Easy Going~気楽に行こう~

Easy Going~気楽に行こう~

2016/04/01
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カテゴリ: 記憶
仕事を始めて実家を出て、アパートで一人暮らししてた頃のこと。
高校の先輩の職場が、アパートに近かったので、帰りにちょくちょく遊びに来るようになった。
次第に泊まるようになり、洗濯物も出るようになった。その頃は彼氏になってたのかな。

そんなある日。
洗濯物を干そうとしたら、彼氏の靴下が、片方見つからない。
探しても探しても見つからない。
怖くなった。
でも、ウソをついたりごまかしたりできない性分で、彼氏に本当のことを話した。
「ごめんなさい、靴下が片方見つかりません」

「あっそー」
私は???だった。

後日、友達に電話して、そのことを話した。
「なんで?なんで殴られへんかったの?怒鳴られもしいへんかった。なんで?」
今思えば、友達は相当困惑しただろう。しばらくして、
「うん、ずっとそういう目に遭ってきたんやね。そういうご実家やったんやね」
ものすごく気を遣って言ってくれたのだろう。

父が、祖母や母や妹たちや私を、殴る蹴るしていた暴力シーンそのものは、プロテクトが掛かったかのように一切思い出せない(解離性健忘)。
ただ、靴下が片方なくなったという理由で、父が凄まじい暴力をふるっていたのは、体験として覚えているというより、知識のようにして知っている。

さて、その後が大変だった。
靴下が片方なくても殴られなかった話を、半ば嬉しそうに半ば疑心暗鬼で、私は彼氏に何度も何度も何度も何度も話していたらしい。

とうとう彼氏が閉口して耐えかねて言った。
私は、ますます訳が分からず、キョトンとしていた。

その後、その人との結婚話が進んだ。
父や母がゴネて、ゴタゴタになった。
破談を覚悟した。

首吊りもできず、手首も切れず、川にも飛び込めず、代わりに精神科に飛び込んだ。
当時まだ相当敷居が高かった精神科だったけれど、通うことは自分1人で決めた。

そこのカウンセラーに「納得できないことに遭遇した時は、自分なりに納得できるまで同じ話を繰り返すものなのです」と聞いて、私よりも(その頃は)主人がホッとしていた。
靴下の話だけで30回も50回もしていただろうし、他にもいろいろ、同じ話ばかり繰り返していたのだろう。怒り出すこともなく、本当に、良く耐えてくれたものだ。

心のどこにどんなふうに「片方の靴下の話」を片付ければいいのか、分からなかったんだ。

あれから四半世紀ほど経ったかな。
今でも、洗濯物の靴下が片方見つからない度に、その事を鮮やかに思い出す。
思い出した瞬間は、苦いものが込み上げる。
それから、強い恐怖や怒りを感じる時もあるし、主人や友達への感謝で胸が熱くなることもあるし、そんなこともあったもんだでやり過ごせることもある。

なんだかふと、この事を書き留めておこうと思った次第。
いつも本当にありがとう!!

今となってはもう辛いことでも何でもないのに、なんでずっと、書いてて涙が止まらないんだろ。変なの。





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最終更新日  2016/04/01 12:05:50 PM
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