第二章 私

第二章 私

【6、眉間にしわ】
「助けて。」

透きとおる声は訴えかけるような寂しそうな声であった。

勇者は目覚める。誰の声であったのだろう。

耳元でささやくようなやわらかさであった。

「シロ・・・?」

なわけない。シロは隣りで寝ている。

眉間にしわをよせ、なにか交渉している。

「タップダンス?をずるごどに価値があがる?

・・・おらに・・・フラダンス?だっちゃ?」

・・・どんな交渉をしているのだろう?まだ、日ものぼっていない。

やはり空耳だったのだろうか。

昨日の夢見は良平に大きな影響を与えていた。

占い師の忠告が頭に浮かぶ。

(これは夢じゃない。)

そう考えるたび、良平の不安は大きくなるばかりであった。

思えば、あまり慣れないことでも戸惑うことは少ない。

それはもう一人の違う世界の自分が過ごしていたから。

意識しなくても自然にやっている。

・・・夢見で苦しんでいる良平においうちをかけた今朝の言葉。

(・・・向こうで時間たってんのかな?・・・中間そろそろなのに。

俺、行方知らずになってたり?もしかすると、もうひとりの俺が・・・。)

「それはいやかも。・・・帰りてぇ。」




「昨日のさぁ・・・。」

「あーいうのは宗教みたいなもんっちゃ。かかわるとろぐなごどねぇけ。

たけぇ買い物させられるのがオチっちゅうもんちゃ。」

「でもなんか、痛いトコつかれたべ?」

「おらの口ぐせ、まねじねぇの!」

朝食中の2人の会話である。

結局、良平の中で今朝の言葉は空耳となっていた。

夢見についてだが良平が気にしているほどシロは気にしていない。

シロにとっては何か宗教的な新手のキャッチセールスみたいなもんらしい。

はて、昨日の夢見といい、

この2人は「宝石の地」にきてなんの収穫もないようだ。今日の予定は

「金がねぇけ。」

シロが静かにいう。

「えっ?」

良平には意味がよくわからない。十分、旅の資金はあるはずだ。

「金がねぇけ。」

シロはいらだったように繰り返す。

良平がわけがわからないという顔をしていると

「・・・、実は買っちまっただ。」

シロが苦い顔でだしたものは

「はにわラジオ」(←はにわという生物がいろいろな情報を提供してくれる。成長オプションつき。)だった。

もちろん高価なもので良平もはじめてみた。

「・・・、いくらしたの?」

良平がおそるおそる聞く。

「・・・、10万2千リーム。」

なんともきまりわるそうにシロが言う。あたりまえだ。

2人の資金は残り2千リーム。

「いつ買ったの!」

良平は興奮している。

「・・・、前の村で。」

・・・「宝石の地」へ来る前である。沈黙が流れる。

「あぁ、でも~、なにかと便利なんだよ。ほらっ。」

シロははにわを取りだす。いつからもってんのか。

『今日の天気は晴れ♪西の方向に金運あり♪』

とはにわは腰を振りながら歌う。

「次の村の情報がわかるしぃ、天気のほうもさぁ。はは。

不便なことがなくなるさぁ。良平君。僕らの旅路はあかるいよぉ。

ちなみに名前はみっちゃんさっ。はは・・・は。」

シロ、あきらかに不自然だ。打点を忘れている。

ただで占ってくれた占い師を信じないのに、

ただ高いだけの「新発明」というものは信じる。良平に許せるはずもない。

だからあんなにムキになってまで石を売っていたのか。2千リーム。

底がつきるのも時間の問題だ。眉間にしわをよせていた理由もわかる。

「つまり、だましてたんだね。僕のお金まで使って変にケチッて。」

低く良平が言う。眉間にしわを寄せている。

「ずまねぇ・・・。」

シロがやっと謝る。沈黙が流れ・・・。

「・・・それじゃ、とりあえず林ライスにいってみない?」

良平、冷静に放つ。

「なして、林?」

シロは聞く。

「占い師がいけとかいってたじゃん。」

良平はなんとも安易な答えをだした。シロが答える前に

「問題ある?」

良平は少し怒りをこめていった。シロに選択の余地はない。

「まぁ、金はもどってこんべ。任せる。」

「はにわのことずっと知らなかったなんて俺、バカみたいじゃん。」

「・・・ずまねぇ。水に流せ。」

「やだよ。」

良平の怒りはまだおさらまぬよう。




【7、林ライス】
ご説明しよう。林ライスとは宝石の地の一種の名所。出る林なのだ。

『出る』なにが出るのかおわかりになるだろうか?

とりあえず、2人はその中を突き進んでいった。

奥の方まで進むと日はずいぶん傾いていた。

「リョウ、ここらで野宿だべ。」

「そうだね。」

良平の機嫌も少し直っていた。今日は久しぶりの野宿。

「・・・助けて!」

切り裂くよううな悲鳴。

「シロ。今の!」

「?」

良平は声のする方向へ走る。いままでのおとなしい声ではない。

今回のはいますぐにでも助けを求めているような声。

「・・・?山小屋。」

声のした方向にあったのはちいさな山小屋だった。

「ラッキーちゃ。今夜はあそこだな。」

「へっ?!待ってシロ。さっき声聞こえたでしょ?女の子の。」

良平の言葉にシロは不審そうな顔。

「おらをからかうでねぇ。ええか?幽霊なんかおらん。」

「は?」

「ここさ出るってぇのはただの噂だべ。」

「へ?出るの?・・・っちょと?!」

「知らんのけ?・・・ほぅ。出るっちゃゆうのはほんまもんかもな~。

幽霊、捕まえたら高く売れっけ。よおし。夜は交代で見張りだっちゃ。寝るでねぇぞ。」

「えぇ?!」

みなさんお気づきだろう。出るのは幽霊。さて、林ライスでの一夜は一波乱ありそう。



【8、声】
「リョウ、飯すっぞ。」

「あ・うん(←向田邦子:意味はなし)。」

「何、ビクビクしとる?」

「や・べつに・・・。」

夜に山小屋の外での食事。今日はおいしいかに缶★かには良平の大好物。

・・・だが暗黒の中から声が・・・。

「ひゅうぅ~、どろどろどろぉ~。」

耳元でのガキらしいいたずら。

「シロ!からかうなよ!」

「ひひ。リョウ、おめぇ大丈夫け?おら、このあと寝っぞ。」

「なんでシロがさきなの?!」

「逆でもいいけ、でも今日までおめぇで、明日はおら。その方がおめぇさ休めよう?おらが金使っちまったべな?」

シロなりに考えての時間配分だべ。

「・・・う。牛になっても知らないよ。とりあえず、ありがと。・・・ぇ?」

「どげんした?」

「なんかいった?シロ?」

「はぁ?ほんまに大丈夫け?恐がりすぎだべさ。」

「ちがうよ!ほら!!!」

良平がまじな顔で言う。さすがにシロも顔をこわばせる。

「・・・たす・・・たす・・・て。」

「「!!!」」

シロにもちゃんと聞こえたよう。2人に緊張が走る。

「助けて!!!」

そして、良平は一瞬、視界がぐらつく。



【9、少女】
良平の視界が元に戻ると場に異変はなかった。

目の前には食べ散らかしたかに缶。消えそうな薪。何も・・・。

「おにいさん?」
透きとおった少女の声。振り向く良平。後ろにはちゃんと少女が立っていた。

8歳ほどのおさげをした少女。さきほどからの声の正体は彼女だと思われるが。

・・・異変を感じる。

「・・・金髪の勇者、見なかった?」

初対面の少女への質問。シロがいないのだ。少女はにっこりと笑うと、

「私たちの世界にいる。」

と答えた。少女が不審に思えてならない。

「君は誰?」

少女はにっこりと笑うばかり。

「おにいさんのおかあさんはどこ?」

「・・・家にいると思うよ。君のおかあさんは?どうしてここにいるの?」

「おにいさんはおかあさん?」

少女は良平の問いに答えない。問うだけ。正直、良平は怖い。

「・・・いいや、ちがう。俺は俺だよ。」

「そうよね・・・。ちがう個体だもの。心だって別だもの。」

少女が何を話したいのか?

