フラムの日々

クロノス小説~血を喰らう砂~


血を喰らう砂

橋を渡り終えたルシアが見た光景は草地の緑からいきなり砂漠の色にと変わっていた光景だった。
砂漠の砂に足を踏み入れると砂がサラサラと崩れ落ちてしまいそうだ。
アーネストが率いる部隊が先頭を行き、その後ろをヴァレンの部隊、ルシアが続いていた。
周りの人が次々とマント代わりのフードを被るのを見るとルシアも背中に付いたフードを頭に被せた。
ルシアも砂地へ踏み込んだ。踏み込んだ瞬間にまるで自分たちを焼き殺すように輝く太陽が真上を指した。
砂も焼けるごとく熱い。上下から迫りくる熱に耐えながらルシア達は歩き続けた。
呼吸をする度に胸が焼けて噎せ返りそうだ。
ルシアはタルタノス戦争の最期の地がこのような砂漠になってしまった事を恐ろしく思って回りを深々と眺めた。
そして日が落ちるまで皆黙々と歩き続け、完全に日が落ちてからアーネストが一つの遺跡を見つけた。
遺跡に入ると床は砂塗れだったが、焚き火を起こすと皆その周りに座り込み水を飲むやら食料を貪っていた。
「まぁ今日はモンスターとも会わないで済みましたね。」
ヴァレンは水を飲んで一息つくと口を開いた。ルシアもそれを聞くと頷いた。
「だが、夜は順番に見張りだ。いいな?」
アーネストはフードを下ろすと黒い髪を整えてルシアを見る。
「そういえばお前、名前は何って言う。」
ルシアは食べかけたパンに半分溶けかけているバターを塗りながら、「ルシアです」と答えた。
アーネストは少し目を伏せるとさらに続けて「下の名前と合わせたら?」と言う。
ルシアは不思議そうに首を傾げると一瞬周りを見る。自分にほぼ全員の視線が向けられている。
「ルシア・ローウェンですけど・・・」
アーネストは微かに唇を動かしたが言葉は聞き取れなかった。
(まさか・・・)と口を動かしたように思えたがルシアは気にせず、パンにバターをたっぷり塗ると満足そうに食べだした。
「あぁ、そういえば注意したいことがあります。」
ヴァレンは思い当たったように顔を上げると座り込んだまま言った。
「万が一ですが、この部隊から外れたときにモートゥースという巨大な斧を持った敵に見つかったら直ぐに逃げなさい。逃げ切れればですが。」
ヴァレンは皮肉交じりで言う。ルシアは少し不安になり口を開いた。
「それって危険なんですか?」
「えぇ、僕でも少し苦戦しますね。」
ルシアはあの時、シュレイダー戦のときに使ったあの杖があればほんの一瞬で敵なんて倒せるだろうと思ったが、そこでは言わなかった。
アーネストはくだらなそうに鼻を鳴らすと「お前らのような奴がモートゥースなんかに見つかって追いかけられたらほぼ確実に死ぬさ。」と憎まれ口を叩いた。
ルシアはとにかくモートゥースとは危険な怪物なのだと頭に叩き込んだ。
「まぁ、逸れる事はまずないと思いますが、万が一ですから。知っておいて損はしませんよ。」
ヴァレンはいつも通りに微笑むと荷物から水を取り出した。
夜のシティス=テラは息が白く出るくらい寒かった。ルシアは順番に見張りが回ってきては見張り、終えたら寝るを繰り返した。それでも十分の睡眠ができた。
次の日の暁の頃に、ルシアはヴァレンに起こされた。地面の砂が微かに太陽に焼かれ、暖かくなってきていた。
「日が昇る前に少しでも移動しましょう。日が出てきてはこちらも持たないので。」ヴァレンが言うとルシアは黙って頷いた。
日が段々と頭上へと上がって来る。それと共に額に汗が滲んでくる。
「お前ら!止まれ!」と前方からアーネストの叫ぶ声が聞こえた。
ルシアは慌てて止まると鞘からセルキスソードを抜いた。前方を見ると大量の鳥が群れで飛んでくる。
「トゥリーバーの群れだ!!」
兵士達が一斉に声をあげて武器を構える。
素早くバルキリー達が前線へ出て弓を放っていた。
1匹、又1匹とトゥリーバーが奇声を上げて地面へと落ちていく。
ルシアはセルキスソードを片手に持ちながらトゥリーバーの群れへと走りこんだ。
一番速く入り込んだのはルシアだった。ルシアは自分の足の速さだけには自信があった。しかし砂漠では足を捕られて上手く動けないが他兵士たちよりは速く走れた。
次々と斬り捨てていくとトゥリーバーの鋭いくちばしがルシアの左肩を突いてルシアは倒れこんだ。数匹のトゥリーバーが自分の頭上で旋回して一気に急降下してくる!
ルシアは咄嗟に砂を握り締め急降下してきたトゥリーバーに思いっきり投げつけた。
砂が目に入ったのだろうかトゥリーバーはあらぬ方向へと飛びずさった。
ルシアは砂のついた髪を振るわすと剣を構えて空を見上げた。
1匹1匹倒していてもきりが無い!ルシアは空中を飛び回るトゥリーバーを見た。
「空ですかぁ。空なら落とせばいいんですよね?」
ヴァレンがルシアのすぐ横に立ち止まり詠唱を開始した。
「ヴァレンさん?こんな前線で・・・」しかしヴァレンは何も答えずにただ杖をかざして精神を集中させていた。
「魔を滅ぼす聖光、槍の雨となりて降り注げ!アストラルストーム!!」
ヴァレンの詠唱が終わったとともに上空を警戒していたルシアの目に太陽の光より眩しい光が入った。
「うわっ!」ルシアは咄嗟に目を抑えて伏せた。
目を開けると光の入った後だけがぼんやりと目に映っていたがヴァレンの足元には光の魔方陣のようなものが輝いていた。
さらにトゥリーバーの群れを見上げると光の雨が降り注ぎ、トゥリーバーが断末魔をあげて次々と砂に埋もれていっていた。
トゥリーバーからは光に貫かれた部分から血が出ていた。光に激しく照らされると痛いのだろうか・・・ルシアは光を睨むようにして見た。
光が治まったと思うとトゥリーバーは全て落下しており痙攣して動いてる物もいたが、それを見つけた兵士たちに無残に引き裂かれた。
ヴァレンは満足そうに微笑むと咳払いをしてこう言った。
「あぁ、そうそう。トゥリーバーの肉は食べられますよ~。」
ヴァレンが言うとルシアは1匹のトゥリーバーの足を掴みあげた。
「トゥリーバーが主に食らうサボテン液には人間に有害な毒が入っている。料理人でもない限り、トゥリーバーなんて食えるわけがないだろう。」
アーネストは鼻を鳴らして呟くと、他の兵士達も微笑していた。
「ヴァレンはもちろん冗談でいいましたよ~。まぁ彼は本気らしいですが。。。」
ヴァレンの悪戯めいた微笑がこちらに向けられる。
ルシアは頬を赤らめ、トゥリーバーを地面に投げ捨てた。
「まぁまぁ、恥ずかしい思いをして体験したことは身に染みて覚えてられますから。良い知識になったということで!」
ヴァレンは声を上げて笑うと「ムチャクチャだ・・・この人・・・」とルシアは微かに呟いた。

