れ顔の静の後ろから追い縋る燐。
燐「お待ちください・・・」
静「燐様」
敬礼する静に、燐目配せ。
燐「少しだけ二人に」
静「かしこまりました」
脇に退く静、一人で澪を追う燐。
燐「澪様、待って・・・」
燐、無視して進む澪の袖を摘む。
余裕のない様子で振り返る澪。
澪「何の用だ。答え合わせなら一人でやれ」
燐「そうではなく、先ほど拾って差し上げた
物のことで・・・」
燐の肩を掴んで柱の蔭に引き込む澪。
澪「何が言いたい。よもや脅すつもりでは」
悲愴な澪に対して燐あっけらかん。
燐「あの物は、もしやコガネムシではござい
ませんか」
澪「・・・どうして知っておる」
燐「幼き頃に書物で読んだのです。この世の
どこかに、まるで鏡で覆われたような虫が
いると。その光沢ゆえに辺りの景色が映り
込み、飛ぶ鳥もその姿を捉えられぬと」
澪の手を両手で握る燐。
燐「どうか今一度、私にお見せ下さいませ。
他の者には決して申しませんから」
澪「お、おう・・・」
燐「まことですね。二言は無しですよ」
燐の熱気に押され気味の澪。
澪「あのような下らぬ物、見せてやるくらい
何でもないが・・・ここではまずい」
燐の手を振りほどく澪。
澪「後刻、我の部屋に参れ。前もって人払い
しておくが、くれぐれも見咎められるな」
燐「必ず参ります」
ぶっきらぼうに立ち去る澪。
まだ興奮冷めやらぬ燐。
●同・巫女の寝殿・午後
広間に張り渡された御簾。
その中で額を寄せ合う澪と燐。
燐の掌の上のコガネムシ。
壊れ物を捧げ持つようにして。
澪「もう満足しただろ。そろそろ返せ」
燐「いま少し、もう少しだけ・・・」
何度も角度を変えて観察する燐。
うっとりした顔が虫の翅に反射する。
燐「やはり、書物で読むのと実際に目にする
のとでは大違いです。涙が出そう・・・」
澪「大袈裟な奴だ・・・って、本当に泣いて
おるではないか」
燐の涙にギョッとする澪。
袖で涙を拭って微笑む燐。
燐「だって嬉しいんですもの。こことは違う
世界がまことに存在する証なのですから」
澪「難しい話はよう分からん・・・」
面倒な話になったという表情。
燐「澪様、これまでに鳥をご覧になったこと
はございますか」
澪「鳥? ホトトギスというのならその庭で
よう鳴いておるぞ」
燐「鳴き声だけでございましょう。私も物心
ついてこの方、鳥の姿を見たことはござい
ません。のみならず獣の類も」
澪「神域に穢れを持ち込まぬよう、遠ざけて
おるのではないか」
燐、首を横に振る。
澪「ならばどういうわけだ。お前には、何か
考えがあるのであろう?」
燐、わずかな躊躇いの後。
燐「私は、この城市に人以外の生き物は存在
しないのではないかと考えております」
澪「何たる戯言を・・・」
笑い飛ばそうとして思いとどまる澪。
燐の真剣な眼差しに気づいて。
澪「本気なんだな」
燐「はい」
澪「その考えはいつ頃から」
燐「八つを過ぎたばかりだったでしょうか」
澪「八つ・・・」
澪の視界で幼い頃の姿と重なる燐。
澪「・・・なるほどな。それゆえお前の事を
どこか遠く感じておったのかもしれん」
燐「え」
澪「独り言だ」
燐の掌からコガネムシを摘み取る澪。
澪「ならば、こいつはどこから来たのやら」
無意識に天井を見上げる燐。
気づいて気まずそうに赤面。
澪「やはり天か」
燐「存じ上げません。私には知らないことが
多すぎます」
澪「お前が無知だと申すなら我はどうなる。
赤子同然ではないか」
澪、いつの間にか屈託のない笑い。
澪「そうだ、良い考えがある。今宵・・・」
燐の耳元に口を寄せて。
●同・草原・深夜
木立を潜る寝巻姿の澪と燐。
慣れた様子で澪が燐の手を引く。
澪「根っこで躓くなよ」
燐「仔細ございません。澪様のお手を頼りに
しておりますから」
澪「着いたぞ」
開ける視界、眼前に広がる草原。
燐「ここは・・・」
澪「船着き場だ。もっとも船はまだ見たこと
がないが」
童心に返った瞳で辺りを見回す燐。
燐「城市にこんな場所があるなんて・・・」
澪「なかなか気の利いた隠れ場であろう?