「何を助けて欲しい?」

良平がきになっていた言葉を口にする。やはり少女はにっこり笑うと下を向いた。

「おにいさんは自由なのね。おかあさんさみしくない?」



【10、夢】
ー一方シロ

「どーなってんだー?」

吸い慣れた空気。懐かしい匂い。見慣れた風景。

「・・・南真ン中村?」

シロは不安な口調で村の名を口にする。・・・目の前には透きとおった湖。足下の芝。

シロの一番大好きだったところ。でも、なにかが不自然だった。

「シロー!」

と名を呼んでかけてくる、少女。幼い頃からの友人。活発で威勢のよい声。

琥珀色の目。民族衣装。髪は村人皆同じの金色だが、

色素が薄く黄色っぽくふわふわしていて腰まで伸ばしていた。

シロはその髪が好きだった。再会する親友。しかし、彼女にも不自然なところがあった。

少女はシロの前にたち目を見つめる。

透きとおった空間での2人は風と一体するような自然な美しさを出していた。

「あなた、すごいじゃない。アレック・S・エジルにならぶのよ。この村の第2の誇りだわ。あなたの石碑がたつわ。これって・・・。」

「・・・誰だ。リョウはどこにおる?」

少女の言葉をさえぎり、そういってシロは銃を少女に向ける。少女は動揺しながらも返答する。

「どうしたの?銃じゃぁ、かなわないよ。あなたは帰ってきたんじゃない?勇敢なる勇者として名を挙げて・・・!」

少女の頭に銃口がぴったりついている。

「おらの故郷はねぇ。十数年前に消えた。冗談にしちゃたちがわりぃ。リョウはどこちゃ。」

シロの琥珀色の瞳が少女をにらむ。その目は恐ろしく美しく、変わることのない鋭い剣、宝石のようだった。

少女の顔から笑みは消え、

「夢見たかったんじゃないの?姿はあなたの親友。銃をむけていいのかしら?」

と追求気味に答える。

「おらに過去は必要ねぇ・・・。こげんな夢さ望んだ覚えねぇ。」

にらみ続けたままシロは返答する。少女は下を向くと、表情を変える。幼い
少女になった。

「哀しい過去を背負いし者ー。こんな村は知らない 自分の故郷は消えた ・・・そんなのは嘘。

望んだのはあなた 消したのもあなた。本当に哀しい人。本当は心の奥底から望んでいるのに。

ー助けが必要なのね。・・・夢の渡り人をひとりじめしちゃだめよ。あの人は必要なの。

死後の夢。もはやあなたも死者。」

「違うっ、違うっ違うっ!こげんな夢は望まねぇ!!!」

そしてシロの視界は幕をおろす。



【11、おかあさん】
「ごめんね、ごめんね、ごめんね。」

おかあさんはそう、私に謝る。私は天井を見上げたまま。

何がおこったかわからない。

おかあさん、さみしいの?おかあさん辛いの?おかあさんかなしいの?

・・・どうして?おかあさん、いたいよぉ。苦しいよぉ。

おかあさんにその言葉は届いたのか、おかあさんの目からとめどなく涙があふれている。

おかあさん、さみしいのね?おかあさん辛いのね?おかあさんかなしいのね?

