いつか全て捨てようと思って暮らしてます

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その壱

『きもの』幸田文 新潮文庫 1996・12(2001・10 八刷)

大好きな幸田文のきもの小説。人生のためになる一冊です。着物のことが何もわからなくても幸田文が誰か知らなくても読んでみて損はありません。もちろん着物についてのお話満載。小学校までは親にきものを着せてもらってたとか、その上の学校に行くようになると学校着とうちで着る着物を区別させたとか、着物が庶民の普段着だった時代の姿を彷彿とさせてくれるのです。文の小説は大好きでほとんど読んだけど、何一つはずれがない。素晴らしい。あんま関係ないけど小説としては貴重な震災小説でもあります。

『幸田文の箪笥の引き出し』青木玉 新潮文庫 2000・9

題名どおり文の遺した着物と着物にまつわるお話をひとり娘の玉子さんが書いた一作。母親譲りの美しい日本語が読んでいて気持ち良いです。ほとんどが母、文の言行録ですが、祖父露伴の遺した石摺りの着物なんてのも載っていて文学マニアは要チェックなのだ(笑)猫を染めた話が最高に面白かった。

『きものがたり』宮尾登美子 文春文庫 2002・3

宮尾さんがお手持ちの着物をカラーで公開。それにまつわるお話もきかせてくれます。疑問だったモスとセルの違いがこの本で解明されました。いわく、「モスは捺染、セルは織物と思えばよい」そうです。そんでもってウールは「玄人衆は着ないもの」とされていたそうな。「毛織物は体の線を隠すので色気がないなどといわれていたせいかと思われる」。同様に玄人衆の女性は花柄の着物はあまり着なかったとか、位からいうとたて縞が一で格子は二の次とか、どこかで使えそうな小ネタが多くて面白いです。

『つむぎの糸』宮尾登美子 新潮文庫 1883・3(2001・1十二刷)

雑誌連載のエッセイを一冊にまとめたものなので着物に関する話はところどころしかないけれどなかなか面白い。共通のお話がいくつかあるので『きものがたり』と併せて読むのがおすすめ。

『「柄」着物と帯』浦澤月子 小学館文庫 1999.4

文庫でカラーでうんちくもたっぷりというお得な一冊(笑)
著者の方が浅草生まれの売れっ子芸者から銀座の老舗呉服屋にお嫁入りしたという人なので、「~は粋じゃありません」、なんていわれるとへへ~~って気分になります。むじな菊とか菊五郎格子とか柄の名前がぽんぽんでてくるのが勉強になりました。

『着物の悦び』林真理子 新潮文庫 1996.12

着物の悦び きもの七転び八起き ( 著者: 林真理子 | 出版社: 新潮社 ) 『ルンルンを買っておうちに帰ろう』の時代から、”シルクのブラウスって一度着たらクリーニングに出さなきゃいけないじゃな~い?で、そのクリーニング代がまた高くて、もう一着買えちゃうくらいするわけ。でも私は毎回ちゃんとクリーニングに出すわ、だってそれがシルクを着るってことでしょ~?”とか言ってた彼女のことだから、着物のウンチク話も推して知るべし。笑って許してあげよう。

一般ピープルと違う私、を演出することに人生を捧げている彼女が着物に目をつけたのはけだし当然というべきで、私たちはひとつ大人になって、彼女のバブリーな言動も他のワカワカランものに入れあげるくらいなら、まだ着物で良かったと暖かく見守ってあげるべきだろう。

アマとしてはそろそろ中村うさぎさんあたりが着物に手を出してくれないかと期待してるんですけど(笑)


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