還暦雲巣管理人独言(還暦を過ぎたウエブマスターの独り言)

還暦雲巣管理人独言(還暦を過ぎたウエブマスターの独り言)

(2)




マル(アップ)-3


「マル」2003年11月11日、午前五時永眠








11月6日、相変わらず「マル」は元気が無く、真夏の熱い頃のように

息遣いが苦しそうで、時折咳き込んだり、むせるようなしぐさ、1階の

仕事場から2階へ上がっていくと、のろのろと階段のほうに来て、力強

さは無いものの尻尾を振ってオレを迎える、少し動いただけでも、一層、

息遣いが荒くなり、それを静めるのに、しばらく背中を摩ったり胸を撫で

たり、少しからだが楽になるらしく、荒い息遣いが収まると今度は目を

細めて、そしてその細めた目に涙が潤んでくる、普段は特別に居場所など

決まっていずに、オレ達と全く同じ生活をしていたが、体調が悪くなって

からは、キャリング・ケースの上の部分を取り払って、毛布を敷いて、

急ごしらえのベッド、そこから動こうとしない。


夕方いつもの、ヨメがパートから帰ってくる時間になると、階段の踊り場

のほうに出てきて伏せの姿勢で、入り口で自転車の止まる音や、足音に

神経を集中、ヨメと分かると立ち上がり、ドアの鍵を開ける音を聞くと、

今日一日一度も吠えなかったが、初めて吠え出す、時にうるさいほどの

吠え方をするのに、声にも元気が無い、しかし尻尾を勢いよく振って、

手足をばたつかせて、いつもどうり自分なりの、お帰りなさいの表現、

処が次の瞬間、急に身体全体の力が抜けたように、倒れるのではなく、

空気で膨らませた人形の空気が抜けたように、手足が外に開き腹ばい

状態に、急に動いたための発作の状態、すぐに抱きかかえると、元に

戻ったが、この症状を動物病院に連絡すると、幾つかの心配なことが

あるので、すぐに連れて来なさいとのことで、動物病院へ。


聴診器を当てるなり、肺水腫を併発と診断、レントゲンを採ってみると、

やはり肺水腫、確実に助かると言う保証はできないが、今すぐに酸素室

に入れないと窒息死する可能性がありますといわれ、酸素室の中で体中

の水分を出しきらせるために利尿剤の注射、透明のアクリルの壁の箱の

ような酸素室、酸素の濃度が上がってくると、見ている間に息が楽になり

暴れだす、先ほどの利尿剤がきいてきのか大量のオシッコをマットの上に、

自分のオシッコで手足が濡れる、普段は大も少も全て散歩の時、家の中

には「マル」のトイレを置いていない、狭い箱の中に自分のオシッコで

濡れたマットがある、これには耐えられないらしく、マットを箱の隅っこ

に押しやる、その時に身体も自分のオシッコで濡れる。


嫌がって思いっきり中で暴れだす、なぜ嫌がるのかは良くわかる、喋れ

ないがその表情としぐさは、出してくれ、こんな中は嫌だ、オレには

その気持は痛いほどわかる、一度出してマットを替えて、身体を拭いて

やりたいが、薬が効いてきてこれから何度もオシッコをするのだろう、

それも出来ず、病院へのでがけに、ヨメが涙を浮かべて、「入院て言われ

ても可哀想やから、必ずつれて帰ってきてや!」、このように言われて

いたので、中が丸見えの、ケースの中で暴れたり、オレの顔をみながら

出して欲しいと立ち上がって、透明のアクリルのケースを引っかいてる

様子を見ると耐えられなくなり、「先生、もうエエわ、覚悟はできて

るんで、家に連れて帰るわ!」。


陸で生活する生き物にとって空気がないというはの苦しくて、死を意味

する、ここのところは私に預けてください、ベストを尽くしますと説得

され、入院させることに、緊急の連絡先を確認した後、ひょっとして

見納めになるかもしれないが、酸素室の中で家に帰りたがって暴れて

いる「マル」の顔をもう一度見る気になれず、「よろしくお願いし

ます」と挨拶して、「マル」の泣き声を背中に病院を後に。


慌てて出て来たのでタバコはあるがライターが無い、バス停の見知らぬ

人に火を借りて、パーラメントを一服、帰りたがって暴れている「マル」

の顔と、帰ったときの「あれほど、入院させんといてと、言うたのに!」

というヨメの顔が交互浮かんできて、綺麗なまん丸の月を見上げながら、

パーラメントをもう一服、帰ればヨメは、「何で、かわいそうなー、

病院においてきた!」、とオレをなじるだろうなと思いながら帰ると、

案の定、涙ながらにオレに抗議。 


不安な一夜を過ごし、翌朝、病院に電話すると元気回復との事、夕方、元気

を取り戻した「マル」を病院に迎えに、抱いて帰り道、ひょっとして緊急の

電話で、冷たく、硬くなったおまえを抱いて帰るのでなく、生きている、

暖かい、柔らかいおまえを抱きながら帰れるなんて、ヨカッタ、ヨカッタ

と独り言、そして顔を覗き込むと、「マル」は顔をそらしたり、視線を合

わそうとはしない、何で置き去りにした、何で入院させたと言う意思表示

である、怒って拗ねているのである。 





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