宇宙は本の箱

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恋愛小説-ある十年の物語〈5〉

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(タイトルの「恋愛小説」は、ウンジュの映画の邦訳が「永遠の片想い」だったことによります。互いに片想いだった私達の回想記にぴったりです。写真はウンジュと親友のパダ)

私はしんちゃんが「友達になろう」と言ったから友達になった。
「彼女になってくれ」と言ってきたのなら、それは即座に断った筈だ。
私は独身主義だったが好きな人はいたし、私の想いは一生もんだから、そこに他の人が入る余地はなかった。当然しんちゃんも私の恋は知っていた。

その想いもいつかは変わる。しんちゃんはそう言った。
その想いは確かに変わった。けれどそれはしんちゃんが思っていたようにではなかった。
一枚の年賀状を前にその恋が昇華された頃、わかることがあった。

恋か友情かという時、私は恋を選ばない ということ。

恋はある種、狂気である。ハート型。円ではない。恋人への信頼度など甚だ疑問だ。
けれど親友への信頼は絶対である。尊敬も揺らがない。もしかすると自分以上にその魂を信じているかもしれず。

一週間に一度が一ヶ月に一度になり、三ヶ月に一度が半年に一度になり、それでも私がしんちゃんに会っていたのは、しんちゃんという人間が尊敬に値したからだ。
半年ぶりか一年ぶりかで会った時というのは、大方は連絡の取れない私からの電話待ちという状態の時だった。

私はなぜ時に思い出したように電話をしようと思うのか?
答えは簡単。失いたくない人だったからだ。
これから先どれだけ生きようと、しんちゃんのような人が何人現われるか・・・
答えは明瞭だった。

つきあって一年目か二年目かの夏だった。
誘いを断って、それでもまた結婚のことを言うしんちゃんに半ば呆れて、

 いいよ。じゃー結婚する。

そう言ったら、

 俺、それ、電話やなしに、太陽の下で、俺の目を見て言うて欲しかった。
 そんな大事なことは電話で話すようなことやないって、俺、思うんや。
 お互いにちゃんと相手の目を見て。
 もし俺が詐欺師やったらどうする?

この時、しんちゃんは、その真摯さゆえに、たった一度の結婚のチャンスを逃したのだ。


私は全然女らしくなかったせいか、一人遊びの時以外は、子供の頃からいつも大抵男性の中にいた。いつもなぜか自然そうなっていた。
不特定多数の人と付き合っている。一部の人達にはいつも悪い女だと言われていた。
世間の目とはそういうもので、ひどいいじめにあったこともあるが、私はそんなことは全然意に介さなかった。
異性であれば恋愛対象に見える、脳みそが豆腐か何かで出来ていそうな者のやりそうなことである。私はそういう者を掌の上で転がして楽しむことも出来る。
それをやってみせたこともある。たかだか十何年かしか生きて来なかった者が、三十代四十代を掌に乗せる。下らないゲームだった。圧勝というやつは死にたくなるほどつまらない。
げんなりした。
私は私である。


私の機嫌があまり良くない日、なら、俺がそっちに行くからというので、
一度だけ、私の住んでいた街で会ったことがあった。
何も話すことがなかった。話したい気分でもなかった。
不機嫌な私にしんちゃんが聞いた。

 あんた、自分をほかのおんなのこと違うと思うてるやろ?

 思ってる。

 好きな言葉ってある?

 意志。信念。

 意志って凄いことや。信念って難しいことや。

 一生って意味。永遠っていう話。

私は結婚を言い出す男には誰にでも大抵辛くあたった。
その日はニコリともしなかった。

 しんちゃんは嘘つきだもの。友達って言ったもの。

 一番最初、新鮮なこがおるな~思うたんや。
 あわんくなっても、年をとっても、いつまでもそのままでいろよ。


※思い出話というのはどこかが飛んでいて、どこかでまた思い出し、
 どこかを忘れ、どこかがどこかと混ざり・・・という具合で、
 あとでまた書き足し、削除等々、どうでもいいことをやっている次第です。
 暇なんでしょう。

 「暇があるなら精神統一せよ!」
  ↑自分に。



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