tomorrow

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肩書きが無いと云う事!




順一は、とにかく嫌になっていた。

その日暮らしで、のんべんだらりんと暮らして行くのが、

嫌だった。浪人なんて、学生でも無く、社会人でもなく、

このまま成人式を迎えるのも、嫌だったし、フリーターなんて、名乗れるほど、気楽な世の中でも無かった。

高校時代の担任に、「順一じゃ、浪人は無理だ!」と言われた事も今にして思えば、神様のいたずらで試されているとしか、思えなかった!

金も無ければ、将来の夢も遥か遠く、ましてや、愛する人を
守る事など、今の順一には想像が付かなかった。

最近じゃ、原宿のクロコダイルにライブを観に行き、バンドの仲間と、裏路地のペニレインで、飲んで、電車が無くなると、向かいの店で、タイトルの知らないフランス映画を時間潰しで観て、ビリヤードをして過ごすと云う日課だった。

こんな、毎日だから、結局、大学受験も、一次試験は、受かるものの、二次試験で、落ちてしまった。

「英樹!やっぱり、ダメだったよ!」ショックで、英樹に
 相談した。
「取り合えず、お前、本意じゃないかもしれないけれど、
 三流大学でも、受けろよ!4年間の中で答え出せばいいじ
 ゃん!!」英樹の勧めもあり、片田舎の大学を受けた。

肩書きが無いと云うのは辛いことで、何か事件を起こしても
無職!と云う怪しい表記で、人権が否定されるだけなら、
取り合えず、大学生になるか!

来年も、浪人で、成人式を迎えられるだけの根性も、
金も、実力も希望も、順一には残っていなかった。

ジンセイ、オモイドオリニイカナイコトバカリ?

金持ちのボンボンが羨ましかった!

スポーツカーに、デザイナーズブランドのジャケットに、
かわいい、彼女!!

順一には、あるのは、ギターと情熱だけ!!

順一は、新宿のスタジオで吠えた!!

「もっと銭が欲しい!!いかした車が欲しい!でっかい家が欲しい!、いかした女が欲しい!!」

何もかも、欲しくて欲しくて、思い通りにならなくて、

日払¥6000-の引越しのバイトは辛かった。

朝早く、ドラム缶に蒔きをくめた焚き火で暖を取り、トラックに乗り込み知らない街へ行く仕事だった。

金に余裕がある時は、パチンコで、朝早くから、パチンコ屋で並ぶと、パチプロの常連さんと情報交換!
なにせ、生活かかっていたから、負けられなかった。

パチンコ屋に雷が落ちても、辞める訳にはいかなかった。
お陰でなんとか、しのいでいた。

どん底だった!!
もし、人生やり直すとしたら、10代に戻りたいですか?

答えはノーだと思う!!あれほど、惨めな10代から、
早く大人に成りたいと、順一は、願うのだった!! 
                  つづく。


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