JOKER†TRICK

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「お前だけには知っていて欲しいんだ。
 いや……、もう隠す必要もなくなったと言う事でもあるが」


””覇竜という生き物を知っているか?””





ダルクに事実を打ち明けられてから3日。
ディビナは夜な夜な恐ろしい夢を見ていた。
目覚めると、決まって吐き気を催し、異常なまでの圧迫感を感じる。
まるで頭の中であの瞬間だけが繰り返される様な感覚。

”アカムトルム”


その名前がひっきりなしに響く。

幾つもの村を壊滅させ、2つもの街を半壊させたと。
強靱な顎を持ち、生態系すらも破壊してしまう生物であるとも聞かされた。


そして……。
一番にディビナを苦しめた事実。

”お前の両親は……その……”



「覇竜に立ち向かい、亡くなったそうだ」

「は……?」


「崩壊した街の死亡者リストに、お前とファミリーネームが同じ男女がいてな。
 変わった名前だからまさかと思って、勝手に調べさせてもらった……」

「嘘だよ……。父さんと母さんは一流のハンターなんだ……」
「気の毒だが、事実だ」

「嘘だ……嘘だ……そんなの……」
「ディビナ……」
「嘘だ……そんな……」


「ディビナ!!!」



「おい、ディビナ」

ダルクの声で、ディビナは現実に引き戻された。
まだ思考が麻痺したまま、うやむやな返事をする。

「しっかりしろ。さぁ、アスターさんに会いに行くぞ」


ディビナは、ダルク、シャルと共にドンドルマへと旅立った。






道中。
当然、人の通らない道にはモンスター達が出てくる。
進む事を重視した最小限の戦闘の中、ディビナの槍捌きには迷いがあった。
整備したシャルのボウガンはジャム (弾詰まり) を起こし、
ガンランスの弾薬装填も雑だった。

ディビナの様子に気付きつつも、声をかけられないシャル。
一行はそのままドンドルマへと到着する


「酒場で待っていてくれ、彼を呼んでくる」
そう言ってダルクはどこかへ行ってしまった。
シャルは無言でジュースを一杯だけ飲み干すと、何か言いたそうな眼をしたまま座っていた。

そんな中で、ディビナは両親の事を考えていた。
そして残酷な光景だけが、想像の中で繰り返される。

母が傷を受け、父親が駆け寄る。
得体の知れない黒い巨大なモンスターが上体をあげ、そして……。




「あ~、お初さん。俺がアスターだ」
初めて聞く声に現実に引き戻された。
そこにはダルクと、ダルクが言っていたアスターという男の姿があった。

「早速で申し訳ないが、事は急を要する」
「大丈夫、すぐに話を進めてください」

ダルクの返事に頷き、アスターは話し始めた。

「現在調査中の古文書(昨日解読は終わった)に、覇竜アカムトルムについての記述があった。
 ハンターズギルドではその情報に基づき、
 王国との会議の結果、騎士団の力を借りて奴をシヴ火山の奥地へと誘い込む事に成功したのだ」

「……覇竜が今あのシヴ山に?」
「そういうことだ」

4人の間の空気が緊張で満たされる。
誰もがこの先の展開を予想していた……。


「そこで我々に討伐依頼が出たと……?」
「ああ。できれば、しあさってまでには引き受けてもらいたい。
 火山の奥地から覇竜が移動するのも、そう先の話じゃない」



その夜。
ディビナは1人で食事を取っていた。
懐かしいドンドルマの香りを感じつつ、夜の街並みを見渡す。
家々にはまばらながらもまだ多く明かりが灯り、とても美しい。


不意に、ノックの音がした。
慌ててドアに駆け寄り、小さな穴から外を伺う。


---見ると、シャルが立っていた。

「どうしたの?」
「……なんでもないわよ」


沈黙が場を支配しだした。
妙な空気。2人は急に息苦しさを覚えた。



「……ただ、昼間の整備に文句を言いに来ただけ」
「あぁ……あれは……ゴメン……」

途端にシャルは口をとがらせる。
「そうよ!お陰で死ぬかと思った!」



再びの沈黙の後、シャルはきびすを返した。
そのまま、一言だけ告げて去っていった。

「……大丈夫、あなた本当は強いから」








そして翌朝。
一行は意を決して再び旅立つ。
アスターも加わった4人組で、ドンドルマからシヴ火山へと。


《次章 本当の想い へ続く》


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