障害を持つ子の育ち 自閉症・乳児期



病院では珍しく布おむつを使っていた。よごれたおむつは回収されて、すぐあたらしいおむつがもらえる。今はいいけれど、退院のときはどうしよう。自宅にはおさがりの布おむつがたくさんあったので、それを使うつもりでいたが、着替えてからおむつを汚されたら、荷物が増える。病院からは試供品の紙おむつをいくつかもらっていたので、それを使おうと思いついた。「ためしに一枚使ってみよう。」

「ギャアアああああ。ぎゃあぎゃああああああ。」Bはいきなり泣きはじめた。いや、叫び始めたと言った方がいいかもしれない。紙おむつをはずして、布おむつに換えると、ぴたりと黙る。偶然かと思ったが、何度試しても結果は同じだった。

育児雑誌で「紙おむつが肌に合わない子どももいる」という記事を読んだことがあったので、「このオムツはBには合わないのかもしれない。」と思った。

ミルク指導の日。ミルクの作り方や、哺乳瓶の消毒の仕方を習い、試供品の粉ミルクをもらった。作った粉ミルクを捨てるのももったいない、とBに乳首を含ませた。いや、含ませようとした。Bはがんとして口をあけず、顔を背けた。何度やっても同じで、粉ミルクは作るたびに捨てる羽目になった。「この粉ミルクはいやなのかもしれない。それとも乳首が合わないのかな。」Aの時もいくつかミルクを試したり、乳首を替えたりしたことがあったから、きっとそうだろうと私は軽く考えていた。

今思うと、Bは生まれたてのときから自閉症独特の「こだわり」を発揮していたのだった。

Bのこだわりは他にもあった。昼寝をしないのだ。新生児は普通、寝たり起きたりを繰り返しつつ、一日のほとんどを寝てすごす。Aもあまり寝ない子どもだったが、Bはそれに輪をかけた短時間睡眠児だった。うとうとしたかと思うと、小さな物音ですぐ目をさます。抱いてゆすらないと寝ない。小さな物音で目を覚ますかと思うと、飛行機の轟音や、自動車のクラクションが響いてもぐうぐう寝ていたりする。敏感なのか鈍感なのか、わからない。小さな音で目を覚ますから、少なくとも難聴ではなさそうだ、と私は安心していた。


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