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August 30, 2025
カテゴリ： 海外のミステリー＆ファンタジー小説
みなさんこんばんは。9月6日、悠仁さまの成年式が行われます。今日はまるでデュ・モーリア版太陽がいっぱいみたいな作品を紹介します。
スケープゴート
The Scapegoat
フネ・デュ・モーリア
務台夏子
創元推理文庫
「わたしは異邦人であり、この人たちの一員ではない。何年にもわたる研究、何年にもわたる勉強、彼らの言語を流暢にしゃべること、彼らの歴史を教えていること、彼らの文化を解説していることは、わたしを人そのものに近づかせてはくれなかった。」
「わたしはフランス人にはなれない。彼らの一員には決して。」
旅先のフランスで英国人ジョンは、居場所のなさを嘆いていた。ならばアイデンティティの源、イギリスに戻ればすむではないか、と思われるが、そう簡単ではない。
求めても得られないものだから、よけい渇望が強くなる。そんな時、ふいに“それ”が手に入る。それも、思わぬかたちで。
大修道院に行くしかないと思い定めていたジョンは、自分と瓜ふたつの男ジャンに出会う。ジャンは、ジョンと異なり、帰属よりも自由を求めていた。ふたりで飲んだ翌朝目覚めるとジャンの姿はなく、持ち物全てが消えていた。呆然とするジョンは、彼を主人と思い込んだ運転手に伯爵であるジャンの城に連れていかれる。人違いだと言ってその場を去るよりも、新たに得た帰属場所と家族に、真摯に接しようとするジョン。ところがこの家族は様々な問題を抱えていた。
事情を知らないジョンがちぐはぐな答えをしても、もともと風変わりなジャンを知る周囲は「いつものこと」と取り合わない。その間にジョンが必要な情報を得て、対応していく。ジャンが持たない性格全てを持っているジョンに、周囲が癒されていく。てっきりこれはハッピーエンドかと思いきや。いや、これも一種のハッピーエンドと言えるのだろう。
本書とレベッカ〈上〉の共通テーマは「自分と近しい関係に置かれた第三者との対峙により成長する自分」である。同種のテーマでパトリシア・ハイスミスの『太陽がいっぱい』があるが、デュ・モーリアは随分とロマンチストだ。どちらにも、悲劇ではなく救いをもたらすのだから。
スケープゴート／ダフネ・デュ・モーリア／務台夏子【1000円以上送料無料】 bookfan 2号店 楽天市場店
スケープゴート
The Scapegoat
フネ・デュ・モーリア
務台夏子
創元推理文庫
「わたしは異邦人であり、この人たちの一員ではない。何年にもわたる研究、何年にもわたる勉強、彼らの言語を流暢にしゃべること、彼らの歴史を教えていること、彼らの文化を解説していることは、わたしを人そのものに近づかせてはくれなかった。」
「わたしはフランス人にはなれない。彼らの一員には決して。」
旅先のフランスで英国人ジョンは、居場所のなさを嘆いていた。ならばアイデンティティの源、イギリスに戻ればすむではないか、と思われるが、そう簡単ではない。
求めても得られないものだから、よけい渇望が強くなる。そんな時、ふいに“それ”が手に入る。それも、思わぬかたちで。
大修道院に行くしかないと思い定めていたジョンは、自分と瓜ふたつの男ジャンに出会う。ジャンは、ジョンと異なり、帰属よりも自由を求めていた。ふたりで飲んだ翌朝目覚めるとジャンの姿はなく、持ち物全てが消えていた。呆然とするジョンは、彼を主人と思い込んだ運転手に伯爵であるジャンの城に連れていかれる。人違いだと言ってその場を去るよりも、新たに得た帰属場所と家族に、真摯に接しようとするジョン。ところがこの家族は様々な問題を抱えていた。
事情を知らないジョンがちぐはぐな答えをしても、もともと風変わりなジャンを知る周囲は「いつものこと」と取り合わない。その間にジョンが必要な情報を得て、対応していく。ジャンが持たない性格全てを持っているジョンに、周囲が癒されていく。てっきりこれはハッピーエンドかと思いきや。いや、これも一種のハッピーエンドと言えるのだろう。
本書とレベッカ〈上〉の共通テーマは「自分と近しい関係に置かれた第三者との対峙により成長する自分」である。同種のテーマでパトリシア・ハイスミスの『太陽がいっぱい』があるが、デュ・モーリアは随分とロマンチストだ。どちらにも、悲劇ではなく救いをもたらすのだから。
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