障害を持つ子の育ち 学習障害編 乳幼児期



乳児編

生まれるときに少しトラブルがあったものの、「たいしたことはないでしょう」という判断で、すっかり安心していました。首のすわるのも早かったし、ミルクの飲みも標準以上。人より早くお座りをし、生後7ヶ月でしゃべりはじめましたから、発育も発達も人並み以上だと、思いこんでいました。

一歳になる前に歩き始め、言葉も増えていきました。はじめての子どもということで、「この子は天才かも!?」と祖父母からはおもちゃが山のように届きました。見守る大人たちを尻目に、おもちゃで喜んで遊ぶこともせず、「もうあきた」と言いたげにおもちゃを投げてしまいます。

おもちゃが多すぎるから、あきてしまうのかな?と思いましたが、観察するとおもちゃを手放す前、一瞬子どもの動きが止ります。投げている、というより落とす、に近い動きに思えました。何度か同じような動きが続きますが、時には目線が止り、小刻みに首を振ることが続きます。・・・・おかしいな?

育児の本で読んだ「点頭てんかん」ではないか?と大きな病院へ連れて行きました。小児科の先生は簡単な診察の後、「なんともない」と言いました。納得できなくて、検査をして欲しいと頼むと、「じゃ、一度脳波をとりましょう」といいました。小さい子の脳波を取るのは非常に難しく、「昼間眠らせてきてほしい」といわれました。昼寝をする習慣のない子だったので、睡眠薬を使いましたが、本当に眠ったのか、私にはよくわかりませんでした。

脳波異常なし、という診断で、「変わったことがあったらまた来てください」だけで終わりでした。その後の市の検診でも以上がなく、いつのまにか首を振ることはなくなっていました。単なるクセだったのかな。いつしか私は子どもの脳波のことなど忘れてしまいました。

幼児編

あきっぽい性格や、ものをすぐ忘れること、並外れて不器用なことなど気になることはたくさんありましたが、一人っ子はそんなものですよ、おうちに大人が多いから、自分でする気にならないだけでしょう、といわれることが続きました。私も夫もどちらかといえば内向的で、活発さに欠ける子ども時代を過ごしたこともあり、これが普通だと思って何もしませんでした。

保育園に入園することになり、見学にでかけました。我先に遊具に飛びつくほかの子どもたち。うちの子はぼーっと立ち尽くすばかりです。先生に話しかけられても、返事もしない。このままでいいのかな?と思いながら、入園の日を迎えました。

入園してからというもの、毎日泣いてばかり。門にしがみつき、中に入ろうとしません。先生たちが「こういう子ほど、早く慣らさないと。親が帰ると案外あっさりあきらめますから、おかあさんは早くお帰りください。」というのですが、気になって気になって仕方がありませんでした。

ようやく泣かなくなったのが、半年くらいしてからでしょうか。今度は先生にこんなことを言われました。「Aちゃんは、いくら呼んでも返事をしないし、指示にもまったく反応がないんですよ。本を読んだりすることは人並み以上ですから、発達の遅れではないと思います。難聴じゃないですかね?一度検査を受けてみてください。」

耳鼻科に行って、聴力検査をお願いしました。難聴ではないけれど、「滲出性中耳炎です。しばらく洗浄に通ってください。鼻にも炎症があるので、しばらくかかりますよ。」保育園には「中耳炎でした。」と報告し、治療に通うことを伝えました。その後保育園からは「返事がない」と言われることはなく、安心したのですが、今考えると午前中は耳鼻科に通い、おそい登園になったため集団活動の時間にあまり参加しなくてすんだこと、給食やお昼寝、おやつの時間には決まった指示しか出されないため、子どもも指示がわからなくても習慣で対処できたため、耳鼻科の治療を受けたことで、子どもの問題がなくなったように親も周囲も思い込んでしまったのではないかと思います。

子ども集団の場合、動きの大きな子、騒がしい子は目に付くので指導の対象になりますが、ただ黙って座っているだけの子どもは、よほどのことがないかぎり、「おとなしい子」として放置されてしまうようです。

この頃のAの様子を書いておきます。

★言葉に対する関心があり、同じ年頃の子どもより語彙が豊富。文字は3歳になった頃から覚え、入園時にはひらがな・カタカナの読みをマスターしていた。
★動きが鈍く、手先も不器用で、衣服の脱ぎ着に時間がかかる。字が読めるものの書くことはまったくダメで、お絵かきも無理な状況。丸を書きなぐったりするだけで、具体的なものをかくことはできない。
★記憶力に波があり、細かいことまで逐一覚えているかと思うと、つい先ほどの自分の行動も思い出せない。自分が持ち出したものを「誰かが持っていった」と言ったり、自分が食べてしまったことを忘れて「Aちゃんのお菓子がない」と騒いだりした。
★数字・計算は教えなくても自分でマスター。幼児番組を見たり、雑誌を読むことでなかば独学に近い状態。
★呼ばれても返事をしなかったり、一拍遅れて「何?」という反応。難聴の疑いが晴れたため、性格的なものだと思って家族は気にも留めなかった。



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