tomorrow

tomorrow

二人の週末




僕は、オンボロのゴルフを買った!

ハッチバックのこの車は僕の宝物だった!まずはタイヤとアルミホイルを変え、毎日、洗車をし、

その頃順一は、スタンドのオーナーに店の鍵を持たされいたので、スタンドを閉めると、スタンドのリフトがある、ドックは、順一のガレージに早変わりした。

79年式のゴルフは、あちらこちら、傷んでいたが、決して順一の事を困らせる事は無かった!

と云うのも、あちらこちらと傷んでくると、順一はスタンドで明け方まで掛けて、解体屋で買った部品を変えて行った。

オイルや、フィルターから始まって、ベルト類、ブレーキパットにウォーターポンプなど、仕事中に整備士のマネージャーの作業を見ながら、覚えて行った。

順一は、部品を外す順序をメモしながら、夜明けまでに組み上げるのが、タイムリミットだった。

ユミコがバイトの休みの日の前日の夜は、ゴルフのバックシートに毛布とギターを積み、海へと向かった。

僕は当時色々なカセットテープを車に積んでいたが、中でも
お気に入りは、山下達郎とそのバックコーラスで参加していた、村田 和人(カズ)だった。

特に、カズのboys,Lifu はテープが擦り切れるまで、聞いていた。

ユミコはいつも、順一が新しい新譜を持って来るのが楽しみだった。中でもカズは二人のお気にいりだった。

ユミコのお気に入りはビーチボーイズのGET BACKだった。

順一に取っては、ユミコとサヨナラしても、この曲をラジオから聞くと、あの夏を思い出す事になるのだった。

「順一?もう、海に着いた?」ユミコは海に着くと、シートから、身を起こし夜明け前の空を眺めた。

僕は近くの自動販売機で買った、缶コーヒーをユミコに渡し
二人で車の中で毛布に包まった。

「ユミコ?今日は僕といっしょで、お父さんに叱られない?」

ユミコは微笑みながら、答えた。

「お母さんには、出掛けるって言ってきたよ!怒っていた
 けど、順一といたいんだもん!!」そう言うと、僕の肩に

寄りかかったままだった。「そうかぁ!そうだね!」

僕は何て言ったらいいのかわからず、そう答えた。

「順一、ありがとう!私、この車大好きだよ!」

飛び上がる様に、ユミコは突然答えた。

「友達に、ユミコの彼、何に乗っているの?と聞かれたから
 ゴルフなんだぁー!て言うと、皆、お洒落だねーって、
 言われるんだー!!ユミコ以外乗せちゃだめだからねぇー!!」

ユミコはそう言うと、ダッシュボードにユミコの買ってきた、やしの木のおもちゃを載せ、シートカバーは、ユミコが
手作りで作ってくれた。

僕ら二人にとってこの車は、どこへ行くのも、いっしょだった。

時に、僕らはこのまま何処へ行こうとしているのだろうか?

幸せな日々が続けば続くほど、不安になる瞬間が順一には、

あった。

そんな、思いを抱えながら、ユミコと二人夜明けの海を、

見つめていた。

               つづく。


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: