6章 別れの日



日本に帰る前日私はトミーくんに言った。「明日、日本に帰るね」すると、彼はきいてきた。「誰に会うために?」少し考えてから答えた。「ママに会うために」彼は納得してくれた。

でも、私が帰ることに、本当に納得していたのではなかった。トミーくんは、私にずーっといてもらいたかったみたいだ。そのことは、トミーくんの母親からきいた。「トミーは、あなたを帰したくないから、『ママ。おうちのかぎを全部しめて!そうすれば、お姉ちゃんは日本に帰らなくなるから』って言ってたのよ」そう言って、母親は笑った。

帰国の日が来てしまった。ホームステイ先のお父さん、お母さん、こどもたち1人1人と握手して、礼を言う。家族みんなで、家の前まで送ってくれた。

電話で呼んだタクシーが道路で待っていた。なごりおしいけれど、タクシーに乗り込む。タクシーが走り出す。振り返ると、家族みんなで手を振っていてくれた。でも、その中に1人、納得がいかない顔をしている人がいた。トミーくんだった。ママに鍵をしめてと頼んだのに、ママは鍵をしめてくれなかった。トミーくんはそんな風に思っていたのかもしれない。

と、トミーくんがこちらに向かって走り出した。舗装されていない道路を走るので、タクシーはまだスピードを出していなかった。でも、トミーくんはまだ、4才だ。みるみるうちにこちらとの距離は離れていった。それでも、走るトミーくん。泣いているように見えた。私も泣いていた。

空港まで、フィルが送ってくれた。メッカへ巡礼に行った人々が帰ってくる日だったので、空港の前の芝生には、地方から家族総出で出迎えにきた人々が、30~40人ほど座ってご飯を食べたりしていた。ちょっとピクニックのようだった。

トミーくんと別れて、私も参っていたが、今度は親友のフィルと別れなければならない。フィルも相当しょげている。泣きたいのを、ぐっとこらえているような複雑な表情で、手荷物検査の場所まで、荷物を運んでくれた。

フィルとは握手して別れた。二人とも我慢していたのに、最後はこらえきれず、笑顔が泣き顔になってしまった。

(ロンボク島旅行記は、これで終わりです。最後まで読んでくださってありがとうございました。今後は、ロンボク島でのエピソードや、インドネシアに関する話を少しずつ書いていこうと思っています。こうご期待ください)

更新日:02年9月29日


旅行のきっかけを読む

楽天トラベル 楽天トラベル 海外航空券予約



© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: