第三章 生

第三章 生

【15、看板】
誰が描いたのでしょう。誰が立てたのでしょう。誰の目に触れるのでしょう。

「・・・シロ、これ。」

良平が平原の中、なにか発見したもよう。どでかい大地。見渡す限り平原。

人の姿どころか、渡り鳥一匹見つからない。

「・・・どっちの方向かな?」

良平の質問を聞き、シロは良平の指す物を見る。

「メルヘン村にようこそ?」

シロの疲労がよくうかがえる。

「・・・ここにいぐしかねぇさ。」

良平とシロの口数は少ない。なぜなら、2人はここ3日程ろくに休んでいない。

それというのもこの平原、広すぎて迷子になっちゃったんです。どういうわけかはにわのみっちゃん。

不良品だったらしく、

「えぇ~、みっちゃんこんなところのデーターないもん☆っていうか~、みっちゃん、こんなところで野宿怖いぃ~。まじでだるいっみたいな~、アハッ☆」

の調子。

さて、良平が見つけた物とは看板である。この平原のなか寂しく立っている。

いままでにどれだけの人の目に触れたのか。妙にかわいらしい文字が連なっている。

「みっちゃん、この村しってるのよ☆えっとねぇ、とってもちっちゃな村なの。みなさまにわかりやすく説明すると岡○市の犬島ぐらいなのよ☆それで、住んでる人は少なくって、一種の過疎化?でも動物いっぱいなの。テーマパークみたいな観光地?でも、いじった人工的なものじゃなくて自然?わけわかんなぁい☆とりあえず不思議で夢いっぱい?」

・・・わけわからないのはみっちゃん、君だ。犬島ってどこだよ。

どれくらいさ!?過疎化なのに観光地かい!

