最果ての世界

最果ての世界

決断の時


 一人は、がっしりとした男性。もう一人は、まだ成長過程の少女。まるで
親子のように見える彼らは、互いに剣を手に真剣な表情をしている。
 しかし、その剣が交わることはなかった。男性は、その剣先を大地へと向
ける。そして、小さく息を吐いてから少女へと告げる。
「イデア、いつも言っているだろう?力まか…」
「力任せに振るうのではない、その剣は。」
 男性の言葉を遮るように、イデアと呼ばれた少女が答える。
「アラン、ちゃんと解ってる。解っては、いるの…。」
 イデアは、力なく剣を下ろし、空を見上げながらそう続けた。その表情は、
アランと呼ばれた男性には見えることがなかった。
「そう、簡単に忘れられることではない、か…。しかし、その剣では自らを
も傷付ける諸刃の剣だ。」
 アランは、表情の見えないイデアを心配そうに見つめた。
「忘れたい…、そう思ったことなんてない。忘れたくない…、そう思ったこ
となんてない。
 私は、どうすれば良いのか。これで、本当に正しいのか。まだ、解らない
から…。解らない、だから…。」
 イデアは、ぽつりぽつりと呟くように告げた。アランに向けて、空に向け
て、自分に向けて。けれど、その答えは得られなかった。
 何か言おうと口を開いたアランだが、そのまま何も発することなく閉ざす。
彼女に必要なものは、言葉ではないと判断したからだ。
 そして、2人の間には短く長い沈黙が訪れる。

 その沈黙は、遠くから風に乗って来る呼び声によって破られる。
 それを機に、アランは剣を鞘へと納めイデアへと言葉を送る。
「イデア、答えを急ぐ必要はない。しかし、時は待ってはくれないものだ。
今のままでは、イデアの未来は暗く閉ざされたものでしかない。それを、明
るく開くために。本来の形に戻すために、私たちは動いているんだ。
 何かをするには、何かを得るには、世界を変えるには、少なからず犠牲と
いうものが求められる。それが、神の定めた掟のようなものだからだ。
 辛くとも、時には決断しなければならない。今が、その時だと私は思う。

 さぁ、行こう。みんなが、待っている。」
 アランは、イデアに優しく。しかし、しっかりとした口調でそう告げた。
そうして、イデアよりも先に呼ばれた方へと足を進める。
 残されたイデアは、それでも困ったようにアランの背を見つめていた。
 そして、何かに応えるように小さく頷き。その足をアランと同じ方へ向け
る。ゆっくりと、その足を進める。
 一歩ずつ、一歩ずつ、それでも確実に前へと…。


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