バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

ISHドミトリーでのお茶会!


               ≪十一月二十五日≫     ―壱―

  寒い!
 昨日雨が降ってから急に寒くなったように思う。
 今日は快晴だというのに、シーツの中では筋肉が硬直しているのが良くわかる。
 昨日から、フロア―にあるストーブに火が入った。

  街も人も自然も急いで冬支度をはじめたようだ。
 自分の旅の記録も順調に進んでいる。
 ヒッチハイクのページは、日本へ戻ってから(郵送でもう日本に送っている。)前半の仕上げをするのみとなっている。
 それに並行して、只今私小説を書き始めた。
 本にするには、かなりの枚数を必要とするが、これも順調に書き溜めている。
 この分だと、日本に帰るまでに出来上がるかも知れない。

  夕方から、我々の部屋で茶会を開いた。
 ショーンのネスカフェと俺の日本茶、そしてドゥ-シュンとアラビックの四人。
 残念ながら、リッチは出かけていて欠席。
 ショーンもリッチもこのISHから、一度出て行ったのに又戻ってきた出戻りである。
 ドゥ-シュンは一番の年配で、ドイツ人とばかり思っていたら、なんとユーゴスラビアの人だとか。

  彼は勉強家で、ドイツ語も英語も話し、おまけにフランス語とアラビア語が少しわかる・・・・・そして今、ギリシャ語を勉強するために、このISHに宿泊しながら学校へ通っている大変立派な人なのです。
 俺とは頭の構造が違っている。

                   *

  下のキッチンに入るのはこれで三度目。
 いずれも鉄臣から貰った”味噌ラーメン”を食する為である。
 キッチンの中には、三箇所のガスノズルをもつレンジとテーブル、そして冷蔵庫が二つおいてある。
 この冷蔵庫には鍵が掛けられていて、利用したい場合マネージャーに言って開けてもらうことになっている。

  その他に、靴箱のようなロッカーが置いてあり、そのいずれにも鍵がついていて、自分達の食料を保管しておくようになっていて、誰かに無断で使われるというような事が絶対無いように、各自のプライバシーが守られるようにシステム化されている。
 それともうひとつ、我々のフロア-のトイレより広いトイレが備え付けられていて、なかなかご機嫌なドミトリー宿泊所なのであります。

    「What your name?ヒガシワ!」
 と、ドゥ-シュンが俺に聞いてくる。
 一度、教えたのだがなかなか発音しにくい名前のようだ。
    「My name is Higashikawa!」
    「イガシワ?」
    「ノーノー!HI・GA・SI・KA・WA!」
    「おー!ヒガシカワ!」
    「いえーーす!」
 やっと、解った?

    「ヒガシワ!What is it!」
    「Japanease green tea!」
    「Oh!Very nice!」
    「See!」
    「What you say!Japanease?」
    「オチャ!」
    「オ!チャ?」

  横にいたアラビックが言う。
    「アラビック、チャ!」
    「オー!Same!」
 ドゥ-シュン「Yourオキペイション?」
 俺     「アーキテクト!」
 ドゥ-シュン「オー!ブラボー!ベリーナイス!」

  こういった調子で茶会が進んでいく。
 ドゥ-シュンに、漢字の発音はツースタイル、日本文字はフォースタイル使用している事などを伝えるとビックリしている。
 ドゥ-シュン「ギリシャ語も三種類あります。オールドグリーク・( ? )・ニューグリークの三つです。」
 と、ドゥーシュンがジェスチャー入りで、今自分が勉強してるギリシャ語について話出した。
 グリーンティ-にドゥ-シュンが砂糖を入れようとする。
 俺     「ノーシュガー!ドゥ-シュン!」
 ド     「オー!ノーシュガー!グリーンティ-!」
 ショーン  「ノーシュガー!ベリーナイス!」
 ド     「グリーンティ-、ベリーグッド!」

  ドゥ-シュンもショーンもグリーンティ-を美味そうに?飲み干した。
 アラビックだけは、グリーンティ-に手を出そうとしない。
 時々、フランス語でドゥ-シュンを経由して英語で我々に伝えてくるという、厄介なしかし楽しい茶会がISHのキッチンで行なわれたことは、ISHでの生活を十倍楽しくする為にも十二分に役に立ったのではないかと思う。

                   *

  部屋に戻ってからも、話がはずみ、俺がヒッチハイクで(本当はあまりやってないのだが)、陸続きでギリシャまでたどり着いたことや、インドで死んだ日本人の話や南京虫にやられた事などを話しながら跡の残った腕を見せると「オー!ノー!ノーグッド!」と少しオーバー気味に驚いてみせる。
 ドゥ-シュンにショーンが”Bed Bug”(南京虫)の意味をジェスチャー入りで、足をバタツカセながら、両手で身体中を掻くマネをすると、やっとドゥ-シュンも理解したようだ。
 そして、皆から「ヒッチハイク競技大会完走!おめでとう!」と祝福されたのには感激してしまった。
 思いもかけない出来事だで本当に嬉しいもんだ。

                   *

       ≪ドゥ-シュン≫
            Dr.Dusan Rnjak
             ユーゴスラビア、11070、Novi,Beograd
              O、Zupancica,20/52
            Phone:603875
                 (子供二人)


       ≪ショーン・マーフィー≫
            Sean Murphy
             Victoria、BC、Canada
              c/o John pewso
                754 Russell
            Phone:477-0077


       ≪アラビック≫
           5300、Charle roi
            102、MTL、Ivord
              P,Oue Canada
                HIG 3A4
                 Daoud Khanafer
            Phone:3219034


       ≪加茂律子デニーズ≫
           Denise Ritzuko Kamo
             87、Nash Drive、
              Downsview, Ontario
                m3m 2L6
                   Canada
             (日本三世カナダ人 21歳)

                    *

  この所、寒い日が続き、外に出る機会が少なく、皆と談笑する機会が増えた事は喜ばしい事だった。
 今日は朝から、小さい小包をつくり、日本に送る準備をする。
 郵便局に行き、渡された二枚の用紙に、どこからどこへ送るのか、住所と名前を書き込み、そして中に何が入っているのかも記入。
 送る日の日付とサインをして計量しお金を渡すとOK!
 荷物の中を見せろと言われた事は一度もない。
 がしかし、日本に到着すれば、開けられるかも知れないので、変なポルノ雑誌とか麻薬は入れないほうが良い。(当たり前か!)

  もう皆、眠ったようだ。
 ドゥ-シュンのいびきとリッチの寝言(もちろん英語)が聞こえてくる。
 ショーンとアラヴィックはもうすでに深い眠りに入っているのだろう、寝息しか聞こえてこない。
 自分には聞こえないのだが、日本にいるとき友人から「お前、歯軋りする。」と言われた事があるので、ここISHでも歯軋りをしているのかも知れない。
 そんなISHのドミトリー・ルームを想像して見るのも楽しいものだ。

(オーストリアはドイツ語)
(ベルギーは北部がオランダ語、南部がフランス語)


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