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湾岸ミッドナイト



ガソリンスタンドのバイトが終わると、マネージャーにスタンドの鍵を渡されていたので、スタンドの整備室に、

愛車を入れシャッターを閉めると、毎晩の様に、整備を始めた。その姿は、映画(私をスキーに連れてって)のオープニングシーンの様だった。

深夜。カーラジオをかけながら、順一は黙々と作業をした。

スタンドのお客でもあり、バイトの先輩でもある、根岸さん

と云う人が僕の師匠でもあった。彼は僕より、10も歳が

離れていて、ちょっとした、街のお金持ちの所の息子だった

彼は車を改造するのが趣味で、車の事をよく知っていたし、

何より、自分の手で車を改造する技術はすばらしく、

当時、日本車では、最高速度を矢田部のテストコースで

走らせた物の中では最高タイムを持っていてちょっとした

有名人だった。

彼の口癖は、彼女と別れていた事もあり、

「順一!!女を俺を裏切るけど、マシンは俺を裏切らないぜ」だった。

僕は夜の首都高速を彼といっしょに彼のマシーンでよく、
走りにいった。当時まだ。ルーレット族なんて言うのも

いなかったし、300キロをのスピードを体験した事もなく、

僕は彼のマシーンのテスト走行によく付き合わされた。

「順一、もう引き返せないから、覚悟してくれよ!」

根岸さんの、ツインターボのL型のZは、料金所を過ぎると

一気に加速し、僕の体は呼吸困難になるぐらいに、レカロの

シートに押さえつけられた。

まるで、ジェットコースターに乗っている様で、

首都高速の二車線の斜線が、スピードで1斜線にしかどう見て

も見えないのだ!

「順一、ポルシェも俺の車にはかなわないぜ!!」

気がついたら、追いかけっこをしていたら、あっという間に

中央高速の勝沼を越えていたり、そんな事が度々あった。

僕はこの人には、すべてにおいて敵わないなぁーと尊敬して

いたし、車の事に関してはこの人に負けたくないと言う気持ちがあった。

湾岸ミッドナイトと言うマンガの主人公のモデルは、

根岸さんなんじゃないかなーと思う時がある。

「根岸さん、僕は大人になったら、根岸さんに負けない様な

車のオーナーになりますからね!!」

「順一、楽しみにしているよ。」

当時、順一は夢も漠然としていたが、深夜もくもくと車の整備をしながら、

ラジオから流れてくるブルーススプリングスティーンを

聞きながら、明日を夢みるのだった。


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