日が自分の調度正面に太陽が出かけている時に、いきなり太陽に雲がかかり、いきなり涼しくなり始めた。
ルシアはこれなら調度良いやと思い、ずっとこのまま太陽が隠れていれば良いと思った。
しかし、前方を歩くヴァレンが急に足を止めた。
「この気象・・・まさか・・・」
「ヴァレンさん?どうかしたんですか?」
ルシアが問いかけるとヴァレンは首を横に振った。
「いいえ、少し嫌な事を思い出してしまって。もう少し確信があってからにしましょう。」
ルシアは下唇を出して首を傾げたが、ヴァレンは何も言わずに、ただ考え込んでいるようにして歩いていた。
正直ルシアも冷たい風が吹いてくるたびに嫌な予感をがした。
空を見上げても太陽も無く、濁った様な色の雲が満遍なく敷かれているようだった。
ヴァレンもとうとうアーネストのもとへ駆けて行き、何やら話している様子をルシアはいつもの様に見ていた。
「これはやはり海の方面からの『悪魔の息吹(デビルズブレス)』ですね。」
ヴァレンが言うとアーネストは黙って頷いた。
「ここで部隊壊滅ってのは俺もゴメンだからな。とりあえず非難できる遺跡でも探すしかないな。アレが来るのも時間の問題だろう。」
「そうですね。犠牲は最小限に抑えましょう。」
二人とも犠牲は最小限ということを第一にし、アーネストは自分の率いる部隊に説明を始めていた。
ヴァレンもそれを見ると自分の部隊のへと戻った
ルシア達も全てを察した上でヴァレンの硬い表情を見つめていた。
「皆さん。『悪魔の息吹(デビルズブレス)は知っていますね?」
そういうとルシア以外の全員が頷き、戸惑いながらもルシアも頷いてしまった。しかし、ルシアが知らないという様にヴァレンを見ると、皮肉まじりの微笑みを浮かべ、「後で教えますよ。」と表情が語っていた。
「そのデビルズブレスがこちらに向かってきているのだと思います。この気候も怪しいですし、魔物の気配も感じられません。おそらく少なくとも魔物は巣に戻ったのでしょうね。ひとまずは、部隊壊滅から逃れるために遺跡を探してそこに隠れます。いいですね?」
兵士たちは今すぐそうしてほしいとばかりに頷いてる様子だった。
ルシアは遺跡を探している途中にヴァレンにデビルズブレスのことを聞き、迅速に行動するのを心がけた。さもなくば、ここでデビルズブレスと言う全てを破壊する暴風雨に飲まれて五体をばらばらに引き千切られるだろう。
そして風もさらに強くなり、その風から微かな湿気感があるのが分かる。しかし、遺跡が見つかったのが救いだったのかもしれない。
「この遺跡には全員は入れないようですね。」
ヴァレンが残念そうに肩を落とすとルシアが言った。
「こんなボロな遺跡で耐え切れるんですか?これ・・・」
「大丈夫ですよ。いままでずっとデビルズブレスに耐えてきた遺跡なんですから。運が悪くない限り壊れはしないでしょう。」
「なんだかヴァレンさんっていつもそうですよね・・・」
「あはは、物事をはっきりとした方向でしか捉えられないので。」
ヴァレンはこんな状況に似合わない声で笑い、直ぐにまじめな顔に戻って指示を出した。
「ここにはまだ任務に慣れてない初心者たちに残ってもらいましょうか。僕たちは他の遺跡を探すので、デビルズブレスが去ったら直ぐに迎えに来ますよ。」
ヴァレンはそういうとアーネストに振り返り、アーネストも頷いていた。
「それでは、コエリス神の祝福があらんことを。」
そういい残すと、ヴァレン達は風に舞う砂の中へと歩いていき、ついには砂の中へ消えた。
ルシア達は直ぐに遺跡の中に入ると多くのものが膝を抱えてフードを頭に被った。中には十字架のペンダントを取り出して祈りだすものも居た。
遺跡の石の隙間から冷たく刺すような風が吹き込む。そろそろなのだろうか。
ルシアはヴァレン達が無事、遺跡を見つけたのかが不安になってきた。
しかしそんなことを考えているといつの間にか風は最大まで強く、遺跡を吹き飛ばさんとばかりに吹き荒れる!
しばらくすると、ルシアの寄りかかってる遺跡の壁の外側から川が流れるような音が壁を打ち付けている。
そして遺跡の間からまるで石の隙間から水が吹き出てくるように砂が流れ込む!外から砂が壁に当たって音が出ているのだ!
こんなものに飲まれたら砂に切り刻まれてしまいそうだ。まるで血を喰らう砂のようだった。
これが僅かな時間だと思うが、その僅かな時間がすごく長く感じた。不安で声すら押しつぶされている。。。そんな感じだ。
(助かるのか!?こんな状況でも・・・・・・!!)
そう思った瞬間だった!自分の頭上の壁から砂が流れるように入り込み頭上に降り注ぐ!仲間達が悲鳴を上げるまでは聞こえたが。。。
だがそれに気づくと壁が崩れ落ち、全身を何千本もの針が突き刺さってくるような感覚を感じたが、それも直ぐに感じなくなり、視界に漆黒が広がった。

