闇の果てに見えるもの一


闇の果てに見えるもの



一、終わりそして始まり

「あばよ。」
一言聞こえたかと思うと、一人の忍者が同じく忍者だろう者に向かって、苦無を突きつけようと振りかぶる。しかし、もうすぐ突けるというところで、急に行為を止めた。
「君は・・・」
「・・お願いです!!どうか・・・どうか話だけでも聞いてあげてください!!」
「漸・・・」
「・・・弥生・・・」
「・・・どいてくれ。」
「お願いです・・・」
弥生といわれた少女が・両者の間に割って入り、頭を下げ、包帯で右眼を隠し、苦無を持った”漸”と呼ばれた忍者に懇願する。
「弥生、わりぃな。これは俺の起こしちまったことだ。お前が入ってくるべき話じゃねぇよ。」
「そんな・・・だって火影、貴方・・・」
「判った」
と、漸が口を開いた。といっても、漸は覆面をしているので、その表情を伺うことは出来ない。
「良いだろう、火影。ここに居るやつらに言ってやりな。お前のこと、全部。」
「師匠・・・!!」
「あ、有難うございます!!」
少女は可愛くぱっとお辞儀をすると、目から涙を流した。
「・・・俺は如月の者でした。四年前まではそう思っていた。でも・・・思い出しましたよ、全部。俺はもともとは望月の者で、それから記憶を無くし如月になったということ。俺の親父は・・・俺に意志を継がせ・・・死んだということも、全部。」
ひとしきり、言い終わり、長い髪を書きあげ、火影はその場に居るもの全てに真実を明かした。
「お前が・・陽影の息子・・・!?」
一番驚きを隠せないで居るのは、如月の現頭目である東銅秋羅(とうどう あきら)。無理もない、彼は十二年前如月の里、ここ蓮華村に脱水症状を起こし倒れていた火影を娘である弥生と兄弟のように育ててきたのだから。

「はっ・・・胸糞わりぃ名前だな。」
漸はため息をつき、目を閉じる。
「・・・親父のコト・・・知ってるんですか?」
「・・・なんでもねぇよ。ほら、続けろ・・・」
不思議そうに火影に顔を除きこまれ、ばつの悪そうに火影はぶっきらぼうに答えた。
火影も、別に気にも止めず、話を続ける。
「・・・四年前、俺がここを出て、暫く経った頃です。今の望月のありさまを目の当たりにしましたよ。親父を亡くした望月者は・・・もはや生気なんて漂わせてなんかいなかった。生きてんのに、死んでるみたいでね・・・そして思い出した・・・親父は、言っていた・・・」
一息ついて、火影は全体を見渡し、話を続けた。
「・・・お前が新しい里を作れ。そして俺の意志を継げ・・・」
皆、黙って何も言わない。五~六十はいるのだろうか、みな次に火影から発せられる言葉を待っていた。
「そして・・・お前は千堂陽影の息子・・・千堂火影だ、と・・・」
いつしか彼は泣いていた。忍としては情けなく、決してしてはならない行為だったが、誰もとがめようとはしなかった。
それどころか、同情でもしているのか、ちらほらと哀れむように泣いている者もいる。
「それで・・・今まで肩の狭い思いをしてきたぶん、八つ当たりか?」
漸はきっと目を吊り上げ、眼前の火影を見た。
「・・・師匠、それは違いますよ。俺達は、、、今まで貴方たち如月から軽蔑されていた。復讐・・・ですよ。」
火影のその言葉に、その場にいたものたちは驚いた。
特に、如月が。
「俺達が・・・そんなことを!?」
「復讐だって!?」
「そんな馬鹿な!!」
みな口々に言い、ざわめきを絶やさない。
ただ漸と秋羅と弥生だけは、胸を痛くして火影の話すこと一言一言を受けとめた。
「そうか・・・そうだったのか。十二年前の戦で思い上がっちまってたんだ。んで・・・幅を利かせ・・・あろうコトか望月の住むべきところまでうばっちまったんだな・・・」
漸は口を開き、さっきとは違う壊れ物を扱うような目で火影を見た。
そして、秋羅も同意する。
「思い上がっていたのはわしらだったようだ。お前の父上の意志、しかと聞かせてもらった。これから里を作り、一緒に暮らそう。」
「・・・秋羅さん・・・!」
とたん、また泣き出しそうになって火影はうつむいた。
しかし、さっきのとは違う、嬉し涙だった。

(俺も甘くなったもんだな。)

内心でそう思ったことを漸は口にはしなかった。
出来れば火影を許して欲しかった。
親子のように暮らしていたのは、漸もなのだから。
可愛くないわけがない。


とその時、地平線の向こうに、黒い人影がポツリポツリと現れ始めた。
場の者に緊張が走る。
漸も遠くその影を見据え、苦無を構え攻撃体勢に入った。
しかし、要らぬことで。
「皆・・・ただいま。」
「秋那!!」
そう言って飛び出したのは弥生。
秋那は、一人のズタボロになった忍者に肩を貸して、歩いていた。
よく見ると、秋那の周りには、小柄で鈎爪をつけと者と、外套と鳴子をつけた者、鳥のような獣ののような未確認物体、大鎖鎌を持った翠色の目をした忍、右腕上腕から下が切断され、未だ血が滴り、蒼い眼をした忍、最後に人間だが獣のように四つん這いになり歩いている者がいた。
獣のような人間は火影の姿を認めると、表情を変え飛び出した。
「!!火影様!!」
「・・・よォ、獣爪丸。」
獣爪丸は己の傷もかまわず、火影にまるで甘えるように縋り付いた。
「如何したのですか!!里に亀裂が走ったとき、すでに貴方はいなかった。気配もしない。何で私に声もかけずに、こんなところにいるのですか!!」
「わりぃ。おまえにゃあ・・・これ異常迷惑かけたくなかったんだよ。俺が記憶を取り戻したときからずっと・・・迷惑かけどうしだったしな。」
火影も相当な傷を負っていたが、出来るだけ穏やかな声で言った。


・・・・その二へ。








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