
第二章 「輪廻の 雛
「か・・・っ・・・り・・か・・・!!・・・梨花ぁーっ!!」
・・・沙都子の声・・・?
「み、魅音!監督呼んできたほうがいいんじゃねーか!?」
・・・それに・・・圭一・・・
「う、うん!!私呼んでくる!!」
・・・魅音・・・
「レナはハンカチ濡らしてくるね!!」
・・・レナの声も聞こえる・・・
私は・・・どうなったのだろう・・・体中が痛い・・・
確か鳥居のところで羽生と一緒に沙都子を待っていたはず・・・
その後・・・その後は・・・駄目・・・思い出せない・・・
これじゃまるで、いつもみたいに殺されて気付いたらまた過去に戻っていた時と同じじゃない・・・
・・・え・・・?
その時、ふと背筋に嫌な感覚が走った。
いつもみたいに殺されて同じ世界の繰り返し・・・?
そんなバカな・・・犯人は鷹野と山狗で番犬を呼んで全部終わったはず・・・
輪廻の運命に皆で打ち勝ったはず・・・
あれは夢・・・?いや、そんなはずない!!
確かに運命に打ち勝ってこれから訪れる新しい世界に希望を膨らませていた!!
毎日が楽しくて仲間達と日が暮れるまで部活をしたりして!!
初めて越す7月の最後の日のカレンダーをめくるのが楽しみで!!
・・・じゃあ何故・・・?
何で途中から記憶がないの・・・?
何でこんなにも心が苦しいの・・・?
鷹野がいなくなったのに誰が私を殺したの・・・?
・・・あれ・・・?
そう言えばさっきから仲間の声は聞こえてきても、いつものうっとうしい声が聞こえないことに気付いた。
「・・・羽生・・・?」
「梨花!?圭一さん、梨花が目を覚ましましてよ!!」
ゆっくりと体を起こして周りを見回すがいるのは沙都子と圭一だけ・・・
「梨花・・・?大丈夫ですの・・・?」
「どこか痛い所はないか!?」
沙都子と圭一が私の顔を心配そうに覗き込んでくる。
「みぃ・・・大丈夫なのですよ・・・それより今は何年の何月何日なのですか・・・?」
「何を言ってますの・・・?今は昭和58年7月25日ですわよ・・・?」
私の記憶が途切れた最後の日は8月13日・・・
やはりまた誰かに殺されて過去の雛見沢に戻ってきてしまったのか・・・
それにしても羽生はどこへ行ってしまったのだろうか?
「あ、あの、羽生はどこなのですか・・・?」
私が恐る恐る聞くと二人は不思議そうに顔を見合わせ
「羽入さんってどなたですの・・・?」
「梨花ちゃんの友達か?俺は知らないぜ?」
「・・・え・・・?」
そんな・・・
私はまた過去の雛見沢に戻ってきた上・・・今度は羽生が消えたと言うの・・・
カナカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナ・・・
昭和58年初夏、ひぐらしだけが、ただないていた・・・。
続く