2人がこれから向かう先はメルヘン村。勇者は安息を求めてさまよう。


【16、メルヘン村】
さてさて、それはほのぼのとした光景です。

一匹のかわいらしいうさぎしゃんさんがいました。

ある日、うしゃぎさんは川をわたろうとしたところ橋がありませんでした。

うしゃぎさんが困っているとがらのわるいワニさんたちが集まってきて

「うまそうなうさぎだ。」

とうしゃぎさんをいじめました。さらに困ったうしゃぎさんはひらめきました。

「ねぇ、君たちみんなで何匹なんだい?」

とうしゃぎさんは尋ねました。ワニさんたちはわからないらしく困りました。

そこでうしゃぎさんは

「そこへ一列におなりよ。僕が数えてあげましょう。」

とワニたちを並べると一匹、一匹の上に飛び乗り、

「1、2、3、4、5、6、7、8、9、・・・・・、ごくろうさん。おかげで川をわたれたよ。本当に仲間の数もしらないなんてまぬけにも程があるね。ははははは。」

とワニたちを利用して川をわたりました。ワニたちは怒って、うしゃぎさんを追いかけ回しました。

うしゃぎさんはワニたちが陸にあがれることをしらなかったのです。

「わぁ~。」

と逃げ切ったうしゃぎさんですがあかむけになっていました。目の前には勇者が二人。

「お助け下さい。」

とうしゃぎさんが頼むと、金髪のほうの勇者が

「下ごしらえできてるべ。」

とうしゃぎさんを調理してしまったのです。うしゃぎさんが調子にのりすぎたのですね。弱肉強食のこの世界・・・

「って、待った~!!!シロ!やめてよ!かわいそうでしょ!ってああああああああああ・・・。」

もう一人の勇者が止めたのもおそくうしゃぎさんはもうお肉に。

「・・・、弱肉強食。このうさぎが悪いけ。くわなぁ損さ。」

と金髪の勇者は悪びれなし。

「・・・さっきまで動いてたのに。話してたのに。残酷だぁ!ここはメルヘ
ン村でそのお話だってメルヘンでうさぎはたべられなかったのにぃ!」

金髪の勇者はその言葉に対し指をある方向にさしました。

そちらでは王子様がたくさんのお姫様を腕に馬鹿笑いしてたり、

金の斧・銀の斧であらかせぎをしている女神様。かめが近所の子供たちをいじめていたり・・・。

「うそだぁ~!!!ってほ乳類がほ乳類を食べるのはあまりよくないんだよ~!」

勇者の嘆きは激しい。ちょっとずれているが。

「さっきのうさぎが持ってたべ?」

と金髪の勇者がだしたのは刃渡り19㎝のナイフ。さて、メルヘン村は夢いっぱいです。


【17、語り】
「おや、またお会いしましたねぇ。」

勇者に話しかける、紳士な声。こがらな中年の男。

あいかわらず、アロハの格好で・・・。やはり地べたにへたりこんでいる。

メルヘンいっぱいの路地では浮いて見える。あっ、一人の少女がマッチを脅し売りしてるべ。

「リョウ、いくべ。」

シロはそういってとおりすぎる。

「・・・お金に困っていらっしゃいますね。いい方法が。」

やはりその言葉でシロは座り込む。

「素直なお方だ。」

占い師は満足の様子。良平も聞くしかないだろう。

「フフフ。お金はないと困りますものねぇ。人が路を歩むのに、多すぎてもなくても困り、必ず必要とされる物。それはお金ですよねぇ。いえいえ、もちろんお金が全てではありませんよ。しかしこのご時世、不景気ですからね。一つ、哀れな結末を。
ある男は生まれて、両親、愛、環境・・・全てに恵まれていたんです。男はその恵みを愛おしく思い、とても大事にしたんです。おかげで男は人生の階段を数々の苦楽とともに順調にあがっていきました。しかし、男は出世をするごとに家庭と仕事の選択をせめられたのです。人間が生きていくなかできめなければならない決断です。男はどちらの幸せも両立することに成功しました。立派な上司であり、息子であり、夫であり、父として人生を充実させたのです。さて、男はあと残すところ老後だけになりました。男はその他大勢の老人としてまとめられました。世間は彼のことを『荷物』として見ました。男は若いときはその世間のためにすべてを捧げたのに、です。結局、彼は世間に利用されただけなのでした。しかし、男は世間というものに絶望はしませんでした。全てを受け止めたのです。よっぽどできた人間だったのでしょう。男は素直に陰で息ひそめる路を選びました。男は生きる理由があったからです。
その理由なんだと思います?全てに見放され独りになった男に残ったのはその理由です。はたして、生きることに理由など必要でしょうか?その理由は本当に『理由』なんでしょうか?・・・男にとって理由は唯一の光だったにちがいませんね。
男は世間に裏切られたのはできすぎた人間だったせい。疑う心を知らなかったせい。さて、あなたがたはまだまだ若者。年老いた方々を支える柱です。何をします?誰にも縛られず、とがめられず、自分のために楽に生きますか?それとも国のためだといって勇敢に世間にたちむかいますか?世間に貢献いたしますか?世間を否定しますか?
路はそれぞれ多々あります。しかし、若さゆえの愚かな行動にしっぺ返しはつきものです。
ここで・・・どうしました?」

占い師は話を止めてシロをうかがう。シロははじめからぶさくれている。

「・・・金の話はどこちゃ?つまらん話、聞きに来たでねぇ。」

占い師は忘れていたようであらら☆という顔をすると

「申し訳ございません。すっかり・・・。そのお金についても助言いたしましょう。
『汝ら、陰見ゆる。人の愚かさ思い知ろう。』
ついでにお金はあせってもでてくるものではありません。お話に付き合わせたかわりにこちらを差し上げましょう。」

