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4章 友人探しの旅 ロンボク島にて
<4章 友人捜しの旅 -ロンボク島にて->
いよいよロンボク島へ向けて出発。迎えに来てくれるスタッフの名前と携帯電話の番号を確認した。久しぶりに乗るプロペラ機は恐いと思ったが、そうでもなかった。飛行時間はたったの25分だった。あっという間に到着して、ひょうしぬけした。スタッフはちゃんと空港で出迎えてくれるかな。ドキドキ…。
到着ロビーで、スタッフはちゃんと待っていてくれた。私の名前を書いたプラカードを持って。念のため、スタッフの名前をきいてみる。あらかじめ、教えてもらっていた名前と同じ。スタッフの名前はエルナワン。20代に見えるが、30歳だそうだ。エルナワンの案内で、旅行会社のバンに乗り込む。さあ、出発進行!
バリ島できいていたように治安が悪いかもしれないとと、車から、窓越しにおそるおそる外を眺めてみたが、街は平穏そのもので、治安が悪いようには見えなかった。車にまじって、のんびりと走っている馬車もあって、バリよりものんびりしている。のどかな雰囲気は以前来たときと、変わっておらずほっとした。
空港からレンダンナンカ村までは、車で1時間半ほどだった。エルナワンが話し相手になってくれたので、あっという間だった。エルナワンは冗談が好きで、私を笑わせっぱなしだった。つまらない冗談にお世辞で笑わない大阪人の私を笑わせ続けられるというのは、たいしたものだ。彼の冗談はセンスがよく育ちのよさが感じられた。彼はいったい何者なのだろう。エルナワンは、ロンボク島の人ではないが、ロンボク島に遊びにきたときに、ロンボク島が気に入り、ここで働くことにしたという。感覚で大事なことを決めてしまう人なのだなあと感心した。でも、私もそういうところがあるから、好感が持てた。
それにしても、エルナワンは、ロンボク島に友達も知り合いもいないのに、よくここで働くことを決めたなあ。「僕はここに住むべきだ!って思ったんだ。そんな心の中の声に従ったんだよ」という。よくきくと、エルナワンは旅行会社の支店長だという。ええ!?支店長なの?なぜ、支店長みずから、車を運転するの?「ワヤンと約束したからね。君が友達を捜せるように、僕が責任を持って村まで送り迎えしようと、思ったから、自分で来ることにしたんだ」
若き支店長、エルナワンのおかげで、無事レンダンナンカ村に到着した。まずは、校長先生を訪ねる。校長先生の経営してる、ゲストハウスまでの細い路地を通る。村の人々は笑顔で、私たちを見ている。中には、私のことを覚えている人もいて、握手してくれる人もいた。
日曜だったこともあって、校長先生は在宅だった。奥さんと末の娘さん、末の娘さんの大学の同級生たちもいた。突然の訪問に校長先生は驚きを隠せない様子だった。校長先生の経営しているゲストハウスの中庭でお話することになった。
校長先生は申し訳なさそうにしていた。校長先生にフィルについて問い合わせる手紙を書いていたのだが、その問い合わせに答えられず悪かったと謝ってくれた。先生は私に手紙を書いてくださったそうだが、私には届かず、返送されてきたという。住所が間違っていたのか、何が原因かわからない。
校長先生と、奥さんと末の娘さん、エルナワン、私の5人で、テーブルを囲んだ。娘さんが、紅茶を出してくれた。校長先生によると、フィルはロンボク島のスンギギビーチで働いているが、ときどきレンダンナンカ村に帰ってくるという。30分ほど話したとき、誰かがやってきた。
なんと、フィルだった。私も驚いたが、フィルはもっと驚いていた。彼は気を失って倒れるのではないかというほど驚き、そして、ふらふらと椅子につき、ぼーっとしていた。再会を現実とは思えないようだ。
フィルは校長先生に用があったようで、校長先生と話をしていたが、うわのそらのようにも見えた。しばらくして、フィルは言った。「よかったら僕の家に来ない?」校長先生に挨拶して、エルナワンと一緒にフィルの家にむかう。細い路地を歩く。路地ぞいの道で、近所の人が笑顔で私たちを見ている。
フィルの家には昔行ったことがあった。お兄さん家族にも会ったことがある。だが、私の記憶よりも家は小さく老朽化していて、ソファーがやぶれていたのが気になった。村での生活の苦しさがうかがえた。
フィルの家のソファーで紅茶をいただきながら、話をした。失われた時をうめるように話をしたかったが、そうはいかなかった。フィルもそう思ったのか、すぐに村を出ることを提案してきた。村はかなり伝統的なところなので、男女間の友情を認めない見えない圧力があった。
フィルはゆっくり話せるお姉さんのところに行こうと提案してきた。フィルのお姉さんにも会いたいけれど、できれば、スミヤティさんに会いたい。きくと、スミヤティさんは、フィルの村、レンダンナンカの近くに住んでいるという。バリ島から数年前に帰ってきたというのだ。レンダンナンカからは車で20分くらいのところだという。お姉さんのところより近いので、先にスミヤティさんの家に連れて行ってもらうことにした。
車がスミヤティさんの住む村についた。フィルの後を歩く。細い路地だ。にわとりが走り回っている。と、家についた。家には、鍵がかかっておらず、フィルは、挨拶だけして、ずんずん入っていく。スミヤティさんがいた。彼女はぽかんと私を見た。1、2秒して、キャー。悲鳴に近い叫び。そして、跳びあがって、私の名を呼ぶ。私たちは、気が触れたように、小躍りして、抱き合った。二人とも泣き笑いしていた。
スミヤティさんの家のリビングで、コーヒーをいただきながら、話す。日曜日なので、夫のイッスさんも、こどもたちも、お姑さんも在宅だった。フィルの通訳で、スミヤティさんたちと話した。夫のイッスさんによると、スミヤティさんは、二日前に、私と連絡を取りたいから、手紙を代筆してくれるようイッスさんに頼んでいたという。
フィルから、私が引っ越して連絡不通になったことをきいていたイッスさんは、スミヤティさんに、「手紙を書いても、送り先がわからないから無理だよ」と言いなだめていたという。「でも、手紙を書きたい。連絡を取りたい」ジレンマでどうすることもできないスミヤティさんは、うなされたかのように、私の名前を呼び続けていたと言ってイッスさんは笑った。私がここに来ることを、スミヤティさんは、自分でも知らない間に予知していたのかもしれない。
居間で紅茶をいただいて、話した。空白の期間は、こうして話すことによって、埋められていった。
スミヤティさんの経済状態が以前と比べて良くなったことが判明して安心した。今は、ロンボク島でみやげ物店を経営していて、自家用車もある。バリ島にいたときは、夫のイッスさんが、土産物屋で働いていて、その収入しかなかったので、苦しかった。4畳半位の家に住んでいて、テレビも買えなかったが、今は、テレビばかりかステレオや自家用車もある。家は3DK。暴動や経済危機の悪い影響を受けているのではないかと、心配だったが、そうではないようだった。ほっとした。
スミヤティさんとずっと話していたかったが、フィルのお姉さんのところにもいかなくてはいけないので、そろそろおいとますることにした。ロンボク島での滞在を延長しようと、このとき思った。「また来てね。待ってる」そう言って、スミヤティさんは、車のところまで送ってくれた。
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