大学病院の予約



これはAにとっては晴天の霹靂で、いきなり学校から先生が来ると聞き、顔色を変えて奥へひっこんだ。Aがそうしたい気持ちは私には十分理解できたし、先生の要求や指導は普通の子には適切なものだと思われたが、Aにはむずかしいものばかりだった。

「毎日、たとえ1時間でもいいから学校へよこしてください。」「毎日復習をさせてください」勉強が苦手で、集団に溶け込めない子どもには酷な要求だなあと思ったが、「わかりました」と返事をしておいた。

私は
★学校は大切だけれどAが自分のペースで学んでいきたい気持ちを尊重したいこと
★たとえ本人があとで困ることになっても、自分で気づいて自発的に学校へ行きだすまで待ってやりたいと思っていること
★学校へ行ったときのことは先生や学校にすべてお任せするが、家庭内のことは両親だけで解決したいと思っていること
などを話し、学校側の過干渉をやんわり断わった。

ベテランの先生は私の話を聞きはしたが、自分の方針を変えるつもりはまったくないようで、「でもお子さんのことを考えたら、やはり無理をしてでも学校へ通わせたほうが・・・」と言った。

私はAを学校の過干渉から守るために、はっきりした診断がほしいと思った。

近隣の病院をあちこち訪ねていたけれど、どこでも「お母さんの気にしすぎですよ。普通のお子さんです。」としか言ってもらえなかった。思い切って大学病院に電話を入れたが、「紹介状はお持ちですか?ない方は診察できません」と断わられた。紹介状を書いてもらおうにも、「異常なし」の状態では無理だ。小児科医が異常なしと判断しても、うちの子はたしかに普通と違うのだから、専門医の診断が必要だ。切られそうになる電話に私はかじりついた。

「紹介状はないんですが、うちの子は普通じゃないんですよ。ADHDかもしれないし、いきなり倒れたことだってあるんですよ。下の子はアスペルガーかもしれないと思うんですが、市の検診やいきつけの病院は異常なしだっていうんです。でも毎日見ていておかしいことがたくさんあるんですよ。診察してください!」

「・・・そういわれても、紹介のない患者さんを診るわけにいかないんですよ・・」「・・・何?いったいどうしたの?」受付の人の声以外の話し声が聞こえた。「紹介なしの電話なんですが、診察してくれっていうんですよ。ADHDとアスペルガーのきょうだいがいるっていうんですが・・・」「アスペルガー?・・・うーん。じゃ、ぼくの診察日に入れといて。」「いいんですか?」「いいよ。OK。」「・・・・もしもし?先生がいいって言われましたから、保険証を持って、いらしてください。予約を入れておきます。」

運良く私の電話の最中に、発達外来の専門医が通りかかったのだ!ラッキー!もしこの偶然がなかったら、まだ未診断のままだったかもしれない。ここの大学病院の発達外来は超満員で、なかには関東からはるばる来る人もいるという。予約が取れなくて有名な発達外来に、飛び入りで混ぜてもらえたのは本当に幸運だった。


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