喉の奥が酷く乾いてる。ルシアは何度も唾を飲み込み砂に塗れた手をピクっと動かした。
その手を額に当て、自分の手を見ると紅い血が薄っすらと付いていた。
遺跡の中にルシアはいた。確かに遺跡が崩れて吹き飛ばされて。。。その後の記憶はまったく無い。
「だけど・・・・・・生きている・・・・・・」
飛ばされたときに丁度自分が遺跡の中に入ったのか・・・そんなことはどうでもいい。生きているだけで。
他の人たちはどうなったのだろう。あの嵐だ。生きているかも分からない。
でもヴァレンが崩れるわけ無いといっていた遺跡が崩れたのだ。崩れないって言ったのに・・・!そんな感情がこみ上げてきたが、万が一だったのだ。ヴァレンを憎んでも仕方ない。
気持ちを落ち着かせて荷物を確かめた。大丈夫だ。剣とポーションはある。
しかし食料などは全て吹き飛ばされたらしく、見当たらない。
酷く痛む体をゆっくり起き上がらせるとフード付きのマント、服から砂がさらさらと流れ落ちた。
腕で額の血を拭うと、剣を抜いて外へと出た。
晴れている。さっきの曇っていた天気が嘘のようだ。
雲は所々、蒼を飛ぶ蝶のようにしてかかっているだけだ。温度もいつものようにあり、熱い。
ヴァレン達を探すにもこんなに何も無い砂だけが広がっている土地だ。見つけるのにも時間がかかる。
そして、ルシアは赤い色のポーションを口に運んだ。飲み終えると多少だが体の痛みが引いた。
それとともに頷いてポケットから小さなコンパスを取り出した。
自分の立っている位置から南に進めばサンツスミコが見えてくるはずだ。
ルシアは落ち着け。と自分に語りかけ、セルキスソードを抜き、硬く握り締めた。
砂漠は昨日と同じように何も変わってないようにさらさらと砂が地面の上を流れているだけだ。
さっきの嵐なんて嘘のようだ。ルシアは微かに滲み出てきた汗を拭いひたすらコンパスの示す南へと歩き続けた。
モンスターと会わないといいが・・・沢山の敵と出くわしたら歯が立たない。
砂漠を一人で歩くのは不安でたまらなかった。今まで一人で旅なんてしたことが無いのだ。それにクルークにもやられかけていたというのに。
こんなところで生き延びれるのだろうか。自分は。
その時だった、前に何か巨大な塔のようなものが見える。
「あれは・・・・・・何だろう。」
もう少し、少しずつ近づいた。。。

