フラムの日々

クロノス小説~光輝の双剣~



~光輝の双剣~

上りきった階段の先の足元には何か別の音がした。
足元は木の板が敷かれている。石の上を歩いているのとは別の感触が足に伝わる。
前方には魔物が見える。魔物はまだこちらに気づいてない様だが。
「早速歓迎されてるみたいだな。エフィーム、支援を。」
エフィームとは支援として付いて来てくれたパラディンのようだ。ルシアは心の中でエフィーム、エフィームと名前を覚えるため2回繰り返した。
「はい、分かりました」とエフィームは頷くと剣を胸の前で上に突き立てて何か詠唱を始める。
次々と支援魔法が掛かっていくと自分の足元に何らかの魔方陣が光っては消えていった。
そして、最後にエフィームが何らかの呪文を唱えると、自分の剣が青白く光り、その光りが粒子となって剣の中に吸い込まれた。
「今の、魔法は?」
ルシアがエフィームに尋ねるとエフィームはルシアを見て一瞬「この魔法も知らないのか?」とでも言うような顔をして説明した。
「今のはエンカレイジです。刃を研ぎ澄まして武器の力を強くするものですよ。」
「そうなんだ。ごめん、俺何も知らないからさ。」
ルシアがそういうとエフィームは、「これから覚えていけばいいことです。」と口元だけで笑って見せた。
「さてさて、先を急がなきゃいけないし、サクッと倒しちまおうぜ!」
「サクッと・・・って言っても・・・」
ルシアは少し飽きれて頭を掻いたが、直ぐに剣を構えるとラルフと顔を合わせて頷いた。
「よし、皆、行くぞっ!!」
ラルフが戦闘で走り出すと、その後に続いて走り出した。
「見たこと無い敵・・・どんな攻撃を・・・」
ルシアは呟くと警戒しながら杖を持った魔物へと走りこむ!
敵はこちらに気づくと杖を持ったモンスターはルシアへと杖を向けた。
(どう来る!?ヘルロッドマンみたいに何か飛ばしてくるのか!?)
その途端、ルシアの足元に何かが迫ってきた。火の玉のような球体。
「ルシア!避けろ!炭になっちまうぞ!!」
「えっ・・・」
ルシアは咄嗟に体を後ろに跳ね上がらせると自分の立っていた場所から火柱が昇り上がり、炸裂した。
全身に熱気が襲い、熱い空気が喉を焼いた。
少し距離をあけてもこれだ、当たったら炭になっていただろう。
「ゲホッ!ゲホッ!」
ルシアは咽せると光りが降り注ぎ、喉の気管を楽にした。
エフィームがマイナーヒーリングをかけてくれたようだった。
「スクゥプスの攻撃には気をつけろ!必ず回避するんだ!」
ラルフはスクゥプスの攻撃を避けながら言った。
「くそ・・・どうやって倒せば・・・下手に近づけない・・・」
ルシアは奥歯を噛み締めると、スクゥプスを睨み付けた。
(遠くから・・・攻撃が出来れば・・・)
「そうだ・・・!!俺が・・・囮になれば・・・」
ルシアは唾を飲み込むと言った。
「キャロル!俺がスクゥプスの攻撃の囮になる!その間に矢で倒してくれ!」
「えっ!あっ、うん!!」
キャロルは一瞬戸惑ったが、直ぐに頷くと弓を構えた。
「うおおおっ!!」
ルシアはスクゥプスに向かって走ると、スクゥプスは容赦なく攻撃を仕掛けてくる!
「っ!!」
又、炎が上がると、炸裂した。
ルシアはそれを横に転がるようにして避けると、さらに来る攻撃に備える。
その瞬間キャロルの放った矢がスクゥプスの首元に突き刺さると、スクゥプスは怯んだ。
「今だっ!」
ルシアはものすごい速さで走ると、スクゥプスの頭を目掛けて剣を突きたてた!
スクゥプスは断末魔を上げる間もなく地面へと溶けて消えた。
「よしっ!」
ルシアは次の敵に向かおうとした瞬間だった。
背中に激痛が走る。自身の体が裂けて生暖かいものが背中全体を包むような感触が伝わった。
「ぐっ・・・あ・・・」
「ぁ・・・ルシ・・・・・・ア」
キャロルはルシアが斬られてから直ぐにルシアを斬りつけた魔物を矢で打ち抜くと、敵に気づかなかった自分の無力さと目の前で起きた光景に唖然とし、その場に固まった。
自分の体が宙に浮いてる。地面に落ちる。石の床がゆっくりと目の前に迫ってきた。
「!!ルシアアァァァ!!」
誰だろう。多分ラルフだ。声もうまく聞き取れなかった。
目前に迫った石の床にとうとう体は打ち付けられた。
「クソッ!クローカーにやられたか!!エフィーム!ヒールを!!」
エフィームがマイナーヒーリングを使い始めると、ルシアの背中の傷が少しずつ縮んでいく。
スクゥプスの胴を一気に切り払うと「後の敵は頼んだぞ!ドルフ!ゲルト!」ラルフはそう二人のウォーリアの名前を叫ぶとルシアの元へ走った。ルシアはどっちがドルフでどっちがゲルトなのか分からないまま唯、低い場所から何かを見つめた。
ラルフははうつ伏せになったルシアを上向けにすると肩を揺すった。
「ルシアッ!ルシアッ!息は出来るか!?」
「ラ・・ルフ・・・・・・くそっ・・・いっ・・・てぇ・・・」
「くそっ!」
ラルフはルシアを上向けにしたときに付いた掌の血を見るとギリッと歯を噛み締めた。
ルシアは荒い息でどこか、遠くを見るような眼であらぬ方向を眺めていた。彼自身何か見えてるかのように。
「斬られるのって・・・痛い・・・んだな・・・・・・」
「何言ってるんだ!当たり前だろっ!!」
「俺・・・・・・一人殺したから・・・人・・・・・・間・・・一人・・・殺し・・・たから・・・・・・」
ラルフは何も言えずにルシアの眼を見た。
「あいつ・・・が・・・・・・刺された時・・・こんな感じだったのかな・・・・・・痛か・・・ったんだろう・・・なぁ・・・」
「くっ!!何言ってんだ馬鹿野郎!!」
ルシアは何も喋らないで眼を閉じた。
「ルシ・・・ア!!おい!目を開けっ!!」
(俺は・・・俺は・・・ここじゃ・・・死ねない・・・・・・まだ・・・死にたくない・・・!死にたくなんか・・・・・・無い!!)
ルシアはスッと眼を開くとゆっくりと立ち上がった。その眼には微かに生気が灯っている。
「ルシアっ!!」
キャロルが叫んで走ってくる。
「ルシア!?お前・・・」
「俺はまだ、死ねない・・・まだ戦える・・・!!」
ラルフは少しずつ、ルシアの背中の傷が塞がっていくのを見ると頷いた。
「・・・・でも危険だ。やめろ」
「エフィームさん!ヒールを掛け続けて!」
「おっ!おい!ルシア!!」
ラルフは言うが、エフィームは頷くとさらにヒールを掛け続けた。
そしてキャロルがルシアの腕に抱きついた。
「ごめんね・・・私が・・・私が油断したから・・・」
キャロルは声にならないくらいの泣き声が混じった声で唸った。
「キャロルのせいじゃない・・・大丈夫・・・!!危ないっ!」
ルシアはキャロルを腕で庇うと、彼女の背後にいたクローカーの顔面を剣で突き刺した。クローカーも同様に溶けて消える。
「キャロルは、下がっていて。俺が・・・戦う!」
ルシアはまだちゃんと息を取り戻してないのを見てラルフがルシアの肩を掴み、引き止めた。
「やめろ、今はお前も下がれ!次攻撃を受けたら死ぬぞっ!」
「ラルフ・・・でも、俺はっ・・・」
「部隊長の俺の命令だ!従えっ!!」
ラルフはルシアの言葉を押しつぶすかの如く、言いつけた。
「うん・・・わかった・・・・・・」
ルシアはエフィームの後ろへと下がると、その場に仰向けになって倒れこんだ。
そして、ルシアがいくつか深呼吸している間に戦闘は終わり、ラルフに話しかけられた。
「終わったぞ。ルシア。起きれるか?」
ルシアは薄目でラルフを見て頷くと起き上がった。
「傷はもう塞がっています。動くには平気だとは思いますけど、脊髄の近くをやられましたから。戦闘の時には保障はできませんよ。」
エフィームはルシアの傷口を確認しながら言った。
「これもエフィームのおかげだぜ?ホリーアーマーをかけてくれなかったらお前はその傷じゃあ済まなかったんだからな。」
ラルフはムラマサの柄に手をあてて、ルシアに言う。
「あぁ、ありがとう。エフィーム」
「いいえ、これが僕の仕事ですから。」
「そっか。でも、やっぱありがとうは言わないと、さ」
ルシアは右手を差し出すと、エフィームは少し戸惑いながら、でも手を握った。


「とりあえずこっちの道に来たけど、あってるのか?」
ラルフはん~と唸りながら先頭を歩いた。
「俺達に聞かないでよ、俺とかキャロルとかも皆初めての人だろうし。」
「そ~だなぁ・・・」
ルシアのあまりにも的確な答えにラルフも肩を落としてため息をついた。
ここまで歩いてくるのに魔物との遭遇もそう多くは無かったが、ルシアはエフィームの言われたとおりに戦いには参加しなかった。
その代わりに、周りの気配に注意を寄せることに専念した。
「あ~あ・・・こういうところじゃ狼煙使えないから不便だぜ・・・全く・・・」
「ラルフさん、そんなことを言っているうちにシドスの人達、どんどん先に行ってるかもしれないんですよ?」
キャロルが少し飽きれた口調で言うとラルフも頷いた。
「確かに、俺達の目的はあいつらを捕まえて問い詰めることだからな・・・」
「あ、あの・・・」
ルシアは少し気まずいように言うと、ラルフは「何だ?」と答えた。
「えっと、バカにされるかも・・・だけどさ。」
「大丈夫だろ、元からバカなんだからさっ♪」
「な、なんだよっ!その言い方っ!!」
「まぁ~まぁ~落ち着いて。さ、話してみろ。」
「落ち着けって・・・まぁいいや、えっと、シドスって・・・何?」
「はぁ!?」
ラルフはそんなことも知らないのかという表情を通り越して、何か、異物でも見て驚くような表情を見せた。
「だから・・・言ったのに・・・」
ルシアが呟くとラルフは「こりゃ、重症っていうか・・・なんていうか・・・なぁ・・・?」とキャロルを見た。
「う、うん、確かにシドス知らないっていうのは・・・う・・・ん」
キャロルまでもがそう言い出す始末だった。周りからも少し飽きれたと言わんばかりのため息が吐かれる。
「あ~もぉ~!分かった!!どーせバカだから!!バカにも分かるように説明してくれよっ!」
ルシアが開き直りそういうと、ラルフは笑って「分かった分かった。」とポンポンと手袋をした手で拍手をするようにして言った。
「タルタノス戦争終結したあとに、崩壊寸前だったマクアペル教団を助けたり、タルタノス戦争以降ではプラトゥニス城、ファン城への侵攻してきて、カノン魔法学校から水晶球を奪ったりしたのもあいつら。コエリス神団と対立関係にあるんだよ。まぁ、奴らの詳しい目的はさっぱりなんだがな。分かったか?」
ラルフは一気に喋り終えると、ルシアは頭を掻き。
「と、ともかく。悪い奴らなんだな、シドスは。」
