読書日和 ~Topo di biblioteca~

読書日和 ~Topo di biblioteca~

2004.12.18
XML
自殺志願の千鶴が辿り着いたのは山奥の民宿。
  そこで思いがけずたくさんの素敵なものに出逢って…。
  期待の新鋭が清冽な文章で綴る、癒やしと再生の物語。
                      (本の紹介文より)


図書館からこの本を借りたときは、まさかこんな気持ちで読むことになるとは
想像もしてなかったです。
大学のときに出会い、卒業してからも家族ぐるみでおつきあいのあった人が
自分で自分の命を絶ってまだ一週間ちょっとしか経ってない。
恐ろしいほどあわただしく、現実感もないままにお通夜、お葬式が終わって
ぽっかりとあいてしまったような時間がありました。

小説の冒頭 …

ずっと前から決めていた。今度だめだと思ったら、もうやめようって。
  いつも優柔不断で結局失敗してしまうけど、今度の決意は固い。
  一度切ろうと思ったものを引き延ばすのには力がいる。もう終わりにしようと
  思ったら、長引かせちゃいけない。本当に終わりにするのだ。



怖くてなかなか先を読む気になれませんでした。
いっそ、落ち着いて読めるときが来るまで返却してしまおう、と思いました。

だけど…これは瀬尾さんの本です。
瀬尾さんの本に辛さだけを覚えるなんてこと、きっとない。
救いがあるかもしれない。読みながら涙が止まらなくなったらその時は
澱のようにたまった何かを全部流してしまえばいいんだと思って
読むことにしました。

読み始めてしまうと…瀬尾さんの不思議に穏やかな文章にいつの間にか
引き寄せられてました。
ところどころ、胸の詰まるような文章に出逢うたび、
涙が湧いて出てきてしまったけれど、


あの人はそのままいなくなってしまったけれど、
出来うることなら、この小説のような、もう一つの物語が存在していて欲しかった。
少しずつ心の重荷を下ろして、田村さんのような人に出会って、
自然に抱かれて、自分を取り巻いている世界をまったく別の視点で見て欲しかった。

魔が差すのが一瞬なら、正気に返ることだってちょっとのきっかけで


自分の存在価値を自分で評価したり、友達と比較して決めてしまっては駄目です。
それを決めてくれるのは自分のことを愛してくれる人達です。
その人達の気持ちを鑑みることなく、命を絶ってしまったりしては駄目です。

人は他人と自分とを比べずにはいられない存在だとは思います。
柊だってそう。友達が頑張ってる姿に励まされる事もあれば、
自分と比較して落ち込むこともあります。
自分ってどうしようもなく駄目だと責めることもしょっちゅうあったりします。
自分を責めることってものすごく辛い。
(そんな姿を見守る家族も辛いと思う。)…だけど、
大切な人の思いを振り切って死を選ぶよりは、我儘だろうと何だろうと、
「これが自分なんだ」って割り切って生きる方がいい筈です。
きっとそうです。

「今の状況で生き続けるよりは…」そう思っている人がいるとしたら。
もう一度だけ、死とは違う別の物語(人生)を思い浮かべて欲しい。
自分を大切に思ってくれてる人のために、生きていく場所を見出して欲しい。
もう少しだけ、頑張ってみたら何かが変わるかもしれないって信じて欲しいです。

天国はまだ遠く ( 著者: 瀬尾まいこ | 出版社: 新潮社 )





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2004.12.18 16:58:36
コメント(12) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ著 読みました。(12/18)  
もとやん☆  さん
状況や事情を知らずに意見を言うことは、とても無責任な気がしますが、僕も柊さんの「…『これが自分なんだ』って割り切って生きる方がいい筈です」という考えに賛成です。
自分自身、それほど辛い経験をしたことがないので甘いのかも知れませんが。 (2004.12.18 17:19:54)

Re:「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ著 読みました。(12/18)  
どこかの歯車が一つ狂っただけで、とんでもない結果になってしまうことってありますね。そんな時、それが起きる前に、ちょっとでも矛先を変えるような出来事があったなら・・、って本当に思いますね・・。
私も弱い人間ですが、自分を必要としている人がいると思うと頑張らなくちゃ、って思います。柊さんの仰るように、全ての人が、死とは違う人生があることを信じて生きていって欲しいと思います。 (2004.12.18 20:31:01)

Re:「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ著 読みました。(12/18)  
machirun  さん
本を読むタイミングってあると思うのだけど、柊さんにとっては今がこの本を読むピッタリのタイミングだったのかもしれませんね。
ただ辛いだけじゃなく、何か違う想いを本から受け取られたように今日の日記を読んで感じました。

魔が差すのが一瞬なら正気に戻るのもちょっとのきっかけ・・・・
そうですね! とても心に残る言葉でした。 (2004.12.18 20:34:27)

