JEWEL

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碧の邂逅 1



紅蓮の炎に包まれたガレオン船を見ながら、コナンは呆然とした様子でその場に立ち尽くしていた。

『可哀想に。君さえ居なければ、彼らは生きていたのにねぇ。』

炎を受けて黄金色に輝く悪魔の瞳が、コナンを捉えた。

『何でこんな事をするんだ!』

『戦争では必ず人が死ぬ。不幸にも彼らは、自ら災いを招いたのさ。まぁ、それは避けようのない死だけれど。』

悪魔はそう言った後、薄笑いを浮かべた。

『さぁ、教えておくれ。君は一体、何者なんだ?』

『江戸川コナン・・探偵さ。』

『それだけではないだろう?大丈夫、正直に言えば、殺しはしないさ。』

コナンは、目の前に立つ悪魔と出会った日の事を思い出していた。

確か、その日コナンは、蘭の親友・鈴木園子の誘いで鈴木財閥が経営する大型テーマパークへ遊びに来ていたのだった。

「博士、見えて来ましたよ!」
「うわ~、すっげぇ!」
「わたしに感謝しなさいよ、今日は鈴木財閥経営のテーマパーク、海賊村プレオープンの日なんだからね!」
そう言って蘭の隣で高笑いしているのは、彼女の親友である鈴木園子だった。
コナン達は、オープン前から話題沸騰の海賊村のプレオープン招待券に応募したが、外れてしまった。
「行きたかったのにな~」
「残念!」
「まぁ、物事には諦める事も大切よね。」
「えぇ~!」
阿笠博士の家で、元太、光彦、歩美、そしてコナンと哀は、パソコンの画面を見て溜息を吐いた。
大航海時代のヨーロッパを舞台にした巨大テーマパーク“海賊村”のチケットは半年先の分まで完売してしまった。
コナン達は暫くパソコンの前で落胆していたが、ひょんな事から園子に招待され、“海賊村”へとやって来たのだった。
「うわぁ~、広い!」
「みんな、はぐれないようにね!」
「わかってますって!」
「博士は、来られなくて残念だったわね。」
阿笠博士はコナン達と共に“海賊村”へ来る予定だったのだが、彼は風邪をひいてしまい、来られなくなってしまった。
「今日は、博士の分まで楽しみましょう。」
「あぁ、そうだな。」
暫くコナン達は、“海賊村”のアトラクションやショーを楽しんだ後、ガレオン船クルーズへと乗り込んだ。
「内部まで、ガレオン船内を再現しているわね。エンジンと、横揺れ防止装置がついている以外は。」
「確かに。」
コナンが哀とそんな事を話していると、今まで晴れていた上空を突然黒雲が覆い、船は嵐に襲われた。
「皆様、早く船室の中へ!」
「コナン君、わたし達、大丈夫だよね?」
「大丈夫よ。多分、船はもうすぐ港に・・」
哀がそう言った時、雷鳴が轟き、船が大きく揺れた。
「きゃぁぁ~!」
「みんな、しっかりロープに掴まって!」
コナン達は互いの身体にロープを巻き付けていたが、そのロープは、次第に嫌な音がして今にも切れそうになっていた。
「みんな、しっかり掴まって!」
コナン達が居る船室の中にも、大量の海水が入って来た。
「この船、あと数分で沈没するわよ。」
「救命ボートはないのか!?」
「このガレオン船には、救命ボートはないわ。見栄え重視にしたのは、あのタイタニック号と同じね。」
哀がそう呟いた時、コナン達の身体を繋いでいたロープが切れた。
「灰原、元太、歩美、光彦~!」
コナンは必死に哀達を捜したが、彼らの姿は見えなかった。
(クソ、一体何処に・・)
やがてコナンは、哀達を捜す内に体力を消耗していった。
いつの間にか嵐は過ぎ去り、コナンは必死にマストの破片にしがみついていた。
『ジェフリー、あそこ!』
遠くで人の声が聞こえ、一隻のボートが自分達の元へとやって来る気配がした。
(あぁ、助かった・・)
