tomorrow

tomorrow

家族



 或る日、ユミコは「今度の日曜日、私の家に来ない?家族
 が順一に逢いたがっているのよ!」

ユミコはミルクティーを飲みながら小さな声で言った。

彼女の家は四人家族で、小さな製材所を営んでいた。

兄弟は二つ年下の妹のミヨコとの姉妹だった。

僕は突然のユミコの申し入れに一瞬たじろいだが、

先日の旅行の件もあり、多かれ少なかれ礼儀として、

ユミコの両親に逢わなければならない事と頭ではわかって

いたが。。。

その時がやって来たのだ。

僕はユミコに「わかった!君の両親に御伺いすると、君の

両親に伝えてくれないか!」

僕はマルボロに火を点けた。

ユミコは少し潤んだ瞳で「無理言ってごめんね!何かあったら、私が順一の事守るから安心して!」

僕はユミコの真剣な眼差しを見て吹き出しそうになった。

台詞がまるで逆さまだ、16歳の彼女にそこまで言われるとは

夢にも思わなかった。

「安心しているよ!君を産んでくれた両親だもの、すばらしいに決まっている!」

僕はユミコ」のそんな所がたまらなく好きだった。

                 つづく




彼女の両親


あの人は父親として尊敬できる父親であり、

あの人の優しさは、一生僕が忘れられない優しさを持った母親だった。

事実、ユミコの親はすばらしい家族だった。

お父さんは一代で、製材所を作り、お母さんは、お父さんを手伝った。

家の裏が製材所になっていて、お父さんは苦労人だった様だ。

「初めまして、よく来ていただきました。」お父さんは背が低く、角刈りの色黒で目がクリットした、優しい人だった。

「まあ、わざわざ疲れたでしょう?今日はご飯食べて行って下さいね。」

お母さんは背が高く繊細そうな人だった。

「先日は、勝手な事をしてすいませんでした。」素直に僕は言葉が出て来た。

ユミコの両親の懐の広さに、この夫婦がいかに苦労して今の暮らしを手に入れたのか、こんな言葉のやりとりだけで理解できた。

「順一さんも大変だね!学生さんりながら、家のユミコとのデート代、バイトで稼いでいるんだろ?」お父さんは、僕に
そう話しかけてきた。

「いいえ、自分の生活費と学費のためですから。」

自分の父に無い優しさを感じた。

「私はね、家の奴と結婚が遅かったんだよ。トラックの運転
 手をやりながら、材木を大型トレーラーで運んでいたんだ
 いわゆる、トラッカーさ。ユミコが生まれる時に、お客さ
 んから、材木屋の分家の話をもらってね!」

 ユミコのお父さんは、そう言うと、グラスのビールを、

 一揆に飲み干した。

 「まあ、家族四人何とか暮らしているんだ。この通り、
 家には、男の子がいないから、遠慮しないで、遊びに
 来てくれ!」

お父さんは、枝豆をつまんだ。お母さんは僕にビールを勧めてくれた。

僕の家は、父親がサラリーマンで、いつも母と父は、夜になると、お金の事で毎日夫婦げんかをしていた。

父はお酒の強い人で毎日酔って帰って、又家でも飲む。
会社の嫌なことは、家まで持ち帰って、お酒でまぎらわせ、

子供心にこの人達は、子供を育てる為にはしょうがないと

いつも、言っているが、このままで家族としてやっていく
事の方が可笑しい様に思えた。

知らぬうちに、オカネハジュウヨウダ。と言う情報が、

子供心にも、刷り込まれていた。

まさに、ユミコの両親が本当に居心地良かったし、羨ましかった。

ただ、ユミコのお父さんが言っていた、結婚が遅かったから

の意味は、僕には、よくわからなかったが、

ユミコから聞いた話だと、二人とも若い頃にとても、辛い

恋愛を経験した後、二人は出会ったらしい。

「結婚は早いうちの方がいい!」はお父さんの酔った時の

口癖だった。

ユミコの両親は僕にとって、自分の親以上に大切な人達に

なった。

「今日は、君の両親に逢えて良かったよ。」

順一は、帰り際途中まで。送ってくれた時にそっと、

彼女の瞼にキスをした。

ユミコは「良かった!!」と小さく呟いて、僕の頬にキスを

してくれた。

僕はすべてがうまくやれると思っていた。

                     つづく。



彼女の妹


ミヨコは、姉とは、まったく似ていなかった。

どちらかと云うとお父さん似で、ユミコより二つ年下だった。

「ウメさんと家のお姉ちゃんって、本当に仲いいよね。私は、お姉ちゃんみたいに彼作らないかも?だって、お父さん寂しがるから。」


ミヨコは優しい、妹分だった。

いつも、ユミコの家に遊びに行くと、ミヨコはテレビを見ながら、食事をしている。

ミヨコはゆっくりと食事を摂るのが好きらしく、僕が遊びに行くと、

ミヨコは、録画してあるビデオを持って来ては、見せてくれるのだった。

彼女のお気に入りは、CCBに男組。

いつだか、話に熱中して食事が終わらず、お母さんに怒られていた。

「ウメさんも妹いるんだよね?」

僕は突然のミヨコの質問に、

「ああ、」と答えた。

「私とどちらがかわいい?」

僕は、「面白いのは、ミヨコだな!いつも話ていて面白いな!」

ミヨコは「そう。」と小さくため息をついた。

「私、お姉ちゃんみたいに器量よく無いけど、かわいいでしょ!」後ろから、ユミコが、妹の頭を軽く叩いた。

「痛い!」ミヨコは後頭部を押さえた。

「何馬鹿な事ばかり、言っていないで、二階に行っていなさい!梅本さんに、気やすく何でも話すんじゃないの!あんた
の友達じゃないんだから!」

ミヨコは、「お姉ちゃんの馬鹿!!」

と言い残し、二階の自分の部屋へと逃げていった。

ユミコは、「順一は、私の物なんだから!!」

と、少し拗ねていた。

しかし、女の兄弟と云うのは、以外に似ていない物なんだ
なーと思った。

ある年齢まで、お互いに反面教師で、お互いに相手の嫌な

部分については、反対の姿勢をとる事によって自己主張を

する様だ。

しかし、そんな姉妹もある年齢になると(自我が形成される頃)になると、お互いに、ベクトルが同じ方向に向き、

協調してくる物らしい。

僕とミヨコはいつの間にか、友達になっていた。

ユミコの幼い頃のドジやら、色々な事を教えてこれた。

「でも、順一さんは、幸せよ!!家のお姉ちゃん、私から
 見ても、美人だと思うもの。」

いつも、僕らが仲良く付き合っているのを、

楽しみにしてくれていたのは、妹のミヨコだったと思う。

僕はそんな彼女の妹が、とても愛おしく思えた。


                彼女の妹。 完



© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: