不思議の泉

不思議の泉

27.書きかけの絵本を仕上

27.書きかけの絵本を仕上げましょう



フシギの月鳥、1曲終わって指をパチン鳴らしちゃって。

魔法の森のひろば、おっきな絵本のページ出現しちゃって。

「えっ、まだ書きかけなのに…。」 若い物書きタメイキついちゃって。


    うう~ ちゃって
            うう~ ちゃって
         うう~ ちゃって


未完成のページに出たり入ったり。


    ★  フシギの月鳥、音譜を歌わせました。

    ★  月のウサギ、ダンスシューズを躍らせました。

    ★  どんぐり森のキノコ、月のランプを灯しました。

    ★  くるみ森のリス、クルクルしっぽで時計の針を回しました。

    ★  アリの隊列、あまぁい夜のいろを塗りました。

    ★  ホタルの仲間、ぴかぴかハートマークを光らせました。


そして、羽ペンがふわり羽ばたいて。

「作者のサインをいただけますか?」 若い物書きの手の中へ。



若い物書きは、首を横に振り・・・

そこへ、黒マントがふわり羽ばたいて。



マント 「お若いの、これは笑止千万、ワハハワハハ・・・。
      アートを独り占めとは、なんと狭量な。」

物書き 「そうではありません。
      なんのために売れないモノを書き続けているのか、、、
      今はもう自己陶酔に過ぎないのではないかと。」

マント 「創造はパッション!
      創造のパッションは己が内を通して発現される宇宙の意思。
      利己的なものに帰属させられるべきではない。
      あれを見たまえ。」



月明かりのなか、絵本はキラキラと輝いて。

色とりどりの魔法使いのマントが、妖精の羽が、飛び交って。

大小さまざまな動物が、鳥が、魚が、虫が、花が、うっとりと。



            * * *


     あなたのコトバは水晶玉のあかるい未来です。

     きのうの涙は笹の舟。

     やさしく想い出をハンカチにぬいこんで、

     蝶々の羽でわたしの明日をむかえましょう。


            * * *



マント 「みな、君の絵本を読みに来たのだよ。
      魔法の森の読者ではご不満かな?」



紅潮する頬は、躍る胸の鐘の響き。

あたたかなサラサラとした液体で、充たされてゆく空洞。

若い物書きは生まれて初めて、物書きとしての幸せを感じたのでした。






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