時間と言葉

時間と言葉

March 21, 2008
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カテゴリ: 徒然なるままに
 こんな事件があったのをご存じだろうか?


強盗殺人?東京都・練馬



 殺された古谷さんは僕の中学校時代の恩師のお孫さんである。

 今日、実家のお寺でお葬式があった。

 80歳を超える先生は未だに頑健で、お葬式でも気丈に振る舞っておられたけれど、最後の親族代表の挨拶(息子さん・被害者の父)の嗚咽交じりの言葉を聞いた途端、あのいつも飄々としている先生が崩れた。

 先生はお坊さんで、密教系の僧侶だというのに剃髪しておらず、僕らの中学校では社会科を教えていた。

 日教組主導のスト華やかりし頃、先生たちのストで授業が自習になったとき、職員室まで「公務員にストは法律違反だ!」と抗議に出かけたヘンな中学生だった僕を諭したのも先生だった。

 諭されたと言っても、指導室に連れて行かれ、お茶を飲みながら、

 「春なぁ、あいつらも生活があるねん、許したりぃや」




 僕が「嘘と坊主のアタマは大嫌いなんだ!」とちょっと皮肉って言うと、

 「おお、そうか!ワシも嫌いじゃ!」

 と奇麗に七三に分けてあった頭を叩いて笑っていた・・・


 人生経験が40年ほど違うのだから勝てるハズもない(笑)




 そんな先生が肩を落として小さく見えた今日。


 お孫さんは今年25歳になるはずだったという。

 東京に出て引っ越したばかり。

 新聞やTVでは強盗殺人と言われていたけれど、引っ越したばかりなので前に住んでいたいた人と間違われて殺されたのではないか?という風説もある。
 未だ、犯人は捕まっておらず、それどころか犯人もわかっていない。

 このような不運があっていいのだろうか。


 もし引っ越していなかったら?




 家族の後悔とやり場のない怒りは僕の想像を超えるだろう。


 いつもは法話を説教している被害者のお父さん(住職)も、このときばかりは一人の父親に戻って「犯人が憎いです、怒りでいっぱいです」と言っていた。

 さすがに先生は愚痴や怒りの言葉は発しなかったけれど、心中はいかばかりかと思う。


 帰る間際、先生は僕に「落ち着いたらまた訪ねてきてくれよ」と言った。


 僕はただ頭を下げて「はい」と答えた。





 曇っていた空は青く澄み、春の日差しは心地よく

 ただ少し風が厳しくて

 お寺の門をくぐりぬけて石段を降りると

 砂嵐が舞っていた


 いつかは僕も砂に戻るんだな


 と少しだけ考えた






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Last updated  March 22, 2008 12:09:17 AM
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