tomorrow

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kaori



もちろん、全てが好きなのだが如いて上げれば?

「順一、私のどこが好き?」突然の彼女の質問に、戸惑う。

「全部なんて、抽象的じゃなくて!!」そういわれても

答えに困る事がある。

一つづつ、彼女の好きな所を上げてみた。

ユミコの好きな所は唇!!下唇が上唇より厚い所!!

目が優しい二重な所!!小さな顔!!スラットしたスタイル

でも、僕を安心させてくれるのは、彼女のKaoriだった。

ユミコをギュット抱き締めた時、色々なKaoriがする。

シャンプーのKaori、洗い立ての洗剤のいいKaoriそして

彼女のコロンと化粧品のKaori!!

そして、そのずーと奥にあるKaoriが僕を幸せにしてくれる

Kaoriがあるのだ!!

僕はそのKaoriを感じながら、目を閉じると、遥か昔の風の

Kaoriを感じる。

いつごろにこのKaoriと出会ったのかわからないが、

それは、自分が存在していない様な太古の昔の様な気がする

「順一、どうしたの?」力いっぱい僕はユミコの事を抱き締めていた。

「いや、何でも無いよ。」僕はユミコの声で現実へと呼び戻される。

あれから、東京の雑踏の中で君のKaoriを探す。

そんなKaoriを見つけた時、君じゃないかと辺りを探す事がある。

挙動不審の、捨てられた野良犬の様に。

最近はやりのアロマテラピーも試したが、僕の探している

あのKaoriは見つけ出せない。

僕が君を好きだったのは、あのKaoriのせいかもしれない。

こんなにも鮮やかな記憶はあのKaori無しには蘇らない。

「順一さん、最近俺、Kaoriに弱いんだよねー」

遊び仲間の業者さんが、夜のラウンジで僕に呟いた。

一瞬僕は自分の事を見透かされた様で、ドキッとした。

ああ、男は女性のKaoriで、本能的にDNAを辿っているのかもしれないと思った。

Kaoriそれは、太古の現代人が忘れた能力、

生命や個人を識別する能力なのかもしれない。

僕とユミコは生命のジグソーパズルのように、

いつまでも、いつまでも、抱き締め逢うのだった。

                     つづく。


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