祠を畏れて滅多に誰も近づかぬしな。静に
𠮟られて腐った折りなどよく来るのだ」
燐「どのようにして見つけたのですか」
澪「とある友に教えられた」
燐「もしや・・・コガネムシの?」
澪「妙に鋭いな、お前」
語り合いながら草原の中心へ。
澪「立ち話は無粋だ。腰を下ろそう」
燐「衣が汚れませんか」
澪「汚れたら汚れたでその時考えればよい」
大胆に草の上に座る澪、怖々従う燐。
燐「柔らかい・・・」
澪「だろう? この尻の下の草やあの木々も
全てまやかしだと思うか、どうだ?」
燐「それは・・・分かりません」
澪「我も分からん。でも草の上で寝転ぶのは
心地がよいぞ。やってみろ」
率先して寝転ぶ澪。
燐「・・・一緒に叱られてくださいませ」
寝転んだ燐の視界いっぱいに夜空。
燐「聖典にも誤りがあったのですね」
澪「ん」
燐「こんなに天を見上げているのに、私の眼
はいまだ健在です」
澪「それは吉報だ。もっとも、聖典通りなら
我はとっくの昔に盲いておらねばおかしい
がな」
燐「まあ、何度禁忌を犯されたのです?」
悪戯っぽく笑い合う二人。
あらためて夜空に目をやる澪。
澪「今宵は天まで雲に覆われておるな。もう
ひとつ見せたいものがあったのに残念だ」
燐「それは?」
澪「口では上手く説明できん。ただただ蒼く
美しいものだ。むしろあれこそ蒼神様かと
思えるほどに」
燐「美しいものほど毒を孕むと申します」
澪「毒を持った美しさではない。あれはただ
・・・どこか懐かしい美しさなのだ。源太
と共におる時に感じたような」
燐「源太?」
澪「コガネムシの友だ」
燐「殿方だったのですか」
澪「鳥の鳴き真似が上手いただの小僧だぞ。
まあ、我もあの頃はただの小娘だったが」
少し頬を染める澪。
少し頬を膨らす燐。
燐「私・・・殿方は少々苦手です。野卑で、
図々しくて」
澪「そうなのか。その割に神官様には懐いて
おるように見えるが」
燐「あの御方は別! お優しくて清らかで、
他の殿方とはお吸いになっている空気から
して違います!」
燐、いつになく強い口調。
澪にじっと見られて消沈。
燐「・・・言葉が過ぎました」
澪「お前でもそんなにムキになることがある
のだな」
燐「ムキになど・・・」
ニヤニヤする澪。
顔を逸らす燐。
澪「・・・いつかお前も源太に会ってほしい
ものだ。必ずや気に入ると思うぞ。あいつ
は天についてよう知っておる」
燐「そうですね・・・澪様のお眼鏡にかなう
殿方なら・・・」
草に寝転んだまま満ち足りた沈黙。
澪「・・・のう、燐」
澪、改まった口調で。
澪「蒼の巫女と緋の巫女、お前ならいずれを
望む?」
●同・神殿の広間・午前
上段の間に端座する桂香。
その傍らに控える緋巫女。
赤子を抱いた二人の女官が両脇に。
下段の間、畏まる澪と燐。
桂香、赤子たちに慈しみの眼差し。
桂香「この佳き日、当代の巫女の十と三年に
渡る務めを解き、ここなる嬰児らに次代の
巫女の務めを託します。澪、燐、長らくの
お役目大儀でした」
澪と燐、深く座礼。
その上を軽く滑る桂香の視線。
桂香「お前たちは今より、新たなるお役目に
就くことになります。一人は生涯を蒼神に
捧げる蒼の巫女、もう一人は私の傍で神事
を支える緋の巫女として」
緋巫女に合図する桂香。
巻物を乗せた三方を差し出す緋巫女。
唾を飲み込む澪、燐に視線。
燐の横顔も緊張でこわばっている。
●同・草原・深夜(回想)
草の上に寝転んでいる澪と燐。
燐「私は・・・どちらでも・・・」
澪「我もだ。巫女と生まれたからには蒼巫女
を目指すが本分と教えられてきたが」
手元の草を毟って天にかざす澪。
澪「今一つ実感が湧かぬのだ。民に崇められ
神に生涯仕えるということに」
手から離れた草がふわふわと舞う。
澪「あ、別に負け惜しみではないぞ。何事に
おいても我より秀でたお前が蒼巫女に選ば
れるのは当然だからな」
燐「まさか。畏れ多い・・・」
澪「畏れ多いものか。知恵も所作も信心も、
一つとしてお前に及ぶところはない。初め
から自覚しておった」
燐、手を伸ばして澪の手を握る。
燐「澪様、私には貴女のような勇気も優しさ
もございません。この城市を久遠の繁栄に
導くことなどとても・・・」
澪「・・・さてはお前」
燐の手をギュッと握り返す澪。
澪「神官様にずっとお仕えしたいのだな」
燐「へっ」
澪「なるほどなるほど、そういう腹の底か。
ならば仕方あるまい。緋巫女の座は譲って
やろう」
燐「ちょっ、澪様・・・」
澪「我も神官様をお慕いしておらぬわけでは
ない。幼き頃は神も同然に敬っておった。
だが近頃は少々苦手でな。あの御方の傍に
おるとなぜか腹が痛うなってくる。余りに
𠮟られすぎた反動かな。これでは緋巫女の
務めなど果たせん。お前に任すとしよう」
燐「からかわないで・・・」
けらけら笑う澪、真っ赤になる燐。
逃れようとする燐の手、逃さない澪。
草上の無邪気な戯れ。
●同・神殿の回廊・午前
広間から静かに退出する澪。
これまでより大人びた表情。
柱の蔭から聞こえる微かな音。
そっと覗き込む澪。
うずくまって背中を震わせる静。
澪「どうした、帰るぞ」
静「申し訳ございません、すぐに・・・」
涙声を隠そうとする静。
澪の表情、わざと朗らかに。
澪「何だ何だ、泣いておるのか。出来の悪い
我が蒼巫女様になれたからって、そこまで
感に入ることもなかろう。実を言うとな、
千に一つくらいの自信はあったのだ」
静「澪様・・・」
立ち上がる静、顔は伏せたまま。
静「・・・おめでとうございます」
澪「辛気くさいぞ。もっと喜べ、褒めろ」
慰めるように静の肩を抱く澪。
広間から退出する燐と目が合って。
澪、困ったように微笑む。
燐、目礼して女官と共に去る。
●同・巫女の寝殿・午後
広間に張り渡された御簾。
その中で衣を諸肌脱ぎにした澪。
澪の白い背中を這う男の手。
骨や臓器を一つ一つ確かめるように。
侍医・橘。
橘「結構です。お衣をお召しください」
衣を整える澪、道具を片づける橘。
薬箱の中に見える聴診器や注射器。
澪「どうだ先生、我の体は」
橘「至ってご壮健です。悪い所は毛筋ほども
見当たりません。これでしたら明くる月の
遷宮もつつがなくお迎えになれましょう」
澪「そうか・・・」
安心した表情の澪。
橘「あとは儀礼次第に則り、心身のご清浄に
お励みなさいませ」
澪「心得た。ま、食事が輪をかけて味気なく
なったのには困ったが」
お茶目に笑いかけるも橘は真顔。
橘「穢れを残せば遷宮は成りませんので」
澪「・・・ただの軽口だ。真に受けるな」
橘「これはご無礼を」
澪「よい。大儀だった」
橘「失礼いたします、蒼巫女様」
御簾を潜って出る橘。
疲れたように溜息をつく澪。
御簾の外に並んだ二人の影。
橘(声)「私はこのまま神殿に参る。お前は
道具をまとめて一人で戻れ」
若い男(声)「はい、父上」
若々しい男の声に澪の表情が揺れる。
御簾の外で立ち働く一人の影。
澪「・・・源太か?」
御簾の影が止まる。
澪「源太だろ? 我は澪だ。覚えておるか」
若い男(声)「・・・違います」
衝動的に御簾を引き上げる澪。
至近距離で向かい合った若い男。
両手に医者の荷物を抱えて。
五年前の面影を残した源太、十五。
澪「お前、男らしくなったな・・・」
胸が詰まった澪、御簾から歩み出て。
慌てて去ろうとする源太。
澪「待て、行くな。積もる話がある・・・」
源太「・・・弁えてください」
背を向けた源太の言葉に澪、硬直。
源太「あなた様は蒼巫女様。私の如き上々の
者と言葉を交わされてはなりません」
そのまま足早に去る源太。
追えずに手だけを伸ばす澪。
源太、廊下との境で静と鉢合わせ。
深く一礼し、姿を消す源太。
膝から崩れそうな澪に歩み寄る静。
静「いかがなさいましたか、蒼巫女様」
澪「・・・先生は嘘つきだな」
静「えっ」
澪「ここが・・・痛いぞ・・・」
胸の辺りをかきむしる澪。
●同・草原・深夜(澪の夢)
漆黒の夜空に降るような星々。
夢見るように見上げる八つの頃の澪。
その鼻先に飛んでくるコガネムシ。
遊ぶように飛び回って澪の指先に。
少年(声)「ちゃんと生きてるだろ?」
振り返ると、同年代の少年と少女。
幼い源太と燐、仲良さそうに並んで。
澪「お前たち、知り合いだったのか」
二人の元に駆け寄ろうとする澪。
いくら走っても距離は縮まらない。
澪の笑顔、次第にこわばって。
膨張する草原、遠ざかる二人。
指先に目をやる澪、死んで朽ちた虫。
空を覆う蒼い光。
見上げると、巨大な神体の顔。
●同・巫女の寝殿・深夜
寝台の上で目を開く澪。
涙が目尻から耳に流れている。
澪「未練たらたらだな・・・」
その時、庭の方から鋭い鳴き声。
身を起こそうとして思い止まる澪。
澪「まだ夢の続きか」
もう一度、駆り立てるような鳴き声。
夜具を落として寝台から下りる澪。
その手首を掴む逞しい手。
声を出しかけた澪の口を塞ぐ別の手。
闇に慣れてきた目に映る黒装束の影。
澪「源太・・・」
源太「お静かに」
澪「ここで何をしておる。その恰好は何だ」
源太「あなた様をお救いに参りました。共に
お越しください」
澪「さっぱり分からんぞ。何から救うと」
源太「委細は外へ出てから」
澪「待ってくれ、衣を・・・」
源太「いいからそのままで。駆けやすい履物
だけお忘れなきよう」
押し殺したせわしない会話。
●同・街路・深夜
物言わぬ石畳を駆ける二人の足。
遅れぎみになる澪を励ます源太。
源太「蒼巫女様、もう少し速く」
澪「む、無茶を抜かすな・・・ここ数日腹の
膨れるものを食っておらんのだ・・・」
源太「失礼いたします」
澪の手を掴んで加速する源太。
澪「船着き場へ行くのだろう? 夜明けまで
まだ間がある。急ぐ必要など・・・」
源太「今なら船があります」
澪「え」
源太「見張りは眠らせました。船を奪うなら
今しか・・・」
澪の足が急に止まる。
手が離れた勢いでよろめく源太。
そこは蒼神ノ祠の丘の下。
源太「どうなさいました」
澪「何なんだお前は・・・」
両手を握りしめて俯く澪。
源太「蒼巫女様・・・?」
澪「その呼び方はやめろ。名は教えただろ」
源太「・・・みお、様」
澪、源太を睨みつける。
澪「ずっと会いたかったんだぞ・・・なのに
我の気持ちも考えず・・・己で勝手に壁を
作って遠ざけて・・」
源太「・・・・・・」
澪「コガネムシ、ずっと大事にしてた。お前
に会わせたい友もできた。やっと会えたと
思ったら冷たく突き放されて・・・挙句に
これは何の真似だ」
源太「・・・・・・」
澪「我をここから連れ出すつもりか。その先
のことは考えておるのか」
源太「・・・・・・」
澪「お前、父の跡を継ぐのだろ。ならばこれ
からも堂々と会えるではないか。船を奪う
などと物騒なことを企てずとも・・・」
源太「・・・澪は何も知らないんだな」
澪「何だと」
源太「昔からちっとも変わってない。お気楽
なもんだ」
澪「おまっ・・・」
源太「これからも会えるだって? どこまで
お花畑なんだよ! お前はもうすぐあそこ
で死ぬんだぞ!」
祠を指さす源太。
雷に打たれたような澪。
●同・木立・深夜
草原へと繋がる長い木立。
澪の手を引いて駆ける源太。
肝心の澪は魂の抜殻。
脳内で反復される源太の言葉。
源太(声)「あの祠の中でお前は殺される。
殺されて新たな神体になる。何も知らない
連中がお前を拝むだろう。十三年経ったら
また神体の移し替えだ。それが遷宮だよ。
用済みの神体はどうなると思う?」
反対の手で口を押さえる澪。
源太(声)「聖餐。お前も食っただろ」
押さえた口から洩れる呻き。
澪の様子に気づいて振り返る源太。
源太「あと少しだ、がんばれ」
澪「・・・・・・」
源太「嫌なことを聞かせちまったな。今さら
忘れろなんて言えないけど・・・」
澪「・・・・・・」
源太「大丈夫、船に乗ったらこんな胸糞悪い
場所なんて一瞬で過去になるよ。暗い海を
渡るのはいい気分だぜ。ま、船に関しては
素人だから、乗り心地は期待するな」
澪「・・・・・・」
源太「俺の故郷を早く見せたいな。もう五年
も帰ってないけどさ、コガネムシはきっと
まだいる。ルリアゲハだってゲンジボタル
だって。澪の驚く顔が目に浮かぶよ」
澪「・・・・・・」
二人の行く手にぼんやり蒼い光。
源太「今夜は故郷がよく見えるんだ。ほら、
覚えてるだろ。あの夜一緒に見上げたあの
蒼い・・・」
澪の瞳に少しだけ光が戻る。
澪「我も行けるのか、あそこに・・・」
源太「行ける、必ず連れてく。そこで一緒に
生きよう。楽な暮らしは望めない。きっと
苦労する。でも、ここよりずっと自由だ」
唾を飲み込み赤面する源太。
源太「それと・・・澪は俺が守るから」
草原の入口が見えてくる。
蒼いヴェールに包まれたような光景。
その中央に鈍く光る金属製の構造物。
澪「あれが、船・・・」
●同・草原・深夜
木立から二人が抜け出した瞬間。
隠れていた衛士たちが襲いかかる。
呆気なく取り押さえられる源太。
澪「源太!」
橘、組み伏せられた源太の傍に。
橘「愚かな真似をしでかしてくれたものだ。
よりにもよって神聖なる蒼の巫女様を穢し
奉るとは」
源太「ここでは何もかもが狂っております。
父上だってとうにお気づきでしょう。あの
神官は・・・」
覗き込んだ父親に向けて憤る声。
源太の首筋に刺さる注射針。
たちまち意識を失う源太。
澪「先生、源太を許してやってくれ。我の身
を案じてした事だ。神を冒瀆する魂胆など
そいつは持っておらぬ・・・」
引き離されながら必死の訴え。
注射器を持った橘が向き直る。
橘「お心遣い痛み入ります。ですが、ご心配
には及びません。愚息には今いちど修行を
積ませます。神殿の侍医に相応しい信仰心
を取り戻せるように」
澪「信仰心、か・・・」
諦めたように呟く澪。
劇的な一幕を照らし続ける天の蒼光。
しかし誰一人見上げようとはしない。
澪を除いては。
夜空を見上げ、寂しげに微笑む澪。
橘に視線を戻して。
澪「源太に手荒な真似はせんと約束しろ」
橘「それはいかなる・・・」
澪「約束するなら、我は遷宮の儀を甘んじて
受けよう」
蒼白く染まった澪の威厳。
切り結ばれる二者の視線。
石化したような橘の表情が解ける。
橘「承知仕りました。さあ、戻りましょう」
衛士に運び去られる源太。
澪も衛士に伴われて木立の道へ。
名残惜しそうに振り返る澪。
幻想的な蒼の中に静かに佇む「船」。
澪「・・・一度乗ってみたかったな」
●同・巫女の寝殿・朝
虚ろに響くホトトギスの声。
広間で髪を梳かされる澪。
生成りの素朴な麻の衣。
櫛を入れる静の手は震えている。
澪「どうした、寒いのか」
静「いえ・・・申し訳ございません・・・」
震えを必死に抑える静。
静「今朝のおぐしもお美しゅうございます。
ただ・・・」
澪の頬にそっと添えられる静の手。
静「お痩せに・・・なりましたね」
澪「身中の毒を全て抜いたからだろう。今の
我は極めて健やかで清らからしいぞ」
努めて明るい声。
静「・・・・・・」
澪「お前には大層世話をかけた。これまでの
わがまま放題、許してくれるか」
静「澪様・・・」
澪の背に顔を埋めて泣く静。
澪「こら、衣が濡れる。遷宮仕立ての一張羅
だぞ」
静「嫌、嫌です私・・・」
振り向いて静の手を取る澪。
澪「もう泣くな。まったく、我の友は泣き虫
ばかりで困る」
静の掌に何かを握らせて。
澪「燐に渡してくれ。あいつを頼んだぞ」
●同・街路・午前
大祭と比べるとささやかな行列。
家々の戸は閉ざされ民は見ないふり。
飾りのない輿に乗せられた澪。
祠へと続く道をしっかりと見据えて。
●同・蒼神ノ祠・午前
鍾乳洞に響く神楽。
千年変わらぬごとく鎮座する神体。
神体と向き合うように端座する澪。
蒼白く儚げな顔から目を逸らさず。
背後に立つ桂香。
澪の華奢な背中を無感動に見つめて。
神楽が止み、桂香の祝詞が始まる。
神職の一群から立ち上がる燐。
緋の刺し色が入った巫女装束。
鉢と盃を携えた童たちを従えて。
澪の傍に跪く燐。
桂香「蒼の巫女に、御神米と御神酒を」
燐、澪の頭上に鉢を傾ける。
キラキラと降り注ぐ銀紙の雨。
髪に銀の欠片を纏わせた澪、不動。
続いて、白濁液で満たされた盃。
澪の膝元にそっと置かれる。
桂香「今より七日七夜、磐戸を閉ざします。
蒼の巫女は魂鎮めの行を執り行い、七夜が
明けた朝に御神酒を召しなさい。さすれば
その魂は生きながら神の御許へと招かれ、
その身は不滅の器となりましょう」
盃の水面に落とされた澪の視線。
禍々しい白濁から傍らの燐へ。
伏せられた燐の眼差しは虚ろ。
再び始まる神楽。
澪「・・・燐」
聞こえるか聞こえないかの囁き。
澪「達者でな」
一瞬、燐の瞳に宿る感情。
●同・承前
祠の入口を塞ぐ巨大な岩。
洞内を照らすのは僅かな燈明のみ。
澪、同じ姿勢で神体と向き合う。
澪「さて、七日七晩断食か。参ったな」
虚しく響く軽口。
目の前に残された盃と神楽鈴。
澪「ぐだぐだ申しておったが、つまるところ
この酒が我への引導というわけだ。ならば
馬鹿正直に行を執り行う必要もあるまい。
今すぐにでも飲み干して・・・」
盃に伸びた手が躊躇いで止まる。
もう一度神体の顔を見つめる澪。
澪「先代様よ。お前は何日目に音を上げた?
それとも、信じ切って最後まで務め上げた
のか?」
少女の顔をした神は何も答えない。
澪、髪についた銀紙を無意識に払う。
一片だけが絡みついて離れない。
