tomorrow

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永遠に続く愛。




人は永遠の愛などというものに憧れるが、

果たして永遠という響きにいかほどの信憑性があるだろう。

最初から愛が永遠ならば、はかなさを知る事もないし、

悲しみも後悔も幸福さえも意味をなくしてしまう。

それは素晴らしい事ではあるが、

同時に退屈で、想像力に欠け、緊張感の無い日溜まりのよう。

愛は永遠ではないからこそ、輝いていると、いえないだろうか。

    愛と永遠の青い空から
                辻  仁成
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


二人が付き合う様になってから、初めての夏が来た。

順一は大学で知り合ったゼミの友達と、バンドを組んだ。

毎日はとても忙しく、大学とバイトとバイトそして余った時間をユミコと過ごしていた。

もうすぐ夏休み順一は、年上と云う事もあり、泊りがけで、すべてを忘れ、愛車のゴルフでユミコと二人旅に出ようと思った。

順一は早速コンビニで旅行雑誌を買い、海がある所を考えた。

そうだ、伊豆高原に行こう、箱根を経由して伊豆に行こう。

順一は、その晩ユミコに電話をした。「あのさー、ユミコの

夏休みはいつから?」藪からぼうに話す順一の質問に、ユミコは、驚きながら、「何で、家の学校は私立だから、早いけど?」そうなんだぁ!

「俺も早いよ!!7/10日から、夏休みなんだ。」順一は、ユミコの休みに、自分の休みが合う事に心が踊った。

「今度デートした時に詳しく話すけれど、7/10日から、バイト休めないかなぁー?」

「順一何で?」ユミコは電話の向こうで素早く答える。

「君と旅行に行きたいんだ!どうかなぁー?」

「えー、何処に行くの順一と?」

「うん、伊豆高原のペンションに行こうと思うんだけれど?」

「うれしいー!!海にも行くの?」順一はテレながら、

「ああ!!」嬉しい気持ちを抑えて答えた。

「わかった!!順一、来週の日曜、お買い物付き合ってね、

私の今年の水着選ぶの付き合ってね!!」

今まで過ごしてきた、どんな夏よりも二人はワクワクしていた。

順一は、彼女が高校生だと云う事をすっかり忘れていた。

「ユミコ、何て言って家をでるのかなぁー?」

二人の夏はここから始まるのだった。

                  つづく。





夏の初め。 06月20日(日)


まだ、暗い朝、深く暗い夜空がブルーへと色を変える頃、

電信柱の裸電球の明るさが、虚しくなる頃、僕は両親に、

一週間程旅に出る事を、便箋に走り書きをしたメモを

リビングのテーブルの上に置き、静かに二階の部屋から、

ボストンバックに詰め込んだ荷物と、レンタルレコード屋で

ダビングした、テープケースを持ち静かに家を出た。

外に出ると、家の近所の駐車場に停めてある愛車ゴルフの

ハッチゲートを開けると、すべての荷物を積み込みドアを

閉めた。そして、僕はキーシリンダーにカギを差込、

エンジンを掛けた!。

今日も僕のゴルフは快調だった。ヘッドライトを点けると、

ユミコと待ち合わせしたユミコのバイト先の

ファミリーレストランの駐車場へ急いだ。

あいつ、何て言って家を出て来たんだろう?

16歳の彼女と、泊まりがけで出掛けるのだから殆んど

犯罪かも?そんな事を一人カーラジオを聞きながら僕は思った。

彼女のバイト先に到着すると、深夜窓際の席で僕の到着を

待つユミコの姿を発見した。

駐車場でエンジンを止めて待っていると、ボストンバックと

バスケットを抱えたユミコが歩いてきた。

僕は車から出ると、ユミコは小さく頭を下げ、

「よろしく、お願いします。」と小さく告げた。

僕は彼女のこういう所が好きだったのだと思う。

彼女の持ったボストンバックを彼女の手から取り、

「こちらこそよろしく!」と小さく答えた。

そして、僕はゴルフのハッチゲートを開けると荷物を

積み込み、助手席のドアを開けた。

二人が車に乗り込むと、空は少しずつ明けて鳥たちが夜が

明ける事を囁き始めた。

僕は、進路を伊豆高原に取走り始めた。

僕は信号待ちをしながらユミコに聞いた。

「ユミコ、何て言って家を出て来たの?」

彼女は持参してきた、お菓子の包み紙を開けながら、

「何も言ってないよ!だって、出掛けるなんて言ったら、
 お家から、出してもらえないもの。」

確かに、僕もそう思った。

「だから、向こうに着いて夜にでも電話するから。」

彼女はケロットして、答えた。

僕らは箱根から、芦ノ湖でボートに乗り天城超えをし、

そして、伊豆高原へと向かった。

その日は夏の初めを告げる様に、とても暑く

僕らにとっては正に夏の始まりだった。

                    つづく。



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