スイーツの妖精たちとともに  1~HIRO日記~   

お菓子のマジック知ってますか?ページ


~卵×砂糖+小麦粉+バター×α=(^^) ~

1.【はじめに】
私としては、『お菓子』と一言で言って済ましたくないのが本音である。この職業を選び、日々、この世界の奥深さを感じている毎日である。そして製菓人として『お菓子』に魅せられ、驚き、感動してきた事を歴史、由来、原理、楽しみ、等の観点から少しだけ伝えたいと思う。

2.【甘味のはじまり】
人類が初めて意図的に利用した甘味は、果実とハチミツであった。旧石器時代前期・紀元前一万年~五千年前にハチミツ採取の絵もあり、ハチミツを採取し、『美味しさ』を感じる甘味に接した人々の喜びは大きかった様に思う。ここで『美味しさ』を知った人類は、次に『楽しみ』を感じ、さらにこの『楽しみ』を増大させるべく知恵を働かせた。つまり『その瞬間』の美味しさを楽しむだけでなく、さらに利用する事を思いつき、採集した果実を蜜漬けする事によって保存させる事をも発見したのである。これがコンフィズリー(糖菓)のはじまりである。古代エジプト王は蜜蜂を彫った印を使用し、又、その遺跡からもハチミツも発掘されている。これらをみてもいかに貴重なものだったかがわかる。という事は、【甘味のはじまりは】、
とても重大な事件?だったに違いない!そして現代の菓子形成はここからはじまり、そして全ての『喜び』がはじまったと私は勝手に理解している。そんな甘味が現代のGateau(ガトー)としてパティシエブームを引き起こしている。
※Gateau(ガトー)とはフランス語で『菓子』の事を指す。


3.【お菓子のマジック&素敵な名称】

 なんと無くお菓子を食べている方が殆どだろう。でも歴史ある菓子には、とても素敵な名前が付けられている。特に古くから郷土に根付いた菓子、いわゆる郷土伝統菓子である。その事を知り、その菓子を、その背景を想いながら食すると、さらに楽しみが増すと思う。全てを網羅する事は非常に壮大で困難なため、一般的に知られている伝統菓子、洋菓子について説明していこう思う。
※ここから先は、論文調だと楽しさが、伝わらないので、ちょっとくだけて書きますね・・・。
1.『マドレーヌ』・・・
★マジック 【1】 
【全卵+砂糖+小麦粉+溶かしバター+果実の表皮】等で作られる。 
 マドレーヌについては様々な説があり有力な説はルイ十五世の義父であるフランスのロレーヌ地方を治めていたスタニスラル・レクチンスキー王(元ポーランド)付きの女性料理人の名前がマドレーヌという説である。
他には、毎朝早い時間、静かな宮殿の庭に焼きたての温かい菓子を売りにくる美しい乙女がいて、彼女の名前がマドレーヌであったという説。町はこの美しいマドレーヌの噂をし、それは人々の喜び、楽しみでもあった。この他にも色々な説があるが、いずれにせよ!あの小さく、可愛らしい貝殻型のマドレーヌはロレーヌ地方のコメルシーと言う町の銘菓として現在に至り、またその名を知らしめている。さあ作ってみよう。ポイントは生地をゆっくり休ませ、高温で焼く。生地内に『マグマ状態』が起こればマドレーヌのおへそが出来る。おへそが出来れば成功です。袋に入れて一日置き召し上がれ。



2『フィナンシェ』・・・
★マジック【2】
【水様化した卵白+砂糖+アーモンド+焦がしバター】等で作られる。
 最近は、焼き菓子ギフトの中に入っている定番焼き菓子の一つであり、ドゥミセック(半乾き菓子)の代表的な存在でもある。
名前の由来はフランス語で(金融家)(資本家)と言う意味である。長方形で底が表になり、(金の延べ棒)を思い浮かべられる焼き菓子である。発祥は、証券取引所近くに店を構えた菓子職人ラヌが考案したと言われている。忙しい美食家のフィナンシェ達がスーツを汚さずに素早く食べられる様にこのお菓子を考えだした。現在こんなに手軽で美味しい焼き菓子は無いのではないか?なぜ菓子名を『ラヌ』にしなかったのかと思ってしまう。そうしたら菓子名が自分の名前として語り継がれただろう。でもフィナンシェとして後世に残された功績は、
一八九〇年発刊の
菓子職人ピエール・ラカン著 
Le Memorial historique et
geograqhique de la patisserie  【フランス菓子覚書】
に記されている事だけはお伝えしたい。
では作ってみよう!
ポイントはバターを鍋に入れて火にかけ、 フエ(泡立て器)で混ぜながら香りよい細かい粒子の焦がしバターを作る事。そうすると、焦がしバターの香りがアーモンドのふっくらとした食感とマッチし、さらに水様化した卵白が『ひき』を弱くし、口溶けを良くしている。何とも言えない歯切れの良い美味しい焼き菓子はこのフィナンシェだけかもしれない。私の一番好きな焼き菓子で、菓子屋に行ったら必ず買っています!



3『クレープ』・・・
★マジック【3】
【卵+牛乳+砂糖+小麦粉+溶かしバター】×【音+温度】等で作られる。 
 あの薄さ、あの食感、あのちりめん模様のクレープ。『絹のような』と言う意味を持つクレープに甘いモノまたは、チーズやハムを包み食するおいしさは、たまらない一品です。
さて、クレープの作り方を知ってますか?
生地はとても簡単。ダマにならない様に混ぜるだけ。『でも焼くのは・・・』
難しいと思ってはいませんか?クレープを焼く秘訣は、音・温度が大切。生地を流す時の音は、『シュワー』で、『ジュー』という音がする場合は熱すぎる。クレープは、フライパンの温度が大切である。フライパンを身体の敏感な所(手、顔)に近づけて(火傷はしない様に充分に注意する事。)身体で体感しよう。さあ!チャレンジしよう。フライパンに生地を流した時の音は!【シュワー】です。
 クレープの歴史を振り返ると十六世紀頃にはじまったとされている。二月二日(聖燭祭)の聖母マリアお清めの日に信者たちがキャンドルに火をともし行進し、その日に焼いていたのが発端らしい。当日はこのクレープで運試しが行われ、右手に金貨、左手にフライパン。そして焼けたクレープを空中に高くほおりあげ、元のフライパンに戻すことが出来たらその年は幸運が訪れ、お金に困らない。
さあ!空に向かってやってみよう。でも失敗したら・・・・・もう一回・・もう1回。

4『ミル=フィユ』・・・
★マジック【4】
【冷やした小麦粉+塩+冷水+酢】+【バター】×【冷蔵】等で作られる。
 これで作られる生地はまだ、ミル=フィユとは呼ばず、日本では通称パイ生地(折りパイ)と呼ばれているものである。正式にはフィユタージュと呼び、これを焼き、
クレームパティシエール(カスタード)と苺をサンドしてミル=フイユの完成である。では、この通称パイ生地の素晴らしさを感じて欲しい。このフイユタージュを作るポイントは、小麦粉に含まれる小麦蛋白のグルテン(麩質)を充分に休ませ、折り込む時にバターを溶かさない事。この製法は簡単には説明出来ないので詳しく説明する。まず、小麦粉、水などで練ったもの(デトランプ)を冷蔵庫で休ませる。次にそのデトランプ(※以下、デトランプの事を生地と略する。)を伸ばし、バターを包み込み、中に入っているバターを【刺激】してから、めん棒で折り込んでゆく。(途中、冷蔵庫で休ませながら)そうすると、バターの層、生地の層が幾重にも折り重なり目に見えない位の細かさで層が潰れず出来上がる。
通常は、三つ折りと言う作業を合計六回。
では層の数は!三つ折りなので全て×三となり、中に包まれているバターの層だけで数えると、一×三=三。三×三=九。九×三=二七。二七×三=八一・・・最後の六回目には、
なんと! 七二九層になり、生地の層と併せると一〇〇〇層以上になる。
では焼いてみましょう!まず、このフィユタージュの中に含まれているバターの層が沸騰状態になり、生地の層を跳ね上げる。生地の層は、水分が水蒸気になり層全体を持ち上げる。バターと、バターの間には生地があり、生地と生地の間にはバターがある。互いに相まみえない油と水分の層のために一枚、一枚の間に空間が生じ、層同士が反発し、葉っぱを重ねたようになる。その後、バターの風味は生地に吸収され、水分はさらに蒸発され『パリパリ』の食感のフイユタージュが焼き上がる。このフイユタージュに美味しいクレームパティシエールと苺をサンドし、大きな苺を飾り、その上から粉砂糖を少しふる。
冷蔵庫で少し冷やしてからカットすると完成である。
ふと、断面を見ると!何と『千枚の葉』の様に見えるではないか!すなわち、ミル=フィユの『ミル』は千、『フィユ』は葉という意味で、名前の由来に繋がる。
何とも言えないこのおいしさを是非、味わって欲しいものである。
美食家としても名高い
グリモ・ド・ラ・レイニエールは
ミル=フィユを
『天才によって作られ、最も器用な手で捏ねられたに違いない』と賞賛した。
はらはらと散りゆく落ち葉の様に思ったに違いなく、また、崩れるものは食べにくかったのでは?・・・・と思う。私もいつも食べ方には迷う。時に美味しいモノは食べにくい・・・・。




5『ショートケーキ』・・・
★マジック【5】
【綺麗なボール+全卵+砂糖+人肌】×【泡立て】+【小麦粉+熱したバター】で作られる。
 これは通称スポンジ生地と呼ばれる。本来はビスキュイ(ラテン語のビスとフランス語のキュイの合成語で二度焼くと言う意味)と呼ばれている中のジェノワーズと言う生地がショートケーキとして使われるのが一般的である。この苺、スポンジ生地、生クリームのシンプルな組み合わせのショートケーキは日本生まれの洋菓子である。昭和初期、フランスで修行を終えた日本人が簡単で美味しいこのショートケーキを考案した。本来、ショートケーキのショートの意味は(サクサクした)という意味の言葉で、(短い・小さい)という意味では無い。でもなぜショートケーキがサクサク?と思われる方がほとんどだろう。この名前の由来はアメリカにあるらしい。アメリカにストロベリー・ショートケークと呼ばれているお菓子があり、ビスケット生地(サクサクしたもの)に苺とクリームをはさんだというものであった。それを、改良して日本人好みの柔らかいスポンジ生地にしてしまい、周りも上も全部クリームで塗ってしまい、名前の由来も考えず、サクサク感が無くなっても、とても美味しくできたのでショートケーキとして通してしまったのでは無いだろうか?という説である。さらに何かの拍子で(ショートタイムに出来る菓子)と解釈されてしまったのでは無いかと推測される。あくまで推測の話ですが・・・・
では作ってみよう!
綺麗なボールに元気の良い新鮮を卵を割り、
砂糖を加え混ぜる。卵白と違い全卵は泡立ちにくいため人肌まで温める。温度が上昇すると表面張力が弱まり泡立ちが良くなる。ではリズムよく泡立てよう!取り込まれる空気を大切に大切に!
充分に泡立ったら、小麦粉を加え混ぜよう。混ぜ方も混ぜすぎず、混ぜなさすぎず。絶妙なタイミングでバターを加え混ぜ、中温でゆっくりと焼こう。待つ事二五分!ふっくら柔らかいスポンジケーキの出来上がり。
冷めたら生クリーム+砂糖+苺で組み立てて完成する。こんな簡単で美味しいケーキは日本で生まれ、日本人好みになった訳も良く分かる。
 今では、日本での誕生日、クリスマスの定番になっており、一般家庭で一番人気のあるケーキでもある。余談ですが、フランスのクリスマスケーキは【ビッシュ・ドゥ・ノエル】という菓子である。
この話は又、別の時に・・・
4.【おわりに】
 〔お菓子のマジックを知ってますか?〕
~卵×砂糖+小麦粉+バター×α=(^^) ~
のタイトルは、まだまだ語り尽くせぬ事である。
 今回、登場した菓子のほどんどが、卵、砂糖、小麦粉、バターが『主材料』である。読まれた方は気付きましたか?この菓子にとっての主材料は肉や魚と違い、形の無いもの(※粉状、液状、粒子、溶解する。)でもある。お菓子作りとは、『形の無い素材から形を作る』いや、『育てた』という観点から観ても、とても素敵なお菓子達になる。私はこの様なお菓子に魅せられてきた。皆さんにほんの少しだけでもわかって戴けたら幸いである。
タイトルでもある『×α』は、製法であり、材料であり、感情である。それは、未知なるものであり、今後、まだまだ進化していく。未来がとても楽しみだ。では、今日はどんなお菓子マジックをしようかな。今日もワクワクしてきました・・・・。(^^)

参考文献
 万国お菓子物語 吉田菊次郎 著 他


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