思わず乱暴に毟り取る澪。
それは細かく折り畳まれた紙片。
苦労して開いた内面に細かい文字。
澪「コガネムシノキミ・・・シンデンナイノ
イシロウニ・・・ヤクソクマモラレズ」
読むうちに揺れ動く澪の表情。
澪「ミオサマヨブコエ・・・ヒニヒニヨワク
・・・ナノカモツカモタズカ・・・」
隙間風に燈明が揺れる。
澪「・・・イキテ」
澪の脳内に響く燐の声。
燐(声)「生きて・・・何をしてでも!」
●同・承前
風に揺れる燈明。
燭台を持って風の源を探る澪。
やがて鍾乳洞奥の一隅に行き当たる。
壁にできた亀裂の傍で揺れる炎。
澪、巫女鈴の柄を亀裂へと打ち込む。
何度も、何度も。
*****
今にも消えそうな燈明。
投げ出された巫女鈴。
横たわり、苦しそうに息を吐く澪。
その両手にこびりついた血。
見上げた亀裂は心もち大きくなって。
澪の視線、祭壇へ。
澄ましたような神体の横顔。
血走った澪の眼とのカットバック。
鍾乳石から滴った水が澪の頬に。
●同・祠の外・朝(七日目)
木の間越しの陽光が磐戸を照らす。
桂香の合図で動き出す人足。
力任せにどかされる巨岩。
洞内に光が満ちてゆく。
●同・祠の中・朝
桂香を先頭に踏み入る神職たち。
尽きた燈明に油と火が足される。
変わらずに鎮座する神体。
飲まれずに残った御神酒。
澪の姿はどこにもない。
神職A「これは一体・・・」
神職B「よもや神の御業では・・・」
うろたえる神職をよそに冷静な桂香。
洞内を歩き回り足元の岩屑に気づく。
目の前に穿たれた大きな亀裂。
だが、人一人通れるサイズではない。
神職C「神官様、いかがいたしましょう」
桂香、答えずに神体の前へ。
空色の衣、金の冠、蒼白い少女の顔。
初めて見たように見つめ続ける桂香。
突然、神体の瞼が開く。
桂香の顔に走る衝撃と動揺。
怪鳥のごとく立ち上がる神体。
祭壇から飛び降りて桂香を押し倒す。
殺到する神職たち。
神体の目に射すくめられて金縛り。
その場に平伏し祈り始める者。
腰を抜かして失禁する者。
他を見捨てて一目散に逃げる者。
誰一人それ以上神体に近づけない。
茫然とした桂香を見下ろす神体。
その瞳に宿る生命の炎。
神体「生きる・・・我は生きるぞ!」
桂香を放って駆け出す神体。
疾風のように出口へ向かって。
翻った空色の衣がまるで羽衣。
慌てて道を開ける神職たち。
追うこともできずただ見送るのみ。
明るい外界へ姿を消す神体。
助け起こされる桂香。
一人の神職が亀裂に手を突っ込む。
引っ張り出される汚れた布。
澪が着ていた生成りの衣である。
祭壇の奥に積み重ねられた蒼い物体。
確かめようと近づいた神職。
理解が追いついた瞬間、嘔吐する。
バラバラにされた蒼白い四肢。
●同・街路・朝
禁忌を恐れて閉ざされた家々。
無人の石畳を駆け抜ける神体。
その足には澪の草履が。
転びそうになり、草履を脱ぎ捨てる。
白足袋を汚しながら尚も走り続ける。
頬を滴り落ちる汗。
手の甲で拭うと、蒼い泥が落ちる。
下から現れた肌は桜色に火照って。
神体=澪の目はまっすぐ前方に。
ぐんぐん近づく神殿の門。
●同・神殿の門~廊下~空き部屋・朝
門を激しく叩く澪の蒼い手。
門衛(声)「どうした。祠で何かあったか」
開いた門の隙間から覗いた顔が凍る。
声ならぬ声を漏らして後退る門衛。
一気に門を突破する澪。
玉砂利を蹴散らしてひたすら先へ。
*****
複雑に張り巡らされた廊下。
悲鳴を上げて逃げ惑う童子や下女。
駆けつけた衛士たちも忽ち尻ごむ。
息を切らしながら走り続ける澪。
何度も角を曲がり階段を上って。
*****
だだっ広い空き部屋に迷い込む澪。
行き惑ううちに雪崩れ込む追っ手。
遠巻きにしながら包囲を狭める。
澪「寄るな! 我は神なるぞ!」
周囲を見渡し、威嚇する。
澪「卑しき者どもよ、一触れでもしてみよ。
汝らの手足、忽ち腐り落ちようぞ!」
向けられた槍の穂先が怖気づく。
衛士たちの背後から現れる桂香。
桂香「何を怯えている。そこにいるのは神に
あらず。神を騙る不届きな小娘です」
衛士から槍を奪って進み出る。
桂香「神聖なる遷宮を台無しにしたばかりか
御神体まで穢しましたね。己の罪を悔いて
この場で罰を受けなさい」
身を翻す澪。
蜘蛛の子を散らす衛士たち。
澪、反対側の廊下へ飛び出す。
桂香「聞こえないのか、そいつは人間だ!
とっとと捕まえろ!」
俗物丸出しで叫ぶ桂香。
一番槍で澪を追う。
桂香「飲まず食わずだ、すぐへばる・・・」
●同・神殿の奥・朝
薄暗い廊下をさまよう澪。
どこか遠くで追っ手の足音。
澪、何かに導かれるように奥へ。
やがて突き当たった土壁。
落胆と疲労に膝をつく澪。
澪「ここまでか・・・」
腹立ち紛れに拳を土壁に叩きつける。
奥へと開く隠し扉、倒れ込む澪。
岩山を彫り抜いたような隧道。
両側に延々と続く鉄格子。
恐る恐る闇の中へ踏み込む澪。
澪「源太・・・源太・・・どこだ・・・」
左右の石牢を覗き込むも無人。
澪、さらに足を進める。
澪「源太・・・おらぬのか・・・」
澪の足が止まる。
一つの牢の奥にぼんやりと人影。
石壁にもたれ足を投げ出して座る。
目を凝らす澪、顔立ちがぼんやりと。
伸び放題の髪、やつれた頬、源太だ。
澪「源太、来てやったぞ。我だ、澪だ」
鉄格子を掴んで夢中で呼びかける。
澪「お前の言う通りだった。この地は狂って
おる。もう迷いはないぞ。行こう、お前の
故郷へ。あの蒼い地へ・・・」
目を閉じて微笑を浮かべている源太。
何も答えない。
澪「具合が悪いのか。それとも傷を負わされ
たか。歩けないなら我が負ぶってやるぞ。
早うせんと船が行ってしまうな。おっと、
その前にこの格子をどうにか・・・」
浮き立ったような澪の声。
澪「いかんいかん、我も浮かれておったわ。
心を静め、順序立てて考えんとな・・・」
ゆっくりと横にくずおれる源太。
鉄格子を握った澪の手が白く。
澪「・・・なぜだ、なぜ先に行く・・・約束
したではないか・・・共に暮らそうと」
澪の嗚咽が暗闇に溶けてゆく。
澪「我は生きた。必死に生きたのだぞ。あの
ような所業をしてまで・・・」
●同・蒼神ノ祠(回想)
垂れ下がった鍾乳石につけられた唇。
滴る僅かな水で懸命に喉を潤す澪。
*****
剥がされ放り出された神体の衣。
悲壮な面持ちで手元を見つめる澪。
両手に捧げ持った神体の蒼白い生腕。
長い躊躇いの後、澪の口が開く。
生腕の表面に近づいてゆく澪の歯。
*****
生成りの衣を脱ぎ捨てる澪。
代わりに空色の衣を纏って。
洞窟の岩肌を撫でる澪の手。
蒼い泥が指先に付く。
それを頬に塗りつけてゆく澪。
●同・神殿の奥・朝
不意の足音に我に返った澪。
ごく近くで聞こえたように感じて。
隧道の入口に目をやるが人影はない。
牢の中の源太と交互に見やって。
暫しの逡巡の後。
鉄格子から指を引き剥がす澪。
澪「・・・そうだな、お前が正しい」
決意をこめて立ち上がる。
澪「決めたからには最後まで・・・」
●同・神殿の回廊・朝
猛牛のごとく回廊を駆ける桂香。
後から必死に追い縋る衛士たち。
そのままの勢いで角を曲がる。
回廊の先で振り返る澪。
急いで逃げようとするが。
反対の角からも現れる一団。
一瞬の睨み合い。
澪の眼前、滑走路のように伸びる橋。
迷いなく足を踏み出す澪。
桂香「行かせるな!」
橋の袂へと殺到する桂香たち。
澪は既に橋の中程へ。
燐「澪様!」
背後からの声に足を止める澪。
袂の一群、その中には橘の姿も。
桂香の背後から歩み出る燐。
朝の陽光に巫女服の緋が鮮烈。
澪「燐・・・」
燐、橋の上を歩き出す。
咎めようとした桂香を無視して。
近づいてくる燐の顔に澪愕然。
そこに人間らしい感情は見られない。
人形のような瞳、微動だにしない唇。
澪「お前・・・何をされた・・・?」
胸元から懐剣を取り出す燐。
鞘を払い、光る刀身を剥き出しに。
徐々に加速する足の運び。
桂香「そういうことですか、良いでしょう。
やりなさい、緋の巫女として始末を!」
後退る澪、見る間に詰まる距離。
澪の目の前に燐の蒼白な顔。
紅い唇が微かに動く。
燐「信じて」
ぶつかり合う二人の体。
澪「なぜこんな・・・」
ゆっくり崩れ落ちる澪。
*****
橋の惨劇を固唾を飲んで見守る面々。
燐の向こうで澪が崩れるのが見える。
引き抜いた懐剣は血に濡れている。
桂香「よくやりました、緋の巫女よ」
安心したように歩み出す桂香。
雲海を背に戻ってくる燐を迎える。
俯いた燐の表情は見えない。
抱きしめようと双手を広げる桂香。
そのとき見えた燐の左手。
握り締めた指の間から滴り続ける血。
その意味を考える間もなく。
桂香の懐に入る燐。
右手に握った懐剣が桂香の胸を貫く。
桂香「あ・・・」
抱きしめられたまま振り向く燐。
燐「走って、澪様!」
うずくまっていた澪が飛び起きる。
そのまま橋の先へ向かって疾走。
橘「何を呆けている、止めろ!」
橘の叱責で色めき立つ衛士たち。
澪を追って橋へと駆け出す。
桂香の異変に気づく者はいない。
桂香「・・・燐、これはどういうことかな」
血に濡れた唇から絞り出すように。
哀しげに微笑む燐。
燐「要石を壊しました。共に参りましょう」
突然、神殿の一郭が崩壊する。
降り注ぐ瓦礫、沸き起こる混乱。
燐の胸元から飛び立つコガネムシ。
一足先に、天へ。
橋を駆ける衛士たちにも異変が。
着地した足が異常に跳ね上がって。
泳ぐように空中でぶつかり合う。
混沌を背に走り続ける澪。
その足もバッタのように高く跳ねる。
橋の突端への、最後の助走。
後ろ髪を引かれる澪。
半壊した神殿の手前に小さく燐の姿。
澪「迎えに来るぞ、燐!」
突端を踏み切って、遥かなる雲海へ。
●空中・朝
雲海に向かって果てしない落下。
澪、両手を広げて身を委ねる。
風を受けて羽衣のように膨らむ衣。
落下速度は驚くほど緩やか。
少しずつ眼前に迫る雲海。
耳の中で暴れ回るような風の音。
微かに混じるノスリの鳴き声。
鳥影が横切ったように一瞬翳る陽光。
風圧に揉まれながらも穏やかな澪。
母に抱かれて眠るように目を閉じる。
雲に突入した瞬間、ホワイトアウト。
●〈雨の海〉・朝
荒野を走る一台のルナクルーザー。
運転席には赤毛の中年男性。
ネルシャツにオーバーオール姿。
ラジオの曲にご機嫌な鼻歌を被せて。
『スウィート・ヒッチハイカ―』。
突然鳴り響く警告音。
車体上部に衝撃を感知して緊急停車。
運転手、億劫そうに車外へ。
●同・承前
ゆっくりと澪の目が開く。
荒野に敷かれたマットの上。
傍らに停車したルナクルーザー。
澪、理解が追いつかず朦朧。
上から運転手の顔が覗き込む。
ギョっとして飛び起きる澪。
派手な身振りで話しかける運転手。
言葉は一言も分からない。
胸ポケットから何か取り出す運転手。
イヤフォンのような器具を澪に。
警戒して縮こまる澪。
運転手、安心させるような笑顔。
イヤフォンを澪の片耳に入れてやる。
途端に言葉が聞き取れるように。
運転手「分かるかい、嬢ちゃん」
澪「これはどうしたことだ・・・」
運転手「翻訳機さ。便利なもんだろ」
運転手の片耳にもイヤフォン。
澪「我は一体・・・」
運転手「車の屋根に落っこちて来たんだよ。
空から女の子が降ってくるとか、コミック
の中だけかと思ってたぜ」
澪「・・・・・・」
運転手「一体どっから落っこちたんだ?」
辺りを見回す澪。
やや後方に雲を戴いた山が見える。
澪、自信なさげに山を指さす。
運転手「あのてっぺん? おいおいマジか」
何かを思い出した顔。
運転手「そういやカルトの集団が・・・」
澪、運転手の白い顔をまじまじと。
澪「もしや・・・神か?」
運転手「ハッハッハ、こりゃケッサクだ」
大らかに笑い飛ばす。
運転手「命の恩人って意味ならそうかもな。
けどマジで感謝すべき相手は俺じゃない。
開発公社のお偉いさんってとこかな」
澪「何を言っておるかさっぱり分からん」
運転手「開発が順調に進んでりゃ嬢ちゃんは
今頃ペッチャンコだったぞ。大気は全地域
をカバーしてるが、重力はいまだに都市部
だけ。この辺は未だに六分の一さ」
その場で高く飛び跳ねる運転手。
運転手「あんたが命拾いしたのは、低重力と
ジャンプスーツのおかげだな」
澪の纏った空色の羽衣を指して。
●ルナクルーザー・車内・午前
鼻歌まじりでハンドルを握る運転手。
助手席にちょこんと座った澪。
意外と快適なサスペンション。
運転手「とりあえずエラトステネス市までは
乗せてってやるよ。ヒッチハイクにしちゃ
少々型破りだったけどな」
澪「・・・・・・」
運転手「で、とどのつまりはどこへ行きたい
わけ?」
澪「・・・蒼い星」
運転手「は?」
澪「知らんのか。天に見える蒼い星だ」
運転手「ああ、なるほど」
澪「船はどこから出る?」
運転手「エラトステネスだと、定期便は出て
ないな。クラビウスまで行かないと」
澪「どうすれば行ける?」
運転手「バスかシャトルに乗ればいい。それ
なりにカネはかかるが」
澪「カネ・・・?」
運転手「まさか知らんのか。こりゃ相当浮世
離れしてらっしゃる」
自分の額をペチンと叩く運転手。
ムッとする澪。
澪「悪いか。知らんでも生きてこれたのだ」
運転手「カネってのは要するに値打ちのある
モンさ。キラキラ光ってたり重かったり」
澪、頭の礼冠を外す。
澪「これもそうか」
運転手、横目でチラリ。
運転手「骨董品だな。街で鑑定してもらえば
あるいは」
澪「・・・・・・」
運転手「ま、手っ取り早く稼ぐって手もある
けどな。嬢ちゃん、何ができる?」
澪「何がって・・・祈祷とか」
運転手「まじないか。今さら流行らないな。
歌はどうだ。こう見えても、俺は業界じゃ
ちょっとは知られたプロモーターだぜ」
澪「歌? 神楽歌か? それなら歌えるぞ。
舞だって・・・」
運転手「歌にダンスか、こりゃいい」
運転手、ラジオをチューニング。
運転手「ちょっと歌ってみろ。聴いてやる」
神楽歌を歌いかける澪。
運転手「違う違う。この歌を真似するんだ」
ラジオから『ダイアナ』。
澪、戸惑いながら不器用に合わせる。
運転手、苦笑い。
運転手「ひどいリズム感だが声は悪くない。
俺が鍛えりゃ一端のアイドルにしてやれる
と思うが、どうだ」
歌いながらバックモニターを見る澪。
ぐんぐん遠ざかる雲の城市。
青空には蒼い星が浮かんでいる。
澪(声)「燐、待っててくれ。共に船で飛び
立つ日のために、我は研鑽する・・・」
運転手「そうそう、あんたにぴったりの芸名
を思いついた」
不思議そうに運転手を見る澪。
運転手「カグヤ、ってんだ」
了
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