 コナンはそう思って安堵した瞬間、意識を失ってしまった。
「みんな、大丈夫?」
「そこに居るのは、哀ちゃんなの?」
哀が暗闇の中で歩美達に呼び掛けると、彼らは全員居た。
「コナン君は?」
「それが、手を離しちゃって・・」
「コナン君、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫よ。それよりも、今わたし達が置かれている状況を理解する必要があるわね。」
哀はそう言うと、自分達をカンテラで照らしている黒衣の男達を見た。
その中で一際目立っていたのは、黒髪に美しい翠の瞳をした男だった。
『ビセンテ様、この子達をどうしますか?』
男の隣に立っている金髪碧眼の少年がそう言って哀達の顔をカンテラで照らした。
『この子達はあの遭難したガレオン船に乗っていたのだろう。レオ、この子達に温かい毛布とスープを。』
『シ、マエストロ!』
少年はチラリと哀達を見た後、船長室から出て行った。
『君達は何処から来たんだ?肌の色からして、トルコ人ではないな・・』
「この人、何言っているのかわからないよ。」
「英語じゃないし・・」
「みんな、ここはわたしに任せて。」
哀は、パニックになりかけている歩美達にそう話し掛けた後、男の方へと向き直った。
『わたし達は日本人よ。ここは何処なの?』
『日本人、だと・・』
男の美しい翠の瞳に動揺の色が走ったのを見逃さなかった哀は、次の言葉を継いだ。
『ここは何処?』
『サンティアゴ号の船長室だ。わたしはビセンテ=デ=サンティリャーナ、海軍将校だ。』
『そして、この船の責任者ね。』
『何故そんな事がすぐにわかった?』
『さっきの子の、あなたに対する態度よ。あなたの事を、あの子は、“マエストロ”と言った。わたし達の事を尋ねるあの子の口調は、上官に対する部下そのものだったわ。』
『スペイン語は何処で習った?』
『使節団に居た神父様に習ったの。』
『使節団か・・』
男は暫く考えた後、哀にこう言った。
『君達の事は、わたしが保護する。』
『ありがとう。わたしは灰原哀、あの子達はわたしの友達よ。』
『そうか。ではアイ、君達はこのサンティアゴ号の船員となった。だが、君達はまだ子供だから、レオに仕事を教えて貰うといい。』
『わかったわ。』
こうして、哀達は『サンティアゴ号』に保護された。
『これから、何処に行くの?』
『ラ=ロシェル。わたし達にとっては忌々しい異教徒達の牙城だが、物資調達の為なら仕方あるまい。』
『そう・・』
「ねぇ哀ちゃん、わたし達どうなるの?」
「大丈夫、あの人達がわたし達を保護してくれるわ。それよりもみんな、落ち着いて聞いて。わたし達が居るのは、本物の大航海時代みたい。」
「え~!」
「じゃぁ、僕達あのおっさん達に殺されちゃうのか?」
「それはないわ。」
「コナン君は、一体何処に・・」
「彼なら、また会えると思うわ。」
哀がそう言ったのと同じ頃、コナンはイングランドの海賊船『グローリア号』に保護され、その船長であるジェフリー=ロックフォードと、そのキャビン=ボーイである赤毛の少年と共に食事をしていた。
(俺、これからどうなっちゃうんだろう・・)
『どうした、体調が悪いのか?』
『さっきまで冷たい海水に浸かっていたんだから、無理もないよ。坊や、名前は?』
『江戸川コナン。』
「推理小説マニアの親が名付けたのかな・・」
『カイト、どうした?』
『ううん、珍しい名前だなぁって。』
赤毛の少年はそう言った後、コナンをハンモックに寝かせた。
「ねぇ、さっき僕の名前の事について、何か言っていたよね?」
「え‥君・・」
「さっき食事していた時に気づいたんだけれど、お兄さん、日本人だよね?英語を話せるのは、英語圏で幼少期から暮らしていたからだよね?」
「うん。コナン君、少し俺の話を聞いてくれる?」
赤毛の少年―東郷海斗は、コナンに自分の身に起きた出来事を話した。
「そう・・海斗さんもタイムスリップして来たんだね。僕も、友達と一緒にタイムスリップしたんだ。まさか大航海時代のテーマパークに行ったら、本物の大航海時代―16世紀のヨーロッパにタイムスリップするなんて思いもしなかったよ。」
「俺もだよ。俺はキャプテン=ドレイクの足跡を辿る旅に出たら、いつの間にか16世紀のプリマスにタイムスリップしていた。ホーの丘で会ったスペイン人にその事を話したら、狂人扱いされた。」
「どうして?」
「俺は、16世紀の事に詳しくて、当時の歴史事情にも詳しくなったんだよね。それで、彼に言ってはいけない事を口にした。」
「アルマダが、負けるとか?」
「そう。そしたら彼は、俺の首を絞めて来たんだ。それで、気絶していたところをジェフリー・・さっきのブロンドの人に助けて貰ったという訳。」
「そうだったんだ。ジェフリーっていう人は、この船で一番偉い人だね。それで、海斗さんを襲ったのは、どんな人だったの?」
「黒ずくめで黒髪で翠の瞳をしていたよ。確か名前はヴィンセント。」
「ヴィンセント・・イングランド人じゃないね。」
「うん。彼の本名は、ビセンテ=デ=サンティリャーナ、スペイン人の海軍将校だった。」
「そうか・・」
コナンは、哀達の事を想った。
彼女達は、今何処に居るのだろう。
『おい、ガキ共はどうした?』
『まったく、一体何処に行っちまったんだ?』
水夫達の濁声を遠くから聞きながら、哀達は今後の事を話し合っていた。
「ここは、16世紀のヨーロッパで間違いないわ。」
「ねぇ哀ちゃん、あの翠の瞳の人以外、英語を話せる人は居ないの?」
「えぇ。それに、ここでは働かないと生きていけないわ。わたし達に出来る事をしましょう。」
「うん。」
こうして哀達とコナン達はそれぞれ『グローリア号』と『サンティアゴ号』で過酷な船上生活を送った。
「あ~あ、腹減ったなぁ。うな重食いてぇなぁ・・」
「元太君、この樽を運び終わったらお昼ですから、頑張りましょう。」
「でもよぉ・・」
哀達が水が入った樽を甲板から船倉へと運んでいる途中、『サンティアゴ号』は嵐に襲われた。
『みんな上がって来い、そこは危険だ!』
「灰原さん、大丈夫ですよね?」
「大丈夫よ。」
同じ頃、『グローリア号』も嵐に襲われていた。
「気持ち悪い・・」
「頭がクラクラする・・」
荒波に揉まれて激しく揺れる『グローリア号』の中で海斗とコナンが船酔いに苦しんでいると、雷鳴と共に何かが焦げたような臭いがして来た。
「トーマスを呼べ、マストから落ちた奴が居るぞ!」
海斗とコナンが甲板へと向かうと、そこには雷を受けたミズン・マストがあった。
「誰がマストから落ちたの?」
「ジムだ。」
水夫達によって折れたマストの下から救出されたジムの脛から白い骨の破片が突き出ていた。
「酷ぇな・・」
「処置するしかねぇですよ。」
「処置って、どういう事?」
「トーマスが面倒を見てくれる。あいつは鋸の使い方を心得ているからな。」
「じゃぁ・・」
海斗とコナンは、ジムの手術に立ち会った。
麻酔無しの足の切断手術は、二人にとっては酷なものだった。
嵐が治まり、『グローリア号』はフランスのラ・ロシェルに寄港する事になった。
「これを被っておけ。」
そう言ってジェフリーが海斗に手渡したのは、黒の天鵞絨の、フード付きのマントだった。
「赤い髪は目立つからな。」
「ねぇ、これからどうするの?」
「宿に泊まる。」
「随分賑わっているね。」
「ここは交易が盛んだからな。カイト、コナン、二人共余り目立つ事はするなよ。」
「わかっているよ。」
同じ頃、『サンティアゴ号』も、ラ・ロシェルの港に着いた。
『旦那、おかしな連中を先程見かけましたよ。綺麗なツラをしたイングランド人と、苺のような真っ赤な髪をした坊やでさぁ。』
『何だと・・他には、誰か居たのか?』
『そうですね・・赤毛の坊やの後ろに、小さい坊やが居ましたよ。』
(江戸川君なの?)
『どうした?』
『さっきあの人が言っていた、“小さい坊や”・・もしかしたら、わたしの友達なのかもしれないの。』
『そうか。』
コナン達がラ・ロシェルの街を歩いていると、突然黒ずくめの服を着た一団がやって来た。
『ヴィンセント・・』
ビセンテを見て驚愕の表情を浮かべている赤毛の少年の隣にコナンが居る事に、哀は気づいた。
「江戸川君!」
「灰原・・」
『あの子は、知り合いなのか?』
『ええ、前に話していた友達よ。』
『そうか。』
ビセンテは暫く考えた後、赤毛の少年と何かを話していた。
しかし、赤毛の少年は、ビセンテを拒絶した。
『そうか・・ならば、力ずくでも・・』
『カイト、下がっていろ!』
ビセンテと赤毛の少年との間に割って入ったのは、金髪碧眼の美男子だった。
「コナン君、無事だったんだね!」
「心配していたんですよ!」
コナンは、哀達と再会した。
だが、再会の時は短かった。
『行くぞ、お前達!』
「コナン君、また会えますよね?」
「あぁ、また会えるさ!」
ラ・ロシェルで哀達と別れた後、コナンと海斗が彼らと再会したのは、収穫祭・ラマスに沸くプリマス、ホーの丘だった。
『その子供も連れて行け。』
『はい。』
「うわぁ、賑わっていますね!」
「そりゃぁ、年に一回、小麦の収穫を祝うお祭りだもの。」
「色んな形のパンがある、おいしそ~!」
「みんな、はぐれないようにしてね!」
宮廷から追い出された元道化師から海斗がプリマスに戻って来ているという情報を得たビセンテ達は、ラマスの最中、広場の雑踏の中から“ホーの丘”へと向かう一台の粗末な馬車を見つけた。
「あ、コナン君だ!」
「あの赤毛の兄ちゃんも居るぜ!」
海斗とコナンの姿を見つけた歩美達が駈け出して行くのを見たビセンテ達は、慌てて彼女達を追い掛けた。
その一時間前、海斗とコナンは『白鹿亭』から出て、ホーの丘へと向かった。
「タイムスリップの法則がある?」
「うん。リリーは、ホーの丘で妖精の輪を見たって言っていたけれど、俺が見たのは、ボウリングのピンだった。もしかしたら、ホーの丘にタイムスリップのヒントが隠されているかもしれない。」
「僕達がこの世界にタイムスリップした時、ガレオン船の中だったよ。」
「カイト、そこで何をしている!」
「あ・・」
広場から迷いなく馬車の方へと向かって来る人物を見て、海斗はバツの悪そうな顔をした。
コナンがちらりと広場の方を見ると、そこにはナイジェル=グラハムの姿があった。
「ナイジェル、実は・・」
海斗はナイジェルにホーの丘の事を話すと、彼は自分も同行すると言って来た。
(嫌な予感がするな・・)
そして、その予感は的中してしまった。
「江戸川君!」
「灰原、それにおめぇらも、何でここに?」
「あなたなら、わたし達がここに居る意味がわかるでしょう?」
哀の言葉を聞いた後、コナンは激しい剣戟の音が丘の方からしている事に気づいた。
「きゃぁ~!」
コナン達が見たものは、左右に交差した剣で首を固定されたナイジェルの姿だった。
『その子供も連れて行け。』
『はい。』
海斗は、ビセンテ達と共にスペインへと向かった。
「ねぇ海斗さん、さっきホーの丘でタイムスリップの法則を探していたって・・」
「リリー・・『白鹿亭』の女将は、ホーの丘でタイムスリップしたけれど、ひとつ気になる事があって・・」
「気になる事?」
「俺とリリーがこっちにタイムスリップした時、季節が半年程ずれていたんだ。」
「季節のずれ、か・・もしかして、暦が関係しているのかもしれないよ。」
「暦・・そうか。でも、“トンネル”の問題は・・」
「“トンネル”?」
「こっちに来た時にくぐったんだ。それは一方通行で、開く時に限られている。」
「そう。それにしても、あの人は訛りの無い英語を話すよね?」
「うん。彼は、スペイン人でイングランドに潜伏している工作員だと思う。」
「そうね。それよりも海斗さん、あなたはどうして彼につけ狙われているのかしら?」
「それは、俺の所為だよ。」
海斗はコナン達に、ホーの丘でビセンテに会い、そこで“スペインはイングランドに負ける”と予言し、彼の怒りを買ってしまった事を話した。
「ビセンテさんは、あなたが稀代の予言者だと知って、スペインまで連れて行くつもりね。」
「馬鹿みてぇ、占いに本気になるなんて・・」
「この時代は科学や医療、情報網が発達していないの。あのノストラダムスの予言みたいに、自分の国の未来を知っている海斗さんを召し抱えたいと思うのは当然だわ。」
「でもよぉ、あのおじさん怖いよなぁ。」
「わたし達、これからどうなっちゃうの?」
「さぁね。」
イングランドを離れ、リスボンに寄港した『サンティアゴ号』から降りたコナン達は、そこで二人の男と出会った。
金髪碧眼の長身の男、ヤンと、その主人と思しきイエスズ会の僧衣に身を包んだラウル=デ=トレド。
華奢な身体に、細面に整った美貌の持ち主であるラウルは、光を受けて黄金色に輝く瞳でコナンと海斗を見つめた。
(え?)
まるで全身を舐めるかのような執拗なラウルの視線を浴びた二人は、小声で話し始めた。
「嫌な感じがするね、あの人。」
「う~ん、あんまり関わらない方がいいかも。」
エル=エスコリアル宮で毒を盛られた海斗は、パストラーナで療養する事になった。
「海斗さん、もしかして、ジェフリーさんの事、好きなの?」
「えっ、何急に!?」
「だって、海斗さん口を開けばジェフリーさんの事ばかり話しているよね?」
「うん・・」
そう言った海斗の顔は、赤くなっていた。
「それにしても、ビセンテさんって、海斗さんに対して過保護だよね。」
「まぁ、きっとヴィンセントは俺の事を弟のように思っているって・・」
「ふぅん・・」
(多分、違うと思うけどなぁ・・)
恋愛に疎いコナンでさえも、ビセンテが海斗に向ける視線は、恋する男のそれだと気づいてしまった。
『カイト、大公夫人がお呼びだ。』
『わかった。』
海斗が、大公夫人の居る塔へと向かった時、コナンは廊下でラウルと会った。
『おや、珍しい。』
ラウルは黄金色に光る瞳でコナンを見た。
『おいで。君にも話したい事がある。』
『話したい事?』
『行けば、わかるさ。』
ラウルにコナンが連れられたのは、大公夫人が居る塔だった。
そこでコナンと海斗は、ラウルとエボリ大公夫人が知り合いである事を知った。
『さてと、君達の力を、わたしの為に使って貰うよ。まぁ、君達が下手な真似をすると、君のお友達がどうなるのか、賢い君達ならわかるよね?』
ラウルの本性―己の欲の為ならば、平気で人を傷つける悪魔の顔を知った海斗とコナンは、無言のまま塔を後にした。
「これから、どうするの?」
「ジェフリー達に会えたし、これからどうするのかは色々と考える・・」
海斗は、そう言った時、激しく咳込んだ。
「大丈夫?」
「うん・・ちょっと、風邪をひいたかも。」
海斗の言葉が、嘘を吐いているとコナンはすぐに気づいた。
ビセンテが狩りから帰って来た日、海斗はエボリ大公夫人から折檻を受けた。
「海斗さん、大丈夫?」
「うん・・」
海斗がエボリ大公夫人から折檻を受けたその日の夜、海斗はコナンに、逃亡計画を打ち明けた。
「上手くいくの?」
「やってみないと、わからないよ。」


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