そういって占い師が出した物は『☆ドキドキ☆ジャンボ宝くじ』であった。

・・・どうすべ?とりあえずだが

「勇者は『☆ドキドキ☆ジャンボ宝くじ』をてに入れた!!」

と、ナレーター。

「・・・(怒)。」

そして二人は占い師に疑問を抱えたまま、その場を去る。

「当たりやすいって有名なんですけどねぇ。・・・人生はくじではありませんけどね。」


【18、☆ドキドキ☆】

「・・・あの人すごく妖しいと思うんだけど。」

良平は路上でシロ問う。

「ああ、だな。ただの占い師じゃ、ねぇ。ただの生身の人間がこげんなとこにどうとして来れる?ましておらたちより早ぐ、待ち伏せしとったとしが思えん。」

そうして間をおくと

「偶然。考えすぎん方がええ。」

シロはそうして男の話を終わらせた。君たち、道にまよってたではないか、

メルヘン村に来たのも偶然でしょ。よって男は先にいても不自然じゃないし、来る予定がないとこにいるんだから偶然だ。

「・・・この宝くじどうすべ?」

「お金ないし、たよるしかないじゃん。」

・・・二人はもくもくと歩く。

「・・・リョウ、別行動だべ。おらはこの宝くじを金にして増やす。おまぁはそこらの珍獣狩ってけぇ。」

シロは笑顔で持ちかける。

「絶対いやだ。逆ならまだしも・・・。」

良平が苦々しくいうと

「ほう、リョウが金稼ぎがおらよりお得意だったとは?」

いじわるにシロが言う。たしかに、シロはお金の増やし方は得意だ。

使い方は下手だが持ち前の美が武器である。買価は下げる下げる下げる。

売価は上げる上げる上げる。・・・同じことは良平には

「やってやるよ!その宝くじを十倍にはしてみせるよ!」

できるんかい!とつっこみを、べしばし、いれたいこの状況。

「ほんとにぃ~?それでは良平君に全てお任せいたします。」

シロはおもしろがっている。

「男に二言はないともさ!」

あーあ、言い切っちゃた。さてはてこれからは別行動どうなることやら。

あらら、七人のこびとが子供とりかこんでかつあげしてるよ。

こんな村で良平君は無事生きられるのでしょうか?こびとさんたちはそろそろシロに狩られるもよう。


【19、巣立ち】
さて、ある勇者は親どころを巣立ちました。まだまだな無知な少年です。

「どうしましょう?」

どうするんですか?勇者は途方にくれています。

(・・・売れるわけないし。)

勇者はすでにリタイヤしぎみ。勇者はとりあえず、人のあつまってそうなところへ。

勇者がたどりついたのはおおきなおおきなメルヘン公園でした。

どのくらいかというと、村の四分の一の面積をしめるほどです。人はいっぱいいますが珍獣もたくさんいます。

こげんに治安が悪いのにメルヘンいっぱいなのです

勇者は巣立ったばかり。


【20、勇者と勇者】
「勇者さんですか?」

勇者に話しかけるしゃがれた声。今日はよくはなしかけられますね。

「えっ、あ・はい。」

勇者がふりむくと太い幹・立派な枝ぶりのおおきな桜。もちろんこいつがしゃべったわけじゃない。

いくらメルヘンでもねぇ。視線を落とすとベンチに腰掛けたちいさなおじいさん。

「よろしかったら、少しお話でも。」

良平は素直にその場に腰おろす。

「すみませんね。年寄りのわがままで。」

良平は首を横に振る。おじいさんは軽くほほえむ。良平は実をいうとちょっと不安だった。

(こんなところにこんなおじいさんがいるはずない。きっとなんかの罠で・・・俺が気付いたときは体ばらばらとか・・・。)

と思考をめぐらせてビクビクしていると、

「・・・この桜はですね、私がある人と約束して受け継いだものなんです。・・・私も若いときは勇者だったんです。魔法使いと紋章術士とパーティを組んでいろんな国を、村を冒険しました。それなりに危険なことも哀しいこともありました。でもね、あなたも感じているんでしょうけど、スリルが謎解きが自分が強くなり、学ぶことがたのしくてしかたなかったのです。私はこの村である女性とであったんです。そのころは本当に夢いっぱいな村でね。私はその人に惹かれ結婚しました。」

おじいさんはそこで話をとめ、

「・・・本当に私は幸せです。あなたはまだ若い。とても魅力があります。・・・すみませんねぇ。話につきあわせてしまって、たいくつでしょう?」

おじいさんの一方的な話でした。

「全然。その冒険の話もっと聞きたい。」

良平は興味がわいたらしい。おじいさんはにっこりほほえむと冒険の話をし始めました。


【21、居場所】
「掃除して欲しいのはこっちよ。」

シロは了解する。シロはとっくに珍獣を狩って高値で売った。

が、店主にこれは犯罪になっちゃうのよ、といわれ口止めに仕事を一つ引き受けたのです。

「匂いがひどいけ。」

シロがいうと

「うちではこういう物件もあつかっているんだけど、この部屋でおばあちゃんが亡くなっちゃって。隣りにご家族が住んでいて、安心していたんだけど見つかったのは死後三日たってたの。・・・。私も年だから思うのかも知れないけどお年寄りの居場所は・・・。この部屋今いったとおり匂いのほう特によろしくね。」

店主さん(ちなみにおばあさんです)はでていく。へぇへぇ、としかたなしに引き受けるシロ。

鳥肌が立っている。ふと頭によぎる疑問。

「ん?居場所ってぇのは?」

【22、生】
「・・・そして、その村は正義の村と呼ばれたらしいです。」

「村の名前は?」

「さあ、忘れてしまいました。正義の村という愛称でよばれてますしね。」

勇者は老人との会話で興奮していた。

「すごいね。冒険記。」

「信じていただけて光栄です。それから私のことはアレンとよんで下さい。」

「え、でもさっきホントの名前は・・・。」

「ええ、みんなその愛称でよぶんです。」

「アレンさん、メルヘン村にきてからは?」

アレンは少し考えて、

「お話ししましょう。」

そう、アレンは答えて話し始めた。

「私たち一行はこの村に来ました。そしてね、私は一人の女性と恋をした。
本気でしてはいけない恋。でもそのころはそれが罪になるとは思いもしなかったのです。ただ名を広めた勇者として調子にのっていてなにも周りのことも考えず、結婚したのです。私は彼女のために生きると決めたのです。もちろん、波紋がわきました。しかし思っていたより簡単にことは進みました。まず、旅をしていたパーティ。彼らに勇者という戦士、物理攻撃をする人間が欠けてしまいました。そんなバランスの悪さ、私の抜けた穴は大きかった。彼らは解散せざるえなくなった。しかし彼らは私のわがままに納得してくれ、彼らも温かい家庭を過ごしています。また、さっきの村の話ですが、私の名で観光地として豊かに栄えました。そしてこの村。私はここに住むことを決めました。しかし、私が老いぼれるにつれて、夢見る悪党が若い私をさがしてくるんです。おかげで治安もこのとおり。
しかし、この村は若い夢であふれている。そしてです。当然のように年老いた私は生きることになんの執着もない。妻はね、私に生きる理由を与えました。私は数々の人のおかげで生きている。本当に幸せです。」

アレンは口を止める。

「奥さんは?」

良平の問いにアレンは首を横にふり

「先立ちました。」と小さく答えた。

ー一方 シロ

金髪の勇者はおおきな公園を歩いていました。一仕事終えて仲間を捜してい
るもよう。

「はっけーん。」
シロはつぶやく。リョウはベンチで老人と会話中。あの調子で『☆ドキドキ☆宝くじ』は売れてるのか。

二人が楽しそうなので入るに入れない状態。二人の会話が止まったよう。

「リョウ!」

シロはそう叫んで、ベンチの方へ。老人のほうはびっくりしている。

シロはとびきりの営業スマイルで「こんにちは」とあいさつする。そのまま良平に宝くじのことを尋ねる。

やはり売れていないらしく、良平は慌てている。

「金の髪、黄金・・・琥珀色の目。君はどこの出身だい?」

老人は笑顔で尋ねる。シロはいきなりの質問に驚きながらも「南真ん中村」
と答える。

「・・・なにか愛称はなかったかね?」

老人の続けての質問に少し間をおいてシロは首を横に振る。

「そうかい、よく似た種族がいるものだ。むろん私の知っている村でそのような言葉を使う者はいませんでしたが。」

と残念そうに語る。

「じっちゃも黄金なんだな。」

シロが問う。老人はうなずく。細くてよくきがつかなかったが老人も目が黄金だった。

「世界は広いですね。」


【23、回想】
「桜がなぜこんなに美しいかご存じですか?」

不快を感じさせない甲高い女の声。

「さあ。俺は葉桜の方が好きだがな。」

若い男の声。女は軽く微笑むと

「それもよろしい。桜は本当は汚れない白色なんです。この桜の下には・・・。」
.
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「おじいちゃん。」

孫の声で老人は起こされる。老人は久々の来客に笑みがこぼれる。

「おじいちゃん、いつ死ぬの?」

突然の問いかけに老人は驚く。小さな孫はいつになく無邪気に笑っている。

その笑みは幼きゆえの残酷さを秘めており、幼きゆえの無知が害としてあり。

老人は答えない。

「ねぇ、いつ死ぬの?お母さんが教えてくれたの。ちぃちゃんのお部屋くれるんだって。」

おじいちゃんが死ぬとおじいちゃんの部屋はちぃちゃんの部屋になるらしい。

老人はかすかに震えている。孫は老人に異変を感じたらしく部屋をでていく。

いれちがいにおおがらな男がはいってくる。

「老人ホームの件なんだけどね。短くてもあと5年は待たないといけないんだ。・・・聞いてるかい?父さんのためなんだよ。・・・うちにも余裕はないんだからね?ったく・・・。」

男は話を続ける。しかし、老人の耳には届かない。

誰が老人ホームのお願いをしたのだろう。誰が入るのだろう。誰が老人で余分な人間なのだろう。
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男は女の一言が怖かった。男はその場を逃げることもできない。

「それは私です。今宵か、数十年後か。すべては世の軌道のさだめのままに・・・。」

男はしばらくしてやっと口を開いた。

「それはお前ではなければならないのか?」

「そのために生まれ生かされているのです。世の軌道も星、夢、地、・・・すべての軌道は違えることを知りません。」

女の言葉に男は裏切りを感じた。

男は残酷な勇者として人を裏切ったことはいくどもあるが裏切られたことはなかった。

すべてのものを裏切った男に残った者は女だった。

「あなたはその覚悟を心得ですか?」

男は答えることができなかった。


【24、逝去】
男が夢から覚めることはなかった。

老人は若者二人と別れる。久々の楽しい一時であった。背にある桜。

「・・・彼らもきっと夢の登場人物なんでしょうね。いつ、夢の渡り人は現れるのでしょう。」

老人は罪人。老人は嘘。老人は夢人。小さな老人の体は傾く。

「・・・アレン!」

目の前に女の顔が見えた。冷ややかで軽蔑するような目をしている。身震いのする老人。

「アレン!ねぇ!」

・・・目の前にいるのは若者。無知な不安を抱えた目をしている。

「良平君・・・ですか。」

力無き返答。

「アレン。今、シロが医者よんでる。安心して。」

「・・・年ですかねぇ。・・・大丈夫。軽い貧血でしょう。」

そういってアレンは立とうとした。

「だめだよ!!!動かないで!!!」

アレンはぎょっとした。良平の一言ではなく自分の頭からしたたる血を目にしたのだ。

どうやら倒れた際にけがをおっているらしい。それほど辛くはない。

「・・・良平君。私の冒険記、信じていますか?」

「え、もちろん。あんまり話さない方が・・・。」

「嘘です。すべて嘘です。」

良平の一言をさえぎった。

「・・・私はたしかに勇者アレック・S・エジルです。でもきっとこの存在は夢なんです。私は年老いていくにつれて夢の中で生きてきました。さきほどの話。私はすべてのものを裏切ってきたのです。やはり私の恋は罪となりました。旅のパーティ。彼らを私は捨てた。彼らはその後、魔物の犠牲となったと聞きました。そして正義の村。今はないんです。私は村人を裏切りました。村に勇者がいないことがわかると悪党どもは村を襲いました。黄金の目は美しく、宝石として高値で売買されます。もちろんこのッ村・・・はぁ。この村に若い夢などありえません。・・・妻との約束なんて・・・ないん、です、・・・ごほ。妻じゃないんです・・・。彼女は聖なる女性で・・・神に仕えていました。神のかわりに・・・私に・・・罰を与えにきたのです。・・・げほっ!はぁ。彼女は桜の下に・・・います。いまや・・・私は世のお荷物。」

老人の言葉に若者は答えることはできなかった。

「変ですね・・・息苦しい・・・はぁ。それでね・・・私はすべてを無視して、すべてをなしにして・・・嘘を自分についていきました。・・・夢を見ていたと思えば、少し、救われたんです・・・。はぁ。すべて悪夢だったんだと。・・・そういう、夢に、浸って・・・生きてきたのです。・・・だけど、やっぱり・・・夢から覚めると・・・彼女は・・・桜、の下に・・・。良平君、私はあなたを・・・探していました。・・・でも遅かった。今、気付いた・・・、・・・あなたは、夢の・・・渡り人。」

老人は眠る。


【25、行方】
「・・・俺。冒険記好きだった。あれは嘘じゃなかったんだと思う。」

「ああ。」

良平の言葉にシロが返事をする。

「・・・嘘でも楽しかった。・・・アレンはずっと幸せっていってたんだ。・・・なんにもいってあげられなかった。なんにも、できなかった。」

「ああ。」

「残酷だよ。夢からせっかく覚めたのに。」

勇者の声は震えている。

「・・・覚めねぇ方がよがったのかもしんねぇ。」

老人は夢から覚めたと同時に世を去った。無知な少年は初めて『死』をまのあたりにした。

数時間後

「・・・こげんな時になんだが。」

シロが口を開く。良平は顔を上げる。

「・・・あたったちゃ。あの宝くじ。」

良平の顔はポカンとしている。悲哀に浸っていた少年の顔は唖然という言葉が似合う。

「いくらさ?」

「・・・現金な。一千万リーム。」

少年の目は丸くなる。

「こんな時に悪いんだけどさ・・・。内心うれしいんだよね。・・・複雑。」

シロは少し怪訝な顔をして

「しょうがないけど。泣くか、笑うかにしろ。」

と標準語で話した。呆れられたプラス軽蔑されたように感じた。

自分より現金なシロが喜んでいないことによけい罪悪感を感じた。

「・・・もう大丈夫け?次は隣村の方向へむかうべ。」

シロの言葉は良平に居心地の悪さを与えた。


【26、桜】
「ーこの桜の下には死体が埋まるのです。この桜は白い。桜は汚れない人の血をすすり美しく咲き誇るのです。薄紅色に染まって。」

女は一息つく、男には何を話しているのかわからなかった。

「この下に埋まる者。それは、神に仕える者。私ですー。」

男はその続きを聞いていなかった。耳に入らなかった。男と女は恋をしていた。

男は女のために地位も名誉もすべてのモノを捨てた。すべてのモノを裏切った。

女は男のように神を捨てることはできなかった。神を裏切ることはできなかった。それは男への裏切り。

 女は桜の下に。男は当然のごとく、嘆き、壊れた。男は夢の中へ葬られた。

男は夢の中で生きる術を選んだ。男は夢の中で老いていった。妻をとり、息子を育て、孫ができ。

男は夢から覚めることはなかった。

ただの老人は若さゆえの愚かな行動にふたをしたまま。老人には地位も名誉もない。

老人の名を知る者もなし。老人の罪は過去。老人の嘘は夢。老人の夢は生。

 老人は小さくなる。老人の居場所をむしばむ世間。その世間は若者。

老人もいつかは若者であった。女の裏切りは老人への罰。世間の背は若者の背。


けったいな話ですよねぇ。男は永遠に夢の中にこもって生きたんです。永遠に覚めることもなく。男は罪人。男は嘘。男は夢人。世間を変えるのも男のような若者。若さゆえの愚かな行動にしっぺ返しはつきものです。

★コメント★
一年前の書きだめだから。。。なおす気力もない。。。


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