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エレベーターガール




駅の改札を抜けて中二階の柏の駅の広場を抜け長い階段を降りると、僕は人通りの多い商店街を抜ける。

時間は夜の8時を回った所。

デパートは閉店になり、その裏口には業者専用の荷物の搬入口があり、その隣りの通路には守衛さんがいて、「ごくろーさまですー。」と社員に声を掛ける。

社員たちは、足早に「お疲れ様ー!!」とお互いに声を掛けながら、素早くタイムカードを機会に落とす。「キィーガシャン!!」

疲れた顔の催事コーナーの叔母ちゃんや、食品売り場のアルバイトの高校生!!決まって早く出て来る。

その後に、賑やかな声といっしょに、ファンデーションがちょっと厚塗りのいい香の女性達が出て来る!!

決まって、冴えないカッコの身長170センチのあいつは遅く出てくる!!

彼女の名前は相沢ヒロコ。

高校卒業して、同じ軽音楽部の同級生!!身長があって、

手が大きい事が幸いして、ベースをいつも背中に背負って登校していた。

恭平!!私の背中に隠れるのやめてくれない?

僕はヒロコの後ろの席で、いつも一時限目が終ると、事業中教師の目を盗んでは、早弁した。

二時限目からは、ヒロコの後ろで隠れて昼寝!!ウォークマンを学生服の胸ポケットから、カラーの方を通して聞いていた!!

お決まりはRCサクセションだった!!

「恭平!!あんた、ギターの腕はいいけれど、単位取れないよ!!」

「ヒロコちゃん!!そんな事言わないで、物理のノート貸してよ!!」

恭平はヒロコのノートをいつも借りていた。

「よぉー!!ヒロコちゃん!!久し振りー!!」

ヒロコは高校を卒業して、デパートに就職。学校の推薦でこのデパートに就職した。

「居酒屋でも行く?」ヒロコは「まさか?私の奢りで?」

「わかっちゃった?今日給料日でしょ!!」ヒロコは笑った!!

「しょうがないなぁー!!いつもこれだから!!」

僕らは仲のいい友達だった。

「ヒロコちゃん相変わらず色気無いなぁー!!ヒールとか履かないの!!」

ヒロコはムッとした。

「ほっといてよー!!大きなお世話!!仕事も最悪だし」

そう、ヒロコは就職してからエレベーターガールに持ち場が決まったのだ!!

「まったくさー、満員電車の中にいるみたいで、知り合いとかに逢うと、すごく恥かしいんだから!!この間なんてさ、恭平みたいなスケベー親父にお尻触られたんだから!!」

「へー!!」

恭平はおでんのはんぺんを食べながら聞いていた。

「しかし、ヒロコちゃん色気ねーなぁー!!彼氏出来た訳?」

ヒロコは、ライムサワーを飲みながら、笑った!!

「処女に決まっているじゃん!!」

恭平は、噴出しそうになった。

ヒロコちゃんは偉かった!!嫌だ!!嫌だと言いながら、

ずーと、デパートに勤めていたなぁー。

「だって、中途半端で辞められないよ!!高校の後輩の就職無くなっちゃうでしょ?」

だからって、つまらない仕事ヒロコちゃんが続ける事無いんじゃないの?

僕は酔っ払うといつも彼女にそう言った。

恭平は20年ぶりに仕事で柏の街に降り立った。

「ヒロコちゃん幸せなのかなー?」

ふっと、街中を歩く若者を見て思い出した。
あの頃、ジーンズとスニーカーばかりの僕がとても懐かしかった。

柏の街はずいぶん変わっていた。

恭平は懐かしく、デパートの裏口を眺めていた。

                     おわり。


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