にかいどう じぇっと してぃ

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殿堂入りコラム(1)

ユーロ圏の東方拡大とハンガリーの財政状況

1.ユーロ導入基準に対するハンガリーの財政状況

マーストリヒト収斂基準(ユーロ導入条件)
・年間の財政赤字が GDP比3%以下
・累積債務が GDP比60%以下
・物価上昇率がEU内で最も低い3ヶ国の平均値からプラス2%以下であること。
 (9月のデータでは、{フィンランド (1.1%) +スウェーデン (1.1%) +オランダ (1.7%) ÷3}+2%= 3.3% となる)

今回はこの3つの条件に焦点を絞って論じる。

ハンガリーの年間赤字(GDP比)
03年→6.5%  04年→5.4%  05年→~7~%(?見通し)

現在、 西側へキャッチアップ を図るため、高速道路建設などの インフラ整備 がされているが、これらの関連費用を一般会計の歳出部門から除外するという苦難の策はEU側に認められなかった。
→目標であった4.7%は実現不可能な状態である。

累積赤字はGDP比50%以内からとうとう 基準オーバーの60%台 へ悪化。

物価上昇率(GDP比・現状からの試算による)
05年→3.6%  06年→1.6%  07年→2.9%

これに関しては減速基調であり、3%余りに落ち着きつつある。
他の状況に比べ 好ましい状況 ではある。

導入基準以外にも次のような現状がある。

06年春の総選挙をにらみ、支持率トップの FIDESZ(青年民主連合) が与党の社会党をリードしている。
現政権の支出の増大 につながっている。
→FIDESZにしても、選挙勝利を確実なものとするため、 支出増につながる人気取り公約 を打ち出している。

無論、これでは財政赤字が膨らむのは当然である。

年金コスト は赤字から除外されているが、 5年間の時限措置 である。
つまり、 05年100%除外~06年80%除外~・・・~11年0% となる。
→徐々に赤字を会計に含んでいかなければならない。
→財政赤字削減の政策は手綱を緩めることはできない。


2.ユーロ導入に対する期待

ハンガリーにとってユーロ導入は プラスの効果 となりうるのか。

ユーロ導入の メリット (一般的なもの)
・個人の両替、企業取引に伴なうコストが不要となり、リスクが軽減される。
 → 域内経済取引、域内貿易の活性化 につながる。

・リスクプレミアムがいらなくなるため、各国の 実質金利に低下の余地 が広がる。
 →域内での 投資を促し、成長率を高める

・国債市場がユーロ建てで統一されることで欧州の資本市場の 深み が増す。
 → 間接金融から直接金融へ のシフトが加速する。
 →金融ビッグバンへの期待も。

・各国間の価格差が明瞭となることから 安い価格の方に縮まる 傾向にある。
 →広範囲で消費が刺激され、 消費の拡大 につながる。

またハンガリーの場合、ユーロを導入することでどのようなことが期待できるか。
上記のメリットに照らし合わせてみる。

ハンガリー国立銀行(MNB)の研究チームによると、 貿易 が年当たり 0.55%~0.76%成長 すると算出した。

実質金利の減少もGDP成長率を上昇させる。
同じくMNBによると、 0.08%~0.13%の成長

直接投資(FDI) を呼び込むさらなる契機となる。
決済がユーロでできるため、ハンガリーに拠点を置いて 域内全域で経済活動 ができる。

消費の拡大については、ハンガリーを含む新規加盟国は域内において まだ物価の水準は低い
ハンガリー国内でモノの価格がどう変化するかは不明。

次にユーロ導入した場合の デメリット を挙げる。

・経済調整手段として活用してきた 為替政策を失う
 → 自国の意思 で切り上げ、切り下げができない。

・欧州中央銀行(ECB)による 統一政策
 →国ごとに 独自の政策ができない

経済安定成長協定
 (導入後も財政赤字をはじめとした基準を永久に科すもので、遵守できなければ罰金)
 → 基準に縛られ続ける

・ユーロへの切り替えコスト( 紙幣印刷・硬貨鋳造・自販機など )がかかる。

切り替えコストがなくなれば、さらに 0.18%~0.30%の成長 が見込める。(同じくMNB試算)

では、ユーロ圏の東方拡大の 全体的なデメリット として、 原加盟国に負担 が圧し掛かり、ユーロが 不安定 になることはないのだろうか。
→大いにあり得る。

それにもかかわらず、なぜ原加盟国は 新規加盟国にユーロ導入を義務づけるのか
なぜ新規加盟国は無理な財政政策をしてでも 早期にユーロ導入を望むのか

その答えは 「不整合の三角形」 という経済用語に見ることができる。

これは 「資本の自由移動」「為替相場の安定」「各国の金融政策の独自性」 3つを同時に達成することはできないという現象 のことである。

資本の自由移動 は過去の統一市場や99年のユーロ誕生ですでに実現している。
・ユーロの番人ECBの政策の大前提は 物価の安定 であることから 為替相場の安定 も実現しようとしている。

→資本の移動を自由化し、なおかつ為替相場を安定させようとすれば、 金融政策 は関係国の間で完全協調 するしかない。
→ユーロ圏の拡大へ。


3.ユーロの諸課題

現在、ユーロを導入している国とユーロ自体にみられる課題を挙げてみる。

・金融制度、金融資本市場の取引習慣など、 一連の制度の統合
税制の統合 。(法人税や利子源泉課税など 企業に関連する分野が特に重要

→これらは05年を目指して統合が進められている。(進捗状況は不明)
 会計制度、決済手続きなどの統一は時間の問題だが、 税制・法制の問題は構造的なもの なので統一が容易ではない。

ユーロ未参加国 (イギリス、デンマーク、スウェーデン)のユーロ導入。
・ユーロの国際通貨としての発展とグローバリズムへの対抗

これらの諸課題に加えて、 新規加盟国の参加を促すこと も課題となっている。
また、その問題点もいくつか挙げられる。

ECBの統一された金融政策 必ずしも参加国すべてが享受できるものではない
 (極端な例を出すと、つまりインフレの国もデフレの国もあるにもかかわらず、ECBはどちらかの対策しか取れない。)
 →ハンガリーなど新規加盟国のユーロ導入により、 参加国内の経済状況の足並み が揃うことまずなく、さらに困難な状況に陥る。

・ECBが今後、 いかに機能するか
 →新たな参加国が加わるたびに金融政策を決定するECB政策理事会に新たなメンバーが参加する。ユーロ域経済統計の改定も必要
  となる。
 → スムーズな運営ができない 可能性が出てくる。
 →成熟した政策の実施には、まだまだ 時間がかかる とみるべきである。

・EU構成国の両軸ともいえるフランスとドイツが 「経済安定成長協定(2参照)」に違反 している。
 →「財政赤字がGDP比3%以下」の基準が満たせていない。
 →基準を 見直すことで合意 している。
 → ユーロの不安定化 につながる可能性もある。

・そもそも原加盟国がユーロを導入した時にも、 導入基準を完全に満たせた国は4ヶ国のみ であり、残りの国は 例外条項 に助けられた
 経緯がある。
 →つまり、ほとんどの国が 基準を緩和され、無理をして導入 した。

ここで特筆すべきことは、このような 導入時 緩和・妥協策はハンガリーなど新規加盟国にも適用されるのか
そして緩和される 経済安定成長協定 新規加盟国に平等にあてがわれるのか

これを原加盟国側が拒否した場合、実質的な 二重基準(ダブルスタンダード) となる。
→ユーロ導入を望む国にとって 不公平感が募る ことにもなる。

しかし、ハンガリーは 1989年までは共産圏 に属しており、市場経済に移行して16年ほどしか経っていない。
その分、 著しい成長 を見せているものの、 原加盟国に比べ貧しい
1で取り上げたような現状である。

このような国が 表面だけ ユーロ導入に必要な基準を達成したところで、今後も続く 安定成長協定 の縛りに永久に悩まされることになるだろう。
見直され、幾分緩和された協定となろうともである。

では、最後にハンガリーの ユーロ導入時期 はいつになるのかをみる。

政府は 2010年に導入 を目指している。
しかし過去に導入時期を何度も先延ばしにしており、また財政状況からも2010年の導入も 危ういと指摘 する意見が多数出ている。

複数のジレンマはあれど、とにかく単年の財政赤字を削減することが急務である。


参考文献
『ユーロ その衝動とゆくえ』田中素香 岩波新書 2002
『EUの知識<新版>』藤井良広 日経文庫 2002

“ハンガリーの銀行改革とユーロの導入”G.バコシ 
京都女子大学現代社会学部Vol.7 2004

日本経済新聞
欧州経済新聞 http://www.oushu.net/
中東欧TODAY http://nna.asia.ne.jp/free/cee/cee_today/cee_today.html


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