ラルフはそれを聞いて又、ため息をつくと言った。
「全然分かってない・・・コイツ・・・」
「だって!聞いてる限り悪い風にしか聞こえねぇもん!」
そういうとキャロルは小さく笑った。
「ルシアらしくていいんじゃない。」
「なんだよ・・・それ・・・」
「ま、まぁとにかく、コエリス神団とは対立する関係ね。簡単に言うとコエリス神団の敵ってこと。」
キャロルがそう言うと、だから悪い奴らなんだろ。っとルシアは心の中で呟いた。
「さ、さ、ルシアも理解できたみたいだし、先行こうか。」
ラルフはあっさり言い捨てると、早足で歩き出した。
「そ、そうだな、シドスの奴らに逃げられたら・・・」
「大丈夫だ。出口の前のヴァレンとアーネスト達を倒さなきゃ逃げられねぇよ。」
「そ、そうか!ヴァレンさんたちが出口を塞いでいたんだっけ。」
「だってお前が言ってただろ?『会いたい人がいる』って」
「うん、大体ヴァレンさん達が一番上の階にいるって言うのは分かってたんだ。」
「まぁ、階級上のほうだしな。」
ルシアは頷くと、ヴァレンを思い出した。
(そういえば、あの時起こられてから1度も話してないっけ・・・)
「謝らなくちゃな・・・」
ルシアは微かに呟いて、ヴァレンから託された、セルキスソードを見て、歩き出した。

「ねぇねぇ、あそこに泉があるからさ。ちょっとだけ休もうよ。」
ルシアが言うとラルフはルシアの顔色を覗うようにして見た。
「少しだけな。お前もさっき怪我したばっかりだしな。」
「ありがとう」
そういうとラルフを先頭に、泉のほうに歩いた。
「??あれって剣だよね。」
ルシアの指差すほうをラルフが見る。
そこには剣が2本、泉の中央にある石の台のようなものの上に突き刺さっていた。
「剣だな。でもなんであんなところに?」
ルシアは走ってその剣のある場所に近づく。
「剣が2本?」
ルシアは泉の中にそのまま足を踏み入れると、その剣に触れようとした。
「うわっ!!」
ルシアがその剣に触れようとした時、何か稲妻のような閃光が飛び散った。
まるでルシアが触れることを拒もうとするかのように。
「何だよ・・・この剣。俺が触ろうとしたらいきなり・・・」
「ルシア!待て。」
ラルフも泉の中に入って来るとその剣を見た。
「これは・・・レイ?」
「レイ・・・って?」
「神の力を持つ武器のことだ。このレイもその一つ。選ばれた人間にしか触れない。」
「じゃあ・・・」
ラルフは頷くと言った。
「お前にはその資格が無いってことだな。」
「えぇ!そんなぁ・・・」
ラルフは笑って見せると、剣を、レイをまじまじと見つめた。
「俺は触れれるのか・・・な。」
ラルフは遊び半分の気持ちでレイへと手を伸ばした。
すると、ラルフの手を拒むことなく、ラルフはレイへと触れることが出来た。
「!?」
ラルフは目を見開くと、もう1本の剣をもう片方の手で掴んでその台座から引き抜いた。
「ラ、ラルフ!!ラルフが引き抜けたってことは!!」
ルシアは自然と笑顔になった。
「あぁ!俺が、俺が選ばれたってことだよな!?」
ラルフはいままで見せたことも無い、子供のように無邪気に喜んでいた。
『ラルフ、汝が来るのを待っていた。我が主よ。我に証として名を付けよ。』
ラルフは耳ではない、直接頭に入ってくるような女性の声に驚いた。
「なま・・・え?」
ラルフは何か一人で喋りだした。
「ラルフ、どうしたんだ?独り言?」
ルシアがそう言っているのに気づくと、ラルフは不思議そうにルシアを見た。
(俺にしか・・・聞こえないのか?)
ラルフは目を閉じると下唇を少し噛み締めた。
『我が主よ。我に名を』
「名前って言われても・・・」
ルシアはわけが分からなくなり、後ろにいるキャロルのほうを見て、首を傾げたが、キャロルも同じように首を傾げた。
「分かった。決めた。『ジークリット』だ。分かったな?」
『御意』
そう声がした瞬間、ジークリットは光輝の輝きを放ち、ラルフが手を離すと、双剣は鞘に収められた状態で静かにラルフの掌へと握られた。
「ラルフ?」
ルシアがラルフに近づくと、ラルフはハッと振り返った。
「あぁ、すまん。ちょっと取り乱してたな。」
「どうしたんだよ。さっき独り言ばっか言っててさ。」
「このレイが喋って来たんだ。お前達にはこのレイの声が聞こえないみたいだけどな。」
「なんかすごいんだな・・・武器が喋るなんて・・・」
「この事も・・・ヴァレンさん達に伝えなきゃな・・・」
ラルフはムラマサを引っ掛けていたベルトから外すと、レイを、ジークリットを両方の腰に引っ掛けた。
そして、そのムラマサは背中に背負った。
「ラルフ、これからそのカタナはどうするの?」
「あぁ、ムラマサのことか。」
ルシアはそのカタナの名前がムラマサというのことを初めて知った。
「コイツは俺の・・・剣を教えてくれた師匠から貰ったものだからな。コイツだけは手放さないぜ。」
「そうなんだ。」
ルシアは自然とセルキスソードへと目をやった。
このセルキスソードもヴァレンが託してくれていたものだ。
彼は自分の師ではないが、色々と面倒を見てくれて。自分がコエリス神団に入って最初の師とも言えるのかもしれない。
そんなことを考えながら、セルキスソードの柄を左手で撫でた。
「そうだそうだ、水飲まなきゃ。ラルフ。ここの水飲めるよね?」
「あぁ、多分のめると思うけど・・・」
ルシアはそう言われると直ぐに、、ブーツの上近くまで浸っている水を空になったポーションの瓶に入れて飲んだ。
「ふぅ、飲めるみたいだ。」
ラルフはため息をつくと微かに呟いた。
「用心の欠片も無いな・・・全く・・・」
「?」
ルシアは空いてる瓶に水を入れながら、顔を上げた。
「ラルフ。誰か・・・いる」
「な・・・」
そうルシアが呟くと、キャロル達も振り返る。
だが、ラルフは、手だけで「こっちへ来い」と合図をすると、皆、足音を立てずにラルフへと続いた。
ラルフ達は、近くの曲がり角へと走ると、そこへ隠れて、ラルフは泉のほうへと顔をそっと出した。
「ラルフ、あの・・・」
「少し静かにしてろ。」
「ぅん・・・」
しばらくラルフが様子を見ていると、泉のある広場ほうへと人が、黒衣を纏った人間達が5人近くいた。
「!!シドス・・・」
ラルフはそう呟くと、ルシアは言った。
「なら出て行って全員倒せば・・・」
「やめておけ。こっちが6人でも相手は強さが違うんだ。戦ったとしても皆無事とは限らない。」
「くそっ・・・・・・」
ラルフはシドス達の会話に耳を傾けた。
「そんな・・・ここにはレイがあったはず!」
一人の黒衣の男が言う。皆、同じ服装をしているため、誰が話しているかすら見当もつかない。
「なら、コエリス教団・・・いや、神団の奴らが先に取って行ったということか・・・」
「だとすれば・・・神団の中にはまだ資格を持つものが居たのか・・・」
「だが、仕方無いことだ。何者かの手に渡った以上、もう触れる人間は居なくなる。持ち主を殺すまでな。」
「そうだな。それでは先に行こうか。」
そう言ってシドス達はゆっくり去っていった。
「行った・・・か」
ラルフはふぅっと息を吐き出すと、泉のある広場へと出た。
「奴らはこのレイが狙いみたいだったな。」
ラルフは目だけでレイを指した。
「それじゃあ・・・」
「あぁ、俺は多分これから命狙われる事になるだろうな。奴らも言ってた。」
「・・・・」
ルシアは黙り込むと、ラルフはルシアの肩をポンポンッと叩いた。
「大丈夫だよ。俺は死にはしない。」
「あぁ、分かってる。」
「だが、お前良くあいつらが近づいてくるのに気づいたな。」
話を逸らせようと、ラルフはルシアにそう言った。
「何か・・・分からないけど。あいつらが近づいてくると・・・何か変な感じがするんだ」
「まぁ、おかげで助かったわけだ。ありがとよ。」
すると、キャロルが口を開いた。
「シドスの奴らは・・・私達が来た道に進んでいったのよね?」
ラルフにそう尋ねると、「あぁ」と答えた。
「それじゃあ戻って、さっきとは別の道を行きましょ。そうすれば出口に着くと思う。」
「そうだな。じゃあ行くぞ、皆。」
ラルフは黙っていたが、心に引っかかるものがあった。
(三階にいたバルキリー・・・扉は開かれたって・・・畜生。あいつらは一体・・・)
ラルフは何かを断ち切るように、ジークリット片方の剣の柄を握り締めた。


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