宇宙は本の箱

     宇宙は本の箱

あの道の角で



ふと見れば懐かしき顔。

何十年、習い事ばかりの船場のこいさんは今日も帽子を被ってた。

懐かしいけど声はかけずに往く。

水引草。

今年もいらぬくらい咲きました。

まだ咲いてますよ、おばあさん。





何年前かそこで、その日はなんとなくそっちの道を歩きたくなっって引き返していったちょうどそこで、諭しても諭しても私を先生と呼んだ人にばったり出くわしたんだった。
「先生、あいたかった!」
私はその人の膨れた腕を手にとって、手の平を包んでしばし道端で瞑目した。
毎朝、天然の野菜ジュースとなにがしかの食べ物を持って来ていたその人を、鬱陶しくて叱った。そういう高価な食べ物は家族皆で食べるようにと、終いには持って帰らせた。あの人は熱心なクリスチャンで、そうすることで救われていたのかもしれないが、色んな人が持ってくる食べ物が机の上に山積みになっているのを見るとなんとなく腹立たしくなったのだ。受け入れてあげればよかったのに、私はただの市井の探求者で先生と呼ばれるような者ではなく、苦を手離すことは出来ても、苦を喜んで引き寄せるところまでには至れないのだった。


あの道を歩く時にはいつも・・・

きっと いつまでも思い出す。

「先生の先生なら、私はぜったい信じます」

そんな言葉。

そして 自分のふがいなさ。


お元気ですか?






© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: