tomorrow

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IT Rainy Day.



ユミコと夜の海を見に、船橋埠頭によく出掛けた。

埠頭には、外国からの貨物船が泊まり、その船の国旗を見ては、どこの国から来ているのか、良く二人で、クイズを出しては遊んだ。

車のエンジンを止めると、車のボンネットを叩く雨音が、

静に車の中に響いた。

ワイパーを止めたフロントガラスは、あっと云う間に雨が

視界を遮り、滲んでこの世の光のすべてが美しいイルミネイションに見えた。

雨の日は、東京Bayにも出掛けたし、京浜島にもよく出掛けた

車で、毛布に包まってよく、手をつないで二人で眠った。

何がある訳じゃなかったけれど、二人でいる事がただ、

楽しかった。

「ねえ、順一とずーとこうして仲良くいられたら、いいね!」

ユミコは強く僕の手を握り返しながら言った。

「そうだね、僕も君がこうしていてくれれば何もいらない。」

「本当?浮気とかしない?」

「ああ、神に誓ってしないよ。」

僕はユミコと出逢って、愛する事の幸せよりも、

愛される幸せをとても感じていたんだと思う!!

雨降りの夜、彼女と車の中で、いつもこんな事を感じていた

幸せはどこまで続いているのだろう。。。。。



RAINY DAY


バイトが終わり僕らはよく、ドライブに出掛けた。

雨の日は車の中で色々な話をした。

ボンネットに弾ける雨を数えながら、僕らは将来の話をした。

「大学を卒業するまでに、夢に決着を付けないとなぁ!」順一は独り言の様に呟いた。

桟橋の先でどこの国からやってきたのかわからない貨物船が小さな汽笛を鳴らした。

二人の熱気で窓が曇り、ユミコはサイドガラスを指でなぞり、そこから外を眺めていた。

「順一は、音楽以外で何をやりたいの?」

暫らく僕は黙っていた。

「順一は順一らしく生きた方がいいよ!」僕ははユミコの言いたい事がよく解らなかった。

僕はこの街を出たかった!

木の育たない赤土の街。工業地帯から幾つもの排水が川に流れ込み、商店街はゴーストタウンみたいになり、初恋の彼女の一家も借金に追われ夜逃げして出ていった街、

人の入らない古びた映画館、

いつも金に追われる両親に、コンビニにたむろする仲間達。

すべてにうんざりしていた。いや、すべてにもう、うんざりしていた!!

「順一?夢はもう見れないの?」僕はヒーターのスイッチを入れた。

ユミコは心配そうに僕の方を見つめた。

誰のせいでも無いだろう僕が夢を見れないのは、

「そうだね!何も夢見ないかもね。」

僕はありったけのやるせなさを吸い込み小さく答えた。

「ユミコの夢は何?」

ユミコはとても小さな声で答えた。

「順一と心穏やかに暮らす事。」

ユミコは何の迷いも無く答えた。

桟橋の明かりは雨に打たれたフロントガラスから見ると、

まるで二人の夢を繋ぐ架け橋の様に二人には見えた。

           つづく


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