「助けて。」

私はおかあさんをたすられない。おかあさんじゃない。おかあさんのモノじゃない。

これは少女の必死な訴え。



【12、私】
「わからない。さみしいかもね。」

「そう。」

良平の答にそう返すと会話は止まってしまった。

「・・・私のおかあさんね、自慢なの。きれいで優しくってお料理も上手で。

私のことね、すっごく好きなの。私もおかあさんが好き。」

不思議と良平はその少女への恐怖心は薄れていた。目の前にいるのは幼い少女。

「何を助けて欲しいの?」

口調が和らぐ。少女は寂しげな目をした。

「私ね、おかあさんに殺されたの。・・・おとうさんが自殺して・・・。」

少女は寂しく微笑む。

「おかあさんと私、がんばったの。でもね、おかあさん、疲れたって、・・・それでね、私の首を絞めたの。

あなたは私の一番、大切なモノだからっ・・・て。あなたが・・・好きだからって。

あなたをおいてはいけないからって。・・・あなたと私はずっと一緒って。

だけどね・・・私、おかあさんのモノじゃない。私は私だもの。おかあさんと私は一緒じゃない。

私、・・・私で生きるか死ぬか決めたかった。おかあさんに選んで欲しくなかった。」

少女は切実に訴える。

「私は私よ?」

良平は頷いた。少女は少し、おちつくと

「・・・助けて。私、おかあさんに死んで欲しくない。おかあさん死ぬ気なの。

お願い、おかあさんを助けて!」

と、良平を睨みつけながら頼んだ。

「・・・どこにいる?」

「・・・明日。この林にくる。・・・おかあさんを助けて!」

少女の言葉に良平はどう返せばわからなかった。責任なんかとれっこない。

「あなたは夢の渡り人でしょう?」

少女の尋ね。

「・・・さあ?勇者・・・のはず。」

少女は落胆した目をする。良平の答はあまりに残酷だった。

「あなた、私と会えたじゃない。・・・夢の渡り人ではないの?」

良平は困る、しったこっちゃないもん。少女のため息とともに視界は回る。


【13、早朝】
気付くと朝。少女は消えている。良平は外でそのまま寝てしまったようで。

隣りには金髪の青年が寝息をたてている。

「シロ・・・。起きて。」

そう、彼を揺さぶる。彼は起きるとともに銃口を勇者にむける。2人に沈黙が流れる。

「・・・リョウか。すまねぇ。」

シロは銃をおろす。そして、2人はお互いのことを話す。

「・・・だから、今日、林に入ってきた女の人を発見しなきゃなんないんだけど。」

「魔物のまやかしにすぎん。罠かもしんね。」

良平の意見に耳を貸さないシロ。

「・・・シロはあのあいだどうしてたのさ?」

「さあな。」

・・・2人は結構のんきだ。

「とりあえず、今回は俺に決断権あっていいよね?」

「好きにしれ。ただ、今度は幽霊さ捕まえるべ。」

「・・・。」

しかし、探す必要などなかった。

「人の家で何をしているの?」

そう、一人の女は山小屋の戸を昼前に開けた。この山小屋が家?

「・・・おかあさん?」

良平が尋ねる、決して君の母ではない。女はその言葉におびえたように見え
た。

シロは口出しはできぬのでその場を離れる。良平はこの山小屋でおこったことを説明する。

「・・・そうよ。エノーラは私の分身。私の子よ?置いていったらだめじゃない。

私を置いていってはだめじゃない。く、フフ。何がいけないの?私を殺して。

私、自分を精算するの。それだけ。」

女は壊れていた。その言葉たちからは哀れみさえ感じた。

「・・・エノーラはエノーラだ。」

女は鋭く良平を睨みつける。殺気を感じる。

「っ、フフフ。私、だめなの。あの子、いつも私の顔色ばかり見るの。

私が仕事から帰ってきてもちゃんと寝てないの。泣いてばっかり。

・・・夫が死んで、余裕がなくなって、借金だけが残ってる。住むところだってこんな山小屋に追いやられて。

みんな私ばっかり責めて、私ばっかりいじめられて・・・。エノーラを私から、とろうとするの。

汚い奴ら!!!私だって辛いのよ?あの子、おとうさん、おとうさんってずっと泣くの。

気付いたら首に手をやっていて・・・止まらなくて。いつのまにか謝っていたの。

・・・もう、終わっちゃった。・・・本当にエノーラはここにいたの?」

女は涙を浮かべ尋ねる。

「エノーラはあなたの生を望んでいる。」

良平は女から顔をそらす。

「・・・っごめん・・い。ぅ、エノーラ、ごめんなさい・・・。」


けったいな話ですよねぇ。心中。誰が死の決定権を握っているのでしょう?誰が死へと追い込むのでしょう。まだ彼らは真実に直面したばかり。


★コメント★
すいませんわけわかめだが




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