Re:「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ著 読みました。(12/18)  
パティP  さん
今日も深い内容ですね。
いまもし死を考えている人がいるなら、
これらの言葉が、まだ届いてくれるうちに、
ここを読んでくれることを願っています。 (2004.12.18 22:58:45)

Re:「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ著 読みました。(12/18)  
arsha  さん
こんにちわv
こんなお辛い時によく読めましたね…
でも、こんな時だからこそ、同じようなパターンの物語に救いを見つけようとする気持ち、わかるような気がします…
私もこの夏は天海祐希さん主演の「ラストプレゼント」を見てました…
私の祖母も胃ガンだったんだけど、亜種ですい臓もやられていたので…
結構同じようだったんですが、あのドラマは「そんなバカな…」という展開もありましたが、ああいう前向きな人々の話だったので、気持ち的に救われた部分もありました。

でも現実は容赦なくやってくるんですよね…

泣ける時は思いっきり泣いていいと思います。
その方がきっと早く立ち直れると思うから…

どうか元気出してくださいネ
(2004.12.19 01:20:15)

Re:「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ著 読みました。(12/18)  
>だけど…これは瀬尾さんの本です。
>瀬尾さんの本に辛さだけを覚えるなんてこと、きっとない。

こんなふうに柊♪さんがおっしゃって、
そして、やはりそれを裏切らない…
残念ながら、瀬尾まいこさんの本をわたしは読んだことがないのですが。
こういうふうに、誰かの気持ちによりそい、なにがしかのパワーを与えられる…
ものかきの最大の喜びでもあり、使命かもしれませんね。
わたしも、「天国はまだ遠く」読んでみたいと思います。

たくさんのことが未整理で、心も体も…疲れ果てていらっしゃるかと思いますが。
今は、柊♪さんがここに帰って来られたことを、心から嬉しく思います。

父の同僚で、家族ぐるみお付き合いがあった方が2人、
やはり自ら命を絶ちました。その時のことを思い出します。
残された奥様、お子さんのことを考えるからでしょうか…。
ずっとずっとたってから、父親を亡くした友人が、
「今でもね、なんで?って思うんだー」と呟いた顔。
…忘れられません。
だけど、彼女はお父さんを理解し、許してあげていたと思います。
それはとてもたいへんな作業だったと思うのですが…。

今日という日を、ただ精一杯に生きていく。
それができれば、人生は上々だ。

…どこで覚えたわけでもないですが、うつむきたくなる時、
わたしが自分に言い聞かせる言葉です。

長々、失礼しました。 (2004.12.19 02:14:26)

Re[1]:「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ著 読みました。(12/18)  
柊♪  さん
もとやん☆さんへ

>状況や事情を知らずに意見を言うことは、とても無責任な気がしますが、…

いえいえ。それを言ったら、柊だって亡くなられた方が本当は何を考え、感じていたか、残された家族の方々が今どう思っているのかを慮ることなんて出来ません…。
だけど、今度のことで柊は一層、そう信じたい思いに駆られました。
自分は自分って思わないと、引きずられちゃうことがあるから…。うん。 (2004.12.19 15:51:22)

Re[1]:「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ著 読みました。(12/18)  
柊♪  さん
猫のゆりかごさんへ

>どこかの歯車が一つ狂っただけで、とんでもない結果になってしまうことってありますね。そんな時、それが起きる前に、ちょっとでも矛先を変えるような出来事があったなら・・、って本当に思いますね・・。

「天国はまだ遠く」を読むと、もう一度頑張ってみてっていうメッセージが強く伝わってきて切ないです。
とても淡い文章だけど、受け取る側の気持ち次第でより大きなものを伝えてくれる作品だと思います。 (2004.12.19 16:00:26)

Re[1]:「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ著 読みました。(12/18)  
柊♪  さん
machirunさんへ

>魔が差すのが一瞬なら正気に戻るのもちょっとのきっかけ・・・・
>そうですね! とても心に残る言葉でした。

柊だったら…「あ、あの作品の結末を知るまでは!」っていうことで正気に返れそう…。
亡くなる数日前に、宝くじを購入していたって聞いたのですが、それなら
「当選発表まで待ってみようか…?」ってちょっとでも思ってくれたら
よかったのに、ってうんと思いました。
本当に、ちょっとのきっかけだと思うのに…。
(2004.12.19 16:04:42)

Re[1]:「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ著 読みました。(12/18)  
柊♪  さん
パティPさんへ

言葉が届くってすごいことなんだって思います。
どんなに声高に叫んでも、聞いてくれる側の心が閉ざされていたら伝わらない…。
届いてくれるうちに…って柊も思います。 (2004.12.19 16:07:28)

Re[1]:「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ著 読みました。(12/18)  
柊♪  さん
arshaさんへ

>でも現実は容赦なくやってくるんですよね…
>泣ける時は思いっきり泣いていいと思います。
>その方がきっと早く立ち直れると思うから…

励ましの言葉をどうもありがとうございます。
現実は容赦なく…本当ですね。
時折、波のように襲ってきたりして。
柊自身はもう、大丈夫です。
今は友人とそのお子さんのことが心配です。
柊に何が出来るかなあと考えてます…。 (2004.12.19 16:11:19)

Re[1]:「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ著 読みました。(12/18)  
柊♪  さん
うっかりしゃちべぇさんへ

励ましの言葉をありがとうございます。

>ずっとずっとたってから、父親を亡くした友人が、
>「今でもね、なんで?って思うんだー」と呟いた顔。
>…忘れられません。
>だけど、彼女はお父さんを理解し、許してあげていたと思います。
>それはとてもたいへんな作業だったと思うのですが…。

柊の友人も「許してあげたい、今はゆっくり眠らせてあげたい」って言ってました。
だけどその分、柊は友人にそんな言葉を言わせた人を許せないと思いました。
「何で…?」という言葉しか出て来ないってしんどいですね。
柊が怒ってみたところでどうにもならないんですけど…。
でも…時間の流れというのはすごい。
ちょっとずつでも、その事実を受け入れられるようになってくるのですから。
今はむしろ友人がどんな気持ちで過ごしているか心配です。
無理してないといいな…。

>今日という日を、ただ精一杯に生きていく。
>それができれば、人生は上々だ。

>…どこで覚えたわけでもないですが、うつむきたくなる時、
>わたしが自分に言い聞かせる言葉です。

『…それが出来れば…』本当にそうですね。
柊もこれから落ち込んだとき、この言葉を思い出して頑張ろうと思います。
力強い言葉を教えてくれてどうもありがとうございます。 (2004.12.19 16:24:41)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

プロフィール

柊♪

柊♪

コメント新着

http://buycialisky.com/@ Re:劇団四季ミュージカル「CATS」観てきました。(02/26) nasacort aq cialiscialis generika ohne …
http://buycialisky.com/@ Re:「ウォッチメン」観てきました。(04/03) viagra cialis online bestellencialis 1k…
http://buycialisky.com/@ Re:『夏時間の庭』、『G・Iジョー』観てきました。(08/15) cialis gevaarlijkparody of cialiscialis…
http://buycialisky.com/@ Re:『ダレン・シャン』シリーズにはまる…^^;(03/14) cialis soft lawyer columbusgeneric cial…
http://buycialisky.com/@ Re:『輝く断片』シオドア・スタージョン著読みました。(06/08) comparar viagra cialislowest cialisgene…
http://buycialisky.com/@ Re:『Nのために』湊かなえ著 読みました。(03/04) cialis ziektekostenverzekeringcialis ko…
http://buycialisky.com/@ Re:昨日の弊害…筋肉痛!(10/02) cialis rezeptfreiviagra cialis or levit…
http://buycialisky.com/@ Re:『劫尽童女』恩田陸著読みました。(04/16) order generic cialis c o dcialis review…

フリーページ

柊の好きな作家の本


島本理生


北村薫


北村薫さんの作品が好きな人への77の質問


恩田陸


恩田陸ファンに100の質問


江國香織


その他の作家


詩集・歌集・アンソロジー


≪ア行の作家≫


≪カ行の作家≫


≪サ行の作家≫


≪タ行の作家≫


≪ナ行の作家≫


≪ハ行の作家≫


≪マ行の作家≫


≪ヤ・ラ・ワ行の作家≫


翻訳小説・ミステリ・ファンタジー


映画館で・・・観たよ♪


2004 1月~2月に観た映画


2004 3月~4月に観た映画


2004 5月~6月に観た映画


2004 7月~10月に観た映画


2004年11月~12月に観た映画


2005年1月~3月に観た映画


2005年4月~6月に観た映画


2005年7月~9月に観た映画


2005年10月~12月に観た映画


2006年1月~2月に観た映画


2006年3月~4月に観た映画


2006年5月~6月に観た映画


2006年7月~8月に観た映画


2006年 9月~10月に観た映画


2006年 11月~12月に観た映画


2007年1月~3月に観た映画


2007年4月~6月に観た映画


2007年7月~9月に観た映画


2007年10月~12月に観た映画


2008年1月~3月に観た映画


2008年4月~6月に観た映画


2008年7月~9月に観た映画


2008年10月~12月に観た映画


2009年1~3月に観た映画


2009年4~6月に観た映画


2009年7月~9月に観た映画


2009年10月~12月に観た映画


2010年1月~3月に観た映画


2010年4月~6月に観た映画


2010年7月~9月に観た映画


2010年10月~12月に観た映画


2011年1月~3月に観た映画


2011年4月~6月に観た映画


映画好きへの100の質問


本好きへの100の質問


イメージが結ぶ100の言葉と100の本


ビデオ鑑賞記録


2004年


2005年


2006年


2007年


2008年


2009年


サイド自由欄

設定されていません。

キーワードサーチ

▼キーワード検索

バックナンバー

2025.11
2025.10
2025.09
2025.08
2025.07

© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: