F&B 腐向け転生パラレル二次創作小説:Rewrite The Stars 6
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧の騎士 2
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 10
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
YOI火宵の月パロ二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う 2
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
天上の愛地上の恋 大河転生パラレル二次創作小説:愛別離苦 0
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜 1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 8
天上の愛地上の恋 昼ドラ風時代パラレル二次創作小説:綾なして咲く華 2
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
天愛×腐滅の刃クロスオーバーパラレル二次創作小説:夢幻の果て~soranji~ 0
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:月の国、炎の国 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 0
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生パラレル二次創作小説:最愛~僕を見つけて~ 1
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
FLESH&BLOOD×黒執事 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧の器 1
腐滅の刃 平安風ファンタジーパラレル二次創作小説:鬼の花嫁~紅ノ絲~ 1
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら 2
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達 1
天上の愛地上の恋 現代転生パラレル二次創作小説:愛唄〜君に伝えたいこと〜 1
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 3
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 5
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生遊郭パラレル二次創作小説:蜜愛~ふたつの唇~ 0
天上の愛地上の恋 帝国昼ドラ転生パラレル二次創作小説:蒼穹の王 翠の天使 1
名探偵コナン腐向け火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き焔~運命の恋~ 1
FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔 6
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~ 3
天上の愛地上の恋 昼ドラ風パラレル二次創作小説:愛の炎~愛し君へ・・~ 1
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい 4
天愛×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー 2
魔道祖師×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想うは、あなたひとり 2
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華 0
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~ 15
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて 10
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう 8
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 0
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう) 10
薄桜鬼×天上の愛地上の恋 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:玉響の夢 5
黒執事×天上の愛地上の恋 吸血鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼に沈む 0
天上の愛地上の恋 現代転生ハーレクイン風パラレル二次創作小説:最高の片想い 5
バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:二人の天使 3
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇ 2
YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 1
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 2
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 1
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
名探偵コナン×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧に融ける 0
天愛×F&B 昼ドラ転生ハーレクインクロスオーパラレル二次創作小説:獅子と不死鳥 1
天愛 夢小説:千の瞳を持つ女~21世紀の腐女子、19世紀で女官になりました~ 0
全7件 (7件中 1-7件目)
1
「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。『もしもし・・』「俺だ。」『どうしたの、こんな夜遅くに?』「実は・・」『何か、あったのね?』 雪乃は勘が鋭いようで、隼人の声を聞いた途端、何か良からぬ事が彼の身に怒ったのだろうと隼人に尋ねて来た。「貴子と今日、不妊治療専門クリニックに行って来て診て貰ったんだが・・あいつは自然妊娠が難しいと医者から言われてな・・」『それで、隼弥をあなた達の養子に迎えようという訳ね?』「まぁ、そんなところだ。」『わたしは、あの子と静かに暮らしたいだけなの。だから、この話は聞かなかった事にするわ。』 お休みなさい、と雪乃は一方的にそう言うと電話を切った。「ねぇ、彼女とは話したんでしょう?」「断られたよ。貴子、俺は・・」「あなた、昔の女が駄目なら今すぐ愛人を作って。わたしは子供が欲しいのよ。」「貴子・・」「あなたに拒否権はないのよ。」 東京で隼人が陰鬱な気分で仕事をしている頃、歳三達は熱海で仕事に精を出していた。「あ~、疲れた。」「総司、そんな腑抜けた顔をするんじゃねぇ!」「え~!」「それにしても暑いな。もう、今日はこれ位にしておくか。」「じゃぁ僕は、プールにでも行こうかな。はじめ君はどうするの?」「俺は少し立ち寄りたい所がある。」「ふぅん、そうなの。じゃぁ、僕も一緒に行こうかなぁ。」「好きにしろ。」「二人共、暗くなる前にホテルに戻って来るんだぞ!」「わかりましたよ~!」 総司は一と共にホテルから出ると、熱海の商店街の中にある一軒の和菓子屋へと向かった。「いらっしゃいませ。」「はじめ君、君がこんな所に来るなんて珍しいね。」「ここは、俺の実家の系列店だ。」「え?」「“東雲”という店を知っているだろう?」「何度かインスタでバズっている和菓子屋さんだよね?それがどうかしたの?」「実は、俺はそこの経営者―社長の一人息子なのだ。」「え~!」「声が大きいぞ、総司。」「本当なの、それ!?」「あぁ。詳しい事は、茶でも飲みながら話そう。」「わかったよ。」 店の奥にはイートインスペースがあり、平日だからなのか客は余り居なかった。「ここの店は、あんみつが美味いぞ。」「じゃぁ、フルーツあんみつにしようかな!」 総司はフルーツあんみつを、一は抹茶あんみつをそれぞれ注文した。「ん~、和菓子を偶に食べるのもいいよねぇ。」「そうか。俺は子供の頃から和菓子ばかり食べていた。初めてケーキを食べたのは、公民館で開かれたクリスマスパーティーで振る舞われたショートケーキだった。その時俺はこの世界にこんなに美味い物があるのだと、心の底から感動した・・」「へぇ、それは良かったね。それで、何で和菓子屋の君はパティシエになったの?」「実は、中学生の時に土方さんを取材したテレビ番組を観て、感銘を受けたのだ。」「そうなの。でもさ、ご両親には反対されなかったの?」「猛反対された。だから、両親とは縁を切った。」「思い切りがすごいね、君。」「俺はいつか、和菓子と洋菓子、それぞれの良さを出したスイーツを作り出したいと思っている。」「応援するよ、君の夢。」「ありがとう。ねぇ土方さんの何処に憧れたの?」「いつも仕事に対して真剣に向き合っている事だ。」「まぁ、そうかもね。まだ僕は土方さんには敵わないなぁ、技術も何もかも。」「総司は、どうしてパティシエになろうと思ったんだ?」「う~ん、僕は昔、児童養護施設に居たんだよね。子供の頃、クリスマス会で毎年クリスマスに美味しいケーキを食べてさ、自分も僕と同じような境遇の子供達に美味しいケーキを作ってあげたいなぁって思ってね。」「そうか。」「そろそろ戻らないと、土方さんに怒られちゃうから、出ようか?」「あぁ。」 店から出た二人がホテルから戻ろうとした時、一台の車が店の前に停まった。「久しぶりだな、一。」 車から降りて来たスーツ姿の男は、そう言うと一を睨んだ。「お久しぶりです、父上。」「仕事は順調にやっているか?」「はい。」「そうか。身体を大事にしろよ。」「はい・・」 ほんの少しの、短い会話。 ただそれだけだったが、それでも長い間離れていた父子にとっては充分な会話だった。「只今戻りました。」「おう、お帰り。みんな揃ったところだから、少し話したい事がある。」「何ですか、話したい事って?」「実はさっき、大鳥さんがここへ来てな。うちの店の看板商品を大鳥さんの会社とコラボレーションしないかという話があってな。今、その話に乗ろうかどうか迷っている。」「乗ればいいじゃないですか?いい機会ですし。」「でも、こういう事は慎重に考えないといけませんよね。」「あぁ。」「大鳥さんの会社は、業界では最大手だし、うちの店の宣伝になるんじゃないかな。」「店が人気になるのはいいが、その所為で店の経営が成り立たなくなるのは本末転倒だ。だから、色々とこの件は考えたいから数日時間をくれと先方には伝えて来た。」「そうですか。まぁ、いい宣伝にはなると思いますよ。」「斎藤、お前はどう思う?」「俺は、どのような結果であれ、土方さんの考えを尊重します。」 三泊四日の仕事を終え、歳三達は熱海を去った。「また、来てね。今度は、お客様として。」「あぁ、わかったよ。またな。」「どうしたの、はじめ君、少し顔色が悪そうだけれど・・」「何でもない。」「ここ数日、お前らには無理をさせちまったな。だから、一週間の休みをやる。」「やったぁ!」「まぁ、これから忙しくなるから、その前にしっかり休んでおけ。千鶴、これは少ないが臨時のバイト代だ。」「そんな・・」「受け取ったら?君をこの店の戦力として認めた証だよ。」「ありがとうございます。」 歳三の店でのアルバイトを休んでいる間、千鶴は会社へ戻り、仕事に精を出した。「雪村、これ明日までに纏めておいてくれ。」「はい。」「雪村先輩、俺も手伝います!」「ありがとう。」 千鶴がデータ作成をしていると、外から大きな音がした。(何?) 作業をする手を止め、千鶴が懐中電灯を手にオフィスから出ると、そこには誰も居なかった。(今、誰かに見られていたような気がするけれど・・気の所為ね。) 千鶴がそんな事を思いながらオフィスの中へと戻ろうとした時、背後で人の気配がした。「あんたさえ・・あんたさえ居なければ!」 髪を振り乱し、目を血走らせた琴子が、ナイフを千鶴に向けて立っていた。「お前ぇ、何してんだ!」「離せ、離せよ!」「相馬、警察を呼べ!」「もう呼びました!」「部長・・」「怪我は無いか?」「はい。」「仕事が終わったら、お前を家まで送る。」「ありがとうございます。」 千鶴が隼人と共に会社の地下駐車場へと向かうと、彼の車の前に貴子が立っていた。「あらあなた、その人は?」「こいつは俺の部下だ。それよりも、お前は一体、何でこんな所に居るんだ?」「あなたの部下に、ひとつお願いがあって来たのよ。」 貴子はそう言うと、千鶴を見た。「ねぇあなた、夫の愛人になってくれないかしら?」「てめぇ、正気か!?」「あの女があてにならないのなら、この女にあなたの愛人になって貰うしかないでしょう!」 隼人は貴子に背を向けると、千鶴と共に車へと乗り込んだ。「あいつが言った事は、忘れてくれ。」「はい、わかりました。」 数日後、歳三は大鳥の会社へと向かった。「土方君、待っていたよ。」「大鳥さん、例の件だが・・よろしく頼む。」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年03月27日
コメント(0)
「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。―見て、あの子でしょう?―部長の兄と付き合ったって・・―大人しい顔をして、やるわね。 千鶴がオフィスで仕事をしていると、時折ヒソヒソと意地の悪いささやきが聞こえて来た。「気にしない方がいいですよ。」「うん・・」「雪村さん、今からこの書類、コピーして来てくれない?」「あ、あとこれもお願い。」 大量の書類と仕事を琴子達から押し付けられた千鶴は、定時を過ぎても“さくら”へ行けずにいた。「先輩、まだ残っていたんですか?後は俺がやっておきますから。」「ごめんね。」「この前、中岡の事を聞いてきましたよね?俺、あいつとは中学から同じだったんですが、その時から色々と悪い噂があるようです。」「悪い噂?」「ええ、何でも暴走族の彼氏と一緒になって悪さをしていたとか・・あいつ、色々とヤバイ奴みたいです。」「わたし、あの人から嫌われたのかな?」「気にしない方がいいですよ。」「そうだね・・」 残りの仕事を終えて千鶴が疲れた身体を引き摺りながら最終バスに乗り込んだのは、午後九時過ぎだった。「千鶴ちゃん、今日も休みですって。」「最近仕事が忙しいのか、あいつ?」「う~ん、そうでもないみてぇなんだ。」 龍之介はそう言うと、総司に千鶴とのラインを見せた。 そこには、“同僚から大量の仕事を押し付けられて困っている”といった内容が書かれていた。「同僚って、どんな子なの?」「こいつだよ。どっかで見た顔だと思ったら、中学の同級生だ。」「ふぅん。」 龍之介のスマートフォンに表示されていたのは、ビキニ姿で大きいサングラスをかけているギャルの写真だった。「こいつ、結構色々とヤバイ噂があったんだよ。子供五回中絶したとか、暴走族の彼氏と一緒になって窃盗団結成したとかさ。雪村さんと同僚になっちまったなんてなぁ・・」「千鶴ちゃん、余り無理しないといいけど。」 “さくら”のロッカールームで二人がそんな話をしている頃、隼人は新しい愛人と彼女の部屋で飲んでいた。「ねぇ、奥さんとは別れるつもり、ないのでしょう?」「あぁ。」「まぁ、わたしはでしゃばらないから安心して。」「・・そうか。」 情事の後、隼人はそう言うと愛人の髪を優しく梳いた。「また、繋がらないわね・・」「放っておきなさい。」「でも・・」「男は浮気する生き物なのよ。」 そう言った麗子は、少し冷めた紅茶を一口飲んで溜息を吐いた。「雪村、ちょっといいか?」「はい・・」 突然千鶴は隼人に呼ばれ、慌てて彼のデスクへと向かった。「あの、部長・・」「相馬から、あいつ(中岡)との事は聞いた。あいつには今日限りで辞めて貰う事にした。」「そうですか・・」「今日は早く上がれ。兄貴には俺の方から色々と話をつけてある。」「ありがとうございます。」「礼は要らねぇ、仕事に戻れ。」「はい。」 自分のデスクに戻ると、琴子の取り巻き達の方から氷のような視線を千鶴は感じた。「先輩、お疲れ様です。」「お疲れ様。」 千鶴は定時に退社し、二週間ぶりに“さくら”へと向かった。「千鶴ちゃん、久しぶり。」「お久しぶりです、皆さん。あの、暫く休んでご迷惑をかけてしまって申し訳ありませんでした。」「色々と大変だったみたいだし、そこのところはみんなわかっているから大丈夫だよ。」「はい・・」「土方さんは、今取引先に行っているから、戻って来たらちゃんと今回の事について話した方がいいぜ。」「わかりました。」「さてと、千鶴ちゃん、休んだ分しっかり働いて貰うよ?」「わかりました、頑張ります!」「今日は、インスタ映えスイーツの作り方を教えるね。一度しか教えないから、動画を撮って後で復習しておいてね。」「はい!」 帰宅後、千鶴はすぐに“さくら”の厨房で撮影した動画を何度も再生し、インスタ映えスイーツ作りに励んだ。「へぇ、一日でこの完成度は大したものだよね。じゃぁ早速、行こうか。」「え、何処へですか?」「土方さん、今熱海のリゾートホテルのスイーツビュッフェの手伝いへ行っているんだ。人手不足で何人か助っ人が欲しいと思っていたところだから、君と一緒に僕も熱海に行くって土方さんに伝えておいたよ。」「わかりました・・」 こうして、千鶴は総司が運転する車で熱海へと向かった。「そうか、昼過ぎには着くか。わかった、待ってるぞ。」「誰からの電話?」「総司からだ。それよりも姉貴、こういう事は前もって連絡してくれねぇか?」「あら、連絡したからいいでしょう?」「数日前にされても意味ねぇだろうが。」「はは、そうね。」 歳三の姉でホテル「翠石荘」のオーナー・信子はそう言うと大声で笑った。「土方さ~ん、来ましたよ!」「おう総司、雪村も来たのか。」「土方さん、仕事を休んでしまって申し訳ありませんでした。」「色々と大変だったろう?今日は仕事が終わったらゆっくり休んでくれ。」「はい・・」「トシ、あんた変わったわねぇ。昔はあんな事言わなかったのに、今は・・」「厳しいだけじゃ、人は育たねぇだろう?」「そうね。ま、仕事の後はうちでゆっくりしていって。」「ああ。」 スイーツビュッフェには、平日だというのに沢山の女性客達で賑わっていた。「千鶴ちゃん、休憩行っときなよ。」「はい。」 千鶴が昼休憩に入り、ホテルの近くにあるカフェでランチを取っていると、そこへ一人の男性が声を掛けて来た。「隣、いいか?」「はい。」「あんた、ホテルでさっき働いていた奴だよな、名前は?」「えっと・・」 初対面だというのに、妙に馴れ馴れしい様子で話し掛けて来る男に千鶴が少し警戒していると、そこへ歳三がやって来た。「そいつは俺の連れだ。ナンパなら他を当たれ。」「チッ」 男は舌打ちすると、カフェから出て行った。「助けて下さって、ありがとうございます。」「お前ぇはあんまり男慣れしてねぇようだな?」「はい。学校は高校まで女子校で、大学も女子大でしたので、異性と付き合う機会がなくて・・」「合コンとかは、行かなかったのか?」「はい。わたしは勉強に忙しくて・・」「そうか。」「土方さんは、どのような学生時代を過ごされたのですか?」「パリで修業中だったな。右も左もわからねぇ中で、とにかく技術を身につけるのに必死だった。」「“さくら”の事務室のデスクに、写真立てが置いてあるのを見ました・・」「あぁ、あの写真は、俺が高校時代の時に撮った写真だよ。あいつ・・近藤勇は、数年前に交通事故で死ぬまで、俺の親友だった。」「じゃぁ、“さくら”は・・」「元々、親友の店だった。あいつが事故で死んだ後、俺があの店をあいつから引き継いだ。経営者とパティシエの二足の草鞋を履く生活は大変だが、遣り甲斐がある。」 そう自分に話してくれた歳三の瞳は、宝石のようにキラキラと輝いていた。(この人の元で、もっと技術を磨きたい!) そんな中、隼人は貴子と共に都内にある不妊治療専門クリニックを受診していた。「大変申し上げにくいのですが・・奥様は、自然妊娠が難しいかと・・」「そんな・・」 クリニックを出た帰りの車の中で、貴子は隼人にある提案をした。「あなたの昔の女、雪乃って言ったかしら?その息子をうちの跡継ぎにしない?」「お前、何言って・・」「パパ達からは、わたしが言っておくわ。」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年03月27日
コメント(0)
「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。 早朝のホテル内にあるプールには、人気がなかった。 このプールを利用出来るのはホテルの宿泊客と、毎月十万円の会費を払えるフィットネス=ジムの会員だけである。 雪乃と熱い一夜を過ごした隼人は、気分転換する為朝からこのプールで泳いでいた。 泳ぎ疲れた彼がプールサイドで濡れた身体をタオルで拭いていると、そこへ隣のレーンで泳いでいた土方がやって来た。「隼人、奇遇だな。」「兄貴、兄貴もここの会員だったのか?」「あぁ。体力作りに、週三日はここに来て泳いでいる。」「へぇ、そうなのか。」「泳ぎ納めで、今日来たんだが・・こうして、お前と会うとは思わなかったな。」「なぁ兄貴、兄貴は今幸せか?」「どうして、急にそんな事聞くんだ?」「俺、昨夜あいつと・・雪乃と別れた。」「そうか。」「あいつの事が、向こうの親にバレた。それに義父から、“けじめ”をつけろと言われた。」「いいんじゃねぇのか、お互いに納得して別れたんなら。」「そう言ってくれるのは兄貴だけだ。」 隼人はそう言いながら、数分前に先に生まれた双子の兄の横顔を見た。 兄は、野心家の自分とは違い、ひたすらパティシエの夢に向かって邁進し、今では世界的に有名なパティシエとなった。「実は、来春辺り銀座に支店を出さねぇかって誘われているんだが・・断った。「大きなチャンスを逃してどうするんだよ、兄貴。」「“今はまだ、その時機じゃねぇ”と、心の中で声が聴こえたんだ。それに、俺ぁあの店だけでやっていこうと思う。」「安定志向なのは相変わらずだな、兄貴は。俺は、一度だけの人生なら、高みに昇ってみせるぜ。」「隼人・・」「俺ぁ、あんな惨めで貧しいクソな生活には戻りたくねぇんだ。」「隼人・・」「俺はいつか偉くなって、今まで俺の事を馬鹿にして来た奴らを見返してやる‥兄貴、あんただってあいつらにされて来た事、忘れてねぇだろうな?」「まぁ、な・・」「ふん、兄貴は土方家に大切に育てられたから良いよな。俺とは大違いだ。」 隼人はそう土方に吐き捨てるように言うと、プールから去っていった。 頭から熱いシャワーを浴びながら、土方は双子の弟と生き別れた日の事を思い出していた。 土方――歳三と隼人は、敵同士であった両親との間に生まれた。 双子として生まれ、二人は何をするにも、何処に行くにも一緒だった。 だが小学校入学前に、両親が二人共交通事故死した事により、幸せだった二人の生活に暗雲が立ち込めた。 親族会議で、歳三は土方に、隼人は内藤家にそれぞれ引き取られる事となった。 兄の歳三は父方の実家である土方家に、弟の隼人は母方の実家である内藤家に引き取られた。 土方家は、歳三を実子と分け隔てなく愛情を注いで育ててくれていたが、隼人は内藤家で犬以下の扱いを受けた。 家族とは食事や寝る場所も別で、内藤家の者達は隼人をまるで使用人のようにこき使った。 学校には通わせて貰ったものの、入浴も洗濯も許されなかったので、隼人はいつも臭くて汚かった所為で学校ではいつも一人だった。 内藤家の者達は、“豚が服を着ているかのような”人達だった。 金にがめつく、食い意地が張っており、彼らはいつも暇さえあれば何かを食べているか、隼人を殴ったり罵る事だけが楽しみな者達だった。 日々彼らに虐げられ、耐える事しか出来なかった小学校時代は終わりを告げ、隼人は中学生になった途端、家から出たくて勉学に励み、内藤家の図体だけデカくて馬鹿な従弟の希望校だった難関私立名門校に合格した。 だが、従弟に窃盗の濡れ衣を着せられ、合格は取り消しとなった。(絶対にこいつらに復讐してやる。俺は、こいつらより偉くなってやるんだ!) 中学卒業後、隼人は内藤家から出て遠縁の親戚宅から高校へと通った。 高校を卒業した隼人の元に届いたのは、自分を虐げていた内藤夫婦が事故死したという知らせだった。 葬儀の席で悲嘆に暮れている従弟の姿を見て、隼人は笑みを浮かべた。「隼人、久しぶりだな。元気だったか?」「兄さん・・」 久しぶりに再会した歳三は、全身に自信が満ち溢れているかのように見えた。「良かった、間に合って。飛行機の時間までまだあるから・・」「兄さん、何処かに行くのか?」「あぁ。これからパリに行くんだ。向こうで本場のスイーツを学んで来るんだ。」「へぇ・・」 隼人は幼い頃、兄が将来の夢を“ケーキ屋さん”と書いていた事を思い出した。「頑張れよ。」「あぁ。」 泥に塗れ、必死に底辺から這い上がろうとしている隼人にとって、夢に向かって着実に歩み出している兄の姿は、眩しくもあり、妬ましかった。 自分と同じ日に生まれ、今まで一緒に生きてきたのに、裏切られた。「兄貴、いつか見ていろよ。俺は、いつか偉くなって、望むもの全てを手に入れてやる。」 兄貴の大切なものを、全て奪ってやる。 俺達は、何でも“シェア”しねぇとな。 そうだろ、兄貴?「は?カルチャースクールの講座?」「そうだよ。来週から五回、毎週木曜日!」「大鳥さん、俺がそんなに暇そうに見えるか?」「いいじゃねぇか土方さん、地域貢献の一環だと思って。」 そう言いながら店に入って来たのは、歳三の近所の知り合いで、バーを経営している原田左之助だった。「原田・・」「あんたもそろそろ、その秘密主義を封印しちまってもいいんじゃねぇのか?」「わかったよ、やればいいんだろ・・」 こうして歳三は、ひょんな事からカルチャースクールの講師をする事になった。「千鶴ちゃん!」「お千ちゃん、どうしたの?」「ねぇ、駅前のカルチャースクールのチラシでこんなの見つけたんだけど、一緒に受けてみない?」「え?」「ホラ、この前ランチで千鶴ちゃんが話していた人、講師やるみたいよ!」「嘘!?」 千鶴は、思わず千姫が持っていたチラシをひったくるようにして彼女から受け取ると、そこにはあのパティシエの顔写真があった。「これ、一緒に受けてみようかな。」「そうこなくちゃ!」 こうして、千鶴は親友の鈴鹿千と共に、『トップパティシエと学ぶスイーツ作り』を受講することになった。「やっぱり、凄いわぁ!受講者みんな女性ばかりね!」「そ、そうね・・」 千鶴が周囲を見渡すと、確かに若い女性ばかりが目立つ。「きゃ~!」「土方様~!」 調理実習室に現れた歳三を見た女性達は、一斉に悲鳴を上げた。 中には名前入りのうちわを持っている者も居て、さながらアイドルのコンサート会場のような熱気に包まれていた。「はじめまして、土方歳三です。美亜さん、お忙しい中この講座を受講して下さり、ありがとうございます。」「キャ~!」「では、皆さん初心者という事で、記念すべき第一回目は、クッキーの作り方を教えます!」 こうして、歳三は無事カルチャースクールでの初日を終えた。「はぁ~、疲れた!」「土方さん、お疲れさん。」「サンキュ、左之。」「なぁ、新人は来たのか?」「来たが、三日で辞めやがった。」「厳し過ぎるんだよ、あんた。もっと肩の力を抜けよ。」「そうは言ってもなぁ・・」 歳三が原田のバーでそんな事を話しながらグラスを傾けていると、そこへ金髪の男が入って来た。「また会ったな、内藤。」「てめぇ、誰だ?」 歳三の言葉を受け、金髪の男は少し落ち込んでいた。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年03月27日
コメント(0)
「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。性描写が含まれます、苦手な方はご注意ください。「来週、隼弥を連れて実家に帰る事になったの。」「そうか・・」 隼弥を寝かしつけた後、隼人は、内縁の妻・雪乃と皿を洗っている時、彼女の口から衝撃的な言葉を聞いて、思わず彼は持っていた皿を割りそうになった。「どうして、そんな急に・・」「わたし、今まであなたに甘えていた事に気づいたの。この部屋も、あなたが家賃を払ってくれているし、その上養育費や生活費まで払って貰っているわ。」「それは、男として当然の務めだ。」「あなたはもう、わたし達だけのものではないわ。これ以上、あなたの重荷にはなりたくないの。」「もう、決めた事なのか?」「えぇ。」「そうか・・」「もう、会わないで、わたしにも、隼弥にも。」「わかった。」 彼女の実家は、東京から遠く離れた北海道・函館だ。 出張を口実にして会いに行けるが、雪乃はそんな隼人の想いを察したのか、すかさず彼に釘を刺した。「明日、ここで会いましょう。」 雪乃はそう言うと、エプロンのポケットから一枚のメモを取り出し、それを隼人に手渡した。 そこには、“明日夜七時・アステリア”と書かれてあった。 アステリアは、昔二人でデートした時に良く利用した高級ホテル内にあるレストランだった。「わかった・・」「今夜は来てくれてありがとう。もう帰って。」「あぁ。」 普通の女なら、“今夜はわたしと一緒に居て奥さんの所には帰らないでと”言うところだが、雪乃は決してそんな事は言わない。 昔から、雪乃は見返りを求めず、隼人に対して一度も不平不満を言った事などなかった。 彼女が隼人と喧嘩したのは一度だけ、隼弥の妊娠が判った時だった。“産みたいの、あなたには決して迷惑はかけないから、この子を産ませて下さい。”“雪乃、俺は・・”“認知はしなくていいわ。そうしたらあなたの結婚に支障が出るでしょう?”“俺は、男としてのけじめをつけてぇんだ。”“お願い、やめて!”“何でお前は一人で勝手に決めたんだ!”“わたしは、あなたを陰で支えたいだけなのよ、どうしてそれをわかってくれないの!?” 話し合いは平行線を辿り、雪乃からは暫く距離を置きたいと言われ、隼人が彼女と再び子供の事で話し合う事になったのは、彼女が切迫流産で入院した時だった。“親は、この事を知っているのか!?”“全て・・あなたとの関係の事を話したわ。”“そうか・・” 結局隼人の方が折れ、隼弥の戸籍は雪の姓である高橋家に入る事になった。 隼弥の出産に立ち会った後、隼人は貴子と豪華絢爛な結婚式を挙げた。「只今、帰りました。」「あら、随分遅かったわね。またあの女の所?」 隼人が帰宅すると、リビングで雑誌を読んでいた義母・麗子がそう言って顔を上げ、彼の顔を見た。「お義母さん、俺は・・」「あなた、この家での自分の立場をちゃぁんと弁えなさいよね?問題を起こしたら、この家から出て行って貰うわよ。」「はい・・」「本当にわかっているのなら、早くあの女と別れなさい。」「部屋に戻ります。」 隼人はそう言うと、二階の寝室へと向かった。 新婚時代はここで互いに愛を確め合っていたが、今やここはただ“寝るだけ”の部屋となってしまった。(明日か・・) 隼人はキングサイズのベッドに一人横たわると、泥のように眠った。 貴子は、家に帰って来なかった。「貴子はどうした?まだ帰っていないのか?」「えぇ。帰りたくないんでしょうよ。」 麗子はちらりと横目で隼人を見てそう言うと、ダイニングルームから出て行った。「隼人君、ちょっといいかね?」「はい・・」 義父・貴俊に呼ばれ、隼人は彼の書斎へと向かった。「お話とは、何でしょうか?」「君もそろそろ、“我々”の仲間入りをしてみないかと思ってね。」「それは・・」「君なら、良い政治家になれる。」「ありがとうございます!」「明後日、民政党のパーティーで、君を紹介するつもりだ。だから、早くあの女とは“けじめ”をつけろ、いいな?」「はい・・」「男は外に女を作り、その子供を自分の家に入れるのは、昔は当たり前だったが、今は時代が違う。わたしが言いたい事は、わかるな?」「はい・・」「もう、行っていい。」 隼人が出社すると、何やら社内が騒がしかった。「あ、部長!」「おい、どうした?」「それが・・急に京都支社長の風間様がいらっしゃって・・」「何だと!?」「久しいな、土方の弟よ。虚飾に満ちた結婚生活は上手くいっているのか?」「風間・・千景!」 我が物顔で自分の椅子に座っている金髪の男を睨みつけた。 彼は、風間千景――この会社の京都支社長で、隼人とは学生時代からの好敵手だった。「一体ここへは何をしに来た?」「別に。ただ貴様に会いに来ただけだ。」 悪いか?と、風間は片方の眉を少し上げた後、挑発的な笑みを口元に閃かせた。「先輩、あの二人・・」「相馬君、仕事しようね。」「あの人、部長とどんな関係なんですかね?」「あの人?」「ひら、朝部長に会いに来た人ですよ。」 ランチの後、千鶴が後輩社員の相馬主計とオフィスで仕事をしながらそんな話をしていると、そこへ一人の女性がやって来た。 全身をハイブランドファッションで固めた彼女は、美しくセットされた亜麻色の髪を揺らしながら、ぐるりと誰かの姿を探しているかのようにオフィス内を見渡した。「あの、こちらには何かご用でしょうか?」「内藤の妻だけれど、主人は何処に居るの?」「部長なら、一時間前に直帰しましたが・・」「そう。」 女性は溜息を吐くと、オフィスから出て行った。「先輩、あの人は?」「あぁ、あの人が部長の奥様よ。」「へぇ~、派手な美人さんですね。」「相馬君、仕事に戻ろうか?」「はい。」(部長の奥様が、ここに何の用だったのかな?) 貴子が会社に来ている事など知らず、隼人は雪乃と最後のディナーを“アステリア”で楽しんでいた。「今日、隼弥は?」「北海道の両親が見ていてくれているわ。明後日の朝、東京を発つわ。」「そうか・・」「あなたをここへ呼んだのは、あなたと過ごす最後の思い出を作りたかったからなの。」 デザートの後、雪乃はそう言ってさり気なく隼人に見せたのは、このホテルの二十階のデラックス・スイートのカードだった。「雪乃・・」 雪乃の大胆な言葉と行動に、隼人は思わず目を丸くした。「いいのか?」「えぇ。」 食事を終え、雪乃と共にエレベーターの中へと乗り込んだ隼人は、彼女の唇を塞いだ。「こんな所で・・」「いいだろう、別に。」「隼人さん・・」 部屋のドアにカードキーを挿し込む隙ももどかしく、隼人は雪乃の唇を激しく貪った。「隼人さん・・」「もう、待てねぇ。」 何度かエラーが出た後、漸くドアが開くと、隼人は雪乃をベッドの上に押し倒した。「あっ、ダメ・・」 彼女が穿いているストッキングを破り、パンティをずらして彼女の秘所を舌で愛撫し、指の腹でそこをいじくると、パンティはたちまち蜜でジワジワと濡れた。「隼人さんも、気持ち良くなって・・」 雪乃はおもむろにズボンのジッパーを下げると、ボクサーパンツを破らんばかりに怒張している彼のものを口に含んだ。「やめろ、そんなにしたら、あぁっ!」 隼人は堪らず、雪乃の口内で達した。 それを、雪乃は全て飲み干した。「美味しい、隼人さんのミルク・・」 そう言って口をだらしなく開けた雪乃は、熱を孕んだ瞳で隼人を見つめた。「全部頂戴・・お願い。」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年03月27日
コメント(0)
「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。「断る。俺ぁこれから忙しいんだ。」「じゃぁ、トシさんが仕事終わるまで待ってるよ。」「ガキか、てめぇは。」「だって一人で居ると寂しいんだもの。」「クリスマス=イヴの夜に、パーティーにも行かずに野郎二人で飲みてぇって物好きが何処に居るんだよ?」「ここに居るよ~」「ったく・・」 土方は軽く舌打ちすると、クリスマスケーキの生地を作り始めた。 パティシエが一年で最も忙しい日は、皮肉にも家族と友人、恋人と過ごすクリスマス=イヴと、クリスマスである。 生地を作り、完成したスポンジをオーブンに入れて焼き、二百個分のケーキを土方が完成させた頃には、朝の六時まわっていた。「あ~、疲れた。」「トシさん、今からでも飲みに行こう。」「うるせぇ、俺は二階で仮眠する。」「え~!」「土方さん、おはようございま~す!」「総司、今朝は珍しく早いな、どうした?」「今日は、クリスマスでしょう。さっさと仕事終わらせて、大手インスタグラマーのクリスマスパーティーで作るケーキを納品しなくちゃね。」「そうか。まぁ今日は俺が昨夜予約分のクリスマスケーキを全部仕上げたから、楽勝だろ。」「ありがとうございます、土方さん。」「おはようございます。」「おはよう、はじめ君。君も早いね。」「当たり前だ。」「さてと、全員揃ったから、仕事するか!」「は~い!」 オープンまで、あと四時間。 パティシエの最も忙しい一日が、始まろうとしていた。「斎藤、レジ頼む!」「はい!」「総司、そっちはどうだ!?」「大丈夫です!」 店が朝十時からオープンすると、たちまち店の前にはクリスマスケーキを買い求める客が長蛇の列を作っていた。「あ~、疲れた。」「そうだね。ねぇ伊吹君、君なんでパティシエになろうと思ったの?」「まぁ、俺本当は画家になろうと思っていたんだけど、美大は高いから・・」「ふぅん、それで美大行かずに製菓専門学校に行ってパティシエになったって訳?パティシエなめてるの、君?」「俺はただ・・」「おいてめぇら、もう休憩時間終わってるぞ、さっさと仕事に戻れ!」「戻ろうぜ、沖田!」「はいはい。」「“はい”は一回!」「君、何先輩に向かってそんな生意気な口を利いているの?そうだ、明日の生地の下ごしらえ、君に全部任せるよ。」「え~!」(理不尽過ぎる!)「おい雪村、何だこれは!?」「え?」「え、じゃねぇだろ!この書類、少し抜けている個所があるぞ、すぐに修正しろ!」「は、はい!」 千鶴は怒り狂う上司から逃げるように、自分の席へと戻った。「あぁん、そんなこたぁわかってるよ!うるせぇな!」 切れ長の紫の瞳をギラギラと光らせながら、美しい顔を怒りに歪ませた彼女の上司・内藤隼人は、そう叫ぶと受話器を叩きつけるようにして電話を切った。 この会社全体が、皆苛々している。 派遣社員も、正社員も皆ストレスを抱えて互いの足を引っ張り合っていた。 千鶴が修正した書類を隼人の元へと提出すると、彼はさっとそれに目を通した。「悪くねぇな。」「ありがとうございます。」「さっさと仕事に戻れ!」「はい。」(内藤部長、昨夜のパティシエの方とそっくりだな・・他人の空似とは思えない位・・) キーボードを軽やかに叩きながら、千鶴は何とか今日の仕事を定時までに終わらせた。「先輩、お疲れ様です!」「相馬君、お疲れ様。」「何か今日の内藤部長、荒れていましたね。」「そうだったわね・・」「噂に聞いたんだけれど、部長奥さんとの離婚話が相当こじれているらしいわよ。」「え~、何で!?」「いつものアレよ、アレ。」 更衣室で千鶴が制服から私服へと着替えていると、噂好きの女子社員達がそんな事を話しているのを聞いた。「まぁ、奥さんが国会議員の娘だから、部長が別れたくても、向こうが別れたくないんでしょうよ。」「そうかもね。ま、わたし達には関係ないけれど。」「お疲れ様です。」 千鶴はそっと彼女達の脇を通り過ぎようとした時、その中の一人が彼女の前に立ち塞がった。「ねぇ雪村さん、内藤部長の愛人だっていうのは本当?」「嘘です、そんなの!」「ふぅん、だったらいいけど・・」 彼女はそう言った後、友人達と連れたって更衣室から出て行った。(何だったんだろう?)「先輩、一緒に帰りましょう!」「そうね。」 後輩の相馬と千鶴が連れ立って会社から出ると、会社の前に黒塗りのリムジンが停まっている事に気づいた。「あの車、誰のだろう?」「さぁ・・」 暫く二人が車の方を見てみると、隼人がその車の中に乗り込んだ。 やがて車は、人工の銀河の中へと呑み込まれ、消えていった。「先輩、あれ・・」「見なかった事にしよう、ね?」「メリークリスマス、パパ。」「隼人君、忙しいのにわざわざ呼び出して済まなかったね。」「いいえ・・」「ねぇあなた達、そろそろ子供を作る気はないの?」「やめてよ、ママ。今は仕事が楽しくて、まだ考えてないわ。」 都内某所にある高級ホテルのフレンチレストランの個室で、内藤隼人は妻・貴子と彼女の両親と共に豪華なクリスマス・ディナーを楽しんでいた。「ねぇ、そんな事言わないで、妊活を考えてみたら?子供が居たら、楽しいわよ。」「そうですね・・」 義母からそう話題を振られ、隼人はそう言葉を濁した後、デザートのラズベリーのオペラを一口食べた。 一流店で、何度も三ツ星を取った事があった所だが、デザートは最悪だった。 ラズベリーの酸味が強過ぎて、オペラ本来のコーヒーとチョコレートの濃厚な味わいが感じられなかった。「隼人さん、どうしたの?」「いや、何でもない。」「ねぇ、今夜はここの最上階に部屋を取っているのよ・・」 息が詰まるかのようなクリスマス・ディナーの後、貴子はそう言って隼人にしなだれかかった。「悪ぃが、今疲れているんだ。」「また、そのセリフね。今度は何処の女とよろしくやっていたの?」「やめろ、こんな所で・・」「銀座かしら、それとも北新地?あぁ、この前は札幌ですすきのの女とよろしくやっていたわよね!?」「やめろって!」 一度怒りのスイッチが入ると、貴子は止まらなくなる。「どうしてわたしを抱いてくれないの?もしかして、隠し子でも居る訳!?」「部屋に行こう・・」「適当にはぐらかすつもりね、もう知らない!」 貴子はそう叫んで隼人に平手打ちを喰らわさせると、エレベーターの中へと消えていった。(参ったな・・) 隼人は溜息を吐きながらホテルを出ると、タクシーである場所へと向かった。 そこは、新興住宅地の中にあるアパートだった。「は~い。」 玄関チャイムを押すと、隼人の前に一人の女性が現れた。「どうしたの、今日は来ないと思ったわ。」「クリスマスだからな・・」「パパ~!」 廊下の奥から慌しい足音が聞こえたかと思うと、三歳位の男児が隼人に抱きついて来た。「メリークリスマス、隼弥。これ、クリスマスプレゼント。」「ありがとう!」「ねぇ、向こうには戻らなくていいの?」「あぁ。」「早く中に入って、風邪ひくわ。」 リビングに入った隼人が最初見たものは、テーブルの上に置かれた、双子の兄の店のケーキだった。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年03月27日
コメント(0)
