宇宙は本の箱

     宇宙は本の箱

愛しき哉


私の古い同僚で・・・悪女になったという人を思い出す。
一生と決めた人に抱いて貰えず、以後、悪女になったんだそうで、
一生愛しますとまで言われていたのに、
処女は決して抱かないと決めた当の本人から聞いたのだから、それはそうなのだろう。

私はある事で彼女にとても気にいられてしまって、短い間だったけどよく一緒にいたから、
ある朝、あろうことか、とんでもない人を相手に処女を捨ててしまった事を
私だけが感じてしまって・・・

愛憎のようなものか、運命というものか・・・
馬鹿というか、切ないというか・・・私の方が俯いてしまった。
彼女は何も言わなかったけれど、そういう・・・胸にこたえた日があって、
そういうことは年月がたつほどに忘れられなくなっている。

彼女は好きな先輩のように、意気地なしの男性を小気味よいほどいじめたし、
可愛い若い男性は僕にするような凄い女性だったから、
年とって年季が入って、素敵なマダ~ムになって、
変らず僕なんか連れて、どこかのムードある店で、お酒なんか飲んでるのかもしれない。。。

才気煥発な彼女はツンといつもすましていて、
それだのにある夜を境に私にだけは甘えてきて・・・・
もしかしたら頭脳明晰の素敵なマダ~ムになっているかもしれない。。。


いつも一緒にいた女の子達より、どんなに好かれたって、やっぱりちょっと苦手だったあの娘の事をより多く思い出しては愛しがってる自分に気づく時、
人間っておかしいって思う。
ほんと、おかしい。
あの娘は誰かに優しくされたことがなかったんだろうか。
私はただ寒そうなあの娘に、
自分の着ていた長いコートをかけてあげただけだったんだけれども。。。
うつらうつら寝ているあの娘をただ見ていただけだったんだけれども。。。











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