「あれ・・・・・・は!?」

巨大な角にその体の半分は占める大きさの斧。そしてその体は硬そうな鎧に守られている。
まさか・・・あれがモートゥース・・・・・・
ルシアは息を呑んだ。このまま見つかったら確実に殺される・・・・・・!
あんな巨体のモンスターはあのシュレイダー以来だ。勝てるはずが無い!
砂の上を這いずるような足使いで恐る恐る後ろへと下がる。
(見るな・・・!見るな・・・・・・!!こっちを向くな!!)
暑さのせいではない汗が溢れ出し、唇を噛み締めた。が・・・
瞼を閉じた一瞬だろうか、巨大な塔が。モートゥースが巨斧を掲げて自分の方向へと走ってくる!
「う・・・うああああああああああああぁぁぁぁ!!!」
ルシアは鼓膜が破れるほどに絶叫すると、腰が抜けて砂に尻もちを衝いた。
しかし、モートゥースは止まることさえ無く、向かってくる!!
(やだ・・・死にたくない!まだ死にたくない!!)
ルシアは眼を見開いていたがセルキスソードを手が白くなるほど握り締めた。
(死んで・・・たまるか!!)
ルシアは人が変わったような鋭い目つきでモートゥースを睨み、一気に立ち上がるとモートゥース目掛けて走りだした!!
しかし、モートゥースも止まることを知らず、ルシア目掛けて斧を横振りした。
「今だっ!!」ルシアは一瞬にして身を屈めるとそのまま前転し、巨斧の一閃を見事に避けた!
そしてそのままルシアはセルキスソードを鞘に収め、後ろも振り返らずに南へと走り出す!
フード付きのマントが風に吹かれ、バサバサと音をたてている。ルシアは振り返らずとも分かった。モートゥースがまだ後ろから追いかけて来ている事が!
唯、前を見て走る。サンツスミコが見えるまで・・・それまでは決して足を止めない・・・止めたら殺されるだけだ!
ルシアは唯走り続け、この熱い空気が喉の奥を刺すようだ。1呼吸1呼吸がとてつもなく辛い。ルシアは咳き込みながら走った。
「!!あれは・・・」
もう限界が近づいてきているルシアが見たのは一つの蟻地獄のようなものだった。
「・・・できる!!」
ルシアはその蟻地獄まで全速力をあげて走る!足が「もう走るな」と悲鳴をあげているのが自分でも分かった。それでも。。。
そして蟻地獄の前で足を止めると振り返った!奴が、モートゥースが地響きを上げながら走ってくる!
「失敗したら・・・確実に死ぬな・・・これは・・・」
ルシアは声にもならないような低い声で息を荒くしながら言った。しかしその眼だけはモートゥースから離れない!
「来い!!」
するとモートゥースはルシア目掛けて巨斧を今度は縦に振り下ろした!
ルシアは見切ったようにして体を仰け反らせ、避けると、セルキスソードを抜きモートゥースの腕へと飛び上がり、一気に肩まで駆け上がった!
そして、背中へと跳び、ほぼ頭から宙吊りにされた状態になる!
「これでも・・・・喰らえぇぇぇっっ!!」
セルキスソードが蒼く光るとモートゥースの背中で爆発が起こった!ルシアのマナクラッシュだ!!
ルシアは背中から地面に叩きつけられるとゲホッと声を上げて寝転がったままモートゥースを見た。
モートゥースはバランスを崩し、蟻地獄へと頭から引きずり込まれていく。
「は・・・はは・・・俺を・・・・・・敵にする・・・からだ・・・バ・・・・・・カ・・・野郎・・・」
ルシアは自分の腰を探り、ポーションをあるだけの量全てを飲み干し、だいぶ体も楽になった。
「行かなきゃ・・・サンツスミコに・・・・・・」
ルシアはモートゥースが飲み込まれた蟻地獄を見下ろし、その場を後にした。

「あれは・・・・・・」
自分を照らしていた太陽が西へと沈みかけていたところだった。前方に、城壁のようなものが見えてきた。
「あれが、サンツスミコ・・・・・・」
ルシアは自然と速歩きになり、よろめきながらも確実に地面を踏みしめてサンツスミコへと歩いた。
「ん?あれ人じゃないか?」
サンツスミコの城壁の上の見張り台で双眼鏡をもった警備隊の男が言う。
「おったまげたな。一人だぞ?しかもまだ少年じゃないか。」
顎髭を生やした少し年老いた男も言う。
「おい、ここに教団のお偉いさんが2人もいるんだろ?早く呼んでこい!」
「今は教団ではなく、神団になったらしいですよ。隊長。」
「そんなことはどうでもいい!早く呼んで来い!」
「はいはい。」
しばらくするとルシア前方に見覚えのある服を着たマジシャンと、黒い髪のパラディンが立っていたのが見えた。
「ルシア君!!!」
これは、ヴァレンの声だ・・・間違いない。
「・・・・ヴァレンさん?アーネスト・・・さん?」
ルシアは彼らを見たら安堵の息を吐いてその場に倒れこんだ。


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