tomorrow

tomorrow

煙草の煙の向こう側



「順一そんなにバイトがんばらなくていいよ!逢う暇も無い!」ユミコは電話口でベソをかいた。

順一は、春休みにユミコと苗場プリンスでゆっくりスキーをしたくて、ユミコに内緒で、スタンドのバイトのシフトを多く入れた。

「そんなに、怒る事じゃ無いだろう?夜とかだって逢ったりしているのだから?」

順一は受話器の向こうでタバコの煙りを小さく吐いた。

ユミコは涙声で言った。

一秒だってあなたに逢っていないととても不安なの。

順一は悲しかった。

だってこんなにユミコの喜ぶ事をしたいのに、何で、僕の気持ちをわかってくれないのか??

逢えない時は電話の必ず午前零時にはしているし、

ユミコが不安がる事は何もしていない。

「ユミコ!!何が不安なんだよ!!どうしたら、君は満足なんだよ!!」

僕は受話器の向こうで、声を荒げていた。

「いいえ、何も不安じゃないわ!!勿論世界であなたが一番好きよ!!」

ユミコは自分に言い聞かせるように順一には一瞬聞こえた!

「ごめん!!つまらない事で、言い過ぎたよ!!もう少し我慢してくれないか??」

ユミコは小さな声で、「わかった!!」と言って受話器を置いた。

言葉と人の心はいつも裏腹だと順一がきずくまで、ずっと時間がかかった。

                   続く。



© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: