癒しの休憩室

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詩)ふたつの腕



曲を聴きながら読んでくださいね、、、。



「ふたつの腕」


小春日和のなかで
僕をベンチに座らせて
腕の長さをはかりながら
毛糸を編んでいた。

「何を作るの?」と聞くと
「内緒だよ」と微笑んだ。

とうとう何を作っていてくれたのか
わからず終いだったね。

こんなにも別れが近かったとは


ふたつの腕を持たされて
この世に生かされ
暗闇を彷徨った。


君を見つけてからは
閉ざされた腕を広げて
まばゆい光を浴びることが出来た

二人ならどこでもやっていけると思った。

冬の夜には
やわらかな
あたたかい唇を求め合い

涙をためた瞳をうかがいながら
髪を撫で
わけも聞かずに抱き寄せた。

「温かい体だね」と言ってくれたよね。

「もっと強く愛して」と言われ

ふたつの腕で
ただ夢中に
抱きしめるだけの僕だった。

なぜ愛されたのかも知らないで


五年の月日が経っても
ふたつの腕を広げて
君を迎え入れ

時には娘のようにさえ思った。


けれど
その柔らかな唇から
最後に聞いたのは
別れの言葉

また暗闇のなかに
押し戻されていく。

「もっと男らしくして」と

なぜふたつの腕を持たされて
生きているのかも
いまだにわからないまま


また暗闇のなかに
君のふたつの腕で
押し戻されていく。

「もう、みすぼらしい
女にしないで」と





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