ヒトヤスミ

Angel





   彼女には少し分からない部分があった

   いつも頓珍漢なことを言っていた

   どういう意味と聞いても彼女は教えてくれない

   でもそんな彼女が僕にとってのAngelだった



   右目じりのほくろ

   涙の通り道にほくろがある人はいつも心が泣いていると言うが彼女はどうだったんだろう

   笑顔の下では涙を流していたのだろうか

   だったら僕はその涙を拭ってあげたかったな

   せめてもの罪滅ぼしに



   右足首内側の大きな傷

   どうして隠さないの?女の子なのに

   「この傷はあたし自身なの。これを隠したらあたしの心まで隠れちゃうから」

   やはり僕には難しかった

   でも隠さないところが、彼女だった



   彼女の黒髪

   彼女は肩下まである髪を後ろでまとめていた

   やわらかい匂いがした

   一歩一歩、歩くごとにまるで踊っているようにゆれる髪が僕は好きだった



   彼女はいつも笑っていた

   喜怒哀楽を知らないのかと言うほどに

   でもその笑顔は僕を包み込むようだった

   でももう見れない

   ここに彼女はいないから



   彼女には少し分からない部分があった

   いつも頓珍漢なことを言っていた

   どういう意味と聞いても彼女は教えてくれない

   でもそんな彼女が僕にとってのAngelだった



   ありがとう



   もう眠って良いよ


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