「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。「はぁぁ~」 仕事帰りのサラリーマンやOL達が行き交う繁華街の中を、雪村千鶴は溜息を吐きながら歩いていた。 右を見ても左を見ても、周りは幸せそうなカップルばかり。 毎日仕事に慌しく追われて、今日がクリスマス=イヴだという事もすっかり忘れてしまっていた。「お父さん、ありがとう!」「家でママと三人で食べようなぁ。」 すれ違った、仲が良い父娘の姿に、千鶴は幼い頃の自分と今は亡き父の姿とを重ね合わせていた。 あの頃、何もかもが幸せだった。“千鶴、誕生日おめでとう。今日はお前が食べたいケーキ、好きなだけ頼んでもいいぞ!”“本当!?” ショーケースの中に陳列されている色とりどりの様々な種類のケーキは、まるで宝石のように美しく輝いて見えた。“お父さん、わたし将来おかし屋さんになる!おかし屋さんになって、お父さんに世界一おいしいケーキを食べさせてあげるね!”“ありがとう、千鶴。今から楽しみだなぁ。” だが、その夢を叶える事は出来なかった。 父・綱道は、医師として“国境なき医師団”に参加し、アフリカの紛争地帯へと赴く事になった。“大丈夫だ、すぐに帰って来るから心配要らないよ。”“気を付けてね、父様。” 空港で自分に笑顔を浮かべた父の姿を千鶴が最後に見たのは、高校三年生の春の事だった。“千鶴ちゃん、お父様が・・” 父の訃報を千鶴が知ったのは、大学受験を控えた秋の事だった。 父は、現地で仕事から自宅への帰宅途中で交通事故に遭い、病院に搬送された時点で即死状態だったという。 父の死により千鶴は長年の夢だったパティシエを諦め、奨学金で大学へと進学した。 そして今、その返済に追われながらブラック企業で身を粉にして働いている。 今日は朝からツイていなかった。 人身事故で電車が遅れ、その所為で上司から怒鳴られ、午前中は外回り、午後からはデスクワークに追われた。 仕事が終わったのは午後八時半だった。 今から行きつけの駅前のスーパーで半額シールが貼られている惣菜を買って帰宅して、洗濯をしていたら夜十時位になる。 もう、スーパーに行くのを止めて、外食しよう―そう思った千鶴が駅前のファーストフード店へと向かおうとした時、彼女は一軒の洋菓子店の前で何故か足を止めた。 まだそこは開いているようで、千鶴がドアベルを鳴らしながら中に入ると、ショーケースには宝石のようなケーキが何種類も並んでいた。(うわぁ~、美味しそう・・) 千鶴がそんな事を思いながらショーケースの中を見ていると、奥の厨房から一人の男が出て来た。「いらっしゃいませ。」 千鶴が俯いていた顔を上げると、ショーケースの前には一人の男が立っていた。 黒く艶やかな短い髪を揺らし、切れ長の紫水晶の瞳をした彼は、紅を塗ったかのような美しい形の唇を微かに動かすと、千鶴に向かってこう言った。「ご注文は、お決まりですか?」「あの、すいません・・わたし、朝から何も食べていなくて・・お腹一杯になれる物があったらいいなって・・」「少々、お待ち下さい。」 男はそう言うと、厨房の奥から美味しそうなチョコレートケーキを携えて戻って来た。「ヘーゼルナッツとピスタチオのオペラです。ピスタチオとヘーゼルナッツは疲労回復の効果がありますよ。」「ありがとうございます・・」「はい・・」 千鶴は店の奥にあるイートインスペースで男から勧められたヘーゼルナッツとピスタチオのオペラを一口食べると、甘さが口の中で蕩け、思わず笑顔を浮かべた。「ご馳走様でした。」「よろしかったら、これもどうぞ。」「え、いいんですか?」 千鶴がおそるおそる男から渡された袋の中を覗くと、そこには美味しそうなサンドイッチが数個入っていた。「明日の朝食にどうぞ。お仕事、頑張って下さいね。」 男はそう言って千鶴に優しく微笑んだ。「あ、ありがとうございます!」「お仕事、頑張って下さいね。」(あの人、とても素敵な人だったな・・) 千鶴がそんな事を思いながら帰路に着いている頃、店内にはあの美しい男――この店の経営者兼オーナーパティシエ・土方歳三が店の事務室で溜息を吐いていた。(今月も、人件費で赤字か・・) 店にはいつも“パティシエ募集”の貼り紙をしているが、毎年入って来ては一月も経たない内に辞めてしまう。 その理由は、土方の妥協を一切許さぬ、厳しい指導の所為だった。 パティシエは一見華やかで楽そうな仕事に思えるが、その実体力勝負が命の力仕事で、師弟関係が厳しい仕事だ。 夢と憧れを抱いてこの世界に入って来たが、厳しい現実に打ちのめされ挫折した者も少なくはない。(これから、どうしようかな・・) 土方はコーヒーを飲みながら、デスクの上に置かれた一枚の写真を見た。 そこには、かつて自分と夢を叶え、志半ばで夭逝した亡き親友と若き頃の自分の姿が写っていた。「勝っちゃん、あんたの店は、俺が守るぜ。」 土方はそう呟くと、首に提げている勇の遺骨で作ったダイヤモンドのネックレスをそっと握り締めた。「トシさ~ん、居る!?」「何だ、八郎。」「店、もう終わったんでしょ?一緒に飲みましょうよ。」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年03月27日
コメント(0)
「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。 土方歳三 (28) 若干20歳でスイーツの国際大会「クープ・デュ・モンド」の日本代表のリーダーとして活躍、チームを金メダルへと導いたパティシエ。 現在、亡き親友の店である「Fleurs de cerisier(さくら)」を引き継ぎ、パティシエと経営者の二足の草鞋を履く生活を送っている。 雪村千鶴 (21) 幼少期にパティシエを目指していたが、高校卒業前に父が交通事故で他界、パティシエになる夢を諦め、OLとして奨学金の返済に追われる日々を送っていたが、土方のケーキを食べ、パティシエへの夢に再び挑む事を決意する。 沖田総司 (20) 土方の弟分的存在で、SNS映えスイーツ作りの名人。 斎藤一 (20) 会津若松出身。 老舗和菓子店の御曹司だったが、土方に憧れ、彼に弟子入りする。 伊庭八郎 (28) 土方の幼馴染で、大手財閥・伊庭財閥の御曹司。 土方の事を慕っている。 内藤隼人 (28) 歳三の双子の弟で、大手企業の営業部長。 野心家で、国会議員の娘と結婚するも、夫婦仲は冷めている。 妻とは別に、家庭を持っている。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年03月27日
コメント(0)
全7件 (